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中学校理科における生命分野と科学技術の関わりについての学習教材─ バイオミメティクスを題材として ─

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中学校理科における生命分野と

科学技術の関わりについての学習教材

── バイオミメティクスを題材として ──

佐 藤   綾・下 田 崇 人

Educational materials on the relationship between the “biology”

and “science and technology” in junior high school science

──

On the subject of biomimetics ──

Aya SATO and Takahito SHIMODA

群馬大学共同教育学部紀要 自然科学編 第69巻 51―59頁 2021 別刷

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中学校理科における生命分野と

科学技術の関わりについての学習教材

── バイオミメティクスを題材として ──

佐 藤   綾・下 田 崇 人 群馬大学共同教育学部理科教育講座 (2020年9月30日受理)

Educational materials on the relationship between the “biology”

and “science and technology” in junior high school science

──

On the subject of biomimetics ──

Aya SATO and Takahito SHIMODA

Department of Science Education, Cooperative Faculty of Education, Gunma University Maebashi, Gunma 371-8510, Japan

(Accepted on September 30th, 2020)

1.はじめに

 平成29年に公示された学習指導要領1)2)において、 理科の学習内容は、従前と同様に「エネルギー」、「粒 子」、「生命」、「地球」の科学の基本的な概念を柱と して構成されている。中学校においては、それらが 物質やエネルギーに関する自然の事物・現象を対象 とする「第1分野」、生命や地球に関する自然の事 物・現象を対象とする「第2分野」の2つの区分に まとめられている。改訂にあたり、理科の学習で育 成する資質・能力を整理する上で、それらの内容の 系統性が確保されるような改善が図られている。一 方で、それら系統立った学習内容を総合して学習す る単元は限られており、中学校では、第1分野の「科 学技術と人間」、第2分野の「自然と人間」の単元 中の「自然環境の保全と科学技術の利用」において、 理科の最後の学習として、第1分野と第2分野の学 習を生かし、それぞれの内容を関連付けて総合的に 扱うことが示されているのみである。  「科学技術と人間」の単元では、エネルギーと物質 の視点から科学技術の発展や利用について学習する。 しかしながら、現代社会においては、細菌による燃 料資源の生成や、潮汐や火山を利用した発電など、 生命や地球の学習内容も科学技術と深く関わってい る。そのような第2分野の学習内容と科学技術の関 わりについては、生命や地球での学習の最後にコラ ムとして教科書に掲載されている場合がある3)4)が、 生徒が活動を伴って学ぶ教材はみられない。理科に おいては、理科を学ぶことの意義や有用性の実感、 および理科への関心を高める観点から、内容の取り 扱いについて、日常生活や社会との関連に配慮する ことが求められている5)。そのため、分野によらず、 理科の学習内容はそれぞれ関係しながら人間の生活 と関わっていることを学習する教材は有用であると 考えた。 群馬大学共同教育学部紀要 自然科学編 第69 巻 51―59 頁 2021 51

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2.研究の目的と内容

 以上のことから、本研究では、第2分野のうち生 命で学習する内容と日常生活における科学技術の関 わりについて生徒が主体的に学習するための学習教 材を開発することを目的とした。そのための題材と して、本研究ではバイオミメティクス(生物模倣) を取り上げた。バイオミメティクスとは、生物の形 態や構造、機能などを模倣し工業技術に応用するこ とを指す6)。例として、サメの体表を模倣し空気抵 抗を抑えた飛行機やコウモリの反響定位や昆虫の感 覚毛を模倣したソナーやセンサーなどが挙げられ る。  第2分野の「生物の種類の多様性と進化」では、 生物が環境に応じた体の形や働きを持つよう進化し ていることを学習する。そのため、ここでの学習の 発展的な内容として、長い時間をかけて適応してき た生物の持つ特徴が現代の工業技術と関わっている ことを学習するための教材を開発することした。こ の学習教材によって、科学技術の利用には、第1分 野での学習内容に限らず理科で学習する内容が総合 的に関わっていることに生徒が気づくことができる と期待される。本研究では、以上の教材を開発し、 授業実践を行い、理科での学習内容と科学技術の開 発に対する生徒の意識がどのように変化したのか、 調査した。

