RRS
地図生成における
OSM
上のエラー対応
Error Handling on OSM in RRS Map Generation
上田 陽明
1細谷 優介
1岩田 員典
2伊藤 暢浩
1Haruaki Ueda
1Yusuke Hosoya
1Kazunori Iwata
2Nobuhiro Ito
11
愛知工業大学
1
Aichi Institute of Technology
2愛知大学
2
Aichi University
Abstract: In this paper, we discuss a map generation tool for RobocupRescue Simulation(RRS). RRS is a multi-agent test-bed and simulates large-scale natural urban disasters and rescue activi-ties. RRS needs many maps of various regions for disaster analysis. However, RRS has provided a small number of map data yet. The reason is that an existing map generation tool creates maps which need a large number of manual modifications in order to be used in RRS. In addition, man-ually correcting errors takes a lot of time. Therefore, in order to correct errors in shorter time, we implemented a new tool that added functions to the existing tool. As a result, we confirmed the effectiveness of the implementation approach through many map creation.
1
はじめに
近年,自然災害に対する取組みに注目が集まってお り,RoboCupRescue Simulation(RRS) はそのような 取組みの1つである.RRS では災害救助戦略の分析や 研究 [1, 2, 3, 4] のために様々な地域でシミュレーショ ンを実行する必要がある.しかし,現在の RRS では既 存の地図作成ツールがあるにも関わらず,5∼6 地域程 度と提供されている地図データが非常に少ないという 問題がある.これは,地図作成ツールの機能が不十分 であることが原因である. このツールは様々な地域の地図データを作成するた め,OpenStreetMap(OSM) から RRS の地図データを 作成する.しかし、このツールによって作成された地 図データを RRS で用いようとすると多数のエラーが発 生する.これらのエラーの修正には地図1つあたり 10 時間程度かかってしまう.そのため,地図データを多 数作成することが困難となっている. そこで本研究では,既存の地図作成ツールへの機能 修正・追加というアプローチで,より実用的な時間で 地図データを作成する新しいツールを作成する.そし て,多数の地図データの作成を通してそのアプローチ の有効性を検討する. 第 2 章では,RRS と地図データと既存の地図作成 ツールについて説明する.第 3 章では,地図データに 含まれるエラーの分析について触れる.続く第 4 章で は,エラーに対する新しいツールの実装方法について 説明する.第 5 章では実験結果を示し,新しいツール 作成のアプローチの有効性について検討する.第 6 章 では,まとめと今後の課題を説明する.2
背景
2.1
RobocupRescue Simulation
RRS は地震による建物の火災,市民の埋没,道路 の閉塞が発生する大都市を模した地図データ上におい て,災害救助隊をモデル化したエージェントによる災 害救助活動のシミュレーションである.RRS は様々な 地域の地図データを用いてシミュレーションすること で,実際の災害に対する戦略構築や分析を目的の1つ としている.RRS の地図データは付属の地図編集ツー ル「gml-editor」[5] を用いることで,手作業によりフル スクラッチで作成可能だが,大変に手間がかかる.そ こで,RRS には地図データを自動的に作成するツー ル「osm2RRSgml」[4] が用意されている.しかし,現 在の RRS では研究で用いられる地図データ数は 5∼ 6 個程度と非常に少ないという問題がある.この原因 は,osm2RRSgml の機能が不十分であることにある. osm2RRSgml で作成された地図データには RRS のシミュレーションが実行できなくなる多数のエラーが発生 する.osm2RRSgml によって発生したこれらのエラー を全て修正するには 10 時間程度かかってしまう.これ は,エラーの修正には gml-editor による手作業の方法 しかないからである.したがって,RRS の地図データ を多数作成するのは非常に困難である. 問題の原因である osm2RRSgml について 2.2.1 節で 説明する.
