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生産プロセスの違いを考慮した組織パフォーマンス評価手法に関する研究

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Academic year: 2021

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(1)

生産プロセスの違いを考慮した

組織パフォーマンス評価手法に関する研究

A study on evaluation of organizational performance considering the difference of

productive process

大和 裕幸

1

稗方 和夫

2

満行 泰河

1

Hiroyuki Yamato

1

, Kazuo Hiekata

2

, and Taiga Mitsuyuki

1

1

東京大学大学院 新領域創成科学研究科

1

Graduate School of Frontier Sciences, The University of Tokyo

2

東京大学大学院 工学系研究科

2

Department of Systems Innovation, Graduate School of Engineering, The University of Tokyo

要旨: 生産を行う組織の構造によって最適な生産プロセスは異なる。本研究では組織と個人スキ ルの制約の中で必要な所要時間を最小にする作業計画を立案するエンジンを開発した。また、ブ ロック組立工程のケーススタディにおいて、個人のスキルの違いによる組織全体のパフォーマン スの変化を開発したエンジンによって定量化することで、どの構成員のどのスキルを向上させる ことが組立工程の効率向上に最適であるか明らかにし、提案手法の有効性を示した。

1.

緒言

組織は競争に勝ち抜くために、社会経済の環境変 化や情報技術を中心とした科学技術の発達などの 様々な変化に対して組織のパフォーマンスを評価・ 向上 させていく必要がある。 組織のパフォーマンスを評価する手法はいくつか 提案されているが、代表的な手法としてビジネスプ ロセスのシミュレーションによる組織パフォーマン ス評価手法が挙げられる。その代表例として、IBM の FileNet Business Process Manager の機能の一つで あるプロセスシミュレータ[1]や日本海洋科学株式 会社の PMT (Process Management Tool) [2]は各作業 員のスキルに基づく組織のシミュレーションを行う ことはできるが、組織の最適化を行うことはできな い。また Arena [3]はシミュレーションによる製造設 備の最適化を行うことはできるが、作業員とスキル のモデリングを行うことができない。 そこで本論文では、人と組織の最適化に主眼を置 いた組織パフォーマンス評価手法を提案する。具体 的には、スキルセットによって定義されたプロセス と作業員のモデルから、全体の仕事の所要時間を最 小にするための各作業員の最適な振る舞いに基づく 作業計画を導出する方法と、導出された作業計画を もとにした組織パフォーマンスの評価・向上を行う 手法を提案し、提案した手法を造船所のブロック製 作部門におけるいくつかのケーススタディをもとに 検証・考察することで提案手法の有用性を論じる。

2.

提案手法

提案手法では大きく分けて以下の3つのステップ からなる。 1. エンタープライズモデルの作成 2. 最適作業計画の立案 3. エンタープライズモデルの評価 初めに、組織のメンバーと仕事とスキルセットか らエンタープライズモデルを作成する。次に作成さ れたエンタープライズモデルから最適な作業計画を 計算する。最後に作成された作業計画をもとにエン タープライズモデルを評価することで組織のパフォ ーマンスを評価する。 人工知能学会第2種研究会資料 SIG-KST-2009-01-02(2009-07-13) *)本資料の著作権は著者に帰属します

(2)

2.1

エンタープライズモデル

本論文におけるエンタープライズモデルの概要を 図1に示す。

Worker

Worker Worker

Worker Worker Worker

Task Task Task Skill Skill Skill Skill Skill Skill SKILL SET SKILL SET ORGANIZATION MODEL ORGANIZATION MODEL ACTIVITY MODEL ACTIVITY MODEL WORKFLOW WORKFLOW E N TE RP RI E NTE RP RI S S E MO DE L E MOD EL 図1: エンタープライズモデルの概要 エンタープライズモデルはスキルセット・組織モ デル・アクティビティモデルの3つとそれらの関連 からなる。 2.1.1 スキルセット スキルセットは組織内で必要なスキルの集合であ る。スキルセット内のスキルをもとに組織モデル内 の作業者やアクティビティ内のタスクを定義する。 2.1.2 組織モデル 組織モデルは作業者の集合で構成される。各作業 者は所属とスキルセット内の各スキルの有無で定義 される。図2にその例を示す。 A B C D Skill 1 Skill 2 Skill 3

