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中谷の雪結晶分類における「側面結晶」について

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(1)Title. 中谷の雪結晶分類における「側面結晶」について. Author(s). 油川, 英明. Citation. 北海道教育大学紀要. 自然科学編, 59(1): 9-17. Issue Date. 2008-08. URL. http://s-ir.sap.hokkyodai.ac.jp/dspace/handle/123456789/938. Rights. Hokkaido University of Education.

(2) 北海道教育大学紀要(自然科学編)第59巻 第1号 JournalofHokkaidoUniversityofEducation(NaturalSciences)Vol.59,No.1. 平成20年8月 August,2008. 中谷の雪結晶分類における「側面結晶」について. 油 川 英 明. 北海道教育大学岩見沢蔵物理学教室. Onthe“ColumnarCrystalwithExtendedSidePlanes’ OfNakaya’sClassificationofSnowCrystals ABURAKAWA Hideaki. DepartmentofPhysics,IwamizawaCampus,HokkaidoUniversityofEducation. ABSTRACT TheSnowof“columnarcrystalwithextendedsideplanes’’wasatypenamedbyNakayaintheclassi−. ficationofsnowcrystals,andhadsomecomplexforms.Theresultofresearchingcrystalsofthistype foundthattheyhadaseveralpatternswhichcrossedmanyhexagonalplates,madebytwotypesofcol−. umnandplateandsoon. Especially,thelatterofthecoexistenceofcolumnandplatewasnotabletobeunderstoodbyjVdkLVW diagramofsnowcrystals,Whichdemonstratedthecrystaltogrowtocolumnorplateaccordingto temperature.Itwasfoundbyourexperimentsofmakingsnowcrystalsthatthecrystalofthistypewas formed withanelectric efEect.. 1.はじめに. 雪結晶の分類は,19世紀末にヘルマン及びノル デンショルドにより初めて物理学的な手法が取り 入れられたと言われている(中谷,1949)。その後,. BentleyandHumphreys(1931)がその著書 “SnowCrystals’’において3OOO枚の写真ととも. 結晶構造の究明から分類項目を加えたりするなど によって,初めて系統的かつ科学的な雪結晶の分 類を行った。. ところで,中谷(1949)が雪結晶の分類におい て「側面結晶」と命名した結晶に対し,「雪氷辞典」 (日本雪氷学会,1990)などで「交差角板」とし. ての注釈が設けられたり,あるいは「雪と氷の事. に,結晶の外観に基づいて5種の大分類と,その. 典」(日本雪氷学会,2005)では中谷の雪の一般. 下に数種の小分類を行っている。そして,中谷. 分類表(Nakaya,1954)としているにもかかわ. (1949)は人工雪作製の実験に成功したことによ. らず「側面結晶」の部分がそのまま「交差角板」. り,結晶の形態・構造及び成因を基に雪の分類を. に入れ替えられている表示も見られる。このこと. 行い,それまでの分類に対して新種目を加えたり,. に対して,最近,ひとつの問題提起がなされた(樋.

