平成
28年
度
特定の課題 についての学修の成果
高校 日本史
Aに
おいて歴史的思考力の育成を支援する
学習アプ リ「史考ツール」の開発 と実践
兵庫教育大学
教職 大学院
学校教育研究科
教育実践高度化専攻
授業実践開発 コース
P15023H
小
川
雄
太
目
次
第 1章 緒論 1.1 研究の目的 1.2 研究の背景 1.2.1 若者の歴史離れ 1.2.2 生徒を取 り巻 く環境 1.2.3 歴史授業の抱 える課題(D
現任校 における課題("
一方通行の歴史授業(9
「暗記」 して入試に備える歴史授業(0
「暗記」す る歴史授業か らの転換 1.2.4 歴史的思考力の育成 1.3 先行研究の整理 1.3.1 歴史教育における歴史的思考力育成に関する先行研究(1)学
習指導要領 における歴史的思考力の位置づけ(2)歴
史的思考力の概念 (め 歴史的思考力の育成 に関す る実践 とその課題 1.3.2 歴史授業におけるICT活
用に関す る先行研究(1)授
業におけるICT活
用の考 え方("
歴史授業におけるICT活
用の考え方(9
歴史授業におけるICT活
用 の実践事例 1.4 問題 の所在 1.5 研究のアプローチ と論文の構成 第2章 歴史的思考力を育成す る授業モデルの構築 2.1 目的 2.2 歴史的思考力の整理 2.2.1 歴史的知識 との関係(1)対
置 され る歴史的思考力 と歴史的知識("
黒川の指摘 . 10 10 10 10 112.2.2 歴史的思考力の構成要素
(1)坂
井の指摘 ② 日本学術会議高校地理歴 史教育に関する分科会の指摘(0
池尻の指摘(4)後
藤の指摘(D
鈴木の指摘(0
梅津の指摘 2.3 歴史的思考力 を育成す るための手立て 2.3.1 思考をガイ ドする手立て 2.3.2 既存の思考ツール(1)PMI(い
いこと 。わるいこと 。お もしろいこと)('
マ トリックス (表)(0
ステ ップ 。チャー ト(0
フィッシュボーン (特性要因図) (め 既存の思考ツールの問題点 2.3.3 歴史的思考力を育成す るための思考ツール(1)事
実判断ツール(D
小推論ツール ③ 大推論 ツール (の 価値判断 。意思決定ツール 2.4 歴史的思考力を育成す る授業モデル 2.5 本章のま とめ 第3章 歴史的思考力の育成 を支援す る学習アプ リの開発3.1
目的 3.2 開発のコンセプ ト 3.3 学習アプ リ「史考ツール」の開発 3.3.l Excel VBAに よる開発 3.3.2 「史考ツール」の構成(1)管
理 シー ト("
事実判断シー ト(3)事
実判断集約シー ト 11 11 11 12 12 12 12 13 13 14 14 14 14 15 16 16 16 17 18 18 19 20 21 21 22 22 22 22 23 25(0
小推論 シー ト ⑤ 大推論 シー ト (小推論集約シー ト)(6)大
推論集約 シー ト (つ 価値判断・意思決定シー ト(8)価
値判断・意思決定集約 シー ト(0
価値判断・意思決定グラフ化 シー ト(10
リンク集 シー ト3.4
「史考ツール」の学習環境 3.4.1 クラウ ドサー ビスの利用 3.4.2 教室環境 3.5 本章のま とめ 25 25 25 25 25 29 29 29 29 29 32 42 42 42 42 42 43 第4章
「史考 ツール」 を活用 した歴史的思考力を育成す る授業の実践 とその評価 4.1 目白1 334.2
実践 のデザイ ン33
4.2.1 使用姉 33 4.2.2 単元構成 の コンセプ ト33
4.2.3 指導計画 33(1)単
元の指導計画33
(D
各 時間の指 導計画35
① 第1時 江戸初期の鎖国へ至る外交政策を学習する35
② 第2時
事実判断を中心に,江戸末期の開国へ至る外交政策を学習す 38 る ③ 第3時
小推 論 を 中心 に,江
戸 末期 の開 国 へ 至 る外 交政 策 を学 習 す 39 る ④ 第4時
大推論 と価値判断・意思決定を中心に,江
戸末期の開国へ至 40 る外 交政策 を学習す る 4.2.4 実践 の手続 き(1)実
践対象者(2)実
践時期(3)事
前評価項 目 ① 日本 史の授業 に対す る意識 を把握す る項 目 ② 歴史的思考力に対する意識を把握する項目③
ICT機
器に対する親和性を把握する項目(4)事
後評価項 目 ① 日本史の授業に対する意識を把握する項 目 ② 歴史的思考力に対する意識を把握する項 目 ③ 「史考ツール」全般に対する意識を把握する項目 ④ 「史考ツール」の各シー トに対する意識 ⑤ 授業全体の感想を把握する項 目4.3
実践の結果と考察 4.3.1 実践対象者の状況(1)日
本史の授業に対する意識(0
歴史的思考力に対する意識・ , (め
ICT機
器 に対す る親和性 4.3.2 実践の様子(1)第
1時 江戸初期の鎖国へ至る外交政策 を学習す る("
第2時
事実判断を中心に,江 戸末期の開国へ至る外交政策を学習す る(D
第3時 小推論 を中心に,江
戸末期の開国へ至 る外交政策を学習す る(0
第4時
大推論 と価値判断・意思決定を中心に,江
戸末期の開国へ至 る 外交政策 を学習す る 4_3.3 実践の評価(1)日
本史の授業に対す る意識("
歴史的思考力に対す る意識 (め 「史考ツール」全般に対する意識(0
「史考ツール」の各シー トに対す る意識 4.3.4 本実践に対す る生徒の感想(1)タ
ブ レッ トPCを
使用 した授業について(D
「史考ツール」を活用 した授業について (め 歴史的思考力について(0
グループでの学習について(5)授
業全体について(0
改善点について 4.3.5 教員の評価(1)評
価項 目(2)結
果 43 43 43 44 44 44 45 46 46 46 46 47 48 48 48 51 54 55 55 57 58 59 60 60 61 1 2 2 2 3 3 ・ 4 6 6 6 6 6 6 64.4
本章のま とめ 第5章 結論及 び今後 の課題 5.1 本研究で得 られた成果 の整理 5.1.1 歴 史的思考力 を育成す る授業モデル の構築 5。1.2 歴 史的思考力 を育成す る学習 アプ リの開発 5.1.3 「史考 ツール」を活用 した歴 史的思考力を育成す る授 業の実践 とその評 価 5.2 教育実践への示唆 5。3
今後 の課題 文献 本研 究に関す る学会発表 謝辞 資料 6 6 6 6 6 6 67 68 69 73 74 75第 1章 緒論
第
1章
緒瞼
1.1
研究の 目的 本研究の 目的は,高
校 日本史Aに
おいて,歴
史的思考力の育成 を目指す授 業モデルの構 築及びそれを支援す る学習アプ リを開発 し,そ
の効果を実践的に検証することである。1.2
研究の背景 1.2.1 若者の歴史離れ 世の中には様 々な事件が起 きてお り,若
者が犯人である凶悪事件 もよく聞かれ る。2008 年 に起きた秋葉原連続無差別殺傷事件 もその一つである。この事件 と1989年に起 きた宮崎 勤事件 を分析 した吉岡 (2008)は,犯
人に見 られ る共通点 として 「小 さな物語」 に生きて いたことを指摘 している1)。 「小 さな物語」とは「革命だの解放だの,あ
るいは共栄だのと いった『 大きな物語』」"に対 して 「大風 呂敷 を前提 とした秩序か ら自分を切 り離 し,一
人 ひ とりの生活実感 に基づ」 "く とい うものである。また,吉
岡は宮崎勤元死刑囚が精神科医 と戦争についての話を交わ した ときのことを「そのとき宮崎はポカーンとした。『 えっ, 日本 とアメ リカは戦争 を したの?』 とびっくりしている。」 と記 しているう。そ して,「
