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特別支援学校における視覚に障害のある児童の指導について: 特別支援コーディネーターのコンサルテーション事例から

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Academic year: 2021

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110 Ⅰ 問題と目的  A市立B特別支援学校は、200 X年度より障害の区 分なく児童生徒が就学する学校となり、肢体に不自由 のある児童生徒や知的な障害のある児童生徒の他、視 覚や聴覚に障害のある児童生徒が就学することとなっ た。  また、特別支援学校では児童生徒の重度重複化によ り、何等かの形で視覚や聴覚に障害を持つ児童生徒が 増えてきているといった現状もあり、障害の特性に応 じた学習内容や活動を、如何に提供できるかが重要な 課題となってきている。 そのようなことからB特別支援学校では、就学する 児童生徒の障害特性に応じて指導が進められるよう に、人材の育成や活用を行うためのシステムの構築や サポート体制の充実等を図っている。  本研究は、B特別支援学校に併設される支援セン ターの特別支援教育コーディネーターが、視覚に障害 のある児童の指導場面に介入し、指導者にコンサル テーションを行った事例から、その有効性を検証しよ うとするものである。 Ⅱ 方法 1 対象校  A市立B特別支援学校は総合制の特別支援学校であ り、学校体制としては、総務部・指導部・支援部の 3 部体制をとる。特別支援教育コーディネーターは支援 部に所属する。 2 対象とした指導場面   事例 1:日常生活の指導   事例 2:コミュニケーションの指導   事例 3:運動と動作の指導   事例 4:感覚と感触の指導 3 対象とした児童  【A児】小学部 3 年生、男子、両眼光覚なし、知的 な障害もあると考えられるが、検査等は実施できてい ない。二語文での要求語が数語ある。(事例 1・2・3)        【B児】小学部 2 年生、女子、弱視で肢体に不自由 があるため、介護式車椅子を使用。知的な障害もある と考えられるが、検査等の実施はできていない。(事 例4) 4 対象とした指導者  【C教諭】小学校勤務 20 年、特別支援学校勤務 10 年、 視覚に障害のある児童生徒の指導経験はない。(事例 1・2)    【D講師】特別支援学校勤務 1 年、視覚に障害のあ る児童の指導経験はない。( 事例 3)  【E教諭】特別支援学校勤務 9 年、視覚に障害のあ る児童生徒の指導経験はない。(事例 4) 4 期間     200 X年 4 月~ 7 月(各事例毎に 5 回の介入、40 分 の指導場面に 20 ~ 40 分の介入を行った。) 5 手続き  事例 1:特別支援教育コーディネーターが指導場面 に介入し、指導の観察から問題点を把握し、ケース会 や盲学校地域支援部との連絡会での検討を経て、指導 者が対象児に行った指導について、その後の児童の変 容から考察を行う。  事例 2 ~ 4:特別支援教育コーディネーターが指導 場面に介入し、指導の観察から行った指導者への助言 を、その後の指導者の指導と児童の変容から考察を行 う。 Ⅲ 結果と考察     < 事例1> 1 結果

特別支援学校における視覚に障害のある児童の指導について

― 特別支援教育コーディネーターのコンサルテーション事例から ―

Teaching Methods for Students with Visual Impairments in Special School:

