メカニズムデザイン 宿題 2
奥村 恭平
∗†‡October 6, 2017
クールノー競争(駒場ミクロや夏学期のゲーム理論等で見たことがある人が多いと思います)に不確 実性が入った問題でした.
「均衡を求める」というのは,一般には関数の組(si)i∈Nを求めることですが,この問題のように各 プレーヤーのタイプの数が有限(i.e. ∀i ∈ N ; |Ωi| < ∞)の場合は,関数を定めることと有限個の変数を 定めることが同値になるため,それらの変数についての連立方程式を解く作業に帰着させることができ る場合があります.
問 1
(1) BNE を、任意の ρ ∈ [0, 1] について導け。
「BNEを導け」ということは,ベイジアンゲームの形に直した上で解く必要があるということです.以 下では,まずベイジアンゲームの構成要素を確認した上で,上で述べたように,関数が取りうる値を列 挙しそれぞれを変数とみなした連立方程式を解くことで,均衡を求めています.
解)
q1(ω1) := 8 − ρ
24 , q2(ω2) :=
{(7 + ρ)/48 (ω2 = 3/8) (4 + ρ)/48 (ω2 = 1/2) として,(q1(·), q2(·))がBNE.
∵) ベイジアンゲームの要素を列挙すると,次のようになっている.(通常は戦略はsiで表すが,ここで はqiで表している.)
N := {1, 2}
M1:= [0, ∞), M2:= [0, ∞) Ω1:= {1/4}, Ω2:= {3/8, 1/2}
Ω := Ω1× Ω2 = {(1/4, 3/8), (1/4, 1/2)} p1(3/8) := ρ, p1(1/2) := 1 − ρ,
p2(1/4) := 1
u1(q1(ω1), q2(ω2), ω) := (1 − q1(ω1) − q2(ω2) − ω1) · q1(ω1) u2(q1(ω1), q2(ω2), ω) := (1 − q1(ω1) − q2(ω2) − ω2) · q2(ω2)
以下,q1:= q1(1/4), q12 := q2(3/8), q22:= q2(1/2)と表す.各変数の値を定めるために,この3変数 についての連立方程式を立てることを考える.
∗first-year master student at Graduate School of Economics, the University of Tokyo
†E-mail: [email protected]
‡誤り等見つけた場合は教えて頂ければ幸いです.質問がある場合も上のメールアドレスまでご連絡ください.
1
プレイヤー1について
E[u1(q1(ω1), q2(ω2), ω)|ω1] = ρ (
1 − q1− q21−1 4
)
q1+ (1 − ρ) (
1 − q1− q22− 1 4
)
=: Π1(q1) 最適化のための一階の必要条件1より,
∂Π1
∂q1
= 0 ⇐⇒ q1 =
3 4 − (ρq
1
2 + (1 − ρ)q22)
2 (1)
プレイヤー2について (i) ω2 := 3/8のとき
E[u2(q1(ω1), q2(ω2), ω)|ω2 = 3/8] = (
1 − q1− q12−3 8
) q2
=: Π12(q21) 最適化のための一階の必要条件より,
∂Π12
∂q21
= 0 ⇐⇒ q21= 1 − q1−
3 8
2 (2)
(ii) ω2:= 1/2のとき
E[u2(q1(ω1), q2(ω2), ω)|ω2 = 1/2] = (
1 − q1− q22−1 2
) q2
=: Π22(q22) 最適化のための一階の必要条件より,
∂Π22
∂q22
= 0 ⇐⇒ q22= 1 − q1−
1 2
2 (3)
q1(ω1), q2(ω2)がBNEであるためには,(1),(2),(3)が満たされている必要がある.これらの三式を連 立させて解くことで,
q1 = 8 − ρ
24 (4)
q21= 7 + ρ
48 (5)
q22= 4 + ρ
48 (6)
を得る.Π1, Π12, Π22について,二階導関数の値がいずれも厳密に負であるので,最適化のための一階の 必要条件は,最適化の十分条件にもなっている.2よって,
q1(ω1) := 8 − ρ
24 , q2(ω2) :=
{(7 + ρ)/48 (ω2 = 3/8) (4 + ρ)/48 (ω2 = 1/2) として,(q1(·), q2(·))がBNEになっていることがわかる.3
1FOC(First Order Condition)などと呼ばれることもあります.
