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資料 富山消化管撮影研究会

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Academic year: 2018

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(1)

胃癌のX 線読影−二重造影法−

松本史樹

癌研究会有明病院画像診断チーム

はじめに

“技師が書く技師のための読影講座”とは?

 最初に,良い写真の条件を明確にしておく必要があ る.胃のX 線検査目的には,1)病変の拾い上げを目的 とした検査,2)病変に対してさらに詳しい検査を行 い,それが良性であるか悪性であるかの質診断を目的 として行う検査,3)悪性と診断された病変に対して拡 がりや深さといった量的診断を目的とした検査があ る.したがって,良い写真とはそれぞれがより容易で あり正確に行える条件を備えた写真(質量ともに優れ た画像情報を持った)ということになる.しかし,集 団検診の間接撮影,二次精密撮影,一般外来受診者に 対する撮影などX 線検査が行われている環境や条件も さまざまである.さらには撮影時間,撮影枚数,撮影 装置,撮影法の組立とその手技,使用造影剤(質と濃 度)などといった実務上の条件も一定でなく,撮影技 術に優劣の差がなくても,これらの条件によっては優 れた写真が提供できないことも多いようである.  ここでは,一般外来ならびに術前の精密検査の立場 から,私見を述べることにする.

・診断と治療法に適した写真

 一般外来受診者に対して行うX 線撮影では,診断と 治療法に適した写真を提供することが目的になるが, 適当な写真であるかどうかは撮影された写真(画像情 報)の質と量に左右される.そこで,写真の質と量を 左右する因子を三つに分けると以下の如くになる.す なわち,

① 装置や造影剤などのハード面.

幾何学的ボケ,散乱X 線によるボケ,光の拡散によるボ ケ,撮影時間の短縮,造影剤の質等を考慮しているか?

② 病変の肉眼形態を表すための撮影体位や造影手技と いったソフト面.

正常例(胃X 線像の形,辺縁,面)をたくさん見ている か? 異常例(胃X 線像の形,辺縁,面,病変の肉眼 像,組織像など)を見ているか?

③ 腫瘍病理学的な基礎知識の習得をしているか? 場,組織型,肉眼型など.(T abl e 1,2,F i g. 1∼7)

 近年,熊倉賢二先生(元癌研内科,慶應大学名誉教 授)らによってX 線装置の改良や造影剤の開発が行わ れ,鮮鋭度に優れた画像が得られるようになった.ま た,低粘性,拡散性の良い高濃度造影剤の開発は,造 影剤量の減少化(前壁二重造影の簡易化と小腸への造 影剤の流失の減少)と体位変換法の変革を生み出し, なおかつ少ない造影剤量で胃全体に良好な付着を生み 出す結果となっている.このようにハード面では,術 前の精密検査に近い画像が得られる条件がそろいつつ あるのにもかかわらず,旧態然とした撮影を行ってい る施設(個人)が多いようである.このように,ル−チ ン検査でも質診断が可能な画像が得られる条件がそ

1)未分化型癌(胃型 g as tric type) Undifferentiated c arc inoma 2)分化型癌(腸型 intes tinal type)

D ifferentiated c arc inoma

T a ble 2 胃癌の組織型分類(二分類法:中村恭一による) 1)胃癌は胃粘膜上皮から発生し,発生した母地組織・細胞

の形態,機能を保持する(組織形態の類似)

2)癌は宿主側から何らの規制を受けず,無軌道に増殖する

(不規則な形態)

3)胃粘膜は固有粘膜と腸上皮化生粘膜の二つに分けられる

(背景粘膜の質)

4)胃粘膜は加齢とともに不可逆性に変化し,固有粘膜を腸 上皮化が置換する(背景粘膜の質は変化する)

5)胃固有粘膜からは未分化型癌,腸上皮化生粘膜からは分 化型癌が発生する(場と癌組織型の関係)

6)癌は時間経過とともに発育し,さまざまな肉眼形態を呈 する(癌の多様である)

T a ble 1 腫瘍病理学的な基本的な事項

(2)

F ig . 4 胃癌組織発生の概念(中村恭一:胃癌の構造)

(1 )胃癌の大部分は,良性限局性病変とは無関係に, いわゆる正常の胃粘膜あるいは萎縮性の胃粘膜か ら発生する.

(2 )胃固有粘膜からは未分化型癌が,一方,胃の腸上 皮化生粘膜からは分化型癌が発生する.

(3 )癌発生後は,癌細胞は正常細胞の分化の過程を模 倣する.

F ig . 3  胃癌の三角(中村恭一:胃癌の構造)

次 的 な 生 物 学 的 特 性( ビ ラ ン , 再 生 , 過 形 成 な ど )に よって,さまざまな肉眼形態 を呈する.

IIc ,s ig ,m,7×6mm

F ig . 2 癌は時間の経過とともに大きくなる. E ndo- c rime c e ll c a rc inoma

(3)

F ig . 5 癌発生の母地粘膜のX 線診断

ろっているわけであるから,新たな,感覚で撮影手技 や手順を再検討する時期に来ていると思う.しかしな がら,施設の置かれている状況,特に装置については, 性能の良いものほど高価であり,必ずしも各施設に良い 装置が入っていないことが現状である.これらを考慮す ると,今のところはソフト面の充実を図ることが重要で あると思われる.以下,ソフト面について述べることに する.

