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高齢者の交通事故傷害予測モデル開発と歩行中および自転車乗車中の傷害予測 平成29年度(本報告)タカタ財団助成研究論文 ISSN 2185

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高齢者の交通事故傷害予測モデル開発と

歩行中および自転車乗車中の傷害予測

― 平成 29 年度(本報告) タカタ財団助成研究論文 ―

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研究実施メンバー

研究代表者

芝浦工業大学

工学部 教授

山本

創太

研究協力者

独立行政法人交通安全環境研究所

研究員

及川

昌子

研究協力者

独立行政法人交通安全環境研究所

主席研究員

松井

靖浩

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報告書概要

本プロジェクトは,高齢者の交通事故傷害予測シミュレーションモデルを確立し,高齢歩 行者,高齢自転車乗員の傷害予測とメカニズム解明することにより,高齢者のための交通安 全対策の実現を目指すものである.平成 28 年度までに開発してきた高齢歩行者及び高齢自転 車−自動車衝突シミュレーションおよびアスファルト路面モデルの開発成果を受け,平成 29 年度においては高齢歩行者および高齢自転車乗員の事故における路面 2 次衝突時の頭部傷害 評価を行った. その結果,高齢歩行者の場合,車両衝突条件そのものよりむしろ車両衝突後 の人体挙動が路面 2 次衝突時の傷害程度と相関することがわかった.一方,自転車乗員の場 合には,単純に車両衝突速度に相関して路面 2 次衝突時の頭部傷害値が増大した.自転車乗 員では車両衝突後の人体挙動に対して自転車車体が外乱として強く影響した. 路面2次衝突 による頭部傷害予測の結果は,多くの条件において車両との 1 次衝突による傷害値を大きく 上回っており,交通弱者保護において路面 2 次衝突対策が重要であることが示唆された. 次に, 高齢自転車乗員の腕部筋緊張を考慮する方法を検討するため,逆動力学シミュレー ションモデルの肘関節および肩関節に受動的関節剛性を導入し,マルチボディシミュレーシ ョンとの比較によりマクロな関節剛性から発揮筋力を予測する基礎技術が確立できた.さら に脊柱有限要素モデルを構築し,マルチボディ傷害解析モデルへの組み込み手法を検討した.

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目 次

高齢者の交通事故傷害予測モデル開発と歩行中および自転車乗車中の傷害予測 第 1 章 はじめに ··· 4 1.1 研究背景 ··· 4 1.2 研究目的 ··· 5 第 2 章 研究手法 ··· 6 2.1 使用モデル ··· 6 2.2 頭部傷害評価手法 ··· 8 第 3 章 高齢歩行者傷害解析 ··· 9 3.1 高齢歩行者の路面 2 次衝突による傷害予測 ··· 9 3.2 衝突条件が路面 HIC に及ぼす影響 ··· 9 3.3 2 次衝突における歩行者頭部の当たり方 ··· 13 3.4 2 次衝突による自動車衝突後の歩行者挙動 ··· 16 3.5 まとめ ··· 21 第 4 章 高齢自転車乗員傷害解析 ··· 22 4.1 セダン,SUV モデルとの衝突解析条件 ··· 22 4.2 高齢自転車乗員の路面 HIC 解析結果 ··· 23 第 5 章 高齢者傷害解析モデルの拡張 ··· 25 5

.

1 逆動力学解析モデルにおける 受動的関節剛性の考慮 ··· 25 5.2 脊柱モデルのマルチボディモデルへの組み込み · 30 第 6 章 まとめと今後の課題 ··· 33 6

.

1 今年度の成果のまとめ ··· 33 6.2 今後の課題 ··· 33 参考文献 ··· 34

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第 1 章

はじめに

1.1 研究背景 現在の国内交通事故死者においては,図 1.1 に示すように交通弱者(歩行中,自転乗車中) が約半数を占めており,交通弱者への対策が急務である. また図 1.2 に示すように,警視庁 交通局資料によると歩行中の年齢層別死者数及び負傷者数で高齢者が共に最も多くなってい る.高齢歩行者・自転車乗員の傷害予測と保護対策の検討は,交通事故死者数,傷害者数の 低減には不可欠である.このような状況に対し,自動車の安全対策として歩行者保護要件が 取り入れられている.しかし,この要件は高齢者を対象として規定されたものではなく,高 齢歩行者および自転車乗員に関しての有効性は確かめられていない. 図 1.1 国内交通事故における状態別死者数の割合(2016)(1) (a)歩行者 (b)自転車 図 1.2 国内交通事故における年齢層別死者数の割合(2014)(2)

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5/34 1.2 研究目的 本研究では上記の背景を踏まえ,AM50 の歩行者が保護対象とされている自動車の保安基準の,高 齢歩行者・自転車乗員に対する有効性を検討するため,高齢歩行者および自転車乗員傷害シミュレ ーションモデルを構築することが目的である.そのために高齢歩行者および自転車乗員を模擬した シミュレーションモデルを構築した.さらに交通弱者の傷害評価において十分な検討がなされてい ない路面 2 次衝突シミュレーションモデルを構築し,高齢交通弱者の傷害予測とメカニズムを検討 した.同時に,筋緊張の影響を傷害シミュレーションモデルに導入するための基礎技術と,典型的 な高齢者骨折の一つである脊椎圧迫骨折のリスク検討のためのシミュレーションモデルの開発を行 った.