小 さな物語」に生きることは,「
それが精緻 に,濃
密になつていけばい くほど,他
者 と切れ ていき,一
人ひ とりが周縁化 され る。誰 にも承認 されていない,と
い う孤立感や焦燥はあ つとい う間に攻撃性に転化 し,自
己顕示的な破壊行為 となつて暴発す る。そ うなる前に作 用すべき内発的なブ レーキが,歴
史や事実に関心のない『 小 さな物語』には組み込まれて いないか らだ。」0と述べて,歴
史離れか ら生 じる「小 さな物語」が若者の間に広がること に警鐘 を鳴 らしている。そ して,吉
岡は 「歴史は,素
朴には好 きか嫌いか しかない人間の 感受性 に,広
さと深みを与えて くれ るものである。」のと述べて,歴
史を学ぶ ことの必要性 を説いている。 このように歴史を学ぶ ことは,我
々の内面に見えない作用を及ぼ している。そ して,歴
史意識の喪失によつて 「小 さな物語」に閉 じこもることは, とても危険な状態であると考 えられ る。 1.2.2 生徒を取 り巻 く環境 また,若者 を取 り巻 く現実社会 も変化 してきている。高校生に関係の深い出来事 として, 参政権の獲得 をその一例 として挙げることができる。1947年以来,公
職選挙法において, 選挙権年齢は20歳
以上 とされてきた。 しか し,国
民投票法の改正に続き,2015年
には公 職選挙法が改正 された ことで,早
くも高校3年
生 (18歳)が ,選
挙 とい う場 において政治 的な意思表明をす ることができるよ うになつた。 2016年夏に行われた第24回参議院議員通常選挙において,全
国で 18歳 となつた高校3第 1章 緒論 年生が初 めて投票す る状況 となつた。総務省 (2015)に よると
,こ
の選挙における 18歳 の 投票率 (選挙区)は
51.17%で あ り。,全
体の確定投票率を 3.53ポ イ ン ト下回つため。 選挙権の行使に際 しては,現
代社会 を自分な りに捉 え,そ
の課題について自分な りの考 えを持つていることが不可欠である。そのためには,現
代社会 を過去 と比較 して考察す る ことが必要であ り,過
去 を学ぶ とい う歴史教育の重要性が改めて認識 されなければな らな い と考える。 1.2.3 歴史授業の抱える課題(1)現
任校における課■ 現任校 は,普
通高校ではな く専門高校である。そのため,各
学科の専門教科が中心であ り,専
門教科 と比較す ると地歴科を含む一般教科 の授業時数 は少ない。現任校のカ リキュ ラムにおいては,全
員が,公
民科における科 日として,高
校 1年生で現代社会 (2単位),
地歴科における科 日として,高
校2年
生で 日本史A(2単
位),高
校3年生 (2単 位)で
世 界史Aを
履修 している。 これ ら3科
目の どれ も,1週
間に2時
間 とい う時間配当である。 このような状況では,生
徒に とつてメインになるのは,や
は り専門教科である。そのため, 一部の歴史好きの生徒 を除いて,日本史Aや
世界史Aな
どの歴史授業へはあま り身が入 ら ないよ うであつた。 しか し,生
徒に とつて卒業す るために必要な科 目だか ら勉強す るとい うスタンスではな く,内
発的な動機づ けに支え られた歴史授業 を展開す る必要があると考 える。 ② 一方通行の歴史授業 中学校や高校 の学校現場での見間を踏 まえると,中
学校社会科の歴史的分野や高校地歴 科の 日本史や世界史な どの歴史授業は,「
暗記」す るだけの教科だ と認識 されていること が多いと感 じる。また,戸
井 田 (2004)は,「
細かな事実的知識 を覚え込む暗記科 日とし て うけとめられがちな節がある」0と述べている。 その理由の一つ として,授
業形態上の課題が挙 げられ る。授業を進 める側の教師の課題 として,北
村 (2015)が「歴史的分野では事実を説明 し,板
書す る講義型の授業が どうし ても多 くなる」つと指摘するように,歴
史授業は教師か ら生徒への一方通行の授業形態にな つていることが多い。そのため,生
徒は教師が講義 したこと,板
書 した ことを事細か く, 「暗記」することに繋がるのだ と考えられ る。 「暗記」す るだけの授業では,本
当の意味 において,生
徒が 自身で歴史を考えることが少なくなつていると考え られ る。 一方で,昨
今,国の教育施策 として「教員による一方向的な講義形式の教育 とは異な り, 学修者の能動的な学修への参加 を取 り入れた教授 。学習法」Dであるアクティブ・ ラーニン グが推進 されている。 これ らのことを踏 まえると,ア
クテ ィブ・ ラーニングの要素を取 り入れ るなど,生
徒 自 身が歴史を考えることを意識す るよ うな授業に してい く必要があると考え られ る。 ③ 「晴記」 して入試に備える歴史授業第 1章 緒論 教師か ら生徒への一方通行的 な授 業形態 にな り
,生
徒 が 「暗記」す る歴 史授 業 に陥 って しまってい るのは,歴
史 を担 当す る教師だ けの問題 ではない。 それ は,中
学校 か ら高校 ヘ と進学す る際や 高校 か ら大学へ と進 学す る際 の入試 問題 も要因 の一つで あ る と考 え られ る。 学校現場 が入試 を強 く意識 してい ることに関 して,中
切 (2003)は,い
わ ゆる進学校 で は 「国公 立大学合格 実績 ひいて は繰 り返 し実施 され る模擬 テ ス トの偏差値 に縛 られ,暗
記 に偏 つた出題 の入試 に対応す る授業 を行 つてい るのが現状 である」9と述 べてお り,「
問題 の根源 は入試 問題 にあ る」10と指摘 してい る。 また,油
井 (2009)は,歴
史授 業が人名・ 年号 。事件 な どの暗記 中心 の詰 め込み型 の教授 法 で行 われ てお り,生
徒 たちに 「考 える面 白さ」が伝 わ つていない こ とを指摘 してい る11) 歴 史授業 にお いて,教
師が入試 を意識 す るこ とは当然 の こ とではある。 しか し,入
試 に とらわれす ぎて しまってい る現状では,生
徒 の興 味 。関心 を高 める授業 の実現 は困難 で あ る。 そのため,「
暗記」 中心 の歴史授業 か らの転換 を図 るため,何
らかの手 立てが必要 で あ る と考 え られ る。0
「晴記」す る歴史授 業か らの転換 高等学校学習指導要領 (2010)に「日本史学習のね らいは,決
して個別・ 詳細 な知識 を 数 多 く記憶す ることではない」1のと述べ られてい るよ うに,歴
史授業 の本質 は「暗記」す る こ とではない。 また,加
藤 (2013)は,戦
前 の国史教育 は,歴
史樹教育 の普遍性 が通用せ ず,皇
国史観 に基づいた 「国民教育 の核 心」で あつた こ とを指摘 してい る1う。同様 に,谷
口 (2008)は,歴
史教育 は,教
養 主義的 な側面 を持つ一方,国
民 としての求心力 を強 める教 科 と して政治 的 に利 用 され て きた過 去の経緯 が あ るこ とを指摘 してい る14)。 また,森
分 (1996)は 「歴 史で教授 され るのは事実ではな く,一
つ の価値観 か ら捉 え られた事象像で あ り,解
釈 である。」1うと指摘 している。それ に続 けて,第
二次世界大戦前 の天皇中心の価 値観,第
二次世界大戦後 の冷戦下にお ける協調,勤
勉,進
歩 を価値 とす る教育 と「科学的 。 民主的」 とい う名 の もとに社会 主義思想教育 が進 め られて きた こ とを例 に して,「
特 に歴 史 は,思
想教育 の手段 となる。」 と述べてい る10。 つ ま り,自
分 の 日ではな く,人
