諸 諸 諸 批 分 言 科 政 歴 宗 道 論 学 講 市 学
(
ス コ ラ
)
で 広 場
(
ア ゴ ラ
)
で
こ の 地 上 で 行 戦 列 を 並
べ た カ ン ト 学 派 の 批 判 哲 学 が 権 威 と と も に 過 去 の 哲 学 を 吹 き 飛 ば す の が 好 き だ
空 中 高 く 放 り 上 げ ら れ た メ ン
デ レ ス ゾ ー ン が 霊 魂 の 絶 対 的 持 続 性 を ば ら ば ら に 論 破 さ れ た 時 な ど 心 が 躍 る
ヘ ー ゲ ル の 弄 ぶ ド イ ツ 観 念 論 が 学 問 の 良 心 を 蹂 躙 す る の が 好 き だ
悲 鳴 を 上
げ て 誰 も 来 な い 教 室 か ら 飛 び 出 し て き た シ ョ ー ペ ン ハ ウ ア ー を ベ ル
リ ン 大 学 か ら 追 現 代 論 理 学 で 武 装 し た 論 理 実 証 主 恐 慌 状 態 の ポ ス
ト モ ダ ニ ズ ム が 既 に 息 絶 え た 進 歩 の 観 念 を 何 度 も 刺 突 し て い る 様 な ど 感 動 す ら 覚 え る
詭 弁 学 派 の ソ フ ィ ス ト
た ち を ソ ク ラ テ ス が 幅 を 利 か す 懐 疑 論 者 た ち が デ カ ル ト の 振 り 下 ろ
し た 方 法 的 懐 疑 と と も に 有 名 無 実 な コ ギ ト
・ エ ル ゴ
・ ス ム に よ っ て ば た ば た と 薙 ぎ 倒 さ れ る の も 最 高 だ
哀
れ な 抵 抗 者 た ち が 雑 多 な 哲 学 で 健 気 に も 立 ち 上 が っ て き た の を 弁 証
法 的 唯 物 論 の 歴 史 の 鉄 の 法 則 が 存 在 意 義 ご と ス ピ ノ ザ 必 死 に 守 る
は ず だ っ た 教 会 権 力 が 蹂 躙 さ れ 神 々 が ニ ー チ ェ に 殺 さ れ ててのもいし悲もといもてとはまさくだ
英 米 の 功
利 主 義 に 押 し つ ぶ さ れ て 殲 滅 さ れ る の が 好 き だ
英 米 プ ラ グ マ テ ィ ズ ム に 追 い 回 さ れ 相 対 主 義 に 陥 る の は 屈 辱 の 極 み だ
諸 君 私 は 批 判 を 地 獄 の よ う な 批 判 を 望 ん で い る
諸 君 私 に つ き 従 う エ ピ ゴ ー ネ ン 諸 君
君 たちはいったい何を望んでいる?
更 な る 批 判 を 望 む か
?
情 け 容 赦 の な い 炎 の よ う な 批 判 を 望 む か
?
喧 々 諤 々 の 議 論
を 尽 し 夕 暮 れ に ミ ネ ル ヴ ァ の
『 よ 我 々 の 頭 上 に は 渾 身 の 力 を
込 め て 今 ま さ に 振 り 下 ろ さ れ ん と す る オ ッ カ ム の 剃 刀 だ
こ の 暗 い ニ ヒ リ ズ ム の 中 で 世 紀 を 超 え て 耐 え 続 け て
き た 我 々 に た だ の 哲 学 で は も は や 足 り な い
!
!
大 形 而 上 学 を
!
!
一 心 不 乱 の 大 形 而 上 学 を
!
!
我 ら は 考 え る 葦 最 も 弱 い 一 本 の 葦 に 過 ぎ な い
だ が 諸 君 は 一 騎 当 千 の 哲 人 王 だ と 私 は 弁 証 し て い る
な ら ば 我 ら は 諸 君 と 私 で 総 力 百 万 と 一 人 の 超 人 集 団 と な る
我 々 を 忘 却 の 彼 方 へ と 追 い や り 眠 り こ け て い る 末 人 を 叩 き 起 こ そ う
囚 人 ど も を 洞 窟 か ら 引 き ず 連
連 中 に 我 々 の 生 の 哲 学 を 思 い 出 さ せ て や る
精 神 と 身 体 の は ざ ま に は
奴 ら の 哲 学 で は 思 い も よ ら な い こ と が あ る こ と を 思 い 出 さ せ て や る
一 千 人 の ツ ァ ラ ト ゥ ス ト ラ の ル サ ン チ マ ン で
神 な き 世 界 を 燃 や し 尽 く し て や る
京
vo l.6
目
次
ス ピ ノ ザ の 総 合 的 方 法
つ か さ
・ ア ッ カ ー マ ン
………..………...3
な ぜ 思 考 が 現 実 化 し な い の か 村 山 洋
………..…………………………………………………………………………………25
真 理 と 論 証 あ り ゃ り ゃ の こ り ゃ り ゃ
………..……………………………………………………………….42
人 生 内 方 式程海
宙 大
………..………………………………………………………………………………..45
ゴ ル ギ ア ス ぷ ら た ん
………..…………………………………………………………………………………50 編 集 後 記
………..……….………………………………………………….………….……………………73
ス ピ
ノ ザ
の 総
合 的
方 法
つ か
さ ・
ア ッ
カ ー
マ ン
は じ め に
本論 文が 扱う のは
、総 合的 方法 につ いて であ る。 これ は、 哲学 史に おい て デカ ルト が発 見し
、ス ピノ ザが 意識 的に 方法 論と して 用い たも ので ある
。 総合 的方 法が どの よう な構 造に よっ て成 り立 って いる かを 考察 した い。
目 次
第 一
章
総 合
的 方
法
第 二
章
真 偽
と は
何 か
第 三
章
学 習
の 構
造
第 四
章
一 般
概 念
に つ
い て
第 五
章
二 つ
の 説
得 手
法
第 六
章
弁 論
術 と
は 何
か
第 七
章
弁 論
術 と
学 問
の 混
同 に
よ る
弊 害
第 八
章
総 合
的 方
法 の
構 造
第
一
章
総
合
的
方 法
総 合 的 方 法 と は 何 か 何が
正し いか を一 意的 に決 める こと はで きる のか
。感 情で も思 想で も言 語 でも それ ぞれ 異な って いる 人間 が一 致す るこ とは 可能 なの か、 とい う問 題が ある
。そ れへ の答 えが
、総 合的 方法 であ る。 それ は、
「 相 手 の 持 つ 概 念 と
原 理 の み を 用 い て 相 手 の 主 張 を 否 定 す れ ば い い。 そ う す れ ば 必 ず 一 致 で き る
」と いう もの であ り、 これ を用 いれ ば、 どの よう な相 手か らで も絶 対に 同意 を奪 取す るこ とが でき る。 具体
的な 進行 は次 のよ うに なる
。
1.
相手 との 一致 点を 確認 し、 それ を定 義と 公理 とし て整 理す る
2.