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第 2 章

研究手法

2.1 使用モデル 本研究ではシミュレーションにおける挙動解析を行うため,自動車の衝突安全の分野で用 いられている解析ソフトの MADYMO(TNO Automotive)を使用した. 人体モデルは,高齢男性モデルでは身長,体重を 156.3cm,54.5kg の体格を用いた.また 高齢女性モデルでは,身長,体重を 149cm,51kg を用いた. (a) 高齢女性モデル (b) 高齢男性モデル 図 2.1 日本人高齢者モデル(3) 自転車のモデルは一般的に使われているシティタイプで,タイヤのサイズは高齢者に合わ せ 24 インチを用いた.各高齢自転車乗員モデルを図 2.2 に示す. (a) 高齢女性モデル (b) 高齢男性モデル 図 2.2 日本人高齢者自転車搭乗モデル(4)

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7/34 (a) セダンモデル (b) SUV モデル 図 2.3 自動車モデル(3) 本研究の解析で使用する自動車のモデルは,市販車の実測に基づきセダンタイプ,SUV タ イプの前部構造を再現したものを用いた.構築した自動車モデルのフード,フードエッジ, バンパーは,図 2.1 のような各種インパクタ(頭部,脚部,大腿部)を用いた実車のインパク タ試験結果との比較により,検証されている.各自動車モデルを図 2.3 に示す. 歩行者は,自動車との衝突後,もしくは直接に路面に衝突することが予想される.そのた め,路面衝突時の傷害特性を評価する必要がある. そこで,路面モデルにアスファルトの力学的特性を採用し,路面モデルに力学特性の再現 を目指した.過去に独立行政法人交通安全環境研究所で行われたインパクタ試験を参考に路 面モデルを構築し,頭部インパクタを衝突させた時の加速度波形を実験データと比較するこ とによってモデルの妥当性を検証した(図 2.4).シミュレーション結果の加速度時刻歴と実 験結果の比較を図 2.5 に示す. 図 2.4 頭部インパクタによる路面モデル検証シミュレーション

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8/34 図 2.5 頭部インパクタ落下シミュレーションにおける加速度波形と実験結果 2.2 頭部傷害評価手法 本研究では頭部インパクタの衝突解析やその後のパラメータスタディで頭部の傷害を評価す るための頭部傷害値指標として独立行政法人自動車事故対策機構の歩行者保護性能評価試験 にも用いられている HIC(Head Injury Criterion)を採用した.なお,HIC は式(1),(2)より 求められる. HIC15= 𝑀𝑀𝑀𝑀𝑥𝑥 �(𝑡𝑡2− 𝑡𝑡1) � 1 𝑡𝑡2− 𝑡𝑡1� 𝛼𝛼𝑅𝑅 9.8 𝑡𝑡2 𝑡𝑡1 𝑑𝑑𝑡𝑡� 2.5 � (2 − 1) 𝛼𝛼𝑅𝑅= �𝛼𝛼𝑥𝑥2+ 𝛼𝛼𝑦𝑦2+𝛼𝛼𝑧𝑧2 (2 − 2) ここで,𝛼𝛼𝑅𝑅は頭部の合成加速度,t1,t2は衝突中に HIC が最大値をとる時間ウィンドウの範 囲である.また,本研究では|𝑡𝑡2− 𝑡𝑡1| ≤ 15[𝑚𝑚𝑚𝑚𝑒𝑒𝑐𝑐]とし,HIC15を採用した.

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第 3 章

高齢歩行者傷害解析

3.1 高齢歩行者の路面 2 次衝突による傷害予測 自動車の衝突速度の影響を比較するために 10,20,30,40km/h の 4 パターンと,歩行者姿勢 の影響を観察するために右側,左側衝突の 2 パターンと,車種による影響を観察するために セダンタイプ,SUV タイプの 2 タイプ,さらに性別による影響を観察するために男性,女性 の 2 パターン,また,より実際の事故を想定したモデルを作成するため,上記のシミュレー ションの自動車モデルにブレーキを組み込んだモデルを作成し,計 64 パターンのシミュレー ションを行った. 表 3.1 高齢歩行者衝突解析の条件 Condition Content

Collision direction Side

Car velocity 10, 20, 30, 40 km/h

Car model Sedan, SUV type

Braking With / Without

Pedestrian gender Male, Female

Pedestrian attitude Right or Left-Leg Front

3.2 衝突条件が路面 HIC に及ぼす影響 解析条件で与えたパラメータ(衝突速度,車種,ブレーキ,歩行者性別,歩行者姿勢)に よる一元配置の分散分析をそれぞれ行った. 衝突速度と路面 HIC の関係について一元配置の分散分析を行った結果を図 3.1 に示す.路 面 HIC は衝突速度に対し有意な差は見られなかった(P=0.19<0.05).図 3.1 より衝突速度が増 加したとき,路面 HIC に影響がないことが考えられる.また速度 20km/h のとき,比較的路面 HIC が高い傾向があった.