2.2
osm2RRSgml
2.2.1 概要 osm2RRSgml は RRS 付属の地図作成ツールの問題 点を解決するために作成されたツールである. osm2RRSgml はそれまでできなかった典型的な地図 データの変換を可能としている.さらに,付属の地図 作成ツールよりも作成した地図データに含むエラーの 数を削減している. osm2RRSgml は OpenStreetMap(以降,OSM) [6] の 地図データから RRS の地図データへの変換をおこなう. OSM は全世界を対象としたフリーの地図データである. osm2RRSgml は様々な地域の RRS の地図データを作成 するために OSM を使用している.また,osm2RRSgml は Java 言語で構築されている. 以降では,osm2RRSgml の機能について説明するた め,まず 2.2.2 節と 2.2.3 節でそれぞれ RRS と OSM の地図データの仕様について説明する.その後,2.2.4 節で osm2RRSgml の機能を説明する. 2.2.2 RRS の地図データの仕様 RRS の地図データの記述形式 [7] は XML をベース としている.地図データの座標系は XY 座標系である. 地図データを構成する要素として点を表す「Node」,2 点の Node 間を結ぶ辺を表す「Edge」,3 辺以上の Edge によって囲まれた領域 (面) を表す「Face」がある.ま た,地図データ内の地物として建物 (building) と道路 (road) がある (以降,「建物」と「道路」のことを「オ ブジェクト」とも呼ぶ).そして,建物の形状は面,道 路の形状も面で表現されている. RRS の地図データでは,全てのオブジェクトは1つ に繋がっていなければならない.これは,エージェント の建物への出入りを表現するためである.また,RRS の地図データはシミュレーションに用いられるため,オ ブジェクト同士の重複は許されていない. 2.2.3 OSM の地図データの仕様 OSM の地図データの記述形式は XML をベースとし ている.地図データの座標系は緯度経度座標系である. 地図データを構成する要素として点を表す「Node」,複 数の線分によって道路や領域を点集合で表す「Way」が ある.また,地図データ内の地物として建物 (buiding) と道路 (road) の他,領域 (area) などがある.そして, 建物の形状は面,道路の形状は線分で表現されている. OSM の地図データは画面上への表示に用いられるた め,オブジェクト同士の重複は許されている. 2.2.4 osm2RRSgml の機能 osm2RRSgml は地図データ作成の際,OSM と RRS の地図データ間の仕様の違いを吸収するために,以下 に示す 3 つの機能を備えている. 建物の変換 OSM の建物と RRS の建物の例をそれぞれ図 1 と 図 2 に示す. 図 1: OSM の建物 図 2: RRS の建物 OSM と RRS の地図データの座標系は緯度経度座 標系と XY 座標系で異なる.しかし,建物の形状は 同じ面である.さらに,地図データの記述形式はど ちらも両方 XML ベースである.したがって,この機 能は建物の頂点に対して座標変換の計算 [8] をする ことで OSM の建物を RRS の建物に変換している. 道路の拡張 OSM の建物と RRS の道路の例をそれぞれ図 3 と 図 4 に示す. 図 3: OSM の道路 図 4: RRS の道路 道路の形状は OSM では線分,RRS では面で表現 されている.そのため,この機能では線分の道路を 面の道路に拡張している. 接続道路の作成 RRS の地図データの仕様に従って,オブジェクト 同士を接続する道路 (以降,「接続道路」と呼ぶ) を作 成する必要がある.接続道路は基本的に建物と道路 の間に作成されるが,建物の位置関係によっては建物 間で作成される場合もある.OSM と RRS のそれぞれの地図データ内にある建物と道路の間における接 続道路の有無の様子をそれぞれ図 5 と図 6 に示す. 図 5: 接続道路なし 図 6: 接続道路あり この機能は接続道路を全ての建物に対して作成す る. 2.1 節で述べた通り,これらの機能だけでは RRS の 地図データをエラー無しに作成することはできない.第 3 章でエラーについて説明する前に,2.3 節でエラーを 確認する機能を持つ gml-editor について説明する.