(3) 油 川 英 明. 口,2007)。すなわち,中谷の一般分類表におい. の結晶に遭遇するかという時間的な因子を含んだ. て「側面結晶」と命名された項目に「交差角板」. ものである。また,分類を行う際にどのような視. として注釈ないしは入れ替えが行われたことにつ. 点でなされるかが重要であるように考えられる。. いて,そのように至った経緯の問題と,その妥当. 実際,中谷は,雪結晶を分類するに際して結晶の. 性についての問いかけである。. 分類項目に対して注釈がなされるということ. 「構造及び成因を根拠として」(中谷,1949)行 うとしているが,それは,中谷が人工雪の実験に. は,本来的には,この「側面結晶」に対して種々. おいて雪結晶の生成条件を見いだしたことによる. の見方があるということであり,また分類に対す. ものである。例えば,同じ在状結晶であっても「針」. る不確定さでもあると考えられることから,この. と「角柱」を区別して分類し得たのは,それらの. ように命名された結晶について再検討すべきであ. 生成条件が異なることに依拠したものであった. るという,先の樋口(2007)の問題提起について. (中谷,1949)。なお,雪結晶の形の多様性は,. は相応の妥当性があると考えられるので,本論に. 角板や樹枝状結晶,あるいは針や鞘など,無垢の. おいては,「側面結晶」に関する考察及び「交差. 角在以外は全て氷晶の骸晶成長に起因しているわ. 角板」という注釈の妥当性について検討を試みる. けで,雪結晶の分類は,端的には,氷結晶に関す. こととする。. る骸晶形態の分類であると言えるであろう。. 中谷が「側面結晶」とした雪結晶と同様の形態. 中谷の雪結晶の分類方法は,無数の形態が示さ. のものについては,多結晶の雪結晶としてFuru−. れる結晶を系統的に組みわけしたもので,雪結晶. kawaandKobayashi(1978)により議論され,. の生成条件を明らかにする上で大きな役割を果た. またその後,小林(1980)によってそれは「交差. してきた。ただ,中谷の分類が基本的には形態的,. 角板」として解説がなされている。つまり,「側. 視覚的なものであることから,中間的な形状の結. 面結晶」を「交差角板」と見なすことについては,. 晶についての分類,例えば「広幅六花」と「星状. このことが源のように見なされる。. 結晶」の中間に位置する結晶などの分類には困惑. 中谷は,雪結晶の分類で「側面結晶」というこ. する場合がある。また,同じ「樹枝状結晶」と分. とについては当初よりその命名に躊躇があったよ. 類された結晶であっても,その形状にはいろいろ. うである(中谷,1949)。そして,今回,「側面結. なものが見られるが,中谷の分類ではその形状に. 晶」について考察を進めてきた結果,中谷の躊躇. ついてまでは表現し得ないわけである。このこと. は単なる分類上の問題というよりも,中谷ダイヤ. は,中谷の分類法だけでは結晶の細かな解析を行. グラムにおいて示された雪結晶の成長形態に関す. うことは困難で,そのためには,雪結晶の形態そ. る一義性の問題について,中谷自身が根源的な疑. のものを数量化するなどの方法が考え出されなけ. 問を抱えていたことに起因するのではないかとい. ればならない。. うことである。. 黒岩(1972)は,結晶の緑の長さと投影面積の 計測から固有の数値を得る方法を提起している. 2.雪結晶の分類について 雪結晶の分類は,一般の結晶分類とは趣を異に. が,系統的な分類までには至っていない。これに 対して,フラクタル次元を用いた雪結晶の分類(油. 川・安武,1996)は,形状をフラクタル次元とし. していて,結晶習性だけではなく,その成長過程. て数量化することにより,先の中谷の分類に見ら. が反映されたものになっている。例えば,「角板」. れる中間領域の結晶形や,同一名称の結晶のなか. と分類された結晶の小さなものは,その後に水分. での複雑さについて,数値として明瞭に区分する. が十分に補給されれば樹枝状結晶に成長するであ. ことができる。このような結晶の形状の数量化は. ろう形態の一つであり,観察者がいつの時点でそ. 雪結晶の細分化には有益な手法であると考えられ. 10.