の 目を通 した歴 史事象 の 「暗記」だ けで は,一
定の価値 観 を教 え与 えることにな り兼ね ない とい える。 そのため,生
徒 に 「暗記」 させ るのではな く,生
徒 の頭 で考 え させ る思考力の育成 が強 調 され るよ うになった。歴 史授 業 にお ける思考力 は歴 史的思考力 と呼 ばれ てい る。戸井 田 (2004)は ,「『歴史的思考力』の育成は,こ とに高等学校世界史および 日本史にとつて, 最重要な教育課題の一つである」1つと述べている。歴史的思考力の育成は,最
重要な課題 で あ り,学
校現場の授業においてこそ,そ
の実現を目指 していくべきだ と考える。 1.2.4 歴史的思考力の育成 2007年に改正 された学校教育法においては,「
前項の場合においては,生
涯にわた り学 習す る基盤 が培われ るよ う,基
礎的な知識及び技能 を習得 させ るとともに,こ
れ らを活用第 1章 緒論 して課題 を解決す るために必要な思考力
,判
断力,表
現力その他の能力 をは ぐくみ,主
体 的に学習に取 り組む態度 を養 うことに,特
に意を用いなければならない。」 (第 30条第 2 項)と
規定 されている。 このことによ り,基
礎的・基本的な知識 。技能 と共に,思
考力・ 判断力・表現力等及び学習意欲 を重視す る方向性が示 された。前項で戸井 田が述べてい る よ うに,歴
史教育において も歴史的思考力の育成は重要課題 である。 また,高
等学校学習指導要領 (2010)では 「高度で複雑な内容に深入 りした り,細
かな 事象の記憶 に偏 つた りした学習 は,か
えつて思考や理解 を深めることにつなが らないこと が多い」1のと述べ られている。そのため,思
考力を高めるために,「暗記」による歴史授業 か らの転換が図 らねばな らない。 日本学術会議高校地理歴史教育に関す る分科会の提言 (2011)では 「歴史教育は,元
来,『
歴史的知識』の伝達 と『 歴史的思考力の育成』 とが 車の両輪 として進 め られ るべ きものであるが, 日本の場合は,圧
倒的に前者 に偏重 した教 育が進め られてきた」lDと指摘 している。 以上のよ うな背景か ら本研究は,「
暗記」す ること,す
なわち,歴
史的知識 の伝達に偏 重 し過 ぎる歴史授業ではな く,生
徒が考 えること,す
なわち,歴
史的思考力の育成 を重視 す る授業モデルの構築 に取 り組む ものである。1.3
先行研究の整理 1.3.1 歴史教育における歴史的思考力育成に関する先行研究(1)学
習指導要領 における歴史的思考力の位置づけ 歴史的思考力 とい う言葉が,学
習指導要領 に登場 したのは1956年
の ことである。1956 年告示の高等学校学習指導要領 の世界史の 目標 には 「世界史の発展 を科学的,系
統的に理 解す ることによつて,歴
史的思考力を育て,現
代社会の諸問題 を,世
界史的立場か ら,客
観的に批判す る能力 と態度 とを養 う」19と述べ られている。 そ して, 日本史に関 しては,1970年
告示の高等学校学習指導要領において,歴
史的思考 力 とい う言葉が登場す る。 日本史の 目標 には 「わが国の歴史に関す る基本的事項を理解 さ せ,歴
史的思考力 をつちかい,各
時代の性格や時代の推移 を把握 させて,そ
れぞれの時代 のもつ歴史的意義を考察 させ る」20と述べ られている。 2009年に告示 された現行の学習指導要領においては,世
界史Aの
目標 に「近現代史を中 心 とす る世界の歴史を諸資料に基づき地理的条件や 日本の歴史 と関連付 けなが ら理解 させ, 現代の諸課題 を歴史的観点か ら考察 させ ることによつて,歴
史的思考力 を培い,国
際社会 に主体的に生きる日本国民 としての自覚 と資質を養 う。」21)と ぁる。また,日本史Aの
目 標 に 「我が国の近現代の歴史の展開を諸資料 に基づ き地理的条件や世界の歴史 と関連付 け, 現代の諸課題 に着 日して考察 させ ることによつて,歴
史的思考力を培い,国
際社会に主体 的に生きる日本国民 としての自党 と資質 を養 う。」2"とぁる。 このよ うに,歴
史的思考力は 1970年 に学習指導要領 に登場 してか ら,現
在まで長年にわ た り重要なもの と位置づけられてきたことが分かる。 しか し,学
習指導要領 において,そ
第 1章 緒論 の明確な定義はな されていない。そのため
,論
者 によつて,さ
まざまな歴史的思考力の考 え方があ り,そ
れに基づいた実践が行われている。 ② 歴史的思考力の概念 遠山 (1978)は,歴
史的思考力の育成 に関 して 「科学的歴史観形成の土台 となるもので あ り,歴
史学習の重要な目的の一つである。」2めと述べている。 しか し,前
項で言及 した よ うに,歴
史的思考力について確 固たる地位 を持 ち得た定義 は,未
だ存在 しない。 このこと に関 して,佐
々木 (1996)は 「それを基に授業を組織することが可能なレベルで規定され てお らず,歴
史授業構成の基盤 となる形での確定は未だ為 されていない」20と述べている。 先行研究にある歴史的思考力の定義 として以下のようなものがある。 大森 (1971)は「歴史の発展に見 られ る因果関係 を考えた り,諸
事象間の相互の関連 を 総合的に考えた りす る能力」2Dと した。 児玉 (2000)は 「『 思考』 とは,一
般 に『 人間の知的活動すなわち帰納・ 演繹・判断 。 推理等の理性のはた らきの総称で,人
間存在の本質である』 と言われ る。歴史的思考力 と は,そ
のような理性のはた らきによつて一定の認識を得る力である」20と した。 坂井 (2000)は 「『 歴史的なものの見方・考え方』 (中略)そ
れは,私
たちが過去に向 き合 う過去認識 としての『 見方・考え方』を指 し,他
方では過去の視点や立場か ら現代の 事象を読み解 くための現代認識 の『 見方・考え方』をい う」2つとした。 山本 (2004)は 「時間軸の中での因果関係 に基づき,社
会の構造 とその変化,社
会 と社 会の関係,そ
してそれ らとの関連で人々の生き様を分析考察する力」20と した。 鈴木 (2015)は 「歴史学の研究によつて導き出された知識 と方法に基づいて,歴
史事象 及びその解釈 を批判的 。論理的に捉 え,歴史的全体性の中に位置づける力であるとともに, 現代社会の在 り方 を問い直 し,未来の社会を構想す る上での基盤 となる知的能力である」2の とした。 このように, さまざま歴史的思考力についての定義がある。 このことに関 して,戸
井 田 (2004)は,歴
史的思考力 に関す る研究における問題 として,第
一に概念を十分に定義せ ずに,指
導方法な ど周辺の付帯条件の検討 に終始す る傾 向があること,第
二に定義が進 ま ない大きな要因 として歴史的思考力が本来的に抱 えてい る抽象性や応用性な どにあること を指摘 している30。 ③ 歴史的思考力の育成に関する実践 とその課題 歴史的思考力に関す る実践には,以
下のよ うなものがある。 玉谷 (2014)は , 日本史Aに
おける歴史的思考力 を培 うレポー ト課題による実践ついて 報告 している31)。 長期休業中の夏休み と冬休みに宿題 として課 した二つの レポー トの内容か ら,歴
史的思考力の高ま りを示唆 してお り,歴
史的思考力の中身について,明
確 に言及 さ れていない ものの,歴
史的思考力を培 う実践 と言える。また,「
生徒同士の輪読や発表の 機会を設 けて,生
徒同士が 自分以外の生徒 は どう考えているのかを知 り,お
