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第 5章   結論及び今後の課題

5.1 

本研究 で得 られた成果の整理

本研 究の 目的 は

,高

校 日本史

Aに

お いて,歴史的思考力の育成 を 目指す授業モデル の構築 及びそれ を支援す る学習 アプ リを開発 し

,そ

の効果 を実践的 に検証す ることであった。本 .研究では

,第 2章

か ら第

4章

にお いて以下の成果 を得 た。

5。 1。

歴史的思考 力を育成す る授 業モデルの構築

2章

では

,第 1章

で検討 した方向性 に基づ き

,高

校 日本史

Aに

おいて歴 史的思考力の 育成 を図 る授業モデル を以下の通 り構築 した。

1)さ ま ざまな歴 史的思考力 の構成要素 を比較 した結果

,歴

史的知識 との関係 を明確 に示 し てい る梅津の歴史的思考力の構成要素の捉 え方 を選 定 した。

力 梅津 の歴史的思考力 の構成要素 の捉 え方 に基づ き

,歴

史的思考力 の育成 のために思考 を ガイ ドす る思考ツール を作成 した。

3)思

考 ツール を活用 して

,歴

史的思考力 の育成 と歴史的知識 の習得 とを共 に図 ることがで きるよ うな授 業モデル を構築 した。

5。

1.2 

歴史的思考 力を育成す る学習ア プ リの開発

3章

では

,第 2章

で構築 した授業モデル を効率的 に運用す る学習 アプ リ「史考 ツール」

を以下の通 り開発 した。

1)Excel VBAの

機能 によ り開発 した学習 アプ リ「史考 ツール」 は

,管

理 シー ト

,事

実判 断 シー ト

,事

実判断集約 シー ト

,小

推論 シー ト

,大

推論 シー ト (小推論集約 シー ト

),大

推論集約 シー ト

,価

値判 断 。意思決 定 シー ト

,価

値判断・ 意思決 定集約 シー ト

,価

値判 断 。意思決定 グラフ化 シー ト

リンク集 シー トの

10シ

ー トで構成 され る。

2)DrOpboxの

クラ ウ ドサー ビスの利用 によ り

,「

史考 ツール」のファイル の配布や集約 を 一瞬 に して行 うこ とがで きる。

3)そ

のための学習環境 として

,大

型 ス ク リー ン

,プ

ロジェクター,Wi‐

Fiル

ー ター

,デ

ィ スプ レイ

,タ

ブ レッ ト

PCを

用意 した。

5.1.3 

「史考 ツール

Jを

活用 した歴史 的思考 力を育成す る授 業の実践 とその評価

4章

では

,第 2章

で構築 した授 業モデル及び第

3章

で開発 した学習 アプ リ「史考 ツー ル」 を活用 した実践 を行 い

,歴

史的思考力や 「史考 ツール」 を活用 した授業 に対 しての評 価 を行 つた。 その結果 を以下に整理す る。

1)日

本史

A単

元 「せ まって くる外国船

 