2.3
gml-editor の概要
gml-editor は RRS 付属の地図編集ツールであり,Node, Edge,Face に対して作成, 削除, 移動などの基本的な操 作が可能である. また,gml-editor には地図データ内の エラー箇所を確認する機能がある. この機能は,シミュ レーションを実行する際にエラーとなるオブジェクト を赤く塗りつぶす.したがって,エラー箇所の確認が 可能となる.ここで,RRS におけるエラーには,オブ ジェクトの重複,他のオブジェクトと接続されていな いオブジェクトなどが該当する.また, エラーの発生し ているオブジェクト数をコンソール上に表示する.2.4
注目する問題点
osm2RRSgml は OSM と RRS の地図データ間に生 まれる主要なエラーに対応している.しかし,細かなエ ラーには対応できていない.そのため,osm2RRSgml で 変換した地図データには多くのエラーが含まれている. したがって,本研究では OSM と RRS の地図データ 間に生まれる細かなエラーに対応していく.3
地図データに含まれるエラーの原
因の分析及び修正方法
3.1
研究目的
本研究の目的は,OSM と RRS の地図データ間に 生まれる細かなエラーに対応し,実用的な時間で地 図データを作成する新しいツールを作成することであ る.エラーに対応するアプローチとして,既存のツー ル (osm2RRSgml) に機能修正・追加をおこなう.そし て,そのアプローチの有効性を検討する. 3.2 節では,既存のツールによって作成された地図 データの中で,最も多く含まれていた 3 つのエラーにつ いて紹介する.その後,3.3 節で 3 つのエラーの発生原 因について説明する.また,3.4 節で,3 つのエラーの 修正方法について説明した後,第 4 章で 3 つのエラー に対する実装方法を詳しく説明する.3.2
発生数の多かったエラー
以下に,エラーとなる箇所が多く含まれていた 3 つ のエラーを示す. 1. 建物同士の重なり 2. 建物と道路の重なり 3. 全体として1つに繋がっていない部分 また,エラーとなる箇所の例を図 7 に示す. (a) 建物同士の重なり (b) 建物と道路の重なり (c) 全体として1つに繋がっ ていない部分 図 7: エラーとなる箇所の例3.3
エラー原因
建物同士の重なり このエラーが発生する原因は,「gml-editor」のエ ラーチェック機能に,ある建物の領域内に他の建物 の領域が存在する場合,それらの建物をエラーとす る処理が入っているためである. したがって,ある建物の領域内に他の建物の領域 が存在する場合,エラーとして判定される. 建物と道路の重なり この問題が発生する原因は,道路の拡張方法にある. OSM の地図データでは,道路を「線分」として 表現している.しかし,GML の地図データでは,道 路を「面」として表現している.OSM と GML の地 図データでの道路の表現の違いに対応するため既存 のツールには 2.2.4 節で述べた道路を拡張する機能 がある.しかしこの機能は道路を拡張する際に,周 囲に存在する他のオブジェクトを考慮せずに拡張を おこなう.そのため,OSM の地図データの道路が建物領域と非常に近い場所に存在する場合,拡張後の 道路の領域 (以降,道路領域とも呼ぶ) が,建物領域 と重複する場合がある.以上から、この問題が発生 する. 全体として1つに繋がっていない部分 このエラーが発生する原因は,OSM の地図データ が地図上のある領域で切り取られて取得されること にある. 通常,実際の道路は全て一続きに繋がっている.し かし,地図データがある領域で切り取られた場合,そ の領域の端に一続きに繋がらなくなった道路ができ る.ここで,一続きに繋がらなくなった道路とその 道路の付近にある建物の集合をまとめて「区画」と 呼ぶことにする.区画は,地図データ内の1つに繋 がっている最も大きいオブジェクト集合とは繋がっ ていない. したがって,2.2.2 節で述べた RRS の仕様により, 区画はエラーとなる.以上から,図 7(c) のような全 体としてひとつに繋がっていない部分が発生する.