互いの考えに ついて意見を交換 し合 う活動 を通 してそれぞれの考察を深める機会を設 けることは,生
徒第 1章 緒論 の歴 史的思考力 を高める可能性 が高い と考 え られ る」 と述べてお り
,そ
の よ うな考察 を深 め合 う機会 を どの よ うに設 定す るか を今後 の課題 と してい る。 後藤 (2014)は,世
界史Aに
おいて,思
考の方法 を定着 させ る手立てに よる歴史的思考 力 を培 う実践 について報告 してい る3"。 歴史的思考力 を時系列的思考力,分
析的思考力,価
値判断・ 意思決 定力 か らな る もの と捉 え,歴
史的 な見方や考 え方 と しての 「思考 スキル」 を定着 させ てい く指導 と評価 を行 うことで,歴
史的思考力 の高 ま りを示唆 してい る。 しか し,プ
リン トの穴埋 めな どの学習が 中心 となつてお り,生
徒一 人一人が どの よ うな 「思考 スキル」 を意識 したか 自身 で振 り返 つて評価 をす るものであった。 そ して,単
元末 に 自分 の主張 を行 う場 を設 定す る とあ るが,ど
の よ うな意 見の交流が行 われたかは示 され てい な か った。 また,歴
史的思考力 を培 えてい るか ど うかの評価 を どの よ うに行 うか を今後 の課 題 としてい る。 生 田 (2015)は,時
代 を大観す る学習 において歴 史的思考力 を育成す る実践 につ いて報 告 してい る30。 この実践 にお ける歴 史的思考力 を「歴 史的因果関係 を踏 まえ時代構 造 を とら える能力」 とした上 で,コ
ンセ プ トマ ップや シュ ミレー シ ョングー ムを活用 した実践 を行 った。グループの ワー クシー トをOHCで
拡大表示 しての生徒相互の評価や議論 を行 つてい る。生徒 の手書 きの文字 によるものが「プ レゼ ン資料」として図示 されていた。それ をOHC
で拡大表示 して も,見
えに くい ものではなか つたか と推測 され る。 また, どの生徒 も充足 感 をもつて時代像 を解釈 してい くこ とがで きるよ うな 「支援 の あ り方」 を今後 の課題 と し てい る。 この よ うに,歴
史的思考力 の育成 に関す る実践 か ら,生
徒 の意見交流 の場 を どの よ うに 設 定す るか とい うこ と,意
見交流 を行 う際の物理的 な支援 を どのよ うに行 うか とい うこ と が課題 となってい ることが分か る。 この よ うな課題 に対処す るた めには,様
々なアプ ローチが考 えられ るが,そ
の一つ と し てICT活
用が挙 げ られ る。小林 (2015)は,タ
ブ レッ トPCの
活用 に関 して 「協働学習 と の相性 も本実践か ら考 える とよ さそ うだ。」30と指摘 してい ることか らもICT活
用 が一つ の方向性 であると考 え られ る。 1.3.2 歴史授業 にお ける ICT活用 に関す る先行研究(1)授
彙におけるICT活用の考 え方 2009年に告示 され た現行 の学習指導要領 の総則 にお いては,「
各教科・ 科 目等の指導 に 当たつては,生
徒 が情報モ ラル を身 に付 け,Jン
ピュー タや情報通信ネ ッ トワー クな どの 情報手段 を適切 かつ実践的,主
体的 に活用 で きるよ うにす るた めの学習活動 を充実す る と ともに,こ
れ らの情報手段 に加 え視聴覚教材や教 育機器 な どの教材・ 教具 の適切 な活用 を 図 ること39」 とある。授業 において,ICTを
教材・ 教具 として用い ることの必要性 が示 さ れ ている。 そ して,2010年
に公表 され た 「教育の情報化 に関す る手 引」 にお いて,「ICT
を活用 した授 業 は,児
童生徒 に対 して学力 向上 に高い効果 があ り,そ
れ を教員 も認 めてい第 1章 緒論 ることが明 らか となつている」30こ とが示 され
,ICT活
用による教育効果に言及 している。 2011年の 「教育の情報化 ビジョン」においては,情
報通信技術の活用 として 「学習者用 の情報端末や電子黒板等を無線LANで
つなぎ、情報端末への書き込みを電子黒板等におい て共有することにより、子 どもたちが教え合い、学び合 う、双方向型の授業の充実を図 る こと」3つ,「 ぉ互いに話 し合 うな どの協働学習等を通 じて子 どもたちの興味関心を高め、自 らよ り深 く調べ よ うとする意欲 を引き出す こと」3Dなどが示 されている。 したがって,生
徒が思考す る場面や協働的な学習の場面 を支援 した り,双
方向型の歴史 授業を目指すにあたつて,ICT活
用によるアプ ローチは効果的であると考えられ る。 また,今
の生徒の世代を,デ
ジタルネイティブ (digital native)と 呼ぶ ことがある。デ ジタルネイティブ とは 「パ ソコンや携帯電話などの情報機器 と,イ
ンターネ ッ トの各種サ ー ビスに,幼
少期か ら慣れ親 しんだ世代を指す。おおむね1990年以降に生まれた世代が該 当す る。米国の調査会社が提唱 した概念で,消
費者向けのITが高度化 してきた ことが背景 にある。全人 口に対す るデジタルネイティプの比率が増 えることによつて,社
会的な変化 が生 じると予測 される」30と説明 され る。 このことを踏まえると,授
業においてICTを
有 効に活用す ることは,デ
ジタルネイティブと呼ばれる世代に対 して,自 然 と授業への興味 。 関心を高められ るのではないか と考えられ る。 ② 歴史授業における ICT活 用の考え方 高等学校学習指導要領地理歴史科編には 「地理歴史科 においてもコンピュータや情報通 信ネ ッ トワークな どを積極的に活用す るとともに,情
報手段 を主体的に活用できる学習の 工夫が求められている」40とぁ り,地
理歴史科でのICT活
用が重視 されている。 「教育の情報化に関する手引き」で│二 地理歴史科の世界史や 日本史でのICT活
用の具 体例 として,次
のような具体例が挙げられている41)。 ・世界史に関する楽由などを視聴 させた り,絵
画・ 写真な どを鑑賞 させた りして,そ
の時 代の社会的背景をつかませ るとともに,歴
史事象 に関す る多面的な関心を高める。 。「持続可能な社会への展望」 (世界史 ⊃,「
資料を活用 して探究す る地球世界の課題」 (世界史B)に
おいてインターネ ッ トな どを活用 して,各
種の資料な どを収集 し,その内 容をまとめた り,そ
の意図やね らいを推測 した り,資
料への疑間を提起 した りす る活動 を通 して,資
料を多面的・ 多角的に考察,活
用,表
現す る技能を身に付ける。 。「現代か らの探究」 (日本史Al,「
歴史の論述」 (日本史B)に
おいて,イ ンターネ ッ トな どを活用 して,歴史に関す る各種資料を収集 し,それ らの資料を分析 し,活
用 して, 自分の考 えをワープロソフ トな どを用いて記述,表
現す ることで,歴
史的な見方や考え 方を身に付ける。 このように,地
理歴 史科においてICT活
用の方法が具体的に例示 されている。 これ らの 具体例は,イ ンターネ ッ トを活用 しての資料の鑑賞や収集,ワ
ープロソフ トなどを用いて の文書の作成が中心である。歴史的思考力の育成に関す るICT活
用や意見交流を行 う際の 支援 としてのICT活
用の事例は見 当た らない。第 1章 緒論
(0
歴史授 業にお けるICT活用の実践事例 大島 (2007)は,高
校世界史にお けるICT活
用 として,電