その 定義 と公 理の みを 利用 して
、一 致点 を形 成す る
3.
その 一致 点を 元に
、ま た一 致点 を形 成す る この
よう にし て、 漸次 的に 一致 点を 増や して いく
。そ うし て最 終的 には
、最 初は 不一 致だ った 主張 を相 手に のま せる
。 な
ぜ こ れ だ と 同 意 を 奪 取 で き る か この
手法 だと
、相 手は 反論 する こと が構 造的 にで きな い。 なぜ かと いう と、 反論 を出 した とこ ろで
、そ れは 必ず 自分 の先 にし た発 言と 矛盾 する から だ。 例え ば、
「い や、 君は その よう な意 味で この 言葉 を用 いて いる かも しれ ない が、 それ は間 違い では ない か。 この 点で 私と 君と の間 には 相違 があ る」 と言 え ば、
「最 初か ら君 が定 義し た言 葉し か用 いて いな いの だが
」と 指摘 され る。 例え ば、
「い や、 君の 主張 には 論理 的な 飛躍 があ るの では ない か」 と言 えば
、
「私 たち はず っと
、一 致し たこ とを 積み 上げ ると いう 形で 議論 をし てき た。 今 の主 張は
、先 に君 が認 めた 主張 から 導き 出し たも のだ
。そ こに 至る まで の過 程で もず っと 互い に一 致点 を確 認し てお り、 それ は君 自身 が言 明し て認 めた
こと でも ある
、も し忘 れて しま った のな ら君 の台 詞を もう 一度 言っ てあ げよ うか
」と 指摘 され る。 つま り、 どの よう な反 論を して も次 のよ うに 返さ れ、 黙り 込ん でし まう こ とに なる のだ
。「 君と はこ れま で、 こう いう こと につ いて 一致 し、 こう いう 議 論を して きた
。こ こま では 君も 同意 して きた はず で、 それ 自体 君が 君自 身の 言葉 でこ のよ うに 認め てい たは ずだ
。そ れを 認め ない とい うの なら
、そ の時 点ま で戻 って やり なお そう ぜ」 総
合 的 方 法 の 背 景 これ
は、 人間 が構 造的 に 反
対 す る 根 拠 を 持 っ て い な い こ と は 真 だ と 認 め て い る こと
を利 用し たも ので ある
。 ある 人が ある 主張 を否 定す る場 合、 そこ には 必ず その 根拠 があ る。 その 主 張に 反対 する 事例 をい くつ か思 い浮 かべ
、そ れゆ えに 否定 する とい う過 程を とっ てい る。 だか ら、 その 根拠 がす べて 明示 され
、否 定さ れた なら ば、 否定 を 続け るこ とは もは や不 可能 にな るの であ る。 これ が基 本で ある が、 たい てい の場 合は 弁論 術を 用い てこ のよ うな 単純 な 図式 に陥 らな い工 夫が され る。 そこ で、 それ をた だの 技法 とし て整 理し
、必 ず 先に 述べ た議 論の 型に はめ る工 夫が 総合 的方 法に おい てな され る。
今 回 の 主 題 この
総合 的方 法が
、ど のよ うな 原理 の元 に成 り立 って いる かを 分析 する の が、 本論 文の 目的 であ る。
第 二
章
真
偽
と
は
何 か
真 偽 の 意 味 す る こ と 最初
に、 何か につ いて 真だ と認 め、 一致 する 過程 がど のよ うな 構造 にあ る のか を考 察す る。 人間 があ るこ とを 真だ と認 める 過程 は、 次の よう なも ので ある
。
1.
何か の対 象を 見た こと をき っか けに して
、そ こか ら生 じる こと を想 起 する
2.
これ が実 際に 起こ るこ とと 一致 して いれ ば、 それ を真 だと 認め る 例え
ば、 太陽 を見 ると する
。す ると
、そ れが その 後上 空へ と上 って いく こと を想 起す るだ ろう
。こ れが 現実 にお いて も生 じれ ば、 それ は真 であ る。 例え ば、 誰か いつ も挨 拶し てく る人 に会 った とす る。 する と、 その 人が 自分
に挨 拶し てく る姿 を想 起す るだ ろう
。そ の人 が実 際に 挨拶 をし てく れば それ は真 であ り、 して こな けれ ば偽 であ る。 そし て、 ある 者が その とき にど のよ うな 想起 をす るか は、 一意 的に 決ま っ てい る。 二
つ の 原 因 外を
眺め
、歩 き、 猫を 見て
、何 かを 思い 出し
、誰 かに 肩を 叩か れて はっ と気 づき…
とい うよ うに
、我 々の 意識 は移 り変 わる
。そ の意 識の 移り 変わ りの 背 景に は、 二種 類の 原因 を想 定す るこ とが でき る。 一つ が現 実に 起こ って いる こと であ る。 例え ば、 今太 陽の 表象 が浮 かん で いる とす るな ら、 それ は現 実に 太陽 が存 在し
、自 分を 照ら して いる から であ る。 もう 一つ が、 記憶 によ るも ので ある
。過 去に 経験 した こと を思 い出 して い る状 態が これ に当 たる
。 現
実 に 起 こ っ て い る こ と 例え
ば今
、太 陽の 表象 を浮 かべ てい ると した ら、 その 表象 がど のよ うな も ので ある かは
、太 陽の 本質 と、 それ を見 てい る自 分の 身体 の本 質と によ って 決定 する
。自 分の 身体 がど のよ うな 状態 で、 太陽 から どれ だけ 離れ てい るか によ って
、太 陽の 現れ 方は 変わ って くる わけ であ る。 そし てそ れぞ れの 本質 は自 然全 体の 秩序 に依 拠し
、そ こに 偶然 的な 要素 はな い。
我 々は 太 陽を 見 る時 太陽 が約 2 00 フ ィー ト我 々か ら 離れ て いる と表 象す る。 この 誤謬 はそ うし た表 象自 体の 中に は存 せず
、我 々が 太 陽 をそ の よう に 表象 する にあ た って 太 陽の 真の 距離 な らび に 我々 の 表象 の原 因を 知ら ない こと に存 する
。な ぜな ら、 もし あと で我 々が 太 陽 は地 球 の直 径 の6 00 倍以 上 も我 々 から 離れ てい る こと を 認識 し ても