Position

Skill 1

Skill 2

Skill 3

A

1

1

0

B

A

0

0

1

C

A

0

1

1

D

B

0

1

0

図2: 組織モデルの例 所属に関しては、各作業者の上司を記入する。本 論文では組織モデルを Excel 形式で記述する。 2.1.3 アクティビティモデル アクティビティモデルは一つの仕事を完了させる ワークフローの集合である。ワークフローは各タス クとそれぞれの前後関係から成る。 ワークフロー記述アプリケーションとしては、本研 究室で開発された「ShareFast」[4]を用いた。図3に ShareFast のインターフェイスを示す。 Display workflow Document 図3: ShareFast インターフェイス ShareFast では容易にワークフローを記述できる だけではなく、文書管理システムの面もあるが、本 論文ではワークフロー記述機能のみを用いる。 提案する手法では、スキルセットに合わせたワーク フローを、ShareFast を用いて記述することで必要な 情報を BPMN[5]に基づいて XML 形式で容易に記述 できる。図4にその例を示す。

(3)

Task 1 Task 2 Task 3 WORKFLOW WORKFLOW URI of task URI of previous task

Duration Condition performerTask Start time Finish time Deadline

Task 1 http://task1 10 Completed A 20090820 20090830 20090901 Task 2 http://task2 http://task1 30 Ready B 20090831 20091001 Task 3 http://task3 http://task2 10 None <dc:title>- Task1</dc:title> 20091015

<sf:duration>10</sf:duration>

<sf:processStatus>Ready</sf:processStatus> <sf:performer>A</sf:performer> <sf:startDate>2009-08-20T10:48:10</sf:startDate> 図4: XML 形式で記述されたワークフローデータ

2.2

最適作業計画の立案

前の節のエンタープライズモデルから遺伝的アル ゴリズムを用いた計算により最適な作業計画を立案 できるエンジンを実装した。本論文ではすべてのタ スクが終了する時刻を最小にする時刻を最小にする ことのみを目的として作業計画を立案するものとす る。 手法としては以下の4つのプロセスを踏むことで 作業計画を立案する。 z 目的関数を定式化する z 制約条件を定式化する z すべてのタスクの基本情報を求める z 作業計画を計算する 2.2.1 目的関数 目的関数は以下のように設定した。

= +

T t t j

x

t

0 , 1

min

(1) ここで、

t

はスケジュール時刻(

0

t

T

)を、

j

はタスク番号を、

x

j,tは時刻

t

に作業

j

が終了した かどうかを表す変数であり、

x

j,tは以下のように定 義される。

{ }

=

=

T t t j t j

x

x

0 , ,

1

,

(

0

,

1

)

(2) 2.2.2 制約条件 エンタープライズモデルをもとにして作成される 制約条件を以下に示す。

(

)

= =

T t j T t t j j t h

t

p

x

h

P

x

t

0 0 , ,

(

)

(3)

(

t

p

b

)

x

R

( )

t

r

jb J j p t t b j jk j

+

∑ ∑

= − + = , 0 1 (4)

( ) { }

0

,

1

,

t

=

r

jk (5) ここで、

h

は作業

j

の先行作業のうちのひとつを、 j P は作業

j

の先行作業の集合を、

k

は作業員の番号 を、rj,k

( )

t は時刻

t

において作業員

k

が作業

j

を実行 できるかどうかを表す変数を、R

( )

t は時刻

t

におい て作業可能な作業員数を表す。また、式(3)はタスク の前後関係を、式(4)は作業員数の制限を表す制約条 件である。 また、これとは別の制約条件として、①同時刻に おけるタスクの掛け持ちの禁止(式(6))、②1つの タスクに対する担当者は1人(式(7))、を設けた。 以下にその制約式を示す。

( )

+ =

1 0 ,

1

J j k j

t

r

(6)

( )

=

K k k j

t

r

0 ,

1

(7) 2.2.3 基本情報 すべてのタスクの基本情報を求めることで各タス クの前後関係を求める。求める情報は各タスクの最

(4)

早開始時刻と最早終了時刻である。手法としては PERT(Program Evaluation and Review Technique)を 用いる。 2.2.4 作業計画の計算 前節までの目的関数・制約条件・基本情報をもと に遺伝的アルゴリズムを用いて作業計画の計算を行 う。遺伝的アルゴリズムの手法としては、タスク実 行順序にランダムキー型ベースエンコーディング法 [6]を用い、作業者選択には作業者のスキル値の合計 をもとにしたアクティブな選択法を用いる。 ランダムキー型ベースエンコーディング法では、 各タスクの優先度を 0 以上 1 未満の実数で表現する。 次に各タスクの優先度と基本情報からタスク実行順 序を決定する。図5にその概念を表す図を示す。 0.80 0.63 0.25 0.86 0.11 Task ID i: Task priority v(i):