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10/34 図 3.1 高齢歩行者の路面 HIC に及ぼす車両衝突速度の影響 次に車種と路面 HIC の関係について一元配置の分散分析を行った.この結果を図 3.2 に示 す.路面 HIC は車種による有意な差は見られず (P=0.16<0.05),車種は路面 HIC に影響しな いことが考えられる. 図 3.2 高齢歩行者の路面 HIC に及ぼす車両タイプの影響 ブレーキと路面 HIC の関係について一元配置の分散分析を行った結果を図 3.3 に示す.路 面 HIC はブレーキの有無による有意な差はなかった(P=0.068<0.05).

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11/34 図 3.3 高齢歩行者の路面 HIC に及ぼすブレーキの影響 歩行者の性別と HIC の関係について一元配置の分散分析を行った結果を図 3.4 に示す.路 面 HIC は歩行者の性別により有意な差を生じなかった(P=0.44<0.05). 図 3.4 高齢歩行者の路面 HIC に及ぼすブレーキの影響 歩行者の姿勢と HIC の関係について一元配置の分散分析を行った結果を図 3.5 に示す.路 面 HIC は歩行者の姿勢に有意な影響を受けなかった(P=0.55<0.05).

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12/34 図 3.5 高齢歩行者の路面 HIC に及ぼす姿勢の影響 以上のとおり,解析条件で与えたパラメータ(衝突速度,車種,ブレーキ,歩行者性別, 歩行者姿勢)による一元配置の分散分析をそれぞれ行った結果,全パラメータで HIC に有意 な差は得られなかった. さらに解析条件で与えたパラメータ(衝突速度,車種,ブレーキ,歩行者性別,歩行者姿 勢)による二元配置の分散分析をそれぞれ行った.衝突速度とブレーキによる HIC の関係に ついて二元配置の分散分析を行った.このブレーキが HIC に及ぼす影響を衝突速度別に整理 した結果を図 3.6 に示す.HIC は衝突速度とブレーキに対し交互作用に有意な差が見られた. (P=0.033>0.05).これはブレーキ有の場合,衝突速度に依存しているが,ブレーキ無の場合, HIC は衝突速度に依存していないことが考えられる.このブレーキ無に関して,衝突の歩行 者挙動から見ると(図 3.7),自動車のバンパーと歩行者が衝突してから歩行者が路面衝突す るまで,自動車対歩行者の衝突が複数回発生していることが分かる.自動車対歩行者の衝突 が複数回起こることで自動車から得るエネルギ―が高くなっていることが考えられる.この ことよりブレーキ無のとき衝突速度に HIC が依存していないことが考えられる.

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13/34 図 3.6 高齢歩行者の路面 HIC に及ぼす車両衝突速度とブレーキの影響 図 3.7 歩行者挙動の例(セダンタイプ,ブレーキ無し) 与えたパラメータ(衝突速度,車種,ブレーキ,性別,姿勢)による,一元配置の分散分析 と二元配置の分散分析を行った結果,衝突速度とブレーキによる HIC に関して二元配置の分 散分析において有意な差を得られた.またブレーキ無のとき,路面衝突までに自動車対歩行 者の衝突が複数回起こることによって衝突速度に HIC は依存しないこと,フルブレーキのと き衝突速度に HIC が依存していることが分かった.しかし,HIC の予測及びメカニズムは解 明できていない.そのため,二次衝突のときの頭部の当たり方に着目した. 3.3 二次衝突における歩行者頭部の当たり方 頭部が路面衝突するとき,頭部が直接衝突したり,上半身や下半身の衝突後に頭部が衝突 する場合があり,頭部が路面と衝突する際の当たり方によって HIC が影響を受けることが考 えられた.そこで,二次衝突による歩行者頭部の当たり方について 5 つの Type に分類した. TypeA は路面に歩行者の頭部が直接衝突する.TypeB は歩行者の上半身が路面に接触しその後 頭部が衝突する.TypeC は歩行者の下半身が路面に接触しその後頭部が衝突する.TypeD は歩 行者の下半身及び上半身が路面に接触しその後頭部が衝突する.TypeE は路面と歩行者頭部 が衝突しないものである.この二次衝突による頭部の当たり方について分類した衝突挙動に 関して図 3.8 に示す.