、我 々は それ にも かか わら ずや はり 太陽 を近 くに ある もの とし て 表 象す るで あろ う。 なぜ なら
、 太 陽 を こ れ ほ ど 近 い も の と し て 表 象 す る の は
、 我 々 が 太 陽 の 真 の 距 離 を 知 ら な い か ら で は な く
、 我 々 の 身 体 の 変 状 は 身 体 自 身 が 太 陽 か ら 刺 激 さ れ る 限 り に お い て の み 太 陽 の 本 質 を 含 ん で い る から であ る。
(『 エチ カ』 第二 部定 理3 5) 記
憶 に よ る も の この
とき に想 起す るの は、 過去 に経 験し たこ とで ある
。 例え ば夏 の日 差し を見 て、 蝉の 鳴き 声を 思い 出し たと する
。そ れは
、自 分が 過去 のど こか で、 蝉の 鳴き 声と とも に夏 の日 差し を見 ると いう 経験 をし た、 とい う理 由に よる
。 これ は、 一見 して 無秩 序な もの に見 える
。自 分が どこ で、 何を 経験 する かに は無 数の パタ ーン があ るか らだ
。だ が、 自分 が過 去に 何を 経験 して
、何 が記 憶 とし て残 った か、 とい うこ と自 体は 必然 的で ある
。例 えば
、夏 の日 差し とと も に蝉 の声 を聞 く経 験を し、 両者 が結 びつ いて 記憶 とし て残 った とす る。 その
両者 が 常に 一緒 に 現れ る とい う普 遍 的な 法 則が 存在 す るわ け では もち ろ ん 無い が、 その 時点 にお いて
、自 分が その 場に いて その 経験 をし たと いう こと 自体 は、 自然 全体 の秩 序か ら必 然的 に生 じた こと であ る。 自
然 全 体 の 秩 序 と 表 象 の 連 鎖 我々
は通 常、 外的 状況 の変 化に あわ せて 何ら かの 表象 を持 つ。 太陽 が動 き、 風が 吹き
、鳥 が鳴 き、 世界 が変 化し てい けば
、そ れに あわ せて 太陽 なり 風な り 鳥な りを 表象 する
。こ のと きの 表象 の連 鎖は
、現 在の 自然 全体 の秩 序に 従っ てい る。 つい で、 そこ で目 にし てい るも のを きっ かけ に、 過去 に経 験し たこ と を想 起す る。 例え ば「 りん ご」 とい う語 を現 実に おい て聞 けば
、過 去に しば し ば「 りん ご」 とい う語 とと もに 見た 果実 を想 起す る。 この 時に 想起 した 表象 か ら、 さら に別 のも のを 想起 する とい うこ とも ある だろ う。 太陽 の日 差し を浴 びて 蝉を 思い 出し
、そ こか ら蝉 取り をし てい た時 期の こと を思 い出 すよ うに この とき の表 象の 連鎖 は、 身体 に刻 まれ てい る記 憶の 秩序 に従 って いる
。 しか しそ れは
、現 実に おい てそ の表 象よ りも 強い 刺激 を与 えら れれ ば中 断 し、 また 現実 の秩 序に 従う 表象 の連 鎖が 始ま るこ とに なる
。物 思い に耽 って いて も、 急な 物音 がす れば 現実 に連 れ戻 され るよ うに
。我 々は
、生 まれ てか ら 死ぬ まで
、ず っと この 二つ の表 象の 連鎖 を見 続け るの であ る。 この
こと から 我々 は、 記憶 の何 たる かを 明瞭 に理 解す る。 すな わち それ は、 人間 身体 の外 部に 在る 物の 本性 を含 む観 念の ある 連結 にほ か なら ない
。そ して この 連結 は精 神の 中に
、人 間身 体の 変状 の秩 序お よ
び連 結に 相応 して 生ず る。 私 は 第 一 に
、 そ れ は 単 に 人 間 身 体 の 外 部 に 在 る 物 の 本 性 を 含 む 観 念 の 連 結 で あ っ て
、 そ れ ら の 物 の 本 性 を 説 明 す る 観 念 の 連 結 で は な い と 言 う
。 な ぜ な ら
、 そ れ は 実 は 人 間 身 体 の 変 状 の 観 念 に ほ か な ら ぬ の で あ り
、 そ し て こ の 観 念 は 人 間 身 体 の 本 性 と 外 部 の 物 体 の 本 性 と を 含 ん で い る か ら で あ る
。 私 は 第 二 に
、 こ の 連 結 は 人 間 身 体 の 変 状 の 秩 序 お よ び 連 結 に 相 応 し て 生 ず る と 言 う
。 そ の わ け は こ れ を 知 性 の 秩 序 に 相 応 し て 生 ず る 観 念 の 連 結 と 区 別 す る た め で あ る
。 この 知性 の 観念 の連 結 にお いて は精 神は その 第一 原因 によ って 知覚 する
、そ して この 知性 の 観念 の連 結は すべ ての 人間 にあ って 同一 なの であ る。 さら こに れ か ら 我 々 は
、 な に ゆ え 精 神 が 一 つ の 物 の 思 い か ら た だ ち に そ れ と は 少 し も 類 似 性 の な い 他 の 物 の 思 い へ 移 る か を 明 瞭 に 理 解 す る
。 例 え ば ロ ー マ 人 は ポ ー ム ム と い う 言 葉 の 思 い か ら た だ ち に あ る 果 実 の 思 い へ 移 る で あ ろ う
。 こ の 果 実 は あ の 発 音 さ れ た 音 声 と は 何 の 関 係 も な く ま た 何 の 共 通 点 も な い
。 た だ 同 じ 人 間 の 身 体 が こ の 両 者 か ら し ば し ば 刺 激 さ れ た だ け に す ぎ な い
。 こ の よ う に し て 各 人 は
、 自 分 の 習 慣 が 事 物 の 表 象 像 を 身 体 の 中 で 秩 序 づ け て い る の に 応 じ て 一 つ の 思 い か ら 他 の 思 い へ 移 る で あ ろ う。 例え ば軍 人は
、砂 の中 に残 され た馬 の足 跡を 見て
、た だち に馬 の思 いか ら騎 士の 思い へ、 また 騎 士の 思い から 戦争 その 他の 思い へ移 るで あろ う。 とこ ろが 農夫 は、 馬
の思 いか ら鋤 や畑 その 他の 思い へ移 るで あろ う。 こ の よ う に し て 各 人 は
、 自 分 が 事 物 の 表 象 像 を こ の あ る い は か の 仕 方 で 結 合 し