子黒板 を用いた実践 につ いて 報告 してい る4"。 普通黒板 よ りも電子黒板 を使 うことによつて,授業 のわか りやす さや復習 す る際 のわか りやす さが向上す るこ とを示唆 してい る。 また,実
践 によ り,授
業者 は授 業 内容 を振 り返 るこ とで授 業改善 に大 き く役 立 った ことや機器 の設置以外 に特別 な準備 を要 せず,普
段 の授業 と同様 に行 えた ことを成果 として述べてい る。 鈴木 (2013)は,高
校 日本 史に対す る関心 。意欲 を向上 させ るため,プ
レゼ ンテー シ ョ ン ソフ トを活用 した実践 について報告 してい る4う。奈 良時代や平安時代 を単元 とす るプ レゼ ンテー シ ョンソフ トに よる教材 を作成 し,そ
れ を用 いた実践 を行 つた ものである。ICTを
活用す ることによる,生
徒 の 日本史 に対す る関心・意欲 の高 ま りを示唆 してい る。一方 で, 教材デー タの作成 に時間がかか ることを課題 として挙 げてい る。 小林 (2015)は,小
学校社会科歴 史学習において,6年
生 の生徒 が一人一台 タブ レッ トPCを
活用 した実践 について報告 してい る4の。 ジグ ソー法 によつて,生
徒が専門家 グループ での調べ学習の際,資料 をタブ レッ トPCの
カメラ機能 で撮影 して,デジタル コンテ ンツ化 した。 それ を使 つて,自
分の調べ た ことを説 明す るとい う実践である。 また,SKYME剛
Class(Sky株
式会社 の学習活動支援 ソフ トウェア)の
画面合体機能 を活用 し,4つ
の タブ レッ トPCを
つなげ大 きな画面 として意見の共有や交流 を行 つている。そ して,タブ レッ トPCの
登場 でデ ジタル コンテンツの活用 は今後 ます ます進展す ることを予想 してい る。 この よ うに,さ
ま ざまなICTを
活用す ることによつて,生
徒の興味 。関心 を高 めること や,理
解 を深 める ことに繋が るこ とが期待 で きる。 しか し,歴
史的思考力 をテーマ と したICT活
用 の実践や生徒 自身 がICTを
活用 した実践 は,管
見の限 り見当た らない。1.4
問題の所在 以上 に整理 した よ うに,歴
史教 育 にお いては,一
方通行 的で 「暗記」す る こ とが中心の 授業 か らの転換 が 目指 され てお り,そ
の一つ の方 向性 として,歴
史的思考力 の育成 が挙 げ られ る:し
か し,歴
史的思考力 の育成 に関す る実践か らは,生
徒 の意 見交流 を行 う際 の物 理的な支援方法が課題 となってい る。 その一つのアプ ロー チ として,ICT活
用が挙 げ られ る。 教科教育 にお けるICTの
活用 に よる教育効果 は明 らか となってい ることか ら,歴
史授業 において もICT活
用が広 が りつつ ある。 しか し,前
述 した通 り,歴
史的思考力の育成 をテ ーマ とした生徒の意見交流の場 を支援す るよ うなICT活
用 の先行研究は管見 の限 り見 当た らない。 これ らの ことか ら,高
校 日本史Aに
おいて,歴
史的思考力 の育成 を支援す るICT活
用の 有効 な方策 は確立 され ていない といえる。 そのための課題 となるものには、以下の3点
が 挙 げ られ る。 第一 に,歴
史的思考力 の実態 が定かでな く,そ
の授業モデル が確 立 されて いない こ とで第 1章 緒論 ある (以下
,課
題 1と略称。)。 第二に,歴
史的思考力の育成 を支援す るICT活
用の方策 が定かではないことである (以下,課
題2と
略称。)。 第二に,歴
史的思考力の育成 を支 援す るICT活
用の効果が定かではないことである (以下,課
題 3と 略称。)。1.5
研究のアプローチと臓文の構成 そこで,本
研究では,上
記の3つ
の課題 に対処す るため,歴
史的思考力の育成を支援す るICT活
用を位置付 けた授業 をデザイ ンし,授
業実践を行 うと共に,そ
の効果 を検証する こととした。 先ず,課
題1に
対処す るため,歴
史的思考力の捉 え方を分析 し,歴
史的知識 との関係 を 検討 した後,生
徒同士による協働的な思考場面を取 り入れた授業モデル を構築す ることと した。次に,課題2に対処す るために,ICTを
活用 した学習支援 システムの仕様 を検討 し, 開発を行 うこととした。そ して,課
題 3に対処す るために,構
築 した学習モデル とICTを
活用 した学習支援 システムを用 いた授業実践を行い,実
践的にその効果 を検証す ることと した。 このようなアプローチに基づき,本
研究では各章を以下のよ うに構成 した。 一章の構成― 第1章 緒綸 第1章
では,本
研究の 目的を踏まえ,研
究の背景,先
行研究の整理,問
題 の所在な どか ら研究課題 を明 らかに し,研
究の計画 と構造を策定す る。 第2章
鷹中的思考力を育成する授業モデルの構築 第2章
では,歴
史的思考力をまとめ,高
校地歴科の 日本史Aの
授業において,歴
史的思 考力を育成す ることのできる授業モデル を構築す る。 第3章 歴史的思考力の育成 を支援する学習アプリの開発 第3章では,第 2章で作成 した授業モデルを効率的に運用する学習アプ リの開発を行 う。 第4章
『史考 ツールJを
活用 した歴史的思考力を育成する授業の実践 とその評価 第4章
では,第 2章
で構築 した授業モデル及び第3章
で開発 した学習アプ リをもとにし た授業を試行的に実践 し,そ
の効果の検証をする。 第5章 結餞及び今後の課題 第5章では,本
研究で得 られた知見及び今後の課題 を整理す る。第2章 歴史的思考力 を育成する授業モデル の構築
第
2章
歴史的思考力を育成する授業モデルの構築
2.1
目的 本章の 目的は,高
校地歴科の 日本史Aに
おいて,歴
史的思考力を育成す る授業モデルの 構築を行 うことである。1956年告示の高等学校学習指導要領 に歴史的思考力 とい う語が登 場 して以来,歴 史的思考力の育成に関するさまざまな先行研究が行われてきた。本章では, これ らの先行研究の内容 を検討 し,歴
史的思考力の育成 と歴史的知識 の習得の双方に着 目 しなが ら,モ
デルイヒを試み る。2.2
歴史的思考力の整理 2.2.1 歴史的知識 との目係(1)対
置 される歴史的思考力 と歴史的知識 第1章
で述べた通 り,歴
史的思考力については学習指導要領での明確な定義がな されて いないことか ら,さ
まざまな捉 え方が見 られ る。 しか し,さ
ま ざまな歴史的思考力の とら え方がある中で,ど
の説においても,歴
史的思考力を育成す る授業は,「暗記」が中心 とな っている知識偏重型の歴史授業に対置す るもの との考えが根底 に見受けられ る。前章で述 べた 日本学術会議高校地理歴史教育に関する分科会 (2011)の 問題意識 においても,歴
史 的思考力の育成は,「暗記」 としての歴史的知識の伝達 と対置 されていた。 日本学術会議高 校地理歴史教育に関す る分科会の委員長 を務 めた油井 (2015)は,教
科書記述が増大 して いることに関 して「『 知識』の充実がかえつて『 思考力』育成の機会を圧迫 しているのでは ないだろ う力、」11)と述べてお り,こ
こで も知識 と思考力を対置 させて捉えている。また , 有 田 (2000)の 「歴史学習の目的は,入
学試験な どともか らんで,歴
史的思考力の育成 よ りも歴史的知識を時代順に教えることがより重要だ とい う考え方」4→があるとの指摘 も同様 の ものである。 前章で引用 した 日本学術会議高校地理歴史教育に関す る分科会の提言 (2011)に ある「歴 史教育は,元