1 2 3 4 5 1→2 1→3 4→5 Rule of tasks 3 2 1 5 4

Order of doing task Q:

Random Key 図5: ランダムキー型ベースエンコーディング法 得られたタスク実行順序と作業者情報をもとに作 業を実行するシミュレーションを行う。各タスクに 対する作業者の選択は以下のように行う。 1. タスクに対してその時に実行可能な作 業者群を抽出する 2. 1 で選択された作業者の中で、対象とな るタスク以外の未完了のタスク群に対 するスキル量が最も低い作業者をその タスクの担当者とする

2.3

エンタープライズモデルの評価

前節をもとに作成された最適な作業計画から、仕 事にかかる所要時間、各作業者の作業率などからエ ンタープライズモデルを評価する。

3.

ケーススタディ

いくつかのシナリオを用いて2章で提案した手法 を用いる。本論文では造船所におけるブロック製作 部門を対象として2つのシナリオを用いて提案手法 の検証を行う。 2つのシナリオで対象とするブロックとそれを製 造するためのワークフローを図6で示す。 10 10 10 10 20 10 10 10 10 10 10 10 10 10 15 10 15 20 10 10 10 10 20 10 10 10 10 10 10 10 10 10 15 10 15 20 図6:対象とする問題とそのワークフロー 2つのシナリオでは、外部パネルと内部構造ブロ ックからなる2種類の船穀ブロックを合計3つ生成 しなければならないとする。図7のワークフローは 左端が外部パネルを生成するワークフロー、真ん中 が2つの船穀ブロックに必要な内部構造ブロックを 生成するワークフロー、右端が残りひとつの船穀ブ ロックを生成するためのワークフローを表すものと する。また、ワークフローの各タスクの横の数字は それぞれの工数を示している。作業計画者は自分の 部下のみを作業者として計画に組み込むことができ るものとする。 また、2つのシナリオで最適計画を計算する際の 遺伝的アルゴリズムの設定は表1のように行った。

(5)

表 1: 遺伝的アルゴリズムの設定 遺伝子長 タスク数 個体数 10 世代数 200 突然変異率 0.1 交叉 一点交叉 交叉率 0.7 選択 ルーレット選択

3.1

ケース1

ここで想定する部門の組織構造情報を表2で示す。 ケース1では部門長が作業計画を作成する。なお、 本論文では、必要な作業員情報として作業計画立案 者とその直属の部下のスキル情報に限定して抽出を 行っている。 表2:ケース1における部門のスキルリスト 所属 スキル 板 継 ロ ン ジ ト ラ ン ス 仮 付 溶 接 塗 装 部門長 A S ○ ○ ○ ○ × ○ 作業員 A-1 A ○ × × × ○ × 作業員 A-2 A × ○ ○ ○ × × 作業員 A-3 A × ○ × ○ × ○ この組織構造情報をもとにして、作業計画を行った ところ表3のような作業計画が立案され、所要時間 は 150 となった。 全体の作業計画表では各作業者がどの時刻に何を しているかをタスク単位で表示される。表3では、 縦軸が作業計画対象となる作業者、横軸が時間を表 し、右端にそれぞれの作業者の稼働率を示している。 また、作業者個別の作業計画表も同時に作成される。 しかしながら、表3の結果では各作業員の稼働率に 差がありすぎるため、組織として健全な運用ができ ていないと言える。その原因として「溶接」タスク を行える作業者が一人しかいないことが考えられる。

3.2

ケース2

ここで想定する部門の組織構造情報を表4で示す。 ケース1と比較すると、先ほど作成された作業計画 で稼働率が最も低かった作業者 A-3 に「溶接」タス クスキルを新たに加えたものになっている。 表4:ケース2における部門のスキルリスト 所属 スキル 板 継 ロ ン ジ ト ラ ン ス 仮 付 溶 接 塗 装 部門長 A S ○ ○ ○ ○ × ○ 作業員 A-1 A ○ × × × ○ × 作業員 A-2 A × ○ ○ ○ × × 作業員 A-3 A × ○ × ○ ○ ○ この組織構造情報をもとにして、作業計画を行っ たところ表5のような作業計画が立案され、所要時 間は 120 となった。

4.