3.4
エラー修正方法
建物同士の重なり このエラーを解決するため,重複している建物の Node に処理をおこない,重複しない建物にする. なお,処理をおこなう建物は建物を形成する一部の Node が,他の建物の領域内にあるような建物とする. 処理の対象となる建物が持つ他の建物と重複して いる Node を,重複している他の建物の領域外に移 動する.これにより建物同士の重複がなくなり,エ ラーが解消される. 建物と道路の重なり このエラーを解決するため,道路領域内にある建 物を形成する一部の Node を道路領域外に移動する. 変更を加える対象は建物に限定する.その理由と して,既存のツールによって作成される道路は一定 の幅員 (3m) [9] で作成されているからである.これ は,道路の幅員としては最低限の値である.このた め,道路領域に変更を加えた場合,変更後の幅員に よっては「gml-editor」のエラーとして判定される場 合がある. 以上から,建物と道路の重複がなくなり,エラー が解消される. 全体として1つに繋がっていない部分 このエラーを解決するために,地図データ内の1 つに繋がっている最も大きいオブジェクト集合を判 別し,この集合のみを作成する.これにより,全体 と1つに接続されない部分はなくなり,エラーが解 消される.4
実装方法
4.1
建物同士の重なり
ある建物の領域内に他の建物の一部が内包している エラーを解決するアルゴリズムを以下に示す.なお,説 明するにあたり,他の建物の頂点が自身の領域内にあ るか判定をする建物を「建物 A」,建物 A の周囲に存 在する建物の1つを「建物 B」とする. 1. 建物 A を構成する Edge の 1 辺に注目する. 2. 建物 B を構成する Edge の 1 辺に注目する. 3. 建物 A を形成する Edge の 1 辺と建物 B を形成 する Edge の1辺が交差しているか判定をする. 交差している場合は手順 4∼手順 5,交差してい ない場合は手順 6 を実行する 4. 交差している場合,建物 B の一部の Node が建 物 A 内にあることがわかるため,建物 B の建物 A 内にある Node を交点座標に移動する. 5. 建物 A を構成する Node 集合の中に交点座標に 移動した建物 B の Node を加える. 6. 手順 2∼手順 3 を建物 B を形成する Edge の数だ け繰り返す. 7. 手順 1∼手順 3 を建物 A を形成する Edge の数だ け繰り返す. 建物 A の領域内に建物 B を形成する Node が内包し ている場合,建物 A の Edge と建物 B の Edge は必ず 交差する.これにより,建物 A の領域内に建物 B の領 域が内包しているかの判定が可能となる. 交差している建物 A と建物 B の様子を図 8(a) に示 す.次に,建物 A を形成する Edge と建物 B を形成す る Edge が交差している座標を求める [10] . 交差している座標を求めた後,建物 A の中にある建 物 B の Node を求めた交点座標に移動する.Node を 移動した後の建物の状態を図 8(b) に示す. しかし,図 8(b) では,建物 A と建物 B の領域が重 複している.重複する原因として,交点の座標を求め る際に小数点以下の誤差が生じ,その誤差によって建 物 A の領域外まで建物 B の Node が移動されない場合 があるためである. この問題を解決するために,建物 A を構成する Node 集合の中に建物 B の移動した Node を加える.これに より,交点上に作成された Node は建物 A と建物 B が 共有する Node となり,重複が解消される. エラーが解消された箇所を拡大した様子を図 8(c) , エラーが解消された箇所の全体図を図 8(d) に示す.こ れによりエラーが解消される.(a) 重複した箇所 (b) 再配置した箇所の拡大 図 (c) 共有した Node として 処理を実行した後 (d) 解消した建物の全体図 図 8: 建物同士の重なりの修正
4.2
建物と道路の重なり