(4) 中谷の雪結晶分類における「側面結晶」について b T鈷▲の」鰍分類. 号 の‡吉 晶 の 一 環 分 類. 雑型柱. 弾. 集集. i)角. V)星. 軌叫・. 払)広l転 倒 枝 1)正規六花型. 一−1 NIHl肌王・・−→. −・:;. 「−・■ ■■けヽll. −1小一小鼻−▲ hl帥困l■什 −−1い如. し−’1t」鳥→三脚・…亘二こニニ;;慧. ト,l■ll. 一川…ト. llり∴仁. ∴ニデさモ∴、.. ヽH小ト.花 .●●l】■■、佗. 。.….J! −l.  ̄:‥‥. 一 ■几乃∼. ■サ∼■れ昌 ■■ 小二●.■ll ′■l;1汁. 」川.恒己謙 ■ ■■ 一 項い. 状. h Jn神川州欄.  ̄】「封れ川柑「 亡 ニッ往けヽ hi. わ ■A. 「I. r し.用人正 一l‖l∴丘. ー・▲ 三l十り∴丘. 「−▲1=1l−川ヽ■ d疇.きl川嶋嵐 山.仁▼ニ〃t†J.花. 」 一 三l川1廿∴侃 .t.†【■ll↑. …−[…. ■】lfll▼ llり■llt. ℡ t▲lりl. JIltル1、仁. 玩)樹枝付角板. 一・・−1二子去…≡. ●l〉 富IIM・■Il. 2)三花匹I花寮 3)十二花重吉品. 帆占■仁 一→. 4)疇 形 5)立 体 六 花 6)立体放射空 蒜 型. −. け =l川■門. ‥一色一−⊂こニニ「≡ j 嶋Il. ケ■■小11■■ 汁■削l丹仙【. 平板付砲#型 r粉雪」(角柱板状不規則集合). Ⅳ 角柱板状細虐せ. ■■一員. ▼与6ヽIl一十 √ ■句●■り. 嶋)普 通 樹 枝 痛)羊 歯 状 痛)角振付六花 Ⅱ 橋 状 絶 島. ■■り■■. I小丁伸. 立)扇. 冠)種 付 角 仮. ・l・. 人︰人︻. 弾椎. ■−t■−. 2)角柱租合せ. 砲角. Ⅰ角 柱 状 重吉. ︶ ヽ■ ′ ヽノ ヽノ ・l ‖ロ ⋮ u ・ l = ︻ 止. 1)単なる角柱. ■小 ■■ ■几■ t武一. 角砲角. ︶. 董. Ⅰ針状総見 f. 〃l鴫l冊書Il かIl岬lいけM. Ⅴ 傭l而iだi屋 王粒付絶息.各種 停 帯. Ⅵ 零粒付結晶. .…室 Ⅵ無定禦‡三三. 頓 状. 軍. 1蒜. 水 片 慣 雷粒付薫定形. ■●静♪●れIl■.l・が(■■疋&と1けれていもか.むLI▲t●■■ヒ上∧た∼机・い二三1■J.‘再三1・てい(. 図1−2 雪氷辞典(1990)に掲載されている MagonoandLee(1966)による雪結晶の 分類.欄外に「側面結晶」を「交差角板」. 区=−1 中谷(1949)の雪結晶の一般分類. る。ただ,結晶が実際には三次元的な構造である. とする脚注が見られる.. また,孫野の中分類は「板状結晶」の部分が比. ことから,将来的にはフラクタル次元もそれに応. 較的大幅に改変されていて,「2.変遷六花」,「3.. じたものが示されなければならないであろう。. 不規則六花」が新たに付け加わり,「立体六花」 が「立体型」に,「立体放射型」が「放射型」に. 3.中谷と孫野の分類について 中谷の天然雪の分類は,その後,Magonoand. 改められ,それらに小分類が幾つか付加されてい る。そして,「側面結晶」には,中谷の分類には. 無かった中分類が三種ほど付加されている。大分. Lee(1966)によってさらに詳細な分類(以後,「孫. 類の「雲粒付結晶」では,「厚板」の中分類が「濃. 野の分類」と称す)が行われた。それらの比較の. 密雲粒付結晶」に改変され,小分類が三種ほど付. ために,二つの分類を図1−1と図1−2に示す。. 加されている。. 中谷の分類を,大分類(例えば,「Ⅲ角柱状結. 「無定形」から改変された「不定形」は,中谷. 晶」など),中分類(「1単なる角粧」など),小分. の二種の中分類がより細かに四種に分けられ,さ. 類(「i」角錐)など)とすれば,孫野の分類は,. らに小分類が二種加えられている。また,「G初. 大分類についてはほとんど中谷の分類をそのまま. 期結晶」の大分類には六種の中分類が設けられて. 踏襲し,その番号を結晶形の頭文字(アルファベッ. いる。孫野の分類は,総体的に見て小分類に多く. ト)に置き換え,また,「Ⅶ無定形」を「Ⅰ不. の種類が付加され,中谷の40種から80種ほどに増. 定形」に改め,最後に「G初期結晶」として大. やされている。. 分類を一つ付け加えている。. さて,「側面結晶」の分類についてであるが,. 11.

