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死んだ細胞を認識する仕組みが神経軸索再生を促進する -新たな神経軸索再生促進法の開発へ-

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Academic year: 2018

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【ポイント】

・ 線虫をモデルとした研究により、死んだ細胞やその破片を認識して排除する仕組み が、切断された神経軸索の再生を促進する役割も持つことを発見。

・ 神経の切断・損傷によって生じた細胞の死骸やかけらが、切断神経の再生を促進す ることを示し、神経再生を促進させる新たな治療技術の開発に期待。

死んだ細胞を認識する仕組みが神経軸索再生を促進する

- 新 た な 神 経 軸 索 再 生 促 進 法 の 開 発 へ -

名古屋大学大学院理学研究科(研究科長:松本邦弘)の久本 直毅(ひさもと な おき)准教授、松本 邦弘(まつもと くにひろ)教授らの研究グループは、線虫を モデルとした研究により、死んだ細胞やその破片を認識して排除する仕組みが、切 断された神経軸索の再生を促進する役割も持つことを発見しました。

神経細胞は軸索という長い突起を介して電気信号を伝達しており、外傷などで軸 索が切断されると神経として機能できなくなります。しかし、神経細胞は軸索を再 生する能力を潜在的に持っており、それを適切に刺激すればさまざまな神経を再生 できると考えられています。一方、生物は体内で生じた死細胞やそのかけらを認識 して、これを排除する仕組みを持つことが知られており、2002 年のノーベル賞受 賞研究にもなっています。しかし、その仕組みと神経軸索再生との関係については これまでわかっていませんでした。

今回、研究グループは、モデル動物である線虫 C.エレガンスを用いた解析によ り、死細胞やそのかけらを認識する仕組みが、軸索を切断された神経内で機能する ことにより、軸索再生を誘導することを見出しました。さらにその仕組みが神経軸 索再生を誘導する詳細なメカニズムについても解明しました。

今回の研究成果は、神経の切断・損傷によって生じた細胞の死骸やそのかけらが、 切断神経の再生を促進することを示すものです。また、神経再生を促進させる新た な治療技術の開発に繋がることが期待されます。

この研究成果は、平成 28913 日付(米国東部時間)米国科学雑誌「The Journal of Neuroscience」オンライン版に掲載されました。

本研究は文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究「細胞死を起点とする生体 制御ネットワークの解明」の一環として行われました。

(2)

【研究背景と内容】

神経細胞は軸索という長い突起を介して電気信号を伝達しており、外傷などで軸索 が切断されると神経として機能できなくなります。神経は、軸索が切断されてもそれ を再生する能力を持っていますが、その再生の有無と程度についてはまちまちであり、 損傷の状態や部位によっては再生しない場合も多くあることが知られています。その ため、神経軸索再生がどのように誘導されるのか、その分子メカニズムを知ることは 学術だけでなく医学的にも重要と考えられています。しかし、その制御機構について は不明の部分が多く残っています。

一方、生物は体内で生じた死細胞やそのかけらを認識して、これを排除する仕組み があることがわかっています。その仕組みはモデル動物である線虫C.エレガンスで先 進的に研究され、2002Horvitz博士らのノーベル生理学・医学賞受賞につながりま した。しかし、その仕組みと神経軸索再生との関係についてはこれまでわかっていま せんでした。

今回、研究グループは、モデル動物である線虫C.エレガンスを用いた解析により、 死細胞やそのかけらを認識する仕組みと同一の仕組みが、軸索を切断された神経内で 機能することにより、軸索再生を誘導することを見出しました。さらにその仕組みが、 以前同じ研究グループが発見した神経軸索再生機構を活性化することで、神経軸索再 生を誘導することも見出しました。

(3)

【成果の意義】

本成果は、神経軸索の切断時に生じる死細胞あるいはそのかけらが、生き残ってい る神経細胞を刺激してその再生を促進することを示すものであり、これまで想定され ていなかった新たな再生促進機構の存在を示すものです。創傷などによる神経の切断 は周囲に死んだ細胞を生じさせ、また細胞から切り離された軸索の死も起こることか ら、それらが生き残った神経細胞の軸索再生を誘導すると考えられます。死細胞やそ のかけらを認識する仕組みはヒトを含む哺乳動物においても非常によく保存されてい ることから、同様の仕組みが哺乳動物にも存在すると推測されます。また、神経軸索 は切断されてから時間が経つと再生が起こらなくなることが知られていますが、神経 切断を伴う損傷により生じた死細胞やそのかけらは体内から速やかに除去されること から、それが時間経過による神経再生低下の一因となっている可能性が考えられます。 従って、これを人工的に刺激する方法を研究することにより、新たな神経再生促進法 の開発につながる可能性が期待されます。

本研究は文部科学省科学研究費補助金新学術領域研究「細胞死を起点とする生体制 御ネットワークの解明」の一環として行われました。

【論文情報】

掲載雑誌: The Journal of Neuroscience

“The core molecular machinery used for engulfment of apoptotic cells regulates the JNK pathway mediating axon regeneration in

Caenorhabditis elegans”

(アポトーシス細胞の貪食に使われる核心的分子機構がJNK経路を介し てC.エレガンスの軸索再生を制御する)

著 者: Strahil Iv. Pastuhov, Kota Fujiki, Anna Tsuge, Kazuma Asai, Sho Ishikawa, Kazuya Hirose, Kunihiro Matsumoto and Naoki Hisamoto

(ストラヒルパストゥホフ、藤木恒太、柘植杏菜、浅井一真、石川翔、 廣瀬和也、松本邦弘、久本直毅)名古屋大学大学院理学研究科

公 開 日: 2016914 600AM(日本時間)

参照

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