、 連 結 す る よ う に 習 慣 づ け ら れ て い る の に 応 じ て 一 つ の 思 い か ら こ の あ る い は か の 思 い へ 移 る で あ ろ う
。
(『 エチ カ』 第二 部定 理1 8備 考) 真
偽
= 過 去 の 想 起 ある
主張 の真 偽を 問う 場合
、そ れが 実際 に意 味し てい るこ とは
、あ る対 象 を見 れば 続い て何 を自 分は 想起 する かで あり
、そ れは その 者の 記憶 に依 拠す る。 例え ば「A はB であ る」 とい う主 張を 聞い たと する
。そ の真 偽を 判断 する と きに 何を して いる かと いう と
A
を 想 起 す れ ば
、 そ こ か ら 続 い てB が 想 起 さ れ る か ど う か を考
える わけ だ。 それ が何 の支 障も なく 想起 され れば
、そ の主 張は 真だ と 判断 する こと にな る。 その 両者 が結 びつ かな い、 反対 にそ れを 否定 する よう な想 起を する とす れば
、そ れを 偽だ と判 断す る。 その 対象 につ いて 不明 で、 真 であ る場 合も 偽で ある 場合 も想 起さ れた とき
、判 断が つか ない と言 う。 つま り、 この 真 偽 の 問 題 は
、 そ の 者 が 過 去 にA に 関 し て ど の よ う な 経 験 を し た か を 問 う て い る の と 同 じ であ る。 そし てそ の者 が過 去に どの よう な経 験を した かと いう こと は、 自然 全体 の秩 序に よっ て定
まっ てい るこ とで あり
、そ の者 の恣 意に なる こと では ない
。 判
断 の 控 え は 自 由 意 志 で は な い 判断
の控 え、 迷い
、思 考な どの
、一 見し て自 由意 志を 用い た行 為の よう に見 える もの も、 構造 は同 じで ある
。そ れは 同、 時 に 多 数 の 表 象 を 漠 然 と 想 起 し て い る 状 態 を指 して いる
。 この こと は、 ある 対象 につ いて の知 識を 持っ てい ない 場合 に起 こる
。そ の 場合
、そ の対 象は どの よう な表 象と も結 びつ き得 るた め、 その 対象 から の想 起は 脈絡 の無 いも のに なる
。そ れゆ え、 その 対象 につ いて 何か の主 張を 聞い た時
、そ れが 真で ある 場合 も、 偽で ある 場合 も容 易に 表象 でき るだ ろう
。 例え ば象 につ いて 何も 知ら なけ れば
「象 が針 の穴 を通 った
」と 聞い ても そ れが 偽で はな いと 思い 得る
。象 につ いて の大 きさ もな にも 知ら ない から
、そ の事 態が 真で ある 場合 も偽 であ る場 合も 想起 しえ るか らだ
。だ が、 もし その 対象 がど のよ うな もの であ るか を知 れば
、そ のよ うな こと は起 きな くな る。 私
は、 自 分 が 存 在 す る こ と を 識 る 上 は、 自 分 の 存 在 又 は 不 存 在 を 虚 構 す る こ と が 出 来 な い
。 同 様 に ま た 私 は 針 の 穴 を く ぐ る 象 を 虚 構 す る こ と が 出 来 な い
。 また 神の 本性 を識 る以 上は
、神 の存 在ま たは 不存 在を 虚構 する こと が出 来な い。 そ の本 性 が存 在 する こと と矛 盾 する キ マイ ラに つい て も同 様 のこ と が言 い得 る。
(『 知性 改善 論』 54
)
虚 構 は 新 し い も の を 作 り
、 あ る い は 精 神 に 示 す と い う こ と が な い
。 む し ろ 単 に 頭 脳
、 あ る い は 表 象 力 の 中 に あ る も の が 記 憶 に 呼 び 戻 さ れ
、 そ し て 精 神 が そ の す べ て へ 同 時 に 混 乱 し て 働 く の で あ る
。 例え ば言 葉と いう も のと 木と いう もの が記 憶に 思い 起こ され る。 そし てこ れに 精神 が区 別 なく 混乱 して 働く とき に、 木が 話す など とい うこ とを 思う ので ある
。
(『 知性 改善 論』 57 注) 私は
、判 断を 控え る自 由な 力が 我々 にあ るこ とを 否定 する こと をも って 答え とす る。 なぜ なら
「、 あ る 人 が 判 断 を 控 え る
」と 我 々 が 言 う 時
、 そ れ は
「 彼 が 物 を 妥 当 に 知 覚 し な い こ と に 自 ら 気 づ い て い る
」と 言 う の に ほ か な ら な い から であ る。 ゆえ に判 断の 差控 えは 実は 知覚 であ って 自由 意志 では ない
。(
『エ チ カ』 第二 部定 理4 9備 考)
第
三
章
学
習
の
構 造
人 間 と 他 の 個 物 の 違 い 自然
にお ける もの はす べて
、因 果律 に従 って 動く
。す べて の行 為に は原 因 があ り、 その 原因 にも また 原因 があ る。 石が どこ かへ 飛ん でい った とす れば それ にぶ つか った 何か があ るは ずで あり
、そ れが なぜ その 石に ぶつ かっ たか とい えば また 何か 原因 があ るだ ろう
。そ の石 がど のよ うに 行為 する かは
、そ の石 の本 性と その 石に 接触 する 個物 の本 性と によ って 規定 され
、そ のど ちら も自 然全 体の 秩序 に従 うの であ る。 これ は人 間の 場合 も同 じで ある
。人 間の 行為 は、 人間 身体 の本 性と
、そ れに 接触 する もの の本 性と によ って 規定 され る。 石が 蹴ら れた らど こか へ飛 んで いく のと 同じ よう に、 人間 の行 為は 外的 対象 の働 きか けへ の反 応に すぎ ない
。 人間 であ ろう と石 であ ろう と、 自然 全体 の秩 序に 従う 個物
、と いう 点で は違 いが ない から だ。 では どこ に人 間と 他の 個物 との 相違 があ るか とい うと
、人 間の 場合 はそ の 働き かけ の結 果と して の行 為が
、
1.
何ら かの 対象 に働 きか けら れる
2.
その 対象 に関 する 想起 をす る
3.