3.開発した学習教材

 本教材では題材として、新幹線(500系)の例を 取 り 上 げ た。500系 は 通 常 運 転 時 の 記 録 速 度 が 300 km/hを初めて超えた新幹線である7)。トンネル の狭い空間に新幹線が高速で進入すると、その抵抗 が空気を急激に圧縮し、出口で「ドン」という音が 出る(トンネルドン現象)。この騒音を低減するため、 走行時の抵抗を減らすよう500系ではカワセミのく ちばしが先端形状に応用された7)。これは、カワセ ミが空中から高速で水中に飛び込んだ時にほとんど 水しぶきを上げないという特徴を基にしている。  学習教材の開発にあたり、バイオミメティクスの 事例を提示したり、調べ学習を行ったりするもので はなく、生徒が主体的に考えて学ぶ構成を想定した。 そのため、学習の課題を「次世代の新幹線を開発し よう」とし、以下の3つの活動を設定した。 ⑴ 思考マップの作成  バイオミメティクスの研究では、生物学を専門と しない工学者が生物の持つ特徴を技術開発に応用す ることを支援するための検索システムの開発がなさ れている。その1つに、「防汚塗料」や「低摩擦表 面材料」など目標とする技術でキーワード検索をか けると、それに関連した生物の構造や生態環境、生 物種などを図1のようなマップとして可視化する検 索システムがある。  本教材では、このような連想思考を取り入れ、生 徒が目標とする技術(すなわち、低抵抗、低騒音で 高速な新幹線)を中心として、生物の形態や振る舞 い、生息環境、生物種を連想し、マップを作成する 活動を設定した。 ⑵ 新幹線模型の作成  次に、連想マップで挙げられた生物をモデルに不 乾性シールパテ(関西パテ化工株式会社)を用いて 新幹線の模型を作成する活動を設定した。粘土でな くパテを用いたのは、次節で示す、作成したモデル を水中に落とした時に形が崩れないようにするため である。生徒は、客車部分を想定した直径27 mm 図1 バイオミメティクスによる技術開発を支援する    検索システムのイメージ

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のプラスチック瓶にパテで生物を模倣した先端部分 を作成する(実際の模型については次章を参照)。 ⑶ 模型の評価  最後に、以下に示す2つの観点で作成した模型を 評価する活動を設定した。1つ目は作成した模型が モデルとした生物をどれだけ忠実に模倣できている かを数値化するもので、生徒は模型のモデル生物へ の近似度を6段階で評価する。2つ目は、作成した 新幹線の模型が実際に低抵抗を実現することができ ているのかを客観的に評価するもので、作成したモ デルを空気中から水中に落とし、どれだけ水しぶき が跳ねるのかを以下の方法で数量化するものである。 障子紙を敷き、その上に12 cmの深さまで水を入れ た直径30 cmのプラスチック水槽を置く。そして、 スタンドを使って固定した高さ60 cmの位置から作 成した模型を水槽内に落とす。障子紙についた水は ねの跡から、水が最も飛んだ距離を巻き尺で計測し、 その値を模型の抵抗の指標とする。この2点で模型 を評価することにより、生徒は自身のここまでの活 動についてその妥当性を振り返ることができ、さら にその結果を他者と比較することができる。

4.授業実践

⑴ 対象  前章で示した教材を使用し、群馬県内市立A中 学校第2学年3クラス93名を対象に2018年3月に 授業実践を行った。授業は特別授業として筆者らが 行った。平成20年の学習指導要領下では、動物の 生活と生物の変遷は第2学年で学習する内容となっ ている。そのため、その学習を終えた2年生を対象 とした。また、授業は3学期末に行い、対象者は第 1、2学年の理科の学習をすべて終えていた。 ⑵ 授業の流れ  授業の流れは以下の通りであり、生徒は図2の ワークシートに沿って学習を行った。 ① 導入  北海道新幹線の速さや所要時間について説明し、 今よりも早く移動できる新幹線を開発できれば、飛 行機よりも新幹線の利便性が高くなるかもしれなと いう考えをクラスで共有した。そして、本時の課題 は「次世代の新幹線をデザインしよう」であること を提示し、ワークシートを配布した。 ② 学習前における生徒の意識の確認  技術開発において、生物で学ぶ内容が役立つと考 える生徒がどれだけいるのか確認するため、これま で学習した理科の内容のうち、次世代の新幹線を開 発するときに活用できるものを生徒に考えさせた。 このとき、ワークシートに第1学年と第2学年の理 科で学習する単元を羅列し、その中から必要だと考 えるものに生徒に丸をつけさせた。 ③ バイオミメティクスの紹介  過去の新幹線の開発の歴史を振り返り、当時世界 最高速を記録した500系では開発にあたり、トンネ ルドンなどの騒音が課題であったことを説明した。 そして、課題解決のため、カワセミのくちばしが 図2 授業で使用したワークシート 中学校理科における生命分野と科学技術の関わりについての学習教材 53

