「全身に血液を送るポンプ」心臓を護(まも)る

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「全身に血液を送るポンプ」心臓を護(まも)る

大学院医学研究科 教授

筒井

つつい

裕之

ひ ろ ゆ き

(医学部医学科)

専門分野 : 循環器内科学

研究のキーワード : 心不全,薬物治療,創薬,炎症,ナチュラルキラーT 細胞

HP アドレス : http://cvhp.med.hokudai.ac.jp/

研究を始めたきっかけは何ですか?

心臓は、全身に血液を循環させるポンプとして働く重要な臓器です。1分間に80回。1 日11万回。1年4200万回。80年間では、何と33億6000万回も休むことなく動き続けます。 このポンプが止まってしまうと、当然死に到ります。

心臓のポンプとしての働きが悪くなってしまう病気が心不全です。高齢者の増加や生活 習慣の欧米化による高血圧・糖尿病などの生活習慣病の増加によって、心不全の患者さん が日本も含め世界中で急増しています。現在では、我々循環器内科医が診療する患者さん のなかで心不全の患者さんが最も多くなっています。

心不全の患者さんを救うために、現在まで数多くの治療法が開発され、実際に応用され てきました。しかし、現在でも心不全になると、5年以内に20-30%の患者さんが亡くなっ てしまうという重症な病気です。この病気のメカニズムをさらに解明し、創薬や新たな治 療法を開発しようという研究に世界中の研究者が取り組んでいます。

何を目指しているのですか?

私たち生体の機能制御に重要な役割を果たしているのが炎症です。炎症は、様々な病気 の成り立ちに関わっていることが知られていますが、心不全でも心臓で持続的に炎症が起 こり悪影響を及ぼしていることがわかってきています。この炎症を制御することで、心不 全の予防や治療ができると期待されています。

我々は、この炎症を制御する働きをもっているナチュラルキラーT(NKT)細胞に着目し ています(図1)。心不全の形成・進展におけるNKT細胞の役割を明らかにし、NKT細 胞活性化による新しい心不全治療の開発を目指しています。

出身高校:久留米大学附設高校(福岡県) 最終学歴:九州大学医学部

医療

図1 NKT 細胞は NK 細胞の マーカーである NK1.1 と T 細 胞受容体を有し、樹状細胞 などの抗原提示細胞によっ て活性化され、組織障害性 (T

H

1)と組織修復性(T

H

2)サ イトカインを産生する。

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どんな研究をしているのですか?

心不全の基礎研究を行うためには、心不全のモデル動物が必要です。マウスの心臓に栄 養供給している冠動脈を顕微鏡下で結窄して心筋梗塞を作成すると心不全になります。心 不全に陥った心臓は拡大します(図2上)。また、心筋細胞は肥大し、細胞間の線維成分が 増加します(図2下)。この現象を「心筋リモデリング」と呼び、心不全の発症・進展に関 わっています。心不全では、心臓ばかりでなく骨格筋の機能も障害され運動能力の低下に 関与しています(図3)。

心臓を護るには、「心筋リモデリング」を抑制する必要があります。NKT細胞を特異的 に活性化すると、梗塞後の心筋リモデリングや心不全が抑制されます。また、逆に NKT 細胞が欠損したマウスでは、心不全がさらに増悪します。このような結果から、NKT細 胞の活性化によって、心筋リモデリング・心不全を抑制できることがわかりました。

次に何を目指しますか?

我々の研究によって、NKT 細胞の活性化により心不全を改善できることが世界で初め て明らかにされました。これを、実際の心不全患者さんの治療に応用するのが次の目標で す。しかしながら、マウスで有効な治療を、そのまま患者さんに使用することはできませ ん 。 基 礎 研 究 の 成 果 を ふ ま え て 臨 床 研 究 に 発 展 さ せ て い く 展 開 研 究 (translational

research)として、臨床応用可能な新たな治療として開発を目指したいと思っています。

医師には、目の前の患者さんを救うことが求められます。と同時に、医学研究者として、 病態を解明し、新たな治療やより効果的・効率的な治療を開発していくことも重要な責務 です。このような研究に従事することによって、目の前の一人の患者さんだけでなく、よ り多くの患者さんを救える可能性があります。医師として医学研究者として、患者さんの ためになる研究を我々と一緒にやってみませんか?

参考書

(1) 筒井裕之他編,『心不全に挑む・患者を救う』,文光堂(2005)

図3 小動物用トレッドミル。密閉容器の中でマウスを運動させ、運動 中の呼気ガスを集めて、酸素および二酸化炭素濃度を測定すること によって、ヒトと同じように運動能力を正確に評価することができる。 図2 正常(左)と心不全(右)の心臓。心不全で

は、左室が拡大し、心筋組織では心筋細胞自 体が肥大し、間質の線維化が亢進する。

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参照

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