何ら かの 行為 をす る とい
うよ うに
、想 起の 段階 を挟 んで 生じ てい る点 にあ る。 人間 身体 の本 性 には
、そ の者 が過 去に どの よう な経 験を して
、ど のよ うな 記憶 が刻 まれ てい るか とい うこ とが 含ま れて いる
。そ の分 だけ
、そ こら にあ る無 機物 より も反 応が 多少 複雑 にな るの だ。 人間 が何 を想 起す るか 自体 は必 然で あり
、こ の段
階を 挟 んだ から と いっ て 人間 が自 然 全体 の 秩序 に従 う こと が 変わ るわ け で はな い。 だが この 段階 が加 わる こと で、 相対 的に 適切 な行 為を する こと が可 能と なっ てい る。 普
遍 的 な 結 び つ き と 特 殊 的 な 結 び つ き 人間
は、 経験 を積 むこ とに よっ て対 象に つい ての 知識 を得 てい く。 これ こ れは この 時に はこ のよ うな 行動 をと る、 これ これ は何 々と 一緒 に現 れる こと が多 い、 何々 は不 快で ある
、何 々は 快で ある
、何 々は 秩序 だっ てい て何 々は そ うで はな い、 何々 は吉 兆で あり 何々 を見 た後 には 悪い こと が起 こる
、何 々は 食べ ると 甘い
、と いっ たよ うに だ。 この 想起 の結 びつ きに は、 普遍 的で ある 場合 と特 殊的 であ る場 合と があ る 例え ば、 太陽 は上 ると いう こと につ いて は、 それ を否 定す るよ うな 経験 はし よう がな い。 その よう な、 どの よう な場 所、 どの よう な時 間で あっ ても 普遍 的 に生 じる 結び つき であ れば
、そ れは 自身 の身 体の 状態 がど のよ うな もの であ って も、 それ を経 験す るの がど のよ うな 人間 であ って も、 同じ よう に経 験さ れる だろ う。 一方
、結 びつ きが 特殊 であ って
、あ る特 定の 場所
、時 間に おい てし か生 じな いも のが ある
。例 えば
、あ る時 間帯 に誰 に出 会う かと いう こと は普 遍的 に生 じる こと では ない
。し かし
、そ れが たと え特 殊で あっ ても
、そ れに 反対 する 経 験を した こと がな い場 合、 それ を真 だと 思い 込ん だま まに なる
。 虚偽
と は単 に 毀損 し 混乱 した 観念 の 含む 欠 乏に のみ 存す る ので あ
る。 ゆえ に偽 なる 観念 は偽 であ る限 りに おい て確 実性 を含 まな い。 だ か あら る 人 間 が 偽 な る 観 念 に 安 ん じ て そ れ に つ い て 疑 わ ぬ と 我 々 が 言 う 場 合
、 そ れ は 彼 が そ れ に つ い て 確 実 で あ る と い う の で は な く て
、 単 に そ れ に つ い て 疑 わ ぬ と い う だ け の こ と で あ る
。 あ る い は 彼 の 表 象 を 動 揺 さ せ る 原 因 が 少 し も 存 在 し な い か ら 彼 は そ の 偽 な る 観 念 に 安 ん じ て い る と い う だ け の こ と で あ る。
(『 エチ カ』 第 二部 定理 49 備考
) 学
習 と は 何 か 学習
とは
、そ れま で真 だと 思い 込ん でい たこ とに 対し て反 対の もの が突 き つけ られ
、普 遍的 な認 識を 得る 過程 を指 す。 ある 対象 を見 れば
、そ の対 象に つ いて の想 起が 生じ る。 もし
、実 際に 起っ たこ とが その 想起 と異 なる もの であ れば
、そ れが 記憶 とし て残 り、 次に その 対象 を見 た時 には より 妥当 な想 起を する こと にな るの であ る。 人間 は漸 次的 にこ の過 程を 繰り 返す こと で、 より 普遍 的な 知識
、す なわ ち「 これ はこ のよ うに 動く
。こ のよ うに 自分 に影 響す る。 よっ てこ のよ うな 場合 には この よう にす れば 適当 であ る」 とい う経 験を 蓄積 し、 より 合理 的な 行動 をと るよ うに なる
。 す
べ て の 混 乱 は、 精 神 が、 ま と ま っ た 事 物 あ る い は 多 数 の 要 素 か ら 合 成 さ れ た 事 物 を 部 分 的 に し か 認 識 せ ず
又 認 識 さ れ た も の と さ れ な い も の と を 区 別 し な い と い う こ と か ら
、 更 に ま た
、 お の お の の 事 物 に 含 ま れ て い る 多 数 の 要 素 に 対 し て 何 ら の 区 別 な し に 同 時 に 注 意 を 向 け る と い う こ と か ら 来 る の で あ る
。
(『 知性 改善 論』 6 3) 人
間 同 士 の 相 違 点 と 一 致 点 特殊
な結 びつ きの 場合 は各 人で 異な り、 一致 する 保証 はな い。 それ は、 各人 が個 物に 刺激 され る仕 方の 数だ け多 くあ り、 多様 であ る。 例え ば、 どの 対象 に つい てど のよ うな 感情 を抱 くか は各 人で 相違 する
。あ るも のに つい ては 快い ある もの につ いて は不 快で ある
。あ るも のは 秩序 だっ てい て、 ある もの は無 秩序 だ。 この よう に、 対象 に抱 く感 情に おい ては 一致 しな い。 また
、あ る対 象 につ いて の知 識に 差が ある 場合 も不 一致 は生 じる
。そ れは
、そ れを 動か す原 因に つい ての 知識 とい う、 自然 全体 の秩 序に 関す るも ので あっ たり
、あ るい はそ のも のが ある 場合 にど のよ うに 動く か、 とい う本 質に 関す るも ので あっ たり する
。 だが
、普 遍的 な結 びつ きの 場合 は、 誰で あっ ても 同じ で一 致し てい る。 どの よう な状 況で も生 じる こと は、 それ を経 験す る者 の身 体の 状態 や、 それ を経 験す るの が誰 なの かに かか わら ず、 同じ よう に生 じる から であ る。 また
、普 遍的 な認 識を より 多く 持っ てい る者 が、 それ だけ 個々 の場 合に 適 当な 行動 をし える こと にな る。 その 構造 を知 って いな けれ ば、 ただ 偶然 にま
かせ て行 動す るし か無 いが
、対 峙し てい るも のが 何を 原理 とし てお り、 どこ に脆 弱性 をも つか がわ かれ ば、 より 適切 な対 処が でき るだ ろう
。 例え ば、 人間 が持 つ感 情が どの よう な原 理で ある かを 把握 し、 個々 の感 情 がど のよ うな 原因 を持 ちど う対 処す れば いい かを 知っ てい れば
、そ れだ け有 利に なる
。相 手が 感情 的に なり
、憤 って いる とす る。 もし
、そ れが どの よう な 必然 的な 原理 で起 こっ てお り、 相手 がな ぜそ の感 情に 囚わ れて いる か、 そし てそ れに 対し ては どの よう に対 処す れば いい かを 知っ てい れば
、自 己に とっ て有 利に なる よう 適切 な対 処を する だろ う。 だが もし それ を知 らな けれ ば、 相手 が怒 って いる こと それ だけ を意 識し