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500系の先端形状に応用されたことをカワセミの生 態と合わせて説明した。そして、生物を真似て科学 技術に応用することをバイオミメティクスと呼ぶこ とを説明した。 ④ 思考マップの作成  バイオミメティクスの分野において実際に用いら れる手段として、思考マップを紹介し、「水や空気 への抵抗が小さい」を中心として連想推論をさせた。 このとき、教師の発問と生徒の返答から、「水や空 気への抵抗が小さい」から、「先端が鋭い」や「水 に潜る」のような生物の持つ形態や生態を派生させ ること、そして、そのような形態や生態を持つ生物 を派生させることを確認した。思考マップは、意見 交換をしても構わないが各個人で作成させた。また、 生物名を連想する上で、教科書や資料集を参照して もよいことを生徒に伝えた。 ⑤ 模型の作成  作成した思考マップを班で共有し、その中から課 題解決に最も適すると考える生物を1つ選択させた。 そして、選択した生物や生物の部位を模倣し班で1 つ新幹線の模型を作成させた。出来上がった模型が どれだけモデルとした生物に似せて作ることができ たかを6段階で評価させ、そのように評価した理由 やその生物を選択した理由、模型作成の際に工夫し た点をワークシートに記述させた。 ⑥ 抵抗の可視化  前章⑶で示した方法により、模型を水中に落とし た時に水しぶきが跳ねた距離を計測させた。計測値 をワークシートに記入させた。 ⑦ 結果の共有  クラス全体でどの生物を模倣したのか、近似度と 水が跳ねた距離はいくつだったかを共有し、どの生 物が次世代の新幹線のモデルとして最適かを考えさ せた。 ⑧ まとめ  授業の最後に、新幹線や車などの抵抗を評価する には、力学などのエネルギーの分野で学習する内容 が必要なことを確認した。また、500系新幹線の開 発では騒音の低減のために、カワセミだけでなくフ クロウの風切羽根がパンタグラフに応用されている こと、その他、蚊の口吻を模倣した注射針やヤモリ の指を模倣した粘着テープなど様々な技術に生物の 持つ特徴が応用されていることをまとめた。 ⑶ アンケート調査  授業内容に対する生徒の意識、および技術開発と 理科で学習する内容の関わりに対する生徒の考えを 確認するため、授業後に質問紙を用いたアンケート に回答してもらった。まず、授業に対する生徒の意 識を確認するため、「今回の授業を通して、私たち の生活に利用される生き物の構造や機能に興味をも つことができましたか」という質問に「とても興味 をもった」、「興味をもった」、「あまり興味をもたな かった」、「全く興味をもたなかった」の4件法で回 答してもらった。また、授業が生徒のさらなる学び への意欲をかき立てるものであったかを確認するた め、「今回の授業内容のほかにも身近なものにバイ オミメティクスが応用されています。それらについ てもっと知りたいと思いましたか」という質問に 「思った」、「やや思った」、「あまり思わなかった」、「思 わなかった」の4件法で回答してもらった。さらに、 授業の感想を自由形式で記述してもらった。  最後に、授業が終わった後に、理科で学習する内 容と技術開発の関連について生徒がどのように考え ているかを確認するため、「ドラえもんのひみつの 道具であるタケコプターのようなヘリコプターが現 在開発中です。このヘリコプターを完成させるため には、理科で学習するどのような知識が必要だと思 いますか。思いつくものすべてを書いてください」 という質問に対し、自由記述形式で回答してもらっ た。

5.授業の分析と考察

⑴ 学習前における生徒の意識  バイオミメティクスについて学習する前、次世代 の新幹線を開発するときに活用できる理科の学習内 容として生徒が選択していたものをまとめた結果は 図3の通りであった。「光、音、力の性質」と「電気、 電流、磁界」のエネルギー分野を選択した生徒は