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14/34 (a) Type A (b) Type B (c) Type C (d) Type D (e) Type E 図 3.8 頭部の当たり方の分類 頭部の当たり方と HIC の関係について一元配置の分散分析を行った.この結果を図 3.9 に示

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す.HIC は頭部の当たり方に対し有意な差が見られた(P=0.19<0.05).また頭部の当たり方に ついて多重比較した結果,A と C,B と C,C と D,C と E について有意な差が得られた.図 3.9 より TypeC のとき,かなり HIC が高い結果となった.また TypeC のとき極端に HIC が高い結 果出た条件があった.これは路面衝突前に自動車のバンパーに複数回衝突していることが考 えられる.さらに頭部衝突の前に下半身が衝突することによって頭部の角加速度が高くなり HIC が極端に高く出たと考えられる. 図 3.9 頭部の当たり方と高齢歩行者路面 HIC との関係 また解析条件で与えた各パラメータ(衝突速度,車種,ブレーキ,歩行者性別,歩行者姿 勢)と二次衝突による頭部の当たり方による二元配置の分散分析をそれぞれ行った. そこで車種と二次衝突による頭部の当たり方における HIC の関係について二元配置の分散分 析を行った.この車種が HIC に及ぼす影響を二次衝突による頭部の当たり方別に整理した結 果を図 3.10 に示す.HIC は車種と二次衝突による頭部の当たり方に対し有意な交互作用が見 られた.(P=0.000<0.05). またブレーキと二次衝突による頭部の当たり方における HIC の関係について二元配置の分 散分析を行った.このブレーキが HIC に及ぼす影響を二次衝突による頭部の当たり方別に整 理した結果を図 3.11 に示す.HIC はブレーキと二次衝突による頭部の当たり方に対し有意な 交互作用が見られた(P=0.000<0.05).

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16/34 図 3.10 高齢歩行者路面 HIC に及ぼす車両タイプと頭部の当たり方の影響 図 3.11 高齢歩行者路面 HIC に及ぼすブレーキの有無と頭部の当たり方の影響 3.4 二次衝突による自動車衝突後の歩行者挙動 前節の結果から,下半身が路面と衝突した後に頭部が路面衝突するとき,路面 HIC が高い ことが分かった.さらに路面 HIC 発生メカニズムを検討するため,二次衝突前の自動車衝突 後による歩行者挙動の違いに着目した.そのため自動車衝突後の歩行者挙動を 4 つの Scenario に分類した.Scenario1 は歩行者の頭部が自動車に対し遠くで路面と衝突する挙動 である.Scenario2 は歩行者の頭部が自動車に対し近くで路面と衝突する挙動である. Scenario3 は歩行者が撥ね上がり路面と衝突する挙動である.Scenario4 は歩行者が自動車か ら路面に落ちない挙動である.この自動車衝突後の歩行者挙動について分類した Scenario 別 の挙動に関して図 3.12 に示す.

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17/34 (a) Scenario 1 (b) Scenario 2 (c) Scenario 3 (d) Scenario 4 図 3.12 車両衝突後の歩行者挙動の分類 自動車衝突後の歩行者挙動と HIC の関係について一元配置の分散分析を行った.この結果を

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18/34 図 3.13 に示す.HIC は自動車衝突後の歩行者挙動に対し有意な差が見られた(P=0.015<0.05). また自動車衝突後について多重比較した結果,Scenario1 と Scenario2 について有意な差が 得られた.図 3.13 より Scenario 1 のとき HIC が高くなった. Scenario 1 における歩行者頭部が路面衝突したときの頭部の角加速度と加速度の結果を確 認したところ,HIC と頭部の角加速度及び加速度にそれぞれ有意な相関が得られた.また角 加速度と加速度にも有意な正の相関があった.ここで HIC と角加速度による相関係数は 0.764 (p=0.00),HIC と加速度による相関係数は 0.882(p=0.00),角加速度と加速度による相関係 数は 0.538(p=0.07)であった.その HIC と角加速度と加速度の相関グラフをそれぞれ図 3.14,3.15,3.16 に示す.このことより,頭部は回転するような加速が発生し路面に衝突する ことで HIC が高くなることが考えられる.また,Scenario1 の挙動には二つ衝突挙動に分け られる.一つ目はバンパ歩行者の衝突後,フード対歩行者頭部の衝突が起こらない挙動であ り図 3.17 に示す.この挙動はバンパ対歩行者の衝突のときにもらった運動エネルギを直接路 面衝突に消費せず直接路面と衝突することで,HIC が高くなると考えられる.二つ目はブレ ーキしていない自動車の影響でフード対頭部の衝突後に自動車対歩行者の衝突が複数回起こ る挙動であり図 3.18 に示す.このことから自動車衝突時にもらう運動エネルギが高いことが 考えられ,自動車衝突のエネルギが大きいとき,HIC が高いことが分かる.また自動車のブ レーキを行い,かつ頭部対フードの接触を起こすことで HIC が低くなると考えられる. 図 3.13 高齢歩行者路面 HIC に及ぼす車両衝突後の人体挙動の影響