考察

4.1

組織パフォーマンス評価

2つのシナリオに対して開発したエンジンを用い たところ、組織の構造と仕事から組織の最適な作業 計画を立案でき、最適な作業計画に基づいた所要時 間によって定量的に組織パフォーマンスを評価でき ることがわかった。このことから、開発したエンジ ンは組織構造から組織パフォーマンスを評価する際 に有効であると言える。

4.2

組織パフォーマンス向上

本論文ではケース1のシナリオから稼働率の最も 低かった作業員 A-3 に「溶接」教育を行ったところ 所要時間が 30 短縮された。このことは、この組織が 作業員 A-3 への「溶接」教育という戦略をとったこ とにより組織パフォーマンスを向上させることに成 功したといえる。 また、ケース1の「作業員 A-3 に溶接教育を行う」 という戦略がこの組織にとって最適な選択であった かどうかを検証するために、1人に一つの教育しか 行えないという制約の下、すべての場合について検 証を行った図7にその検証結果を示す。図7では各 作業員にスキル教育を行った場合の所要時間を示し ている。

(6)

表3: ケース1における最適作業計画表 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100 105 110 115 120 125 130 135 140 145 150 稼働率 A 0.8 A-1 0.9 A-2 0.633 A-3 0.333 表5: ケース2における最適作業計画表 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 100 105 110 115 120 稼働率 A 0.75 A-1 0.875 A-2 0.791 A-3 0.917 110 120 130 140 150 160 ケース1 A : 溶接 A-1 : ロンジ A-1 : トランス A-1 : 仮付 A-1 : 塗装 A-2 : 板継 A-2 : 溶接 A-2 : 塗装 A-3 : 板継 A-3 : トランス ケース2 (A-3 : 溶接) 所要時間 図7:戦略の評価 図7から、「作業員 A-3 に溶接教育を行う」とい う戦略は最も所要時間を最短にする戦略であったこ とがわかる。このことから、確かに「作業員 A-3 に 溶接教育を行う」という戦略はこの組織において最 適な戦略であったといえる。

5.

結論

本論文では、組織の仕事と人員の情報から最適な 作業計画を計算し分析することで組織パフォーマン スを評価する手法を提案した。具体的には、仕事を BPMN に基づいた XML 形式のワークフローで、人 員を権限とスキルの有無で定義し、遺伝的アルゴリ ズムを用いてタスクの実行順番を決定することで最 適な作業計画が計算できることを示した。 また、組織パフォーマンス評価の結果をもとにし て各作業者への教育を組織構造情報に反映させるこ とで教育の効果を定量的に分析でき、組織パフォー マンスの向上への知見を得られることを示した。 今後は、実際のデータを用いて計算を行うことで 本手法の有用性を示すことが求められる。

謝辞

本研究は科研費基盤研究(A)20246123 の支援を 受けた。

参考文献

[1] IBM, ‘FileNet Business Process Manager’, http://www-01.ibm.com/software/data/content-manageme nt/filenet-business-process-manager/simulator.html [2] (株)日本海洋科学, ‘PMT (Process Management Tool)’,

2009

[3] Deborah Sadowski, Vivek Bapat, ‘THE ARENA PRODUCT FAMILY: ENTERPRISE MODELING SOLUTIONS’, Proceedings of the I999 Winter Simulation Conference, p159-p166, 1999

[4] Kazuo Hiekata, Hiroyuki Yamato, Wataru Oishi, Yuichi Sasaki, Kei Sato, ‘A Knowledge Management Framework for Marine Propeller Design’, International Conference on Computer Applications in Shipbuilding, 2007

[5] BPMN ver1.0, http://www.diveintobpm.org/

[6] Bean.J.C, ‘GENETICS AND RANDOM KEYS FOR SEQUWNCING AND OPTIMIZATION’, ORSA Journal on Computing ,6, p154-160, 1994 溶接 仮付 色 トランス 塗装 ロンジ 板継 溶接 仮付 色 トランス 塗装 ロンジ 板継

表  1:  遺伝的アルゴリズムの設定 遺伝子長 タスク数 個体数  10  世代数 200  突然変異率 0.1  交叉 一点交叉 交叉率 0.7  選択  ルーレット選択  3.1  ケース1  ここで想定する部門の組織構造情報を表2で示す。 ケース1では部門長が作業計画を作成する。なお、 本論文では、必要な作業員情報として作業計画立案 者とその直属の部下のスキル情報に限定して抽出を 行っている。  表2:ケース1における部門のスキルリスト  所属 スキル板 継 ロン ジ トラン ス  仮付 溶接 塗装

参照

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