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93人中80人以上であった。「動物の体のつくりと 働き」を選択した生徒は40人である一方、「植物の 体のつくりと働き」を選択した生徒は8人であった。 選択肢のうち、エネルギーの分野の項目にのみ丸を つけた生徒は合計29人で全体の31%であった。  以上の結果から、バイオミメティクスについて学 習する以前では、全体の3割の生徒が新幹線の技術 開発に必要な理科の学習内容はエネルギーの領域の みだと考えていた一方、約4割の生徒が生命領域、 特に動物の内容も関わっていると考えていたことが 示された。授業中、「動物の体のつくりと働き」を 選択した生徒にその理由を質問した際、「動物の形 とかが応用されていると思う」と返答したことから、 授業前の段階で多くの生徒がテレビ番組や本などの 情報から、動物の形態や機能が工業製品の技術開発 に応用されていることを認識していたと言える。 ⑵ 思考マップ  生徒が作成した思考マップは図2に描かれている ようなものであった。生徒が作成した思考マップの うち、「水や空気への抵抗が小さい」という中心から、 どのような生物の形状や生態が派生したかを表1に まとめた。派生した項目は全部で72種類あり、生 徒1人あたり平均して4.6個記述することができて いた。「速い(56人)」、「小さい(49人)」、「先端が とがっている(36人)」、「水しぶきを上げないで水 に潜れる(30人)」、「水に触れる面積が小さい(25 人)」、「静かに水に飛び込む(13人)」の記述人数 が上位の項目は、思考マップの作成法をクラスで共 有する際に生徒から挙げられた意見を板書したもの であり、そのために記述した生徒が多かったと考え られる。それらを除くと、「細い(24人)」、「魚(20 人)」、「軽い(11人)」、「速く飛ぶ(10人)」などが 多く、生物の分類群や形態、行動など様々な視点で 動物の特徴が挙げられていた。  以上の項目から派生した生物名は合計77種類で、 1人あたり5.8個の生物を挙げることができていた。 記述された生物の例は表2の通りであり、多くの分 類群の生物名が挙げられていた。 図3 学習前の生徒の意識 表1 思考マップに書かれた生物の形状や生態 分類 (項目の数) 項目の例(書いた人数) 身体的特徴 (27種類)  小さい(49) 、  先端がとがっている(36) 、  水に触れる面積が小さい(25) 、 細い(24)、軽い(11)、平ら(8)、 抵抗が少ない(7)、薄い(6)、 細長い(5)、凹凸が少ない(5) 行動的生態 (24種類)  速い(56) 、  水しぶきをあげないで水に潜れる(30)、   静かに水に飛び込む(13) 、 速く飛ぶ(10)、速く泳ぐ(5)、飛ぶ(5)、 ジャンプ力がある(3)、速く走る(3) 生 活 場 所 (5種類) 地下(3)、水中(1)、陸上(1)、 空中(1)、空(1) 分 類 群 (4種類) 魚(20)、鳥(5)、深海生物(2)、虫(1) 機 能 (3種類) 抵抗が少ない(7)、摩擦をなくす(3)、 風を逃す(2) そ の 他 (9種類) 水(4)、静か(4)、前傾姿勢(4)、空気(3) 網掛けは思考マップの作成の仕方を説明する際に板書した 項目 中学校理科における生命分野と科学技術の関わりについての学習教材 55