、相 手を その よう に行 為せ しめ てい る自 然全 体の 秩序 に帰 する 原因 があ るだ ろう こと を忘 れ、 相手 それ 自体 を自 分の 不安 を煽 って いる 原因 だと 考え
、こ ちら も感 情的 にな り、 短絡 的な 行動 をと るこ とに なる だろ う。 普遍 的な 原理 につ いて 知っ てい れば
、個 々の 事態 が起 きて もそ のた びに 動 揺し たり せず
、そ の対 処法 を考 え、 対象 を無 害化 する にし ろ自 己に 役立 てる にし ろ、 自分 にと って 利と なる 行為 をす るこ とが でき る。 ただ
、そ の原 因に つ いて 不明 で、 自然 全体 の秩 序か ら切 り離 して その 対象 のみ を見 てい ると きに は、 その 場そ の場 で受 ける 偶然 的な 刺激 に応 じて
、実 際に は自 分に とっ て有 益で ない 行為 をす るの であ る。 未知 なる 脅威 に対 峙し た時 に、 それ がど のよ うな 普遍 的な 原理 で生 じて い て、 どう 対処 すれ ば適 切な のか を把 握し
、対 処す る。 そし て、 また 別の 未知 な るも のに 出会 えば
、同 じよ うに 対処 する
。こ のこ とを 繰り 返し てい けば
、普 遍 的な 知識 が増 え、 自然 全体 から 自分 にと って 未知 であ り脅 威で ある 領域 が減 るだ ろう
。そ うし て、 出会 うも のを 全て 自己 にと って 害悪 か有 益か のみ で判 断し
、た だ淡 々と 自己 にと って 利益 とな る行 為を 実行 し続 けら れる よう にな
るだ ろう
。 人間 の強 弱は
、適 応能 力だ とか 学習 能力 だと か呼 ばれ る領 域に おい ての み 存在 する
。過 去の 経験 に学 び、 そこ にお いて 普遍 的な もの を見 出せ るか どう か。 余計 なノ イズ を捨 て、 ある もの がど のよ うな 本性 を持 ちど のよ うに 行為 し自 身に どう 影響 をす るの かを 把握 でき るか どう か。 ある のは ただ
、状 況に 適応 でき る者 とそ うで ない 者、 最善 手を 指せ る者 とそ うで ない 者の 区別 だけ なの だ。 これ
らす べて は、 各人 が事 物を 脳髄 の状 態に 従っ て判 断し
、あ るい はむ し ろ表 象 力の 受 けた 刺激 を事 物 自体 と 見た こと を十 分 に示 す も ので ある
。こ のゆ えに
(つ いで なが ら注 意す るが
)人 々の 間に
、我 々 の見 聞き する よう なあ んな に多 くの 論争 が生 じ、 これ から つい に懐 疑 論が 発生 した こと も怪 しむ に足 りな い。 なぜ なら
、 人 々 の 身 体 は 多 く の 点 に お い て 一 致 す る が も っ と 多 く の 点 に お い て 異 な り
、 そ の ゆ え に あ る 人 に 善 く 見 え る も の が 他 の 人 に 悪 し く 見 え
、 あ る 人 に 秩 序 正 し く 思 え る も の が 他 の 人 に は 混 乱 し て 思 え
、 あ る 人 に は 快 い も の が 他 の 人 に は 不 快 だか らで ある
。(
『エ チカ
』第 一部 付録
)
思 考 の 意 味 何か
につ いて 考え る状 態に 意味 があ るの は、 それ が過 去の 経験 から 普遍 的
なも のを 取り 出す 作業 であ る場 合に 限る
。経 験に は、 それ が普 遍的 であ る場 合と そう でな い場 合と があ る。 その うち で普 遍的 なも のは
、そ れが また 将来 にお いて
、自 己に 降り かか りえ ると いう 点で 考察 をす る意 味が ある
。例 えば その 対象 が人 であ れば
、過 去に その 人間 とつ きあ った 経験 から
、そ いつ がま た今 後も する であ ろう こと だけ を取 り出 し、 あと のこ とは 忘れ る。 そう すれ ば、 そい つと 再び 出会 った 時に はそ の取 り出 した 普遍 的な 表象 を想 起し
、以 前よ りも 適切 な行 為を とる こと がで きる だろ う。 たと えそ の場 にお いて
、そ いつ がど のよ うな 突飛 な行 動を した とし ても
、そ れに 惑わ され ずに 対応 でき るだ ろう
。そ して それ は、 経験 した こと を整 理せ ず、 そい つに 関す る表 象が 同 時に 漠然 と想 起さ れて いる 状態 より は適 切な はず だ。 表象 から 普遍 的な もの を取 り出 すと いう 行為 は、 それ が自 己の 行為 を変 化さ せる もの だと いう 点で
、 出会 いう る脅 威に 対応 する のと 同じ こと であ る。 だが 思考 には 無駄 な場 合が ある
。そ れは
、普 遍的 なも のを 取り 出そ うと し ない 場合 であ り、 例え ば忘 れて いた こと を思 い出 すだ けだ とか
、関 係な いも のを 組み 合わ せる だと かの 場合 であ る。 それ は、 外的 に実 際に 存在 する 連結 から 遠ざ かる ため に、 自己 の頭 の中 で実 際に は存 在し ない 連結 を作 り出 し、 それ を繰 り返 すこ とに よっ て強 化す る試 みで ある
。こ れは
、現 実に おい て実 際に 生じ てい るこ とが
、自 分に とっ て不 利で どう しよ うも ない もの だと いう 前提 のも とで の、 逃避 行動 とし てな され る。 自分 の頭 を混 乱さ せ、 外的 に存 在 する 普遍 的な 秩序 を認 めず
、自 分を 現実 の表 象に 連れ 戻す より も強 力な 表象 のつ なが りを 頭の なか に作 り出 すと いう 仕方 で、 現実 に存 在す る危 機を 回避 しよ うと する ので ある
。 これ は、 外部 の脅 威に 対し て対 抗し てい るわ けで もな く、 それ に適 応し て 自分 を変 化さ せて いる わけ でも ない
。長 期的 にみ るな らこ れは 自己 の利 益に
反し てい るの だ。 思考 はそ れ自 体で 意味 を持 つも ので はな く、 それ によ って 自分 の行 為が 適切 なも のに なる とき に、 初め て意 味を 持つ もの なの であ る。
第
四
章
一
般
概
念
に
つ
い
て
各人 で共 通し
、議 論の 際に 基礎 とな る共 通概 念は 存在 する
。そ れは
、自 然に おい て普 遍的 な結 びつ きが 存在 し、 その うち のい くつ かを 我々 が認 識し てい る、 とい うこ とを 根拠 とす る。 それ は普 遍的 であ るが ゆえ に、 それ を否 定す る よう な経 験を 誰も する こと がで きず
、よ って 常に 真で ある
。 これ が認 識さ れな い理 由の 一つ に、 一般 概念 との 混同 があ る。 一
般 概 念 に つ い て 例え
ば、
「人
」と いう 語を 聞く と同 時に ある 人間 を見 ると する
。次 にま た別 の機 会に
、「 人」 とい う語 を聞 くと 同時 に、 また 別の 人間 を見 ると する
。こ れ を繰 り返 すこ とに よっ て、
「人
」と いう 語を 聞け ば、 それ まで に出 会っ た個 々 の人 間が 同時 に想 起さ れる こと にな る。 だが この とき には その 表象 は、 人間 の表 象で きる 数の 身体 的な 制限 によ って
、そ れら の共 通点 のみ を意 識し た、 個々 の点 につ いて は曖 昧な もの とに なる