江戸時代 の国際関係」 にお ける実践の結果

,生

徒 は各 自で事 実判断 を行 い

,そ

れ を もとにグルー プで意見 を出 し合 いなが ら小推論 を行

5章  

結論及び今後の課題

いそれぞれ の グル ー プの小推論 をもとに大推論 な どの学習の過程で

,自

分 な りに歴 史事 象 を分析 し

自分 自身 でその歴 史事象 を捉 え られ るよ うになった ことが示唆 された。

2)同

単元 において

,歴

史的論争問題 として 「幕府 は

,貿

易統制 と禁教 によつて『 鎖国』

を した。」 について

,考

察 させ た ところ

,外

国 との争 い にな らかつた ことに着 日した肯 定意 見,不平等条約 の締結 した こ とに着 日した否定意 見が見 られ た。これ らの ことか ら,

本単元 において

,生

徒 は価値判 断

,意

思決 定 な どについて考 え られ るよ うになつた こ と が示唆 された。

3)実

践前後 に実施 した調 査の結果

,本

実践 によつて

,グ

ルー プでの協働 的 な学習が促 さ れ る傾 向のあることが示唆 され た。一方 で

,日

本 史 の学習内容 の理解度 が低下 した傾 向 のあ るこ とか ら

,本

実践 に よ り

,日

本 史 の学習 内容 の理解 が十分 ではない とい う認識 を 生徒 が持つ に至った ことが示唆 され た。

4)事

後調査 の結果 では

,「

史考 ツール」全般 に対す る意識 と日本史 の授 業 に対す る意識 との間 に有意 な相関が見 られ た ことか ら

,「

史考 ツール」 の使用 が学習 を情意面か ら支 援 で きていた ことが示唆 された。

5.2教

育実践への示唆

以上 に得 られ た本研 究の成果 か ら

,教

育実践への示唆 として

,次

の ことが指摘 できる。

第一 に

,思

考 ツール を活用す る授 業 の有効性 である。本研 究 においては

,教

科書 に記載

され てい る歴 史事象 を 「暗記」す るこ とが中心の知識偏重型 の歴 史授 業か らの転換 を 目指 して きた。 そ こで

,歴

史授 業で活用す るための思考 ツール を作成 し

,ICT化

を図つた学習 アプ リ 「史考 ツール」 として授 業実践 を行 つた。 「史考 ツール 」 の活用 に よ り

,生

徒 に歴 史事象 に対す る思考 を促 した。 具体的 には

,歴

史的思考力 としての事 実判断

,推

,価

値 判断

,意

思決定 とい う思考 を促 し

,そ

の過程 の中で批判的思考 を促す ことを 目指 した。 そ の結果

,事

後調査 にお ける 「史考 ツール」 の各 シー トに対す る役立 ち感 は

,い

ずれ の項 目 の平均値 も 3.0を 超 える高い数値 となつた ことか ら,これ らの歴 史的思考力 を高めることに,

一定の効果があつた と考 え られ る。生徒 の感想 の中に 「歴史について違 った見方があると 分かつた。 」 とい うものが見 られ た ことか ら

,歴

史的思考力 の 中で も特 に批判的思考が高 め られ

,自

分で歴 史事象 を分析 して思考す ることの重要性 を認識 させ る ことがで きたので はないか と考 え られ る。教科書 に記載 されてい る歴 史事象 を教師がかみ砕 いて説明す る「暗 記」 中心の歴史授 業か らの転換 を 目指 してい る実践事例 が多い ことは

,先

行研 究の中にお いて も確認 された。本研究で作成 した 「史考 ツール」は

,ICTを

活用 した環境での使用 を 想定 してい る。 しか し

,歴

史事象 を生徒一人ひ と りが分析す るフィ ッシュボー ンを参考 に 作成 した事 実判断 シー トは

,そ

れ だ けを単体でプ リン トア ウ トして活用す る ことも十分可 能である。そのため

,「

史考 ツール」は 「暗記」に偏重 しない歴 史授業 のための授業支援 ツ ールとして提案できるものと考えられる。

第二 に

,タ

ブ レッ ト

PCを

利用 した

ICT活

用 による協働的 な学び を促進す る授業形態 の

5章  

結論及び今後 の課題

有効性である。本研究においては

,学

習アプ リ「史考ツール」をタブ レッ ト

PCで

操作す る とい う実践を試みた。 ほとん どの生徒はスマー トフオンを所持 してお り

,あ

る程度使い こ な している。そのようなデジタルネイティブ (digital native)に とつて

,タ

ブ レッ ト

PC

の活用は

,授

業 をこれまで以上に魅力的にさせてい く 「見えない効果」があるのではない か と考えられる。また

,ICT活

用によつて学力向上に高い効果があることは

,先

行研究に おいて既 に明 らかにされている。通常の歴史授業においては

,教

師か ら生徒への一方通行 の歴史授業 となつていることが多 く

,協

働的な場面を設定す ることはなかなか難 しい。 ま た

,生

徒の側 も

,一

歩通行の歴史授業に慣れ切 つて しまってお り

,協

働的な学習場面が用 意 されても

,す

ぐに馴染めるものではないであろ う。ここにおいて,タ ブ レッ ト

PCの

活用 は

,新

たな道 を開 く可能性 を秘めているといえる。 しか し

,限

られた人材

,資

源の中で,

歴史授業 において どのよ うに

ICT活

用を普及 させてい くかを考えてい く必要がある。

5.3 

今後の課題

第一に

,本

実践は

,1ク

ラス 38名 のみを対象 とした実践に留ま り

,限

定的な授業実践で

あった点である。他のクラスでは

,授

業時間の制約 もあ り

,授

業計画の最後まで実践 を行 うことができなかつた。 したがって

,本

実践での成果は

,限

定的なものであると言わざる を得ない。そのため

,「

史考ツール」を使用 した授業の効果 を検証するためには

,授

業時 間を十分に確保 した うえで

,多

くのクラス

,多

くの生徒 を対象 とした実践を行い

,そ

の学 習効果を検証することが求め られ る。

第二に

,第 4章

において

,そ

の効果測定の手法 として比較実践法を用いていない点であ る。本研究では

,高

校 日本史

Aに

おいて

,学

習アプ リ「史考ツール」を活用 した実践を通 して

,グ

ループでの協働的な学習が促 されたことや学習を情意面か ら支援できていたこと を示 した。 しか し

,こ

れは実践 における事前・ 事後の比較によるものである。 「史考ツー ル」を活用 したことやタブ レット

PCを

使用 した ことな ど

,普

段の歴史授業 とは異なった要 因が含まれてい る。 したがつて

,そ

の要因の どち らが大きく作用 したかが定かではない。

比較実験法は

,教

育現場 における実践研究に必ず しもな じまず

,倫

理的な課題 を有 してい ることは否 めない。 しか し

,本

研究にお ける学習効果 を的確 に把握す るためには

,今

,

比較実験法による検討 も視野に入れてい く必要があると考えられ る。

第二に

,学

習アプ リ「史考ツール」を改良す る余地がある点である。 「史考ツール」は,

生徒か ら総 じて高い評価 を得 られた。 しか し

,「

使い方がいまいち分か りませんで した」

との感想 を持った生徒が見 られたこともあ り

,ユ

ーザ ビリテ ィの向上が必要であると考え られ る。生徒にとつてタイ ピングを して文字入力をしてい くだけのツールであるが

,こ

ような感想が出ていることを重 く受け止 め

,も

つと簡単に文字入力をする方法がないか検 討す る必要があると考える。今後

,多

くの教員や生徒に 「史考 ツール」の活用の輸を広げ

てい くためには

,ユ

ーザ ビリティの向上が鍵であると考えられる。

本研究で得 られた知見の追試を含め

,こ

れ らについては今後の課題 とする。

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