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⑶ 模型の作成と評価  生徒が作成した模型の例を図4に示す。26班中、 8班がカジキを模倣し、ペンギン(4班)、トビウオ (2班)、マグロ(2班)、キツツキ(2班)がついで 多かった。アリクイ、イルカ、エイ、カモノハシ、 ガン、コウノトリ、サメ、ハヤブサを模倣した班が 各1班であり、合計13種類の生物がモデルとして 採用されていた。模型の作成中、モデルとした生物 に似ているか、低抵抗を実現できているか、などに ついて班で活発な意見交換がみられた。模型の作成 にあたっては、忠実にモデルとした生物を模倣しよ うとする班とモデルとした生物を忠実に再現するよ り、水に落とした時に飛沫があがらないよう形状を 変化させる班がみられた。自分たちで作成した模型 がモデルとした生物にどれだけ似ていたかを6段階 で自己評価した結果は、班平均で最低が2.7、最高 が5.7、平均すると4.3であった。  作成した模型を水中に落とした活動では、水が跳 ねた距離が最も小さい班は0 cm、最も大きい班は 100 cmであり、平均すると45.3 cmであった。こ の活動を通して、どのような模型を作成したのか、 どれだけ低抵抗を実現できていたかをクラス全体で 共有することができた。  模型作成の活動においては、多くの班が想像で模 型の作成を行っていたため、事前に図鑑などを準備 しておき、生徒が実際の生物の様子を確認しながら 模型を作成することができるような工夫が必要だと 考えられる。また、今回は作成した模型のみを水中 に落とし、抵抗の数量化を行ったが、電車や500系 新幹線の模型、あるいは新幹線のモデルとして適切 ではない抵抗が大きい生物を模倣した模型などを対 照として水中に落とし抵抗を数量化する活動を合わ せて行うことで、生徒は自分たちで作成した模型が 目標に沿ったものであったか、妥当性を客観的に比 較しながら評価することができるようになると考え られる。 ⑷ アンケート調査  授業後アンケートは89人分の回答を回収するこ とができた。「今回の授業を通して、私たちの生活 に利用される生き物の構造や機能に興味をもつこと ができましたか」という質問に「とても興味をもっ た」と回答した生徒は50人(56%)、「興味をもっ た」と回答した生徒は39人(44%)で、「あまり興 味をもたなかった」、「全く興味をもたなかった」と 図4 生徒が作成した模型の例 表2 思考マップに書かれた生物の種類 生物名の例(書いた人数) 哺 乳 類 (17種類)  チーター(55) 、イルカ(6)、リス(6)、 ウマ(3)、モグラ(3)、アルマジロ(2)、 ウサギ(2)、クジラ(2)、コウモリ(2) 鳥 類 (22種類)  カワセミ(55) 、 ペンギン(37) 、 ハヤブサ(21)、タカ(17)、トビ(9)、 ダチョウ(7)、ワシ(7)、キツツキ(5)、 スズメ(5)、ペリカン(5)、コウノトリ(4)、 フクロウ(4)、アホウドリ(3) 爬 虫 類 (6種類) ヘビ(15)、ウミヘビ(6)、トカゲ(5)、 アリゲーターガー(4)、カメ(2)、ワニ(1) 両 生 類 (1種類) カエル(3) 魚 類 (15種類) カジキ(41)、マグロ(24)、トビウオ(18)、 サメ(16)、ウナギ(8)、イワシ(7)、エイ(5)、 ヒラメ(4)、ドジョウ(3)、メダカ(2) そ の 他 (16種類)  スズメバチ(28) 、ミミズ(9)、アリ(5)、 トンボ(5)、カ(4)、クモ(4)、クラゲ(4)、 チョウ(4)、ナメクジ(4)、イカ(3)、ウニ(3) 網掛けは思考マップの作成の仕方を説明する際に板書した 項目

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回答した生徒はいなかった。また、「今回の授業内 容のほかにも身近なものにバイオミメティクスが応 用されています。それらについてもっと知りたいと 思いましたか」という質問に「思った」と回答した 生徒は58人(65%)、「やや思った」と回答した生 徒は31人(35%)で、「あまり思わなかった」、「思 わなかった」と回答した生徒はいなかった。以上の ことから、本教材を用いた授業は非常に生徒の興 味・関心を引くものであり、さらなる学びの意欲を 掻き立てるものであったと言える。 ⑸ 授業の感想  生徒の授業の感想の記述の例を図5に示す。「動 物の体のつくりが新幹線などの身の回りのものに使 われていることに驚いた」というような、理科で学 ぶ内容と日常の関連への気づきや驚きに関する内容 を約半数の生徒が記述していた。次いで、「トビウ オに似せて作るのが難しかった」、「作った模型が実 際に低抵抗で嬉しかった」など学習を通してわいた 感情についての記述、「生物模倣に興味がわいた」、 「他の例をもっと調べてみたい」など、学習内容に 対する興味やさらなる学びへの意欲に関する記述が 多くみられた。また、「カジキを作って水が跳ねな かったけど、耐久性の面を考えると、ただ細長くし て尖らせれば良いわけではないかもしれない」など、 模型の作成や抵抗の数量化の活動を振り返り、考察 を行っている記述がみられた。他に、少人数であっ たが、「班で話し合って模型を作ることができた」 という対話的な学びに関する記述、「動物は人間の 技術よりもすごいのだなと思いました」という生命 の尊重に関する記述がみられた。 ⑹ 学習後の生徒の意識の変化  「ドラえもんのひみつの道具であるタケコプター のようなヘリコプターが現在開発中です。このヘリ コプターを完成させるためには、理科で学習するど のような知識が必要だと思いますか。思いつくもの すべてを書いてください」という質問に対する生徒 の回答の例を図6に示す。回答を分析し、記述され た内容を理科の各領域の学習内容ごとに分類した結 図5 授業の感想の種類と例 下点線は分類の判断とした点を示すため 筆者が加えた 図6 学習後の意識調査に対する生徒の回答の例 中学校理科における生命分野と科学技術の関わりについての学習教材 57