来,『歴史的知識』の伝達 と『 歴史的思考力の育成』 とが車の両輪 として進め られ るべきもの」 との指摘 においても,歴
史的知識 と歴史的思考力は別物 として対置 させ られていることが読み取れ る。 また,論
文検索エンジンCi血 を用いて「歴史的思考力」と検索 した ところ,確
認できた 最古のものは,横
浜国立大学学芸学部付属横浜小学校 (1953)「社会科に於 ける歴史的思考 力の系統」であつた。 ここでは 「社会科 にお ける歴史教育 を,世
の常識的な批判に追従す る『 知識を与えさえすればよい』とい う近視眼的な観点に立つのではなく,見
方・考 え方・ 言い換えれば,歴
史的思考力を深めるとい う面に,問題の本質をとらえる」40と述べ られて いる。 このことか らも,歴
史的思考力は知識偏重型の歴史教育の反省の基にあつた とい う ことが窺える。第2章 歴史的思考力を育成する授業モデルの構築
(2)黒
川の指摘 黒川 (2013)は , 日本学術会議高校地理歴史教育に関す る分科会の提言 (2011)に つい て 「いささかの苛立ちを覚えたことを否めない。」4つと述べている。提言が 「一斉授業」を 「知識詰め込み型」の悪 しき典型 と捉え,歴
史的思考力の育成 を図るため,主
題学習や グ ループ討論などの機会を大幅に増加 しよ うとしていることに対 して疑間を投げかけている。 そ して,「さらにいえば,『思考力』 と『 知識』は二者択一ではない。それ どころか,『思考 力』を培 う前提 として,『知識』を授 けることは不可欠である。」4Dと指摘 し,「『 知識』と『 思 考力』を対置 させ るのではなく,本
来一体」40でぁるとの考えを主張 している。 また,黒
川の述べている通 り,「提言」の作成に関わつているのは 「教員養成 とは異なる 学部・学科に所属す る人々であ り,そ
の人々のなかに,学
校現場での歴史教育を十分に踏 まえていない」50こ とは十分考えられ る。実際の学校現場では限 られた授業時数の中で,歴
史的思考力を育成す ることと歴史的知識 を習得 させ ることの双方 を実現 しなければな らず, 当然 のことなが ら,歴
史授業を担 当 している多 くの教員は,歴
史的思考力を育成す ること と歴史的知識 を習得 させることの双方を重要であると捉 えている。 また,黒
り││は「現に行われている授業の多 くは、歴史事象の意味づけを伴わないたんな る事項の羅列に終始 して」50ぃる点を問題視 してお り,こ の点を改善することで歴史授業が これまで と違ったものになるのではないか と考えられる。 したがって,歴
史的思考力の育成 と歴史的知識の習得を対置 させて考えるのではなく, 黒川 の述べ るよ うに,歴
史的思考力を育成す ることと歴史的知識 を習得 させ ることは,本
来一体の ものであると捉 えてい くことが 自然な流れだ と考えられる。つま り,歴
史的思考 力の育成の過程で歴史的知識 の習得 を図 り,歴
史的知識 の習得の過程で歴史的思考の育成 を図ることが肝要である。2.2.2
歴史的思考力の構成要素 歴史的思考力の構成要素の捉 え方に関 しても,以
下のよ うにさまざまなものが見 られ る。 先行研究にある歴史的思考力の構成要素をまとめた上で,本
実践に適合す る歴史的思考力 の構成要素を選定する。(1)坂
井の指摘 坂井 (2000)は「過去 と現在の比較の思考」「推移 と変化の思考」「物事の始原について の探求」「社会条件などとの関連思考」と捉えた2つ。このような多様な思考様式の操作を基 盤に,「歴史事実」を読み解 き,意
味付 け,現
代生活 に活用す る営みを行 うもの と考 えてい る。(2)日
本学術会議高校地理歴史教育に関する分科会の指摘 日本学術会議高校地暉歴史教育に関す る分科会 (2011)は 「過去への興味 。関心の喚起」 「歴史的資料の調査力の育成」「歴史的分析・解釈力の育成」「時系列的思考力の育成」「意 思決定の連鎖 としての歴史学習」 と捉 えた5"。 歴史を学ぶ際のことだけでなく,「過去への第2章 歴 史的思考力 を育成す る授業モデル の構築 興味 。関心 の喚起」 な ど歴史 を学ぶ前 の こ とに も言及 してい る点が
,他
にはない特徴 とな っている。(3)池
尻の指摘 池尻 (2012)は,先
行研究の収集 を通 して歴史的思考力の分類 を整理 した結果,「史料 を 批判的に読む力」「歴史的文脈 を理解す る力」「歴史的な変化を因果的に理由付 ける力」「歴 史的解釈 を批判的に分析す る力」「歴史を現代に転移 させ る力」 と捉 えた5う。 また,各
々の 効果的な育成方法についても検討 を行つている。池尻のま とめた表 を表 Ⅱ…1に 示す。 表I-1
歴史的思考力の分類 と効果的な育成方法5め :畷1醐
‐雛 1■‖1菌灘覇蕃鷺ヂ華ア 聰 謗 史料 を批判的に 読む 力 デ ジタル・アーカイプの利用, 複数の史料 史料が書カサした意図 :こ関す る質問をす る 史特の定義 を記述 さ せ,変イとを分析す る 歴史的 文蘇 を理 解す‐る力 曰認)写真,オー ラル・ ヒス トリー,ア ドベ ンチ ャー ゲー ム 背景知識 を盛 り込ど) るス トー リー を作 ら せ る 歴 史的共感の5段階モ ァル に沿つて,思考の 段階 を分参子す る 歴 史的 な変化を 鶏果的 に理 曲付 :する カ コン‐t2ブ トマ ップを描 ける 10.環 境,シミ● レー シ ョン グーム 探求的 な繰題 を課 し, そグ)潟果縄係 を構 築 ききる 霧果的な論述議題 ″〉解 答 を多面性 と具体l■で 分析す る 歴 史的解歌 を批 半1的に分析する 力 ブジタル・アーカイプのf・ll用, ・マルチメデイア,複数の史料 2つの解釈が内在す るテーマで議論を行 力,せ る 議論内容′)多面性 を分 析す る 歴史を現代に転 移 させ る思 考力 _nンセブ トマ ップを描:する学 習環境,歴史と対応す る現代 的要素をま とめた教材 歴 史をアナ 摯ジー と して利 溝 じ〉現子せ縛i会 の問題解決 をさせ る 歴 史的事象 と類以す る 現代的事像 を記述 さ せ、量 と質 を分析す る(0
後藤の指摘 後藤 (2014)は 「時系列的思考力」「分析的思考力」「価値判断。意思決定力」と捉えた54)。 「分析的思考力」が 「比較 。関連付け等の分析を行 う力」 とされてお り,い
くつかの要素 を含んで大きく捉えている。(D
鈴木の指摘 鈴木 (2015)は 「論理的思考J「批判的思考」「イメージ的思考」 と捉 えた20。 歴史像 を 想起 させ る 「イメージ的思考」 を含んでいる点が,他
にはない特徴 となつている。(6)梅
津の指摘 梅津 (2010)は「内容教科である社会科において,『思考力・判断力』を授業づ くりの実 際 と結びつ くように根拠づけてい くためには,『思考力・判断力』と『 知識』,『思考技能 (問 い と資料活用の技能)』 との相互のかかわ りを説明 しなければな らない。」 とし,歴
史的思 考力 と歴史的知識を関連 させて説明 している5い。具体的には,表
Ⅱ‐2に
示す ように,歴
史 的思考力 として,「事実判断」「推論」「価値判断」「意思決定」「批判的思考」の5つを示 し ている。また,歴
史的思考力に関係す る歴史的知識 を 「事象記述」「事象解釈」「時代解釈」 「社会の一般理論」「価値的知識」(評価的知識,規
範的知識)「メタ知識」の 6層 で捉 えて い る。第
2章
歴史的思考力を育成する授業モデルの構築 表 肛-2
歴史的思考力と歴史的知識の関係 (梅津 20105Dょ リー都抜粋) 歴 史 的 黒 考 力 歴 史的 知 識 事実判断 資 (史)料