拡張した道路が他の建物領域内に一部重複している エラーを修正するアルゴリズムを以下に示す. 1. 道路を形成する Edge の 1 辺に注目する. 2. 建物を形成する Edge の 1 辺に注目する. 3. 建物を構成する Edge の 1 辺と道路を形成する Edge の 1 辺が交差しているか判定する.交差し ている場合は手順 4,交差していない場合は手順 5 を実行する. 4. 建物の Node を交点座標から一定距離道路から離 した座標に移動する. 5. 手順 2∼手順 3 を建物を構成する Edge の数だけ 繰り返す. 6. 手順 1∼手順 3 を道路を構成する Edge の数だけ 繰り返す. 拡張した道路に建物領域の一部と重複する箇所があ る場合,道路を形成する 1 辺と,建物を形成する 1 辺 が交差する箇所が存在する. 拡張した道路の一辺と建物の一辺が交差している箇 所を赤丸で示した建物と道路の重複箇所を図 9(a) に示 す.重複領域を修正するため,交差している道路と建 物の交点座標を求める [10] .交点の座標を求めた後, 「接続道路」の作成のため,建物の Node を交点座標か ら一定距離道路から離した座標に移動する.移動した 後の道路と建物の状態を図 9(b) ,図 9(c) に示す. また,「接続道路」の作成をおこなった後の状態を図 9(d) に示す.これにより,道路が建物に重複している エラーが解消される. (a) 建物と道路の重複箇所 (b) 建物の左上の Node を 移動 (c) 建物の右上の Node を 移動 (d) 接続道路の作成 図 9: 拡張した道路と建物の重複領域の修正4.3
全体として1つに繋がっていない部分
地図データが地図上のある領域で切り取られるため にその領域の端に区画が発生する.区画が発生した場 合の修正方法を以下のアルゴリズムに示す. 1. 建物とそれに最も近い道路のペアを計算し保持 する 2. 道路の繋がりを調べることで地図データ内で最も サイズの大きい道路を判別する 3. 手順 1,手順 2 より,道路の中で最もサイズの大 きい道路とその道路付近にある建物集合を計算し 作成する 手順 1 における道路は,複数の線分として表現され ている OSM の地図データ中の道路 (以降,OSM 道路 と呼ぶ) を指す. 建物と道路の距離の計算には,ベクトルの内積 [11, 12] を用いる.また,ベクトルの内積は道路の線分の端点 をそれぞれ点 A,点 B として,建物の頂点を点 P とす るとき,AP · AB となる.ベクトルの内積によって建 物の頂点の射影が道路の各線分上にあるかを確認する. ここで,頂点の射影が線分上にある場合は,Java の API の ptLineDist メソッド [13] を用いて距離を計算 する.頂点の射影が線分上にない場合は,線分を構成 する頂点の中で建物に近い頂点と建物の頂点の距離を ピタゴラスの定理で計算する. ベクトルの内積を用いた頂点の射影と計算方法につ いて図 10 に示す. 図 10: 頂点の射影と計算方法距離の計算は建物を構成する全ての頂点に対してお こなう.そして,最も近い距離にある道路をその建物 に最も近い道路とする. さらに,建物とそれに最も近い道路をペアとして保 持する. この処理を全ての建物に対しておこなう. 手順 2 でも,OSM 道路を用いる.OSM 道路は国道 や県道などを表す細かな道路の集合でもある.これら の細かな道路は片方の道路の終点と片方の道路の一点 が同じ頂点を用いいることで,1つの大きな道路を構 成している.複数の細かな道路がひとつの頂点で繋がっ ている様子を図 11 に示す. 図 11: 複数の細かな道路はひとつの頂点で繋げられる したがって,細かな道路を構成する頂点に注目し,細 かな道路を辿っていきながら頂点の数を数えることで 道路全体のサイズを計算できる.これによって,地図 データ内の最もサイズの大きい道路が判別できる. 手順 3 では,手順 2 より得られる最もサイズの大き い道路と,手順 1 によって保持されているその道路に 最も近い建物の集合を計算する. したがって,最も大きい道路と建物集合の組が作成 される. 以上の工程から,全体とひとつに繋がらない区画が 存在するエラーを解決できる. 図 7(c) 中の区画が残る問題を解決した後の様子を図 12 に示す. 図 12: 問題解決後の図 7(c) の区画
