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ラット上喉頭神経電気刺激中における嚥下頻度の変化

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Academic year: 2021

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学 位 研 究 紹 介

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【目   的】

 上喉頭神経(SLN)は迷走神経の側枝であり,下咽頭 および喉頭粘膜を神経支配している。SLN への連続電 気刺激は容易に嚥下反射を誘発することから,これまで 動物を用いた研究において広く用いられてきた。しかし, SLN 連続電気刺激が嚥下反射誘発やその神経機構にも たらす影響については明らかになっていない。そこで本 研究では,SLN 連続刺激中に生じる嚥下反射誘発の減 少に着目し,麻酔動物を用いて嚥下反射の順応に関わる 神経メカニズムについて明らかにすることを目的とし た。

【方   法】

 実験にはウレタン麻酔下の Sprague Dawley 系雄性 ラット 44 匹を使用した。嚥下の同定のために,左側の 顎舌骨筋および甲状舌骨筋より筋活動電位を導出した。 SLN,反回神経,大脳皮質嚥下領域いずれかへの連続電 気刺激により嚥下運動を誘発した。刺激強度は,刺激頻 度 30 Hz にて 10 秒間で1回の嚥下が誘発される強度を 刺激閾値(1T)とし,SLN および反回神経刺激時には 1.1T,大脳皮質嚥下領域刺激時には 1.2T に設定した。 刺激頻度は,SLN および反回神経刺激時には 30 Hz,大 脳皮質嚥下領域刺激時には 10 Hz を用いた。  まず,連続刺激により誘発される嚥下の経時的な変化 を観察するため,50 秒間の SLN 刺激の途中に 30 秒も しくは 50 秒間の休息時間を設け,誘発嚥下回数の変化 の違いについて検討した。  次に,条件刺激・処置として SLN 連続刺激(SLN 前 刺激)または除脳処置を行い,その後の試験刺激(SLN, 反回神経,大脳皮質嚥下領域)によって得られる嚥下回 数に与える影響について検討した。各条件刺激および試 験刺激の組み合わせを以下に示す。 1 .30 秒間の各刺激頻度(10, 20, 30, 40 Hz)での SLN 前刺激が同側 SLN 刺激誘発嚥下に与える影響 2‌‌.30 秒間の SLN 前刺激が同側および反対側 SLN 刺 激誘発嚥下に与える影響 3‌‌.30 秒間の SLN 前刺激が同側および反対側反回神経 刺激誘発嚥下に与える影響 4‌‌.30 秒間の SLN 前刺激が同側および反対側大脳皮質 嚥下領域刺激誘発嚥下に与える影響 5.除脳処置が SLN 刺激誘発嚥下に与える影響 6‌‌.100 秒間の片側閾値下 SLN 前刺激(0.9T)が,両 側 SLN 閾値下同時刺激誘発嚥下に与える影響

【結果と考察】

 SLN 連続刺激により誘発された反復性の嚥下反射は 経時的に減少を示した(図1)。この誘発嚥下頻度の減 少は,刺激間に休息時間を設けることにより抑えられ, その効果は休息時間の長さに依存していた(図2)。  SLN 前刺激もまた,続く嚥下誘発を抑制し,同側の SLN 誘発嚥下に対しては頻度依存的な抑制効果を現し た。反回神経あるいは大脳皮質嚥下領域刺激により誘発 された嚥下の減少は,SLN 刺激誘発性のものより小さ かった(図3)。このことにより,持続的な SLN 前刺激 が SLN 一次神経終末部におけるシナプス活動に影響を 及ぼしている可能性が示唆された。これまでにラットの 反回神経求心性線維は,孤束核中において同側にのみ投 射するとの報告がなされているにもかかわらず,本研究 においては SLN 前刺激によって同側のみならず反対側 の反回神経刺激誘発嚥下までもが抑制された。この結果 により嚥下反射誘発の減少には嚥下の中枢パターン発生 器における順応も関与している可能性が示された。一方, 反対側 SLN 前刺激は SLN 誘発嚥下の抑制には関与しな かった(図3)。また,除脳処置は嚥下誘発の減少に影 響を及ぼさず,嚥下反射誘発の減少には嚥下上位中枢と して知られている大脳皮質運動野や島皮質などからの入 力が関与している可能性は低いと考えられた。SLN の 91

ラット上喉頭神経電気刺激中における嚥

下頻度の変化

Changes in the frequency of

swallowing during electrical

stimulation of superior laryngeal

nerve in rats

新潟大学大学院医歯学総合研究科 口腔生命科学専攻 摂食環境制御学講座 摂食嚥下リハビリテーション学分野

辻 光順

Division of Dysphagia Rehabilitation Niigata University Graduate School of Medical and Dental Sciences

(2)

新潟歯学会誌 45(2):2015 - 54 - 92 閾値下前刺激は,嚥下反射を誘発させなかったにもかか わらず続く嚥下誘発を減少させた。この結果から,嚥下 図 1.SLN 連続刺激時の顎舌骨筋・甲状舌骨筋筋電図波形の典型例 図 2. 休息時間が嚥下誘発に及ぼす影響。A. 50 秒間の SLN 刺激中に誘発された嚥下回数。10 秒間の刺激 毎に休息時間を挿入した。総嚥下回数は休息時間が長いほど増加した。**P < 0.01 B. 50 秒間の SLN 刺激中に誘発された嚥下回数の 10 秒毎の推移。嚥下回数は経時的に減少し,休息時間が短いほどそ の傾向が顕著であった。a vs. 0–10, b vs. 10–20, # vs. 0 s rest 図 3. SLN 前刺激が続く SLN,反回神経(RLN),大脳皮質嚥下領域(Cx)刺激誘発嚥下に及ぼす影響。 A. 同側の SLN および RLN 刺激は反対側刺激と比較して標準化された誘発嚥下回数が有意に小 さかった。B. 同側の SLN,RLN 刺激は反対側と比較して嚥下の減少数が有意に大きかった。同 側の SLN と RLN,Cx,および RLN と Cx 間にはそれぞれ有意差を認めた。 a vs. SLN evoked swallow, b vs. RLN evoked swallow, ***P < 0.001, **P < 0.01

反射の順応は,前刺激により誘発される嚥下運動やその 回数,筋疲労などとは関連しないことが示唆された。

参照

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