をもとに,事
実を判断 し記述 できる。 事象 記述 推論 事象 の原 因,条
件,結
果 や時代 の社会 の意義 。本質 を 解 釈 し説 明で き る。 事象解釈 時代解釈 社会の一般理論 価値判断 事象 の原 因,条
件,結
果や時代 の社 会 の意義 。本質 を 解釈 し説 明で きる。 価 値的知識 (評価 的知識) 意 思決 定 論 争 問題 や論争場 面 にお いて望 ま しい行 為や政策 を根 拠 に基づ いて選択 で きる。 価値 的知識 (規範 的知識) 批判的思考 歴 史的事象 に関す る言説 に内在す る価値・ 立場 を吟 味 で き る。 言説 の主張 の手続 き 。方法 を吟 味で き る。 メ タ知識 (知識 を解釈 す るた めの知識) この よ うに,い
くつかの歴史的思考力の構成要素の捉 え方 を比較 した結果,梅
津の歴史 的思考力の捉 え方 は,①
歴史的知識 と分か りやす く関連 させ ていること,②
歴史的思考力 が段階的に高められるようにしていること,③
問い と関連 させていること,と
いった点を 備 えている。そのため,歴
史的思考力を育成す ることと歴史的知識 を習得 させ ることを一 体のものであると捉 えるな らば,他
の歴史的思考力の構成要素の捉 え方に比べて活用 しや すい形 になってい る。 したがつて,本
研究では,梅
津の歴史的思考力の構成要素をベース に研究を進 めてい くこととす る。2.3
歴史的思考力を育成す るための手立て 2.3.1 思考をガイ ドする手立て 典型的な歴史授業は,教
師が作成 した授業プ リン トの空欄補充 とい う形式を取 りなが ら, 教科書に記載 されている歴史事象 を 「暗記」 してい くことが中心の知識偏重型であるとい える。 このことに関 して,北
尾 (1995)は 「日本の教科書は,事
実の記述があ り,推
論の 結果 としての知識が整理 して書かれている。」50ことゃ 「主たる教材 である教科書が知識の 体系化を記述 しているだけで」5つあることを指摘 し,「推論の過程,思
考の過程な ど説明 さ れていない」5つと述べている。つま り,単
なる歴史事象の「暗記」に終始す るよ うな,現
在 行われている歴史授業においては,歴
史的知識 を習得 させ ることは成 しえて も,歴
史的思 考力を育成す ることは難 しい とい うことになる。第2章 歴史的思考力 を育成する授業モデルの構築 また
,北
尾 は 「概念や知識 を操作 し、『 思考・判断』 を行 うためには、思考の道筋や形、 推論の方法について自覚 していることも大切である。」50と述べている。つま り,歴
史的思 考力を育成す るためには,思
考 をガイ ドす る何 らかの手立てが必要であることを示唆 して いる。 一方,黒
上 (2012)は 「知識は思考 と表裏一体で,切
つても切 り離せない」50ことゃ 「人 が ものを学ぶ とき,そ
れは知識だけを記憶す るのではなくて,さ
ま ざまな思考のプロセス を通 して身につけてい く」59こ とを述べている。そ して,「考 えるプ ロセスを,手
順 として 明示す ることで,子
どもたちはその手l頂を使 つて,求
められているとお りに考えを進 める ことができるのではないで しょう力、 (中略)こ
のような力は技能や技法,あ
るいはスキル といっていいのではないで しょう力、」59と述べ,そ
のような手順や図を示 した思考ツール の活用を提案 している。 同様 に,下
村 (2011)は「思考中にそれまで考えたことやそのベースとなつた事実を言 葉だけで理解 しよ うとしても限界があ ります。」60bと 述べ,思
考ツールの活用を提案 してい る。 また,下
村は 「人間は,言
葉 に発 しないで頭の中だけで考えよ うとして もなかなか考 え が進みません。」60pと述べ,「思考は言葉を介 して進みます。深い思考には,言
葉で正 しく表 現す る力が必要です。つま り,思
考力 を高めるためには,ま
ず言語力を鍛 えなければいけ ません。」61)と 述べている。 したがつて,生
徒一人ひ とりで思考ツール を活用す ることに終 わ らせ るのではな く,他
者へ説明す る場面な どを取 り入れてい くことが必要だ と考 え られ る。 そこで,本
研究では,歴
史的思考力を育成す るための方略 として思考ツール を活用す る と共に,授
業内において協働的な思考場面を取 り入れ ることとする。 2.3.2 既存の思考ツール 本研究での活用が想定 され る既存の思考ツール を黒上による『 シンキングツール∼考え ることを教えたい∼』(2012)から抜粋 し,そ
の特徴を整理する。(1)PH:(い
いこと・ わるいこと 口おも しろいこと) これは「対象について,『いい ところ(プラス:plus)』『 だめな ところ(マイナス:Minus)』 『 興味をもつ こと。おもしろいところ (イ ンテ レスティング:Interesingl』 の二つの視点 か ら印象や意見を書き込」62pむ ものである (図Ⅱ‐1)。(a
マ トリックス (表) これは 「目的や用途によつて,さ
まざまな場面で用い られます。シンキングツール とし ての表は,複
雑な事象 (資料)を
表 を使 つて分類 して整理す ることと,整
理 されたセル同 士の関係を見つけ出 してそれを表すために用い られ」6めるものである (図Ⅱ‐2)。(3)ス
テ ップ ロチヤー ト これは 「矢印 と囲みを用いて,テ
キス トや 自分の主張の順番を考えた り,複
数の事項が第2章 歴史的思考力を育成す る授業モデルの構築 起 こる順 番 を整理 した り,もの ご との手 順 を計 画 した りす るた めに用 い」64pるもので あ る(図 Ⅱ‐3)。
′ P購 ブラス いいところ M躊 マイナス だめなところ lM"resu インテレスティング おもしらいところ 図I-l PHl(lLL 201262p) 国
I-2
マ トリックス (黒上 20126つ) 日=-3
ステップ ロチャー ト(黒上 201260)0
フィッシュポーン(特性要因図) これは 「頭の部分においた事柄 (結果や問題)に
対 して,ど
のような要因や原因が関係 しているのか可能性のあるものを中骨 (実践め太い骨)の
ところに書き出して,そ
の要因第
2章
歴史的思考力を育成する授業モデルの構築 や原 因 をよ り具体的 に細分化 した ものを小骨 (点線 の細 い骨)の
ところに書 き込」6つむ もの で ある (図Ⅱ‐4)。 日=-4
フィッシュボー ン (黒上 2012θ))CD
既存の思考ツールの問題点 これ らの既存の思考ツールは,歴
史授業において分析の枠組み としての活用 を想定す る ことができる。特に,意
思決定を支援す るPMIは ,歴
史的思考力の育成において価値判断 や意思決定に援用することが考えられる。また,因 果関係 を分析するフィッシュボーンは, 事実判断に援用す ることが考 え られ る。一方,手
順 を整理す るステ ップ・チ ャー トは,そ
のままの形でも使用できるものの,一
定期間の歴史事象を流れ として捉 えるツールに変更 して援用す ることが考えられる。その際,因
果関係 を分析す るフィッシュボー ンとステ ッ プ 。チャー トを結び付けたツールを工夫す ることが考えられ る。また,マ
トリックスは, そのままでは歴史解釈に用いづ らいものの,情
報 を整理 して一つの解釈 を考 えるとい うそ の機能か らは,歴
史解釈の場面に援用す ることが考 えられる。また,PMI,マ
トリックス, ステ ップ・ チャー ト,フ
ィッシュボー ンのそれぞれの思考ツールは,思