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図 3.14 高齢歩行者路面 HIC と路面衝突時角加速度の相関(Scenario 1)

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図 3.16 高齢歩行者路面衝突時の角加速度と加速度の相関(Scenario 1)

図 3.17 Scenario 1 の挙動の例(歩行者頭部が車両と衝突しない場合)

図 3.18 Scenario 1 の挙動の例(歩行者と車両が 2 回以上衝突する場合)

また図 3.13 より Scenario2 のとき HIC が低い値となった.Scenario 2 における,歩行者頭 部が路面衝突したときの頭部の角加速度と加速度の結果を確認したところ,HIC と頭部の加 速度には有意な相関が得られたが,角加速度と HIC には低い正の相関が得られた.ここで HIC と 角 加 速 度 に よ る 相 関 係 数 は 0.481(P=0.015<0.05) , HIC と 加 速 度 に よ る 相 関 係 数 は 0.702(P=0.00<0.05)であった.その HIC と角加速度と加速度の相関グラフをそれぞれ図 3.19 と 3.20 に示す.

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21/34 図 3.19 高齢歩行者路面 HIC と路面衝突時角加速度の相関(Scenario 2) Fig. 3.20 高齢歩行者路面衝突時の角加速度と加速度の相関(Scenario 2) 3.5 まとめ 車両対高齢歩行者の衝突事故における二次衝突による頭部傷害評価を行った.一要因の分散 分析の結果,衝突条件による有意な差は得られなかった.二要因の分散分析の結果,速度と ブレーキは路面 HIC に有意な交互作用を示した.また二次衝突時の頭部の当たり方により分 類した結果,頭部の当たり方が路面 HIC に有意に影響した.さらに自動車衝突後の歩行者挙 動が,路面 HIC に有意に影響することがわかった.

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第 4 章

高齢自転車乗員傷害解析

4.1 セダン,SUV モデルとの衝突解析条件 平成 27 年度には高齢自転車乗員とセダンモデルとの衝突解析を実施した.この結果を受け, 本年度は SUV タイプとの衝突解析を新たに実施した.これらの結果を総合し,統計解析によ り頭部傷害に対して有意な影響を及ぼす要因を検討した. 高齢者自転車搭乗モデルの衝突条件は,自動車との前突(図 4.1),後突(図 4.2),側突(図 4.3)とした.前突,後突の場合,自転車の走行速度は 0 とした.側突については自転車の走 行速度 10km/h の場合と,静止している場合についてそれぞれ評価した. 図 4.1 前突条件 図 4.2 後突条件

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23/34 図 4.3 側突条件 自動車の衝突速度は 10, 20, 30, 40, 50 km/h の 5 パターンとした.さらに自動車のブレ ーキの効果を評価するため,ブレーキを使用した場合と,ブレーキを使用しない場合を設定 した.ブレーキを使用した場合は,自動車モデルに減速度 8.5m/s2を与えた. 解析条件を表 4.1 にまとめる.これらの条件の組み合わせにより,計 160 通りのシミュレ ーションを行った. 表 4.1 高齢自転車乗員傷害解析の条件 要因 条件 衝突方向 前突,後突,側突 衝突速度 10, 20, 30, 40, 50 km/h 車両タイプ セダン,SUV ブレーキ with / without 自転車走行速度(側突時) 0 km/h, 10 km/h 性別 男性,女性 4.2 高齢自転車乗員の路面 HIC 解析結果 衝突速度と高齢自転車乗員の路面 HIC の関係を図 4.4 に示す.グラフは衝突速度ごとの平 均であり,エラーバーは標準偏差を示す.分散分析の結果,車両衝突速度は路面 HIC に有意 な影響を及ぼすことがわかった.さらに頭部傷害値と衝突速度の関係について多重比較を行 った結果,衝突速度 50km/h と各衝突速度において有意な差が得られた(p < 0.01).

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24/34 図 4.4 車両衝突速度が高齢自転車乗員路面 HIC に及ぼす影響 一方,高齢自転車乗員の路面と車種,ブレーキの有無,衝突方向,性別の間には,いずれ も有意な影響は見られなかった. 次に,二要因の分散分析により各衝突条件間の交互作用について検定したが,いずれの要 因の間にも有意な交互作用は見出せなかった. 4.3 まとめ 高齢自転車乗員の路面 2 次衝突における頭部傷害予測シミュレーションを実施した結果, 衝突速度が有意に影響し,特に車両衝突速度 50km/h において有意に高くなることがわかった. 自転車乗員の場合,車両との 1 次衝突後に自転車車体と人体が複雑に絡み合いながら運動す るため,人体挙動が非常に複雑であり,路面 HIC を決定づけるメカニズムの解明が容易では ない.しかし,車両衝突速度については影響が明確であり,自転車乗員対策としては確実な 対象検知と減速により有効な対策が可能と考えられる.