(5) 油 川 英 明. 中谷は「Ⅴ 側面結晶」として大分類のみとして いるのに対して,孫野の分類は「S 側面結晶」. 附 /ノ. の大分類の下に「1.側面結晶」,「2.鱗型側面 結晶」,「3.側面,砲弾,角在の不規則集合」と いう中分類を加えている。この場合,大分類と中. 分類に全く同じ「側面結晶」という名称が取り入 れられており,分類法としては疑問に考えられる ところであるが,このことについては特に言及が 見られない。. 4.「側面結晶」命名の背景∼雪結晶の成長に 関する一義性の問題 中谷(1949)は,「側面結晶」と命名する際に. 図2 中谷(1949)が側面結晶として示している例. 右下の倍率は原本のまま(以下同じ).. 少し戸惑いがあったことについては,以下のよう な記述から判断される。すなわち,「‥・札幌に. 於いて従来の文献に全く知られていない妙な形の 結晶‥・」,「この種の結晶は,初めは構造が不明 の為分類し得なかった。」,「本節の結晶(側面結. 晶ということ一引用者注)は,このNo.10飢(四 角い霜の結晶のこと一引用者注)の結晶と本質的 には同じものと一応考えられるので,角在の集合 から側面が不規則に伸び出たものと見倣した。」 等々の記述がみられるわけである。 中谷がこの結晶の分類に少し躊躇し,かつ,角 板状(六角形のものも含まれるが,このことにつ. ×40. いては後述する)の結晶が角在の側面(在面)の 成長したものと見なしたのは,以下の理由による. 図3 中谷(1949)が側面結晶の芯と見なした結晶. ものと考えられる。. 中谷(1949)は,人工雪の実験から得た結論の. 状の結晶が平行して成長している図2のような結. ひとつとして,雪結晶の成長形態,つまり在状か. 晶は,これらの結晶が同時的に成長したものと見. 板状かに成長するのは温度により一義的に決定さ. なすならば,それらは同じ結晶形,すなわち,今. れるということである。その後,Hallettand. の場合は両者を在状結晶として統一的に捉えなけ. Mason(1958)やKobayashi(1961)などによっ. ればならないわけである。つまり,「中谷ダイヤ. てこのような雪結晶の成長に関する温度の一義性. グラム」(Nakaya,1954)に代表される雪結晶の. が確立された。この見地からすれば,柱状結晶と. 成長形態と温度との関係からは,上述のような「側. 板状結晶の組合せの結晶は,鼓型結晶のように,. 面結晶」は在状結晶の側面が伸びた特別な結晶と. それぞれの結晶形が相応の条件下で,時刻を異に. して分類されなければならないことになる。図2. して独立的に成長したものということになる。そ. に示されたような長い角板の形態を成長させるた. して,針のように長く伸びた結晶の長軸方向に板. めの芯として,中谷(1949)は,図3のような穂. 12.

(6) 中谷の雪結晶分類における「側面結晶」について. 先状の結晶をあげ,これは,針のように細長く成. る一義性は成立しないこともあるということであ. 長している形態から,また,下方に角柱状の結晶. る。天然においては大気電場の影響が当然に考え. が附着していることから,柱状結晶の一種と判断 したものと想像される。それ故,これから伸びた ′. わけである。. ′︰∴一い.−. ■.. 角板は柱状結晶の側面が成長したものと見なした. す. しかし,図2に示された「側面結晶」の板状部. こ事::’イ.’. 分は,明らかに六角板状の一部と見られることか ら,これは,従来の角板(氷結晶の底面が成長し たもの)が交差して形成されたものと見なされる。. ところで,図3に示された穂先状の結晶も板状. (・仁一. ▲ ■. ■−.」リブ ′ 一 † l. 一■ 1. ′ い ■t. 下−−■ふ、. ′. 1・T−二、. 結晶の一部として成長することがあり,その例を 凶4に示す。凶4の結晶は,低温室での降雪実験 において,過冷却微水滴がガラス面上で凍結する. 0_11¶n. 際に成長したものである(油川他,2003)。