考の過程が互いに 連動 してお らず,そ
のままの形で用いると生徒にとつて使いづ らいものになることが考え られ る。2.3.3
歴史的思考力を育成するための思考ツールの開発 梅津の歴史的思考力の構成要素を授業で用いるため,思
考ツールの活用 を検討 した。 そ の結果,歴
史学習向け作成 された有力な思考ツールは直接的には見当た らなかった。 しか し,そ
れぞれの思考ツールの機能の一部は,歴
史的思考を促す ツール として援用 しうる可 能性 を見出すことはできた。そ こで,従
来の思考 ツール を参考 に,歴
史学習向けの思考 ツ ールを新たに作成・改良 し,そ
れを活用 した授業モデルを構築す ることにした。具体的に は,事
実判断,推
論,価
値判断・意思決定の各思考場面を支援す る思考ツール を構築 した。(1)事
実判断ツール 歴史事象の事実判断,推
論 による事象記述,事
象解釈 を支援す るため,フ
ィッシ三ボー第2章 歴 史的思考力 を育成す る授業モデル の構築 ンを参考 に,思考ツール を作成 した。これ は,歴史事象 の
Wttn(い
つ),Ⅵ「詭re(どこで),Who(誰
が,誰
を),Whatttow(何
が,何
を, どの よ うに, どの よ うな),原
因,結
果 の 枠組みに よる分析 を行 つて,視
覚化 を図 るものであ る (図Ⅱ‐5)。 ‐11:itilil l大名制=
難し無事勝 あらたた奪. 響hen 1862妻F :: 警here::
生 麦村 :: 榊 奈り::県li
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殺傷した 警ho 薩 摩藩士が イギリス人を 図I巧
事実判断ツール ② 小推綸ツール 事実判断 ツールで分析 した歴史事象 の結果の部分 を使 つて,推
論によ り事象解釈・時代 解釈 。理論 の一般化 を支援す る思考ツール を作成 した。 これは,ス
テ ップ 。チャー トを参 考 に,歴
史事象の結果 同士の相互関係 を時系列的にマ ッピングす るものである (図Ⅱ‐6)。 図I-6
小推論ツール第
2章
歴史的思考力 を育成す る授業モデル の構築(3)大
推論ツール 小推論 ツールで分析 した推論 を組み合わせて,マ
トリックスを参考に,推
論 により事象 解釈・時代解釈・ 理論の一般化 を支援す る思考ツール を作成 した。 これは,小
推論ツール で分析 した短い時間幅の解釈 よりも,長
い時間幅の解釈 を行 うものである (図Ⅱ‐7)。1
量
雪
雫
戸
〒
書
1建
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多
│1戸
彗
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1862年 ∼13毬 年 こ ろ納縁 子 きま とおろと''・ 車事 せ舞彗 ― と長姻ft=準穐 争い 奮して いう一 方.菫方とも外 口狩 との畿 いに先 炊 しtいる。錬
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1059年11颯∼1009年こる0餃予奎まとめると'・・ lB4着懇と犠軟着蒻 鐸漱ぃとなり,IB尋府側 が発敗 しlttが完全 に童求 した, 方でン時 晩.反
目す る毅 郡 観 じ割彗^a麟
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も虚 しく,武力:こ よつて日― ・言 織 ,新た「― を迎えることとなった。 図I-7
大推論 ツール の 価値判断・ 意思決定ツール 事実判断ツールや推論 ツール を用いて学習 した一定の時代での歴史的論争問題 に対す る 価値判断 。意思決定を支援す る思考ツールを作成 した。足立 (1984)に よると,「根拠ない しは前提 に基づいて,主
張または結論を正当化 しよ うとす る言論 を『 議論』60」 とぃぃ,議
論 は「データ、理 由づけ、主張 とい う三つの部分か ら構成 されている60」 とぃ ぅ。この議論 を構成す る三つ部分の関係 を図 Ⅱ-8に示す。 これ らのことを踏まえ,歴
史論争問題 をデー タに基づいて,肯
定的側面,否
定的側面, 参考情報か ら分析 した上で,理由付 けを行い,主
張を行 う構成 とした。作成にあたつては,PMIを
参考にした (図Ⅱ‐9)。D(デ
ータ)C(主
張)W(理
由づ け) 図I…8
議論の構 成 (足立 198460に加筆)第2章 歴 史的思考力 を育成す る授業モデル の構築 籠 ゛ 鏡 詮 警 饉 盪 ■● ■1■●銀 ●,1.■,1ヽ●l.イた0,1 3裏 (3象2逃) ●爾膨壼lt,寝静 にお ぃて鐵 t摯 '絆まぅ たこ 準 選 「 無 : 蛉取 り鋳 ま り嬌鶴 鶏. 許 されヽべ芝ものか?絆され るべ さ 箋ない ものか? 費 ―・ ■方機=:R駐●■●晨糧会t露ち与″った ム:豊かった,許きれる〕 8:義 妙った,許されない.
0
理 由任Ft t3象13m,鋳掟郷 量) │■ 'こ機滉 の中 糞織 ら畷燎Jとい ぅて京事 ら沿童,菫すなビ、二意 なこと あ犠 行 しており,モれを綺 r織で摯 り鋳 =るゎ験 すこい と3)o■. 13:池田経●存 て憑ユ畿愛 のテ8摯彗 を未継 にお いた が。 それ鎮埓 には,ユ猿議 健講 すな国静・n取 り : :鍋べなとがあったの範0 図I-9
価値判断・ 意思決定 ツール2.4
歴史的思考力を育成す る授 業モデル 思考ツール を活用 して,歴
史的思考力 の育成 と歴 史的知識 の習得 を図 るこ とので きる授 業モデル を図 Ⅱ‐10のよ うに構 築 した。 この授業モデル においては,事
実判断の思考過程で 事象記述 を習得 し,推
論 の思考過程 で事象解釈・ 時代解釈 。社会 の一般理論 を習得 し,価
値判 断・意 思決定の思考過程 で価値的知識 の評価 的知識 と規範 的知識 を習得す るこ とがで きるよ うに考慮 してい る。そ して,こ
れ らの一連 の思考過程 において,批
判 的思考 を促 し て,メ タ知識 を習得す ることがで きるモデル とな るよ うに した。この授業モデル の もとで, これ まで とは違 った,生
徒一人ひ とりが考 える歴史授業 が 目指 され ることが期待 され る。■人ひとり
が考え
│る摩窯畔
価値判断│‐ ■ 意思決定ツ│■ル 大推論ツ■ル 小推論ツニ,レ 事実判断ツープレ1 1 1 歴 史的思考力の育成 思考 ツール 歴 史的知 識 の習得 図 Ⅱ-10
歴史的思考 力の育成 と歴史的知識の習得を図る授業モデル 合 合 合 合第2章 歴 史的思考力 を育成す る授業モデル の構築
2.5
本章のま とめ′ 以上
,本
章では,第
1章で検討 した方向性 に基づ き,高
校 日本史Aに
おいて歴史的思考 力 の育成 を図 る授業モデル を以下の通 り構築 した。 1)さま ざまな歴 史的思考力 の構成要素 を比較 した結果,歴
史的知識 との関係 を明確 に示 し てい る梅津の歴史的思考力の構成要素 の捉 え方 を選定 した。"梅
津 の歴史的思考力 の構成要素の捉 え方 に基づ き,歴
史的思考力の育成 のた めに思考 を ガイ ドす る思考 ツール を作成 した。9思
考 ツール を活用 して,歴
史的思考力 の育成 と歴史的知識 の習得 とを共 に図 ることがで きるよ うな授 業モデル を構築 した。 そ こで次章では,構
築 した授 業モデル に よる展 開容易性 を高 めるこ とや協働 的な思考場 面 を支援す るためにICTに
よる学習 アプ リの開発 を行 う。第3章 歴史的思考力の育成を支援す る学習アプ リの開発