5
実験
5.1
実験の目的
実験の目的は,作成した新しいツールに施した機能 修正・追加というアプローチの有効性を検討することで ある.しかし,本研究のツールでも変換後の地図デー タにエラーが残ってしまうことがわかった.そのため, 既存のツールと比較したエラー数の割合の削減量と実 用的な修正時間で作成できる地図データの割合をアプ ローチの有効性の有無の基準とする.5.2
実験手法
以下に実験の手順を示す. 1. 先行研究 [4] で使用された OSM の地図データを 本研究のツールを用いて変換する 2. 変換した各地図データに含まれるエラー数の割合 を「gml-editor」で確認する 3. 既存のツールと本研究のツールによって変換した 地図データに含まれるのエラー数の割合を比較 する 4. 比較した結果から,機能修正・追加をおこなった ツールの有効性を検討する 先行研究 [4] で取得された OSM の地図データは,地 震の発生する諸外国 30 カ国 [14, 15, 16] と日本国内の 主要な都市に加え,三遠南信地方を対象とされている. その内容は,3km× 3km の範囲で建物情報が満遍な く含まれている地域であり,合計 200 箇所分採取され ている. 表 1 に採取された地図データの数を国別に示す.ま た表 1 にある「日本」について,三遠南信地域に注目 し,採取された地図データの地域と数を県ごとに表 2 に示す. 表 1: 採取された地図データ数一覧 (国別) 国名 数 国名 数 アメリカ 20 チリ 3 イギリス 1 ドイツ 2 イタリア 4 トルコ 3 イラン 1 ニュージーランド 6 インド 4 ネパール 13 インドネシア 15 パナマ 1 ウガンダ 1 フィリピン 15 エクアドル 2 スペイン 2 オーストラリア 1 ペルー 3 カナダ 16 ポルトガル 2 ギニア 1 メキシコ 2 キューバ 2 ロシア 2 ギリシャ 2 中国 15 グアム 2 南アフリカ 1 ケニア 1 日本 56 ジンバブエ 1表 2: 採取された地図データ数一覧 (三遠南信地域) 県名 地域 数 愛知県 名古屋市 17 静岡県 伊豆市 1 掛川市 3 湖西市 1 駿河市 1 静岡市 2 浜松市 1 長野県 諏訪湖 1 千曲市 1
5.3
評価方法
本研究のツールの有効性を検討するにあたり,各地 図データに含まれるエラー数の割合を求める式 (1) を 以下に示す. エラー数の割合 = エラーとなるオブジェクト数 全オブジェクト数 ×100 (1) 参考として,エラー数の割合 1% あたりの修正時間 はおよそ 1 時間である.また,本研究では実用的な時間 で修正できるエラーの割合として 10% を基準と定める.5.4
実験結果と考察
エラー数の割合ごとの GML の地図データ数につい てそれぞれ図 13 ,図 14 に示す. 図 13: エラー数の割合ごとの地図データ数 (既存の ツール) 図 14: エラー数の割合ごとの地図データ数 (新しい ツール) 平均値は 7% から 5% となり,2% の減少である.ま た,最大値については 43% から 22% となり,21% の 大幅な減少である.さらに,有効と判断できる 10% 以 下の地図データ数の割合が,79% から 91% に増加して いる.したがって,本研究のツールによって 9 割以上 の地図データを有効に変換できている. 以上から,エラー数の削減と実用的な地図データの 作成に成功していることがわかる. よって,本研究における機能修正・追加というアプ ローチには有効性があるといえる. 本研究のツールでもエラーが残る原因として,本研 究のツールで対応できていないエラーが存在している ためであると考えられる.したがって,全てのエラー に対応することにより,ほぼ全てのエラーを解消する ことが可能と考えられる.6
まとめ