。 一般 概念 が実 際に 意味 して いる のは
、そ のよ うな
「 そ の 言 葉 と 結 び つ
け ら れ た 多 数 の 対 象 を 同 時 に 曖 昧 に 表 象 し て い る 状 態
」 であ る。
次に
「人 間」
「馬
」「 犬」 など のよ うな 一般 的概 念と 呼ば れる 概念 が生 じた のも 同様 の原 因か らで ある
。す なわ ちそ れは 人 間 身 体 の 中 で 同 時 に 形 成 さ れ る 表 象 像、 例 え ば「 人 間
」の 表 象 像 の 数 が 表 象 能 力 を 徹 底 的 に は 超 過 し な い が あ る 程 度 に は 超 過 す る 場 合
、 つ ま り 精 神 が そ の 個 々 の 人 間 の 些 細 な 相 違 な ら び に そ れ ら の 人 間 の 定 数 を も は や 表 象 す る こ と が で き ず た だ そ れ ら の 人 間 全 体 の 一 致 点―
―
身 体 が そ れ ら の 人 間 か ら 刺 激 さ れ る 限 り に お い て 生 ず る 一 致 点
――
の み を 判 然 と 表 象 し う る よ う な 場 合 であ る。 そし て こ の場 合、 精 神 は こ の 一 致 点 を 人 間 な る 名 前 で 表 現 し
、 こ れ を 無 数 に 多 く の 個 人 に 賦 与 す る ので ある
。(
『エ チカ
』第 二部 定理 40 備考
) 一般
概念 は、 各人 がそ の語 とと もに 何を 経験 した かに 依拠 する から
、各 人 で相 違す る。 同じ よう に「 人間
」だ とか
「馬
」だ とか
「犬
」だ とか を会 話で 用い ても
、そ こで 想起 して いる こと は各 人で 違っ てい るの であ る。 一般 概念 は、 それ が漠 然と して いる こと から 多く のも のと 結び つく こと が でき る。 だか らそ れは 一見 して
、普 遍的 なも ので ある かの よう に見 える
。だ が、 議論 を進 め、 その 概念 につ いて 細か い点 を確 定さ せて いけ ば破 綻す る。 相手
と自 分と が、 その 概念 によ って 全く 同じ もの を想 起し てい る保 証は どこ にも 無い から であ る。 存
在 は 一 般 的 に 概 念 さ れ れ ば さ れ る だ け 益 々 混 乱 し て 概 念 さ れ
、 又 容 易 に す べ て の 物 に 帰 せ ら れ う る
。 反 対 に
、 存 在 が 特 殊 的 に 概 念 さ れ れ ば さ れ る だ け
、 益 々 明 瞭 に そ れ は 理 解 さ れ
、 又 そ れ を そ の 物 で な い 他 の 物 に―
―
自 然 の 秩 序 を 考 慮 せ ず に―
―
帰 す る こ と が 益 々 出 来 難 く な る
。
(『 知性 改善 論』 55
)
し か し 注 意 し な け れ ば な ら ぬ の は
、 こ れ ら の 概 念 は す べ て の 人 か ら 同 じ 仕 方 で 形 成 さ れ は し な い こ と
、 身 体 が よ り し ば し ば 刺 激 さ れ た も の
、 し た が っ て ま た 精 神 が よ り し ば し ば 表 象 し ま た は 想 起 す る も の に 応 じ て そ れ は 各 人 に お い て 異 な っ て い る と い う こ と で あ る
。 例え ば より し ばし ば 人間 の姿 を驚 嘆 して 観 想し た者 は人 間 とい う 名 前を 直立 した 姿の 動物 と解 する であ ろう
。こ れに 反し て人 間を 別な ふ うに 観 想す る のに 慣 れた 者は 人間 に 関し て 他の 共通 の表 象 像を 形 成 する であ ろう
。す なわ ち人 間を 笑う 動物
、羽 のな い二 足動 物、 理性 的 動物 など とす るで あろ う。 この よう にし てそ の他 のこ とに つい ても 各 人は 自 分の 身 体の 状 態に 応じ て物 の 一般 的 表象 像を 形成 す るで あ ろ う。
(『 エチ カ』 第二 部定 理4 0)
そし て、 この こと はも っと 抽象 的な 概念 につ いて も同 様で ある
。「 有」 だと か「 物」 だと かも
、そ れら が実 際に 意味 して いる こと は一 般概 念と 同じ であ り、 これ を基 礎と して 議論 をす るこ とは でき ない
。 私は
「有
」「 物」
「あ る物
」の よう ない わゆ る超 絶名 辞が 起こ った 原因 をつ いで に簡 単に 示す であ ろう こ。 れ ら の 名 辞 は、 人 間 身 体 は 限 定 さ れ た も の で あ る か ら 自 ら の う ち に 一 定 数 の 表 象 像 し か 同 時 に 判 然 と 形 成 す る こ と が で き な い と い う こ と か ら 生 ず る。 もし この 数が 超過 され れば 表象 像は 混乱 し始 める であ ろう
。そ して もし 身体 が自 らの うち に同 時に 明瞭 に形 成し うる 表 象 像の こ の数 が 非常 に超 過さ れ れば す べて の表 象像 は 相互 に まっ た く混 乱す るで あろ う。 こん な次 第で ある から
、こ の部 の定 理1 7の 系 なら びに 定理 18 から して 人、 間 精 神 は
、そ の 身 体 の 中 で 同 時 に 形 成 さ れ う る 表 象 像 の 数 だ け の 物 体 し か 同 時 に 明 瞭 に 判 然 と 表 象 し え な い とい うこ とが 明ら かで ある
。こ れに 反 し 表て 象 像 が 身 体 の 中 で ま っ た く 混 乱 す る よ う な 場 合 に は
、 精 神 も ま た す べ て の 物 体 を 混 乱 し て ま っ た く 差 別 な し に 表 象 す る で あろ う。 そ して それ を いわ ば一 つの 属性 す なわ ち「 有」
「物
」な どの 属性 のも とに 包括 する であ ろう
。(
『エ チカ
』 第二 部定 理4 0)
共 通 概 念 に つ い て これ
に対 し、 共通 概念 は外 界に おけ る普 遍的 な結 びつ きで ある
。だ から こ れに つい ては 誰も 否定 する こと がで きな いし
、各 人で 異な った りす るこ とも ない
。だ から 議論 の基 礎に なり うる のだ
。
A
が すべ ての 物 体に 共 通で あり そ して 等 しく 各物 体 の部 分 の中 に も全 体の 中に もあ るも ので ある とし よう
。私 はA が妥 当に しか 考え ら れる こと がで きな いと 主張 する ので ある
。な ぜな ら、A の観 念は 神が 人間 身体 の観 念を 有す る限 りに おい ても
、ま た神 が人 間身 体の 変状 を 有す る限 りに おい ても
、必 然的 に神 の中 で妥 当で あろ う。
(『 エチ カ』 第二 部定 理3 8)
人間 身 体お よ び人 間 身体 が刺 激さ れ るの を 常と する いく つ かの 外 部の 物体 に共 通で かつ 特有 であ るも の、 そし て等 しく これ ら各 物体 の 部分 の中 にも 全体 の中 にも ある もの
、そ うし たも のの 観念 もま た精 神 の中 にお いて 妥当 であ ろう
。(
『エ チカ
』第 二部 定理 39
) 定
義 と 一 般 概 念