2最適化について少し詳しいことを勉強したい人は,例えば,寒野(2014)『最適化と変分法』丸善出版 などを読むと良いと 思います.工学部(特に計数工学科)にある最適化理論の授業を履修するのも手です.
3数学的なことが気になる人へ: 上の議論は厳密には不正確です.この問題の設定では,Mi= [0, ∞)であり,Miが開集合 ではないので,端点qi= 0がFOCを満たさずに最適値を与える点である可能性があります.端点が最適解にならない(i.e. 上 で求めた解が与える値を,端点解が与える値が上回らない)ことを確認すべきですが,それは省略します.
2
問 2
問1で求めた答えを各企業の利潤関数に代入することで,各企業の利潤がρの関数として表せる.企業 1の利潤関数をΠ1(ρ),タイプがω2:= 3/8のときの企業2の利潤関数をΠ12(ρ),タイプがω2 := 1/4のと きの企業2の利潤関数をΠ22(ρ)とそれぞれすると,
Π1(ρ) =( 8 − ρ 24
)2
, Π12(ρ) =( 7 + ρ 48
)2
, Π22(ρ) =( 4 + ρ 48
)2
となる.これより,企業1の利潤関数がρについて減少であること・企業2の利潤関数がρについて増 加であることがわかる.以下,なぜこのようになっているのかをもう少し考えてみる.
問1の答えを見てみると,
ρが増加する⇐⇒ q1が減少する (7) ρが増加する⇐⇒ q2iが増加する(i ∈ {1, 2}) (8) が成立していることがわかる.
まず,(7)についてみてみる.「ρの値が低いということは,相手の限界費用が低い可能性を高めに見 積もっているということである」ことを考えれば,これは,「不確実性がない場合のクールノー競争の均 衡では,相手の限界費用が増加したら自分の生産量を上げる」こと(クールノー競争のFOCからわかる. 各自確認されたし.)と対応していることがわかる.
次に,(8)についてみてみる.クールノー競争の均衡では,相手の生産量が下がったとき自分の生産 量を上げるのが最適である(「戦略的代替」の関係にあるという)ので,「ρの値が増加 → q1が減少 → q2が増加 → 企業1の利潤は減少・企業2の利潤は増加」という関係が成立していることがわかる.
最後に,不確実性がない(お互いに相手のタイプを知っている)場合の均衡と比較してみる.この場 合,生産量と各企業の利潤はそれぞれ
q1 = 7
24, q2 = 8
48, Π1= ( 7
24 )2
, Π2 =( 8 48
)2 (
ω2:= 3 8
)
(9)
q1 = 8
24, q2 = 4
48, Π1= ( 8
24 )2
, Π2 =( 4 48
)2 (
ω2:= 1 4
)
(10) となる.4それぞれ,ρ := 1, ρ := 0の場合の生産量・利潤と一致していることがわかる.また,不確実 性がある場合,均衡において企業2は,実際の限界費用が低い場合(ω2 := 3/8の場合)は,不確実性が ない場合より少なめに生産しており,実際の限界費用が高い場合(ω2 := 1/2の場合)は,不確実性がな い場合より多めに生産していることがわかる.企業1が企業2のタイプを知らないために中途半端な生 産量を選ぶのに対応するために,このようなことが起こっていると解釈できる.
4もしクールノー競争の話がわからない場合は,例えば,奥野(2008)『ミクロ経済学』東京大学出版会 の第5章を読むと 良いと思います.
3