Focusing on Special Needs Education Coordinator’s Consultations

野 村 宗 嗣

Munetsugu Nomura

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111  日常生活の指導としては、歩行と荷物の整理の指導 を主とした。歩行については、ケース会と盲学校の連 絡会での検討から、A児にはつたい歩行を指導するこ とになったが、歩行を行う上で手がかりとなるマーク の設置や設置された場所ごとに言葉がけを行うといっ たことが指導者間で共通理解された。手引き歩行から つたい歩行を行ったことで、A児は手すりや壁を手で つたい、スクールバスから教室へ教室からトイレへの 移動ができている。  荷物の整理では、A児が自分で、鞄の中のものを順 に外に出して整理していけるように、教室内の机や ロッカーの配置がされた。 2 考察      ケース会を行うことで、指導内容や指導を進める上 での環境整備等、関係教員との共通理解や連絡が行え たと考える。盲学校地域支援部との連絡会では、ケー ス会で確認が必要とされた指導について、検討や修正 が必要に応じて行われ、指導場面に生かされたと考え る。     < 事例2> 1 結果  A児へのコミュニケーションの指導では、視覚に障 害があっても理解が可能なように、さわってわかるマ ークを貼る等の指導を行うようにコーディネーターよ り指導者に助言を行った。視覚認知ができないA児に 対して、触ることで特徴等を知り、合わせて名称を聞 くことで、触っているものの特徴と名称を知るといっ た設定がされた。また、動作介助と同時に言葉かけを 行うことで、りんごやバナナを「どうぞ」といって手 渡されると、A児は「ありがとう」といってお辞儀が できるようになってきた。  A児に選択をさせるような提示の仕方や方法を考え ていく必要があるといったコーディネーターの助言 に、交互に鳴らされた楽器の音を聞いて好きな楽器の 方に手を伸ばさせるといった指導が行われた。 2 考察  指導のねらいとして、さわりながら名称を聞くこと で、さわった時の形状の理解から、名称を理解させよ うとするものであった。復唱ができてきたことから手 でさわったものと復唱した名称の理解ができているか どうかの点検も含めて、名称を伝えてそれを袋に入れ るといった設定や、2 つから 1 つを選ぶといった設定 をしていこうと考えた。しかしながら、選択する複数 の対象物を視的にとらえられないA児には難しいと考 え、音を 2 つ聞かせて、好きな楽器の方に手を出させ るといった設定となった。 < 事例3> 1 結果  運動と動作の指導では、クッションマット上を歩く ことで、マットへの沈み込みを膝や腰で調整したり、 ブロックの上を足をすらせながら進むことで、ブロッ クの端を知覚したりする等、状況に応じた身体の動か し方をA児は獲得することができた。  また、身体のバランス感を育成したり、身体を曲げ たり伸ばしたりといった身体機能の育成については、 姿勢の介助や動作を構成する一連の動きを介助するこ とで、要求される身体の動きを具体的にA児に知らせ ることができた。  視覚模倣にて、姿勢や動作を学ぶことが難しいA児 にとっては、動作介助での指導が主となり、運動量も 同じ時間枠で保障することは十分にはできなかった。 2 考察  A児が視覚に障害があり、動作を模倣することがむ ずしいこともあり、動作介助にて指導者と一緒に動作 を行い、動きの構成や動きの流れを知らせていく必要 があった。  身体にどのような力を育てていくのかといったこと に関しては、1 つの授業枠では、必要とされる身体機 能の育成を全て保障することは難しく、年間指導計画 での指導内容の調整等をしていくことが課題として 残った。  < 事例4> 1 結果  感覚と感触の指導では、「見る」「さわる」「嗅ぐ」 といったことを、バラバラに行っていたときよりも、 「見る」といったことに視点をおき、他の感覚を補助 としてつかったことで、見るという活動が促され、児 童の反応もとらえやすくなった。  パン生地を、粘り気があり感触のよい粘度にしてB 児にさわらせながら見せるという指導は、手の動きと 感触の変化を関係させての指導であり、「どのように 見せていくのか」「見るための意識や意欲をどのよう に育てていくのか」といった指導上の工夫が行われた。 「見る」ということを視点にしたことや、「見る」とい 特別支援学校における視覚に障害のある児童の指導について

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112 うことを促すため、他の感覚を併用したことでの成果 は大きく、さわらせながら見せるという場合では、動 かしている手指を見せながら、握りこんでいくときの 感触の変化を、児童に体感させることができた。 2 考察  触らせながら見せることで、見るという活動が促さ れたと考える。  指導(授業)計画が、同じ内容を繰り返し 3 ヶ月間 にわたって行うものであったことから、つぎへの見通し と期待感といったものを児童は学習できたと考える。  コーディネーターが指導場面に介入したことで、視 覚に障害のある児童に対しての指導のあり方を、実際 の指導場面を通して指導者にコーディネーターが提示 するとともに、指導の根拠を指導者が理解できたと考 える。 Ⅳ 総合考察  歩行や空間認知等については、盲学校地域支援部の 支援を依頼したが、コーディネーターを含め研究対象 校の指導者の中には、長らく重度重複の障害のある児 童生徒にかかわってきた経験もあり、視覚に障害のあ る児童の指導に、経験から対応できることも多かった と考える。   そのことは、コーディネーターの助言を受けての指 導者の指導の工夫に多くあらわれている。  特別支援学校のコーディネーターにあっては、外部 支援に奔放するものも多く、校内支援に疎外になりが ちという実態もあると聞く。今回の指導場面への介入 にあっても、継続的に同じ時間帯に介入ができたもの ではなかったが、不定期であっても成果がみられたこと から、指導場面への介入を行う意義は大きいと考える。  今回の指導場面への介入は、対象とした指導者に視 覚に障害のある児童生徒を指導した経験がなかったた め、介入が容易であったが、他者からの指導場面への 介入を受けることを良しとしない指導者もいると想定 される。指導場面への介入の 1 つの意図としては、複 数の目で指導のあり方や児童生徒の実態を的確に判断 していくといったこともある。  指導場面への介入を指導者への指導ととらえず、児 童生徒の実態や課題に応じて指導を進めるための1つ のシステムという理解を、支援を受ける側に促してい ければと考える。 Ⅴ 今後に向けて  検査等を児童生徒に実施できず、今回のように指導 者の指導と児童の反応から指導者への助言をしようと するならば、指導のねらいや対象児童生徒の障害の特 性といったものを把握しておく必要がある。   指導者の指導に対する児童の反応を観察し、その 時々の児童の様子が把握できていることで、児童の実 態に見合った助言をコーディネーターは行えると考え る。指導の記録等の文章で表記されたものは認識に手 間取ることもあり、活用しずらい場合もあると考え る。それだけに指導場面の観察から、指導経験を生か しコーディネーターが指導者に助言を行うことで、指 導者の指導と児童の変容が促されるならば、指導場面 への介入に対する期待は大きいと考える。 野 村 宗 嗣

参照

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