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第 5 章

高齢者傷害解析モデルの拡張

5.1 逆動力学解析モデルにおける受動的関節剛性の考慮 本研究で用いているマルチボディ解析においては,能動的筋緊張が考慮されていない.し かし,自転車乗員や歩行者は拘束装置等がないため,事故時の挙動には関節剛性の影響が強 いと考えられ,関節剛性を能動的に変化させる筋緊張の考慮は傷害予測や傷害メカニズムの 検討において重要な要素となる. そこで,これまで開発してきたマルチボディ人体モデルの関節剛性を変化させることで, 筋緊張状態での人体挙動を模擬する手法について検討した.マルチボディ解析で必要な関節 剛性は,関節周りに作用するトルクと関節曲げ角の関係により与える.この関係を適当に変 化させることで関節剛性を高めることができるが,どの程度の筋緊張により関節剛性がどの ように変化するか,または関節剛性にある変化を生じさせる筋緊張がどのようなものか,対 応づける必要がある.すなわち,ある外力が作用する環境で関節の運動が生じたときの筋緊 張が予測できる必要がある.本研究では逆動力学ソフト AnyBody(AnyBody Technology A/S) を用いて,ある関節剛性を与える筋緊張状態を同定する手法を検討した.平成 28 年度までの 検討により,AnyBody モデルでは受動的な関節剛性が再現されておらず,関節まわりに作用 するトルクを全て筋力発揮により支えるモデルとなっていることがわかった.そこで,傷害 解析に用いている MADYMO モデルの受動的関節剛性を AnyBody モデルで再現し,実質の発揮筋 力が同定できるモデル化手法を検討した. 図 5.1 AnyBody 逆動力学解析モデル そこで ANYBODY の持つ機能により非緊張状態に発揮されるトルク値を各関節に設定するこ とで,非緊張状態の関節剛性が筋力発揮に反映させることを試みた.

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26/34 そこで実際にこの機能を用いることで非緊張状態の関節剛性の表現ができるのかを確認す るため,. まずは一軸回転自由度のみを持つ蝶番関節モデルにより確認を行った.ANYBODY 簡易腕モデ ルを作成し,肘関節部に非緊張状態の関節剛性の表現するトルク値を実際に入力し,筋力発 揮値に反映されることを確かめた.なお,この ANYBODY 簡易腕モデルでは腕を上腕と前腕部 二つに分け,屈曲方向に作用する筋力推定を簡易的に行うため,筋群をまとめて二本,前腕 部と上腕部に作成した.さらに肘関節の挙動を安定させるために拮抗筋を考慮した.MADYMO モデル上にも同様に上腕,前腕のみを表現した簡易的な腕モデルを作成し,どちらのモデル も回転自由度は一方向のみとした. 図 5.1 簡易腕モデル(左:ANYBODY 右:MADYMO) シミュレーション手順は,まず MADYMO 簡易モデルの肘部に,図 5.2 に示す肘関節非緊張状 態関節剛性をトルク-関節角線図として入力した.MADYMO モデル先端に外力として質量のあ る球体を持たせ,自然と前腕が進展していく際の肘関節の角度変化を出力し,その角度履歴 を ANYBODY モデルの入力値として使用した.ANYBODY モデルにも同条件下で外力を与え, MADYMO 出力結果の肘関節角度履歴を用いて同じ挙動を再現し,筋力発揮状態を確認した. 図 5.2 肘関節非緊張状態の関節剛性

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27/34 解析結果を以下に示す.図 5.3 は肘角度を完全伸展位から 1.0rad 屈曲させた状態での静的 つり合い状態のモデルに,非緊張状態の関節剛性特性を与えた場合の簡易モデルにおける上 腕筋モデルの筋力発揮状態を出力した結果である.グラフからも分かるように,発揮筋力は 限りなく 0 に近い値を示していることから,非緊張状態の関節剛性を筋力値が補っておらず, ANYBODY モデルでも非緊張状態の関節剛性を表現することができたといえる.例に示した以 外の角度及び前腕部の筋,拮抗筋においても発揮筋力は限りなく 0 に近い値を示した.以上 より, ANYBODY モデルにおいて非緊張状態の関節剛性を再現できることが分かった. 図 5.3 ANYBODY 簡易腕モデル解析結果