以上 のこ とか ら、 議論 をす ると きに 定義 を厳 密に して
、一 般概 念の 意味 を 確定 させ よう とい う努 力は 無駄 だと いう こと がわ かる
。そ れが 一般 概念 であ れば
、ど のよ うに 工夫 しよ うと どこ かで 食い 違い が出 てく るか らで ある
。そ れで も一 致さ せよ うと する なら
、そ れは その 者が その 言葉 と結 びつ けて いる 個々 の経 験、 記憶 の段 階か ら一 致し 直す 必要 があ るだ ろう
。そ れは 実際 問題 とし て不 可能 であ る。 定義 を厳 密化 して 議論 を精 密な もの にし よう と試 みる 者は
、実 は無 意味 で的 はず れな こと をや って いる のだ
。 議論 の時 には
、共 通概 念を 基礎 とし て一 致点 を積 み上 げる 方法 が有 効で あ る。 その 時に 必要 なの は、 互い にそ の概 念が 真で ある と同 意し てい るこ との みで あり
、そ れで 十分 であ る。
第
五
章
二
つ の
説
得
手
法
共 通 概 念 に よ る 説 得 誰か
と議 論を して 説得 する とい うこ とは
、自 分が 持つ 普遍 的な 知識 につ い て相 手が 否定 して いる 場合 に、 それ が普 遍的 であ ると 認め させ るこ とで ある
。 自分 が真 だと 判断 して いる こと を相 手が 否定 する のは
、相 手の 知識 が断 片 的で
、相 手の 持つ 何ら かの 思い 込み が真 の認 識を 阻害 して いる 場合 であ る。 よっ て、 知識 を整 理し
、そ の思 い込 みを 解消 すれ ば一 致す るこ とが でき る。
実 際 大 抵 の 誤 謬 は、 単 に 次 の 点 に の み、 す な わ ち 我 々 が 物 を 正 し い 名 前 で 呼 ば な い と い う 点 に の み 存 す る
。 例え ばあ る人 が、 円の 中心 から 円周 に向 かっ て引 かれ た緒 線は 等し く ない と言 うな ら、 たし かに その 人は
、少 なく とも その 瞬間 には
、円 を 数学 家た ちと 異な って 解し てい るの であ る。 同様 に、 人々 が計 算に お いて 誤る 場合 も、 彼ら は精 神の 中に おい ては 紙上 にお ける のと 異な っ た数 を有 して いる ので ある
。だ から もし 彼ら の精 神を 見る こと がで き ると した ら、 彼ら は誤 って いる とは 言え ない
。そ れに もか かわ らず 彼 らが 誤っ てい るよ うに 見え るの は、 彼ら が精 神の 中に おい ても 紙上 に おけ るの と同 じ数 を有 する と我 々が 思う から であ る。 もし そう 思わ な かっ たと した ら、 我々 は彼 らが 誤っ てい ると 信じ ない であ ろう
。現 に 私は この あい だあ る人 が「 うち の座 敷が 隣の 鶏へ 飛び 込ん だ」 と叫 ぶ のを 聞い たが
、彼 の精 神が 私に は十 分よ くの みこ めた ので
、彼 が誤 っ てい ると は信 じな かっ た。 世 の 大 抵 の 論 争 も、 人 々 が 自 分 の 精 神 を 正 し く 表 現 し な い か
、 そ れ と も 相 手 の 精 神 を 誤 っ て 解 釈 し て い る か か ら 起 こ る
。 と い う の は
、 彼 ら は 最 も 激 し く 対 立 し て い る 場 合 で も
、 実 は ま っ た く 同 じ こ と を 考 え て い る か
、 そ う で な け れ ば ま る で 異 な る 主 題 に つ い て 考 え て い る か で あ り
、 し た が っ て た が い に 相 手 の せ い に し て い る 誤 謬 あ る い は 不 条 理 が 本 当 は 存 在 し て い な い こ と が 多 い の で あ る。
(『 エチ カ』 第二 部定 理 47 備考
)
私は 読者 に、 観念 ある いは 精神 の概 念と
、我 々が 表象 する 事物 の表 象像 とを
、正 確に 区別 すべ きこ とを 注意 する
。そ れか ら観 念と
、我 々 が事 物を 表現 する 言葉 とを
、区 別す るこ とが 必要 であ る。 なぜ なら
、 この 三者 すな わち 表象 像、 言葉
、観 念を 多く の人 々が まっ たく 混同 し てい るか
、そ うで なけ れば 十分 正確 に区 別し てい ない か、 ある いは ま た十 分慎 重に 区別 して いな いか のた めに
、意 志に 関す るこ の説 は、 思 索の ため にも
、賢 明な 生活 法樹 立の ため にも
、ぜ ひ知 らな くて はな ら ぬこ とで ある にも かか わら ず、 まる で彼 らに 知ら れて いな かっ たの で ある
。(
『エ チカ
』第 二部 定理 49 備考
) 表
象 を 利 用 し た 説 得 だが
、こ れと は別 に、 もう ひと つ説 得の 手法 があ る。 それ は表 象を 利用 した 方法 であ る。 誰か と対 峙し て議 論を して いる とき に必 要な のは
、突 き詰 めれ ば そ の 者 が あ る 表 象 と 表 象 と を 結 び つ け る こ と であ る。 例え ば「A はB であ る」 と言 うと き、A からB
がス ムー ズに 想起 され
、そ れを 否定 する よう な想 起 が生 じな けれ ば、 それ を真 だと 判断 する こと にな る。 一 瞬 だ け で あ っ て も、 あ る 表 象 と あ る 表 象 と を 結 び つ け る こ と が で き れ ば、 そ れ は 真 と 同 じ 意 味 を 持 つ こと にな るの であ る。 この こと は、 共通 概念 を用 いる 以外 の方 法で も可 能な のだ
。
同じ 事を 何度 も繰 り返 す。 利害 と結 びつ けて 話す
。感 情に 訴え る。 これ によ って
、そ の者 は両 者を 結び つけ て表 象す るよ うに なる
。こ うし て相 手を 説得 する こと がで きる
。相 手が 持っ てい る表 象よ りも 強力 な表 象を 突き つけ るこ とが 出来 れば
、そ の者 を都 合よ く動 かす こと が可 能に なる のだ
。 二
つ の 方 法 論 つま
り、 ある 者を 説得 する のに は二 つの 方法 があ る。 一つ が、 真の 認識 を与 える 方法 であ る。 この 場合 は、 絶対 に否 定で きな い共 通概 念を 突き つけ
、思 い込 みを 否定 する
。 もう 一つ が、 思い 込み に変 えて 別の 思い 込み を与 える 方法 であ る。 ある 者 があ る思 い込 みを 持ち 続け てい るの は、 その 思い 込み を否 定す るだ けの 強い 表象 をそ れま でも たな かっ たか らで ある
。だ から
、そ れを 否定 する ほど の強 い衝 撃で 別の 思い 込み を与 えた なら ば、 その 別の 思い 込み を信 じる よう にな る。 両者 は、 特定 の表 象を 強制 する とい うこ とで は同 じだ が、 その 手法 が異 な って いる
。前 者で は、 否定 しよ うの ない 表象 を突 きつ ける こと で、 その 目的 を 達成 し、 後者 では
、そ のも のが 囚わ れて いる 思い 込み より もさ らに 強力 な思 い込 みを 突き つけ るこ とで
、そ の目 的を 達成 する ので ある
。