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未来は目指すものであり創るもの

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Academic year: 2021

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(1)IPSJ Magazine. [巻頭コラム] 未来は目指すものであり創るもの ▪安宅 和人  3 年前は講演で呼ばれるとビッグデータばかりだった.いまは AI(人工知能)とシゴトの 未来,そして世の中の未来一色だ.国の審議会,委員会でも,未来についてばかり議論して いる.シゴトの未来,産業の未来,必要になるスキルの未来,AI の未来,などなどだ.  しかし僕らの多くは知っている.数秒後とかならともかく,未来の本当の姿など誰も予測 できないということを.人工知能となんだか似た響きだけれども,ちょっと違う隣の分野に 人工生命の領域がある.コンピュータ上でモデル化された生命がいて,これらが生き延びて いく.突然変異も仕込めるし,捕食関係も仕込める.膨大な世代を繰り返し,進化する姿も 見ることができる.とても興味深い領域の一つだ.  以前,ある教育系テレビ番組で流れていたが,そこでコンピュータ上の生命を何種類かお いて,それらがどのように進化していくかを見ていくと,初期値やモデルが同じでも毎回違 う結果になる.まったく同じ結果は二度と起きない.多くの人にとって,これはちょっとし た驚きだ.未来は予測できないということだからだ.シンプルにモデル化された世界でもそ うであるということは,我々の生きているような遥かに要素が多く,入り組んだ世界であれ ばもっとそうだということは自明だ.そもそも我々の生きているこの系(地球の表面)は必 ずしもクローズなシステムですらない.太陽のフレアや地質変動などの外部影響を常時受け ているからだ.  その番組に出ていた人の一人は「これって地球の歴史が繰り返されたとしても,二度と同. 464. 情報処理 Vol.58 No.6 June 2017.

(2) ■ 安宅 和人 ヤフー チーフストラテジーオフィサ ー(CSO) /慶應義塾大学 SFC 特 任教授/データサイエンティスト協会 理事・スキル委員長/応用統計学会 理事 イェール大学にて Ph.D.(脳神経科 学),マッキンゼーを経て現職.国 関連では人工知能技術戦略会議 産 業化ロードマップ TF 副主査,経済 産業省 産業構造審議会 新産業構造 部会 委員ほか.著書に『イシュー からはじめよ』(英治出版 , 2010) がある.. じ人類は生み出されないということですよね?」と実にもっともな反応をされていたが,こ れは僕らの未来についても当てはまる.  もちろん,技術の進展の太筋の方向性は見える.たとえば,僕が今,産業化ロードマップ づくりでかかわっている人工知能分野関連であれば,識別・予測から実行(作業)における 暗黙知の取り込み,そしてイミ理解/意志 like な世界への展開などだ.ただ,これが生み出 す未来は予測できない.  産業はそこにある課題とその課題を解決する技術,方法の掛け算で生まれる.課題がどう なるかが変わると当然のように中身は変わる.また実現するアプローチがちょっと変わる とまたまったく違う世界がやってくる.よく考えてみると,そんなことは iPod が生まれた. 2001 年から僕らは知っている.ワクワクをカタチにする方法なんていくらでもある.でも どれが当たるかなんか誰もわからないだけだ.  でも未来は目指すことも創ることもできる.課題がある,技術がある.その組み合わせ方 も,問題の解き方も自由だ.ダーウィンが言ったように,生き残るのは最も強い種ではなく, 最も変化に対応できる種だ.そして一番いいのは,未来を自ら生み出すことだ.振り回され るぐらいなら振り回した方が楽しいに決まっている.  未来は目指すものであり,創るものだ.. 情報処理 Vol.58 No.6 June 2017. 465.

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