・読影を難しくする写真

 読影を難しくする写真について,まとめておくこと にする.その代表は,

第一に,造影剤の付着が良くない写真である.造影剤

(低濃度→高濃度)の質と量を選択する必要がある(F ig. 8).

第二に,ブレやカブリあるいは,コントラストが悪い写 真,つまり撮影条件が悪い写真である(F ig. 9). 第三に,小腸との重なりが多い写真であり,被写体にあ わせて体位変換をどのように行ったかである(F ig. 10). 第四に,透視下で病変に気付くかどうかである.病変 の存在に気付くことができれば,それなりに肉眼的特 徴を捉えた写真が撮影でき,それだけ読影もやさしく なることは言うまでもない(F i g. 11).

・的確に表現する

 病変を的確に表現するといっても,病変の肉眼形態 はさまざまなので,なるべく多くの病変について肉眼 的特徴を知っておく必要がある.さらに,それらがど のような透視下像として表れ,それらをX 線像として 的確に表現するにはどのような手技を用いたらよいか についても知っておく必要がある.これには,経験だ けでなく,一例一例について検討を行い,救命可能な

胃癌の発見と治療の一翼を担っているという自負と責 任を持つことが,最も大切であると思う.

・それらしく表現する

 さて,病変をそれらしく表現するにはどうしたらよ いかの問題について考えることにする.第一には,先 輩達から教わったとおりにすることもよい.しかし, これまで経験しなかったような病変に遭遇し,戸惑わ ないようにするには,日頃から各種撮影法の利点を生 かした検査をするにはどうしたらよいかについて,意 見を聞き,文献を読み,自分なりに考えておくことが 必要である.また,自分で撮影した写真が,どの程 度,病変を忠実に表しているかを,十分に検討してお くことが大切であることは言うまでもない.

・検査法の組立

 X 線検査法には,四つの撮影法がある.すなわち, レリーフ法,充盈法,二重造影法,圧迫法である.周 知のように,それぞれに利点と欠点があり,それらの 利点を最大限に生かし,肉眼形態や拡がりを表現でき る撮影法を組み立て,病変の進行度や肉眼型にあった 写真を撮影することが大切であると思う.

F ig . 7 粘膜萎縮とは?

a b

F ig . 6 背景粘膜のX 線診断

(a )萎縮の少ない胃 ヒダの多い胃

(b)萎縮の高度な胃 ヒダの少ない胃

(4)

a b F ig . 1 1 透視下で病変(矢印)に気付く.

(a ) 二重造影 平面像(粘膜像)

(b) 二重造影 凹凸像(薄層像) IIc(ul2 ),s ig ,s m3,2 5×20mm F ig . 8 造影剤濃度による付着の悪い写真

(a )中濃度粉末造影剤1 3 0%w/v

(b)高濃度粉末造影剤2 0 0%w/v

F ig. 9 カブリ,ブレ,コントラストの悪い写真 F ig . 1 0 小腸陰影の重なり:体位変換の工夫 3 型(2 s ),por,mp,2 5×20mm

a b

(5)

1)典型的な進行癌に対しては,充盈法を中心に圧迫法 と二重造影法を組み合わせる(F i g. 12).

2)早期癌のような微細な病変に対しては,二重造影法 を中心に圧迫法と充盈法を組み合わせることが基本 的なこととして重要であると思われる(F i g. 13).  それでは,実際の読影について述べてみたいと思う.

1 .読影手順

 読影をするにあたって,1)最初に画像の質の良悪

(造影剤の付着状態;F i g. 14,撮影条件,至適撮影体 位;F ig. 15で撮影されているか),2)胃の形(鈎状胃, 下垂胃,牛角胃等),3)胃辺縁(陰影欠損像;F ig. 16, 弯入,切れ込み,へこみ像(陥凹像),辺縁不整像(ギ F ig . 1 3 早期癌,それに近い病変(二重造影法を

中心に)

I I c( u l 2 s ), t u b 1 ∼ t u b 2 , s m 2 , 1 5×20mm

F ig . 1 2 典型的な進行癌(充盈法を中心に) 2 型 tub2 ∼por,s e ,8 0×70mm

(6)

ザつき,不規則凹凸),直線化(壁硬化像,つっぱり 像),突出像;(側面ニッシェ像,憩室;F i g. 17),4) 胃粘膜面(溜まり像,潰瘍:その輪郭,辺縁に濃淡の 差,不規則さがあるかどうか,5)はじき像(透亮像, 微細顆粒状,粗大顆粒状,大小不同):ヒダ(走行,形 状,大きさ):中断,不規則なヤセなど,陰影斑(バ

リューム斑,濃淡の差,付着異常):明瞭で不整形, 濃淡の差は悪性を考える.また,読影にあたっては大 きな所見から小さな所見(写真を見て一番目立つ所見 から微細な所見)へと読影していくのが良いと思う. 以下 次号に続く F ig . 1 5 至適撮影体位

(a )背臥位弱い第 1 斜位像

(b)背臥位頭低位第 2 斜位像 IIc(ul2 ),s ig ,s m3,2 9×17mm a b

F ig . 1 4 体位変換

(a )付着の悪い写真

(b)付着の良い写真 IIa  様隆起病変,2 5×25m a b

F ig . 1 6 陰影欠損像

3 型(ul3 ),tub2 ,s s 2 ,2 2×18mm F ig . 1 7 側面ニッシェ像

参照

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