本研究では,既存のツールへの機能修正・追加とい うアプローチで,実用的な時間で自動的に地図データ を作成するツールを作成した.そして,そのアプロー チの有効性を検討した. 実験の結果,既存のツールより本研究のツールの方 で,変換後の地図データに含まれるエラー数の割合の 平均値を 7% から 5% ,最大値を 43% から 22% の減 少に成功した.さらに,実用的と判断できる地図デー タの割合が 9 割を越えた.これらの結果から,既存の ツールへの機能修正・追加というアプローチは有効で あると考えられる. また,本研究のツールにより作成された GML の地 図データに含まれるエラーについては,本研究のツー ルをさらに改良することにより,全てのエラーを解消 することが可能であると考えられる. 今後の課題として,以下の問題を改良する事により さらなるエラーの削減が可能と考えられる.1. 拡張した道路領域が他の道路領域と重なる 2. 建物を形成する Node の全てが他の建物に内包し ている 3. オブジェクト同士を接続する道路が作成されない また,エラーとなる部分を図 15 に示す. (a) 拡張した道路領域が他 の道路領域と重なる (b) 建物を形成する Nodeの全てが他の建物に内包し ている (c) オブジェクト同士を接 続する道路が作成されない 図 15: エラーとなる箇所の例
謝辞
本研究は JSPS 科研費 JP16K00310, JP17K00317 の助成を受けたものである. また,文部科学省共同利用・共同研究拠点「越境地 域政策研究拠点」愛知大学三遠南信地域連携研究セン ターの 2017 年度一般共同研究(行政区界を越えた災害 救助の地域間連携における GIS を活用したシミュレー ション分析)の助成を受けて実施した.参考文献
[1] 伊藤暢浩,岩田員典,纐纈寛明,“ 偏相関分析に よる地図の特徴指標とマルチエージェントシステ ム評価値の分析”,知能と情報(日本知能情報ファ ジィ学会誌)Vol26,No3,pp.658-668,2014. [2] 伊藤暢浩,尾橋大,“RoboCup Rescue Simulationにおける一般化線形混合モデルを用いた都市情報解 析”,愛知工業大学大学院,平成 26 年度修士論文. [3] 伊藤暢浩,伊原昌利,加藤雅也,“RoboCupRescue
Simulation における Support Vector Machine を 用いた都市情報解析”,愛知工業大学,平成 27 年 度卒業論文. [4] 細谷 優介 森島 稜太 伊藤 暢浩 岩田 員典,“ 多様 な地域における災害救助シミュレーションを可能 とする地図作成ツールについて ”,日本知能情報 ファジィ学会 ファジィ システム シンポジウム 講 演論文集,volume.34,pages.815-820,2018. [5] “ map creation-tutorial ” , https://roborescue.sourceforge.io/docs/map creation-tutorial.pdf 参照 2019-01-21. [6] “ OpenStreetMap Japan 自由な地図をみんなの 手で ”,OpenStreetMap Japan, https://openstreetmap.jp/,参照 2019-1-11. [7] “ Geography Markup Language ” ,OGC,
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[13] “ Java(tm) platform standard edition 8 ” , https://docs.oracle.com/javase/jp/8/docs/api/, 参照 2019 年 2 月 18. [14] “ か ら だ し こ う 地 震 が 多 い 国 ラ ン キ ン グ TOP10 やっぱり日本が一位なの どうなの?”, http://xn–p8jjyp8b9p.com/the-world-earthquake,参照 2019-1-10. [15] “ 地震を知ろう -地震災害から身を守るために- ”, https://www.jishin.go.jp/main/pamphlet/ kodomopanf/kids.pdf,参照 2019-1-11. [16] “ 国土交通省 気象庁 Japan Meteorological Agency ”, http://www.data.jma.go.jp/svd/eqev/data/ jishin/img/b world hypo.png,参照 2019-1-11.