この. 図4 過冷却微水滴の凍結から成長した穂先状. 図の矢印で示した結晶は図3と同じような穂先の. の結晶(矢印). 形態をしており,下方に角板が成長していること から,このときは板状結晶の成長条件にあると見 なされ,図3の穂先状の結晶もこのような条件で. ノ も. 成長した枝の一部であると考えられる。穂先状の. ■−、一−.  ̄・. 結晶をこのように見なせば,図3では下端に角在 が成長していることから,この場合は板状結晶と 柱状結晶が同時に成長していることになる。この. ことは,先の中谷ダイヤグラムの一義性に反する. シ≠t二・!′卜∴二:. ことになる。. しかし,実験的には板状結晶と在状結晶が共に 成長することがある。すなわち,図5−1及び図 5−2は,過冷却微水滴による雪結晶の生成実験. 図5−1 電場の負荷による結晶成長.Aは角 板,Bは針,Cは鞘状結晶.. (油川,2005)において,板状結晶と柱状結晶が 共に成長している例である。これらの図は,結晶. の成長領域に電場が負荷された人工雪の成長実験 から得られたものである。図5−1は,−15℃の 板状結晶が成長するとされている温度領域におい て,六角形状の板状結晶(図のA)や樹枝(図の B)の近傍にサヤ(図のC)などの在状結晶がと もに成長していることが見られる。. また,図5−2は,同じ電場が付加された条件 下で,樹枝,角板,角在が一箇所から成長してい ることが見られる。つまり,このような電場の存. 在する条件下においては,結晶形態の温度に閲す. 0.1−【m. 図5−2 電場内での結晶成長.Aは樹枝,B は角板,Cは角柱状結晶.. 13.

(7) 油 川 英 明. られるので,このような柱状と板状の結晶の同時. S2)などである。そして,三つ目の分類は「他晶. 的な成長が起こるということは,余り困難なこと. 系型」で,これは,中谷(1949)が人工雪作製に. ではないように考えられる。. おいて見いだした「斜方晶系」結晶や「正方晶系」. 雪結晶の成長に関する温度の一義性は,先にも. 結晶などをまとめたものである(分類表のS3)。. 述べたように,「中谷ダイヤグラム」(Nakaya,. これらの中分類の下には,今後,観察が詳細に進. 1954)の基になるもで,今日においても雪結晶の. めば幾つかの小分類が設けられ得るものと考えら. 成長の基本と考えられている。しかし,天然にお. れる。. いて六角板と角在の結晶が混在している,いわゆ. 次に,従来「側面結晶」として分類されてきた. る「側面結晶」の存在や電場の付加された条件下. 多くの結晶は詳細に見ると,それは角柱,角板,. での雪結晶の成長実験などから,その一義性が成. 砲弾型結晶などが不規則に集合したものであるこ. り立たないような場合も考えられるわけである。. とから,孫野の分類の「CP 角柱・板状組合せ」. 「側面結晶」がこのような意味を持つ結晶である. の中分類の一つとして,「4.角柱,角板,砲弾. ことから,前述のように,中谷(1949)がこの雪. 等不規則組合せ」としてまとめた(分類表の. 結晶の分類に躊躇したことは相応の理由があった. CP4)。さらに,これも従来の「側面結晶」とし. ものと考えられる。. て一括されていて,小林(1980)により「交差角 板」と命名されていた結晶については,六角形状. 5.「側面結晶」の新たな分類の試み 雪結晶の成長形態が温度により一義的に決定さ. の板状結晶が主体であることから,「P 板状結 晶」のなかに中分類として「8.角板交差型」の 名称のものを設けた(分類表のP8)。これは,小. れ得ない場合もあることを前碇にすれば,これま. 林(1980)による「交差角板」という呼称が「放. での中谷,孫野の分類において「側面結晶」と分. 射角板」と混同されることを避けるため,そして,. 類されてきた結晶を再考する必要があると考えら. 「交差した角板」として「角板」そのものを表す. れる。中谷と孫野の分類に用いられている雪結晶. のではなく,複数の角板が交差した状態の複雑な. の写真や樋口(2007)及び著者が撮影した雪結晶. 