次に ANYBODY フルモデルの肘関節部に同じく“Any Force” 機能で非緊張状態の関節剛性 特性を与え,静的つり合い状態での解析により発揮筋力状態を確認した.結果を図 5.4 に示 す.グラフは,解析をした際筋力が最も活発に発揮されていた上腕二頭筋長頭の筋力発揮状 態(%)を示したものである.結果から上腕二頭筋は約 46%の筋力を発揮しており,簡易モ デルのように 0%に近い出力結果とはならなかった. この結果から,非緊張状態の関節剛性が表現されているのにもかかわらずなぜ筋力値が 0 とならないのかについて考察をする. 前述したように静的つり合い状態でのみ MADYMO モデルと ANYBODY モデルのつり合いが取れ ることを例にとる.挙動を再現しようとする際,体の部位やそのほか外力条件などに大きく 慣性力がかかり,その力を補うために筋力が発揮されるため,大幅に筋力値が大きく出力さ れることがわかる. そして今回のように静的つり合い状態で解析を行ったにもかかわらず筋力が発揮されてし まった原因は,姿勢を維持するために働き作用する筋力が存在するということを示している と考えられる.つまり,筋力により体のある運動を再現する際,筋力が働き補う作用が以下 に示す 2 つに分けることができると考えられる. 一つ目は姿勢を維持するために働き作用する筋力(静的つり合い) 二つ目は. 挙動を再現するために働き作用する筋力(慣性力を補う)

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28/34 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 0 2 4 6 A ccti vi ty (% ) time(s) 図 5.4 ANYBODY モデル解析結果(上腕二頭筋長頭) である.簡易モデルでは腕以外の部位および筋肉を簡略化してしまっていることから,姿勢 維持のための発揮筋そのものが存在しないため,発揮筋力は限りなく 0%に近くなったと考 えられる.それに対し人体モデルでの解析結果で筋発揮の活発化が確認されたが,上腕二頭 筋は肘の屈曲の作用のほかに,二関節筋としての機能も持っており,この発揮筋力は肩関節 の姿勢維持(外転作用)のために発揮された筋力であるといえる.以上のことからも,筋の 作用には慣性力を補う作用と静的つり合い力を補う作用二つに分けることができるといえる. さらに今回の結果から,MADYMO モデルでは表現することができていなかった姿勢維持に必要 な筋力の存在を確認することができた 以下に,肘関節を同じ屈曲角度で固定させた際,前腕を回内,回外させ,上腕二頭筋の発 揮筋力の大きさに差が生じるのかを確認した結果を示す. 表 5.1 回内外角度と上腕二頭筋の発揮筋力 この結果からも,姿勢維持,特に回内や回外,伸展と屈曲,外転など同じ肘の角度におい てもそのほかの姿勢条件により,主要な発揮筋の発揮状態は大きく異なることが確認できる. さらに,三自由度の肩関節の簡易モデルを作成し,非緊張状態の関節剛性特性を ANYBODY 回外、内(°) -90 -60 -30 0 30 60 90 上腕二頭筋長頭(N) 30 48 50 51 52 51 33

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29/34 人体モデルに入力し,その再現性を確認した.図 5.5 に MADYMO 簡易上肢モデルを示す. 図 5.5 MADYMO 簡易上肢モデル 肘簡易モデルと同様に,MADYMO 簡易モデルの解析結果より得た挙動情報を ANYBODY 人体 モデルの姿勢入力情報として用い,さらに非緊張状態の関節剛性地の特性を肩関節に入力し ておくことで,ANYBODY モデルの発揮筋力へ反映されていることを確認する.解析結果の一 例(肩関節 0.78rad 伸展位)を以下に示す. 図 5.6 ANYBODY 肩関節解析結果(肩関節 0.78rad 伸展)

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30/34 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 発揮筋力( N )

time(s)

図 5.7 肩関節周りの筋力(三角筋発揮筋力) 肩関節の筋発揮状態を確認したところ,主要な筋は上記出力結果に示したように三角筋で あった.この三本の筋はどれも同じくやく 35N 前後の出力が得られた.肩の三角筋の主な作 用は伸展,屈曲以外にも外転作用も担っている.肩関節同様,非緊張状態の関節剛性が表現 されていることを考慮すると,この結果から姿勢維持のために発揮された筋力を出力できた ことがわかる.特に今回の場合,外転方向の姿勢維持のためにこれだけの発揮筋力結果が得 られたと考えられる. 5.2 脊柱モデルのマルチボディモデルへの組み込み 高齢者の傷害においては,致命的となる頭部傷害のみならず,寝たきりの原因となる大腿 骨頸部骨折や脊柱圧迫骨折も予後に重大な影響を与える.このような状況は交通事故統計に は現れにくいが,高齢者医療の観点から重要な傷害の評価にはマルチボディ解析では不十分 である. 申請者らはこれまでに全身マルチボディモデルと股関節-大腿部有限要素モデルを組み合 わせたマルチボディ-有限要素複合モデルを構築し,大腿骨頸部骨折リスク評価に適用して きた.本研究においてもこのモデルを利用し大腿骨頸部骨折評価を行っていくが,これに加 えて脊柱圧迫骨折リスク評価のために脊柱有限要素モデルを組み込んだ新たなマルチボディ -有限要素複合モデル開発を目指した. 新たに作成した第 11 胸椎,第 12 胸椎,第 1 腰椎,第 2 腰椎,第 3 腰椎とその間にある椎 間板の有限要素モデルをマルチボディに組み込んだ.椎骨と椎間板の材料特性を表 5.2 に示 す. 各骨と骨は棘上靭帯と棘間靱帯を簡易的に作成し,骨と骨をつなげた.また,椎間板と骨 は接している面のノードを複数点選びつなげた。また,圧力を伝えるために接触面にはコン タクト条件を設定した.これらによって作成しモデルを図 5.8 に示す.