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果、「電気」や「電流」などエネルギー領域に関す る記述が235個と最も多く、「動物の体のつくり」 や「動物の体のはたらき」など生命領域に関する記 述が62個と続いた。特に、生命領域の記述で「鳥 の羽根のつくり」や「ヤモリの手の吸盤」、「トンボ の体のつくり」など生物の具体的な特徴に関する回 答が10個みられた。また、「太陽光や風」、「大気や 気圧」など地球領域に関する記述が33個、「化学変 化」や「物質」に関する粒子領域の記述が23個み られた。  学習前後で、技術開発に必要な理科の知識に対す る生徒の考えに変化がみられたかを確認するため、 学習前に選択した項目と学習後に記述した内容を学 習前後で比較した。結果は図7の通りとなり、生命 領域の内容を回答した生徒は学習前の30%から学 習後には54%に増加していた。また、エネルギー 領域の内容のみを回答した生徒は学習前の31%か ら学習後には20%に減少していた。  本研究では、バイオミメティクスについて学習す ることで、工業製品の開発にはエネルギー領域で学 習する内容だけでなく、生命領域で学習する内容も 応用できることに生徒が気付くとこができると予測 していた。そのため、学習前後での生徒の回答の変 化は予測と一致した結果だと言える。しかしながら、 エネルギー領域の内容を回答した生徒が学習前後で 共に90%を超えているのに対し、学習後に生命領 域の内容を回答していた生徒は54%と約半数で あったことは、バイオミメティクスを授業で取り上 げた後としては少ない回答人数と言える。今回、学 習前は新幹線の開発に対する質問で選択形式の回答 法、学習後はヘリコプターの開発に対する質問で記 述形式の回答法をとったため、それらの回答の比較 から本授業の実質的な効果について考察をするのは 困難であると考えられる。本教材を用いた学習効果 の検討にはより詳細な調査が必要である。

6.まとめと今後の課題

 授業中の様子から、本研究で開発した教材を用い た授業において、生徒同士の意見交換の場が多くみ られ、生徒は課題に対して自らの考えをもとに学習 していたと言える。このことは、生徒が書いた授業 の感想からも裏付けられる。さらに、4件法のアン ケートの結果、すべての生徒が授業に対し肯定的な 回答をしていたこと、および授業の感想の集計から、 本教材を用いた授業は生徒の興味・関心を引き、さ らなる学びにつながるものだったと言える。よって、 本教材は、生徒が理科の学習内容が日常生活や社会 に深く関わりを持っていることに気づき、主体的な 学びを通じて理科の学習や学習内容への興味や関心 を高めるという点で有用な教材であると考えられ る。  一方で、新学習指導要領においては、理科授業で は探究の過程を通じた学習が重視されている。その ため、本教材を用いた授業の構成について、探究的 な授業が展開できるよう課題を設定する、抵抗を数 量化する手法を生徒自らに計画させる、生物の特徴、 作成した模型、抵抗の数量化の結果から課題に対し て考察を行う場をもうける、といった修正を施し改 善することで、生徒に見通しを持たせたり、振り返 らせたりする場面を含んだ探究的な授業が可能にな ると期待される。 引用文献 1)文部科学省『小学校学習指導要領(平成 29 年告示)解 説 理科編』東洋館出版社、2017、20-21. 2)文部科学省『中学校学習指導要領(平成 29 年告示)解 説 理科編』学校図書、2017、16-22. 図7 学習前後での生徒の回答の変化

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3)有馬朗人ほか 57 名『理科の世界 3 年』大日本図書、2012、 246. 4)塚田 捷・山極 隆・森 一夫・大矢禎一ほか 57 名 『未来へひろがるサイエンス3』啓林館、2012、238-239. 5)文部科学省『中学校学習指導要領(平成 29 年告示)解 説 理科編』学校図書、2017、128-129. 6)野村周平・下村政嗣、「バイオミメティクスの定義と歴史、 将来への展望」篠原現人・野村周平 編、『生物の形や能 力を利用する学問 バイオミメティクス』東海大学出版 部、2016、2-11. 7)齋藤 彰、「世界が認める新幹線の秘密」、下村政嗣 編、 『トコトンやさしいバイオミメティクスの本』、日刊工業 新聞社、2016、90-91. 謝辞  本研究の授業実践にご協力いただきました太田市立太田中 学校の生徒の皆さん、ならびに木村貴洋教諭に心よりお礼申 し上げます。 中学校理科における生命分野と科学技術の関わりについての学習教材 59

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参照

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