形状の結晶ということを表現するためである。さ. について,孫野の分類表を基にして改めて分類を. らに,この小分類として,枝が一本の形で角板が. 試みれば,図6に示したようになる。. 幾つも交差している「一枝型結晶」(分類表の. すなわち,これまで,中谷及び孫野の大分類で 「側面結晶」とされていた名称を「S.矩形状結. Pぬ),複数の枝がある角度で結合し,それぞれ の枝に角板が幾つも交差している「複数枝型結晶」. 晶」としたことである。この分類は,雪結晶に見. (分類表のP8b),カモメの羽のように湾曲した. られる四角形状の結晶を一つの大分類にまとめた. 枝に多くの小角板が交差・付着している「湾曲枝. ものである。そして,その下に三つの中分類とし. 型結晶」(分類表のP8c)とした。. て,ひとつは,六方晶系の柱状結晶の柱面が成長. したもので,中谷(1949)の命名によるいわゆる 「側面型」(結晶)を設けた。これには,霜の成. 中谷が「側面結晶」の芯と見なした穂先状の結 晶は,先にも述べたように,在状結晶というより. も板状結晶の枝の一部と見なされることから,こ. 長実験により得られたもの(中谷,1949)と同じ. れらは,孫野の分類の「Ⅰ不定形−3.結晶破片. 形状の結晶や,極地での観察によるもの(樋口,. −a.枝破片」に分類されるべきではないかと考. 2007)が含まれる(分類表のSl)。さらに,二つ. えられる。これらの例を,中谷(1949),Mago−. 目の中分類としては「多結晶型」として,これは. noandLee(1966),小林(1975),樋口(1968,2007). 小林(1980)により「双晶」として解析された「ご. 他の結晶写真から再分類し,図7の1∼8にまと. へい型結晶」(菊地,1974)などの結晶(分類表の. めて示す。. 14.

(8) 中谷の雪結晶分類における「側面結晶」について t精■の一触分ヰ. 1.単なる針 N針状I舌. さ.■針 b.東状l十 ¢.単鞘 d.束状精 ●.蓼十伏角種 ■.i十組合せ b.精粗合せ. 1. 細状鮎舶{. 1.単な愚角. ¢角柱欄鰯. c.針状角柱組合せ. 柱 丁. ■.ピラミッド b.盃 ¢.無垢砲弾 d.中空砲弾 0.無垢角柱 f.中空角柱. &ホ垢厚積. ■.壬粒付I十状結晶. h.骸晶 i.渦巻. b.雲拙付角柱状編欄. 貞1. 2・角柱紹点せ−」=こ驚雷雲喜. 1.正規. 六 」 2.ま靂六. 花 1. 2.濃密書粒付結. ■,角栃 b.市形 ¢.広巾六花 d,星状六花 ●.書遺構技. R壬粒付結晶. 沌状雪−−[. 3.不規則六. 花 罰. b.濃密雲簡付六花 ¢.雲粒付立体六花 ■.六花霞状雪 b.塊状霧状モ ¢.枝付霞状雪. t羊歯状六花. 六花霞 塊状霞 紡錘状震. 8.角振付六花 b.扇形付六花 ¢.角振付樹枝 d.扇形付樹枝 0.横付角板. l不定形. t扇形付角板 &樹枝付角板 P板状轄島. 晶. c.壬‡立付角板 d.雲粒付六花 ■.濃密書粒付角板. t叢十−−−−−1…‡ 1.米粒 2.妻粒付舌粒 王讐君新一−{;:望悪芳郎 1.小角柱. 8.二花 b.三花 ¢.四花. G初期結. 2.初期職員 1小角板 4.ノ小六花. 5.小角板集合. 4・忙花−⊂己二盃完‡圭莞. &小不規則椿島. 5.疇 型 8.立体型. −−1. 8,立体椚形付角板 b.立体樹枝付角板 e.立体扇形付樹枝 d.立体樹枝付樹枝. 丁・放射型−一十=こ二諾孟琵 8・角板文集登−[. b.複数枝型結晶 ¢.湾曲横型結晶. 図6 Magono and Lee(1966)の分類(図1−2)を基にした新たな分類の試み.四角形で囲まれた部 分が今回新たな試みとして加えられた分類.. ■■ ヽ′. \♂. ●ご■■. ●. 、b \ ql. pよ元 ′ ■“. 図7−1 矩形状結晶一側面結晶(図6の分類表Sl);上. ノ ̄\/メ. 甲. ノ. 図7−2 質巨形状結晶一多結晶型(S2);右. 15.