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表 5.2 脊柱モデルの材料特性

Cancellous bone Cortical bone Annulus fibrosis Young’s modulus[MPa] 236.65 120000 10 Poisson’s ratio[-] 0.4 0.4 0.4 Yield stress[MPa] 7.81 107.01 図 5.8 脊柱有限要素モデル 構築した脊柱有限要素モデルはマルチボディモデル内において胴部関節挙動を再現できる ように接続した.第 11 胸椎を胸のマルチボディに第 3 腰椎を腰のマルチボディに固定し,マ ルチボディが動いたときにそれと同様な動きをするようにした.また,この第 11 胸椎と第 3 腰椎はすべての要素を皮質骨と同じ材料特性とした.図 5.9 に骨とマルチボディの接続位置 を示す.

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32/34 図 5.9 脊柱有限要素モデルとマルチボディモデルとの接続

脊柱圧迫骨折の危険性が考える転倒シミュレーションへの適用を試みたが,軟組織

と硬組織の境界に不自然に大きな変形が発生し,実用上に向けての課題がまだある.

今後,脊柱モデルの精度を高め,実際の事故を模擬した境界条件での解析に適用す

るべく,改良を進める.

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第 6 章

まとめと今後の課題

6.1 今年度の成果のまとめ 本年度の研究成果は以下のようにまとめられる. まず,申請者がこれまでに開発してきた高齢歩行者及び高齢自転車−自動車衝突シミュレー ションモデルにより,路面 2 次衝突時の頭部傷害予測とメカニズムの検討を行った.高齢歩 行者の場合,車両衝突条件そのものよりむしろ車両衝突後の人体挙動が路面 2 次衝突時の傷 害程度と相関することがわかった.一方,自転車乗員の場合には,単純に車両衝突速度に相 関して路面 2 次衝突時の頭部傷害値が増大した.自転車乗員では車両衝突後の人体挙動に対 して自転車車体が外乱として強く影響した. 次に, 高齢自転車乗員の腕部筋緊張を考慮する方法を検討するため,逆動力学シミュレー ションモデルの肘関節および肩関節に受動的関節剛性を導入し,マルチボディシミュレーシ ョンとの比較によりマクロな関節剛性から発揮筋力を予測する基礎技術が確立できた.さら に脊柱有限要素モデルを構築し,マルチボディ傷害解析モデルへの組み込み手法を検討した. 6.2 今後の課題 路面2次衝突による頭部傷害予測の結果は,多くの条件において車両との 1 次衝突による 傷害値を大きく上回っており,交通弱者保護において路面 2 次衝突対策が重要であることが 指摘された.今後,高齢者対策,歩行者対策として衝突後の人体挙動をコントロールするよ うな車両前部構造やデバイスの検討が必要である.本研究で開発したシミュレーションモデ ルはこのような新しい交通弱者対策の評価ツールとしても有効であり,今後さらに具体的な 路面 2 次衝突対策に取り組む.脊柱モデル,筋緊張モデルについては導入に向けての基礎技 術ができて来ており,傷害評価シミュレーションに導入し,交通傷害予測シミュレーション のさらなる高精度化を目指す.

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参考文献

(1) 警察庁交通局,平成28年における交通死亡事故について (2017) (2) 警察庁交通局,平成26年中の交通事故の発生状況 (2015) (3) 山本創太,鯉淵朗宏,及川昌子,松井 靖浩,マルチボディ解析による車-自転車衝 突事故における自転車乗員の挙動および傷害評価,自動車技術会 2015 年春季大会学 術講演会講演予稿集(2015),S377 (4) Henrique Toso, 山本創太,松井靖浩,及川昌子,車両対自転車事故における高齢自 転車乗員の頭部傷害,日本機械学会第 28 回バイオエンジニアリング講演会講演論文 集(2016),2C34

図 3.14 高齢歩行者路面 HIC と路面衝突時角加速度の相関(Scenario 1)
図 3.16 高齢歩行者路面衝突時の角加速度と加速度の相関(Scenario 1)
表 5.2 脊柱モデルの材料特性

参照

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