(9) 油 川 英 明. ・−−・■一一・. l. 81i / /. ′/. 図7−3 矩形状結晶一他晶系型(S3). ‖士 r−J. .′ ト ⊥ソ去十i. −. 鱒彗率 ’、. \. †島由輝・=. 図7−5 板状結晶一角板交差型一複数校型(P8b). 七趣. 図7−6 板状結晶一角板交差型一湾曲枝型(P8c) 図7−4 板状結晶一角板交差型一一枝型(P8a). 16.

(10) 中谷の雪結晶分類における「側面結晶」について. 芯(柱状結晶)としてきた結晶は,過冷却微水滴 の∼東結実験の結果から板状結晶の枝の一部と見な. されるので,孫野の分類の「不定形」の小分類で ある「枝破片」に組み入れることにした。. 車. ⇒ト. 参考文献. ′. 油川英明・安武 学,1996:雪結晶のフラクタル次元に. 鳩. ⊥1端. 椴. ついて,北海道教育大学紀要(第2部A),第47巻,. 第1号,7−15. 『勘. 油川英明・島村 誠・尾関俊浩,2003:低温室における 降雪実験(1),北海道教育大学紀要(自然科学編),第54. 1. 巻,第1号,13−22.. 麗・. 了こ、 l J. l.♯. 油川英明,2005:過冷却微水滴の結晶化による雪結晶の 生成,北海道教育大学紀要(自然科学編),55,1−12.. Bentley,W.A.andHumphreys,W.J.,1931:SnowCrys− tals.McGrawHillBookCo.,NewYork,226pp.. 図7−7 角柱板状組合せ一角柱・角板・砲弾. Furukawa,T.andT.Kobayashi,1978:Onthegrowth. mechanismofpolycrystallinesnowcrystalswithspe−. 等不規則組合せ(CP4). Cificgrain.J.CrystalGrowth,45,57−65. Hallett,J.andMasonB.J.,1958:Theinfluenceoftemper−. ■這離腰苗. atureandsuper−Saturaiononthehabitoficecrystals grownfromthevapour.Proc.Rqy.Soc.,247,440−453. 樋口敬二,2007:「側面結晶」と「交差角叔」一雪の結 晶の分類表が二種類ある不思議−,雪氷,69,398−402. 菊地勝弘,1974:天然雪一時異な雪,多結晶雪を中心と. して,気象研究ノート,No.123,767−811. Kobayashi,T.,1961:TheGrowthofSnowCrystalsat 図7−8 不定形一結晶破片一枝破片(Ⅰ3a). LowSupersaturation.Phil.Mag.,6,1363−1370. 小林禎作,1975:冬のエフェメラル,北海道大学図書刊 行会,39pp.. 6.おわりに. 小林禎作,1980:人花の芙,サイエンス社,東京.249pp. 黒岩大助,1972:雪の科学,共立出版,174pp.. 雪結晶のなかで,従来「側面結晶」と分類され てきたものの形態を再考し,また,雪結晶成長の. 温度に関する一義性を見直すことにより,新たな 分類を試みた。その結果,「側面結晶」と呼ばれ. てきたものは三種に再配分,分類することができ た。すなわち,孫野の分類を基に,第一は大分類. の「矩形型結晶」,第二は「板状結晶」の中分類. Magono,C.andW.,Lee1966:MeteorologicalClassifica− tionofNaturalSnowCrystals.J.Fac.Sci.,Hokkaido Univ.,Ser.Ⅶ(Geophysics),Vol.2,No.4,321−335. 中谷宇吉郎,1949:雪の研究一結晶の形態とその生成−, 岩波書店,161pp.. NakayaU.,1954:SnowCrystals−NaturalandArtificial−. HarvardUniversityPress,Cambgidge.510pp. 日本雪氷学会,1990:雪氷辞典,古今書院,196pp. 日本雪氷学会,2005:雪と氷の事典,朝倉書店,760pp.. としての「角板交差型」,そして第三には「角柱・ 板状組合せ」の中分類としての「角在,角板,砲. (岩見沢校教授). 弾等不規則組合せ」である。これらはさらに7つ の形に細分された。また,中谷が「側面結晶」の. 17.

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参照

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