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土木史雑感pdf 最近の更新履歴 全国専門学校土木教育研究会

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Academic year: 2018

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(その3)最初の講義「中村 哲医師の土木事業」

アフガニスタンの子供たちを写した上記2 枚の写真がある。「中村 哲医師の土木事業」によって、如何に子 供たちの生活が激変したかを物語るものである。

周知のように、2001 年の同時多発テロ後、アフガニスタンでは米軍侵攻による紛争が勃発し、すでに生じ ていた大干ばつによる水不足とも相俟って、国内で多数の餓死者や病死者が発生した。いまもその状況は続い ている。写真 1 は、泥水を飲まざるを得ないアフガニスタンの子供たちの悲惨な姿である。中村哲医師は、地 元スタッフによる医療事業の確立を目指し、1984 年からパキスタンとアフガニスタン国境周辺で活動を続け ていたが、この惨状に鑑み「水と食料を確保し、民衆の生活を安定させることこそ焦眉の課題」と考え、以後 日本人ボランティアの若者や現地の民衆と伴に、土木・農業事業「緑

の大地計画」を実施し、周辺住民の生活を支え続けている。写真 2 は「緑の大地計画」で甦った畑で、菜の花を摘む子供たちの幸福な 姿である。(この写真は、2011 年暴漢の凶弾で殉死したボランテ ィアの若者故伊藤和也氏が撮影したものである。)

「緑の大地計画」の概要を図1に示す。アフガニスタン東部を流 れるクナール川上流に取水口を設け、それに続く灌漑用水路を開鑿 して、砂漠化した周辺地域を農地に回復させていく計画である。取 水堰・灌漑用水路建設の土木事業と、試験農場・食糧生産の農業事 業が合わさった一大プロジェクトである。(医療活動を含め、必要 な予算は全て中村医師の支援団体である「ペシャワール会」会員の 寄付で賄われている。)

土木事業では中村氏は、江戸時代から用いられている日本の工法 を帰国して学び、それらを現地で採用している。堰や護岸に使う主 材料は地元産の石材であり、蛇籠や聖牛などを現地の作業員に造ら せて用いている。コンクリートや鉄鋼などの近代技術を用いても、 将来の維持補修工事が現地の人々の手で出来ないからである。灌漑 用水路の掘削状況を写真3に示す。人海戦術であるが、作業員の日 当は現地住民の貴重な現金収入源なのである。完成から数年後の水 路の様子を写真 4 に示す。両岸に植えられた柳は根を張って、蛇籠 を積み上げた護岸を強固なものにしている。

土木史雑感

写真1 写真2

(2)

農業事業では、試験農場で様々な農産物を栽培して、現地の土壌に合う品種を選定し、農民と相談しながら それらの実生産化を進めている。八代将軍吉宗の時代、青木昆陽が飢饉救済のため全国に広めたサツマイモは、 アフガニスタンでも好評である。また、現金収入のため麻薬の原料であるケシの栽培が各地で行われているが、 これに代るものとしてお茶の栽培・製造も試みられている。写真5は灌漑用水路工事前の砂漠化した土地を、 写真6は同一地区の通水後の様子をそれぞれ示したものである。「緑の大地」が見事に復活している。現在、 25.5kmの用水路が完成し、隣国パキスタンや都市部へ逃れていたこの地域の人々は、帰農して平穏な生活を 営んでいる。

以上が講義の概要である。講義後の生徒の感想文を紹介する。毎年、生徒たちは同様な感想文を書いている。

『今日、初めて土木史の講義を受けました。正直、中村哲さんの事を聞くまで、名前すら知りませんでした。 今まで土木とは、河川やダム、道路などをつくっていくだけの仕事だと思っていましたが、今日の講義を聞い て、土木は多くの人たちを幸せにする事のできる仕事なんだなと思いました。

このような話を聞くと、今までよりも土木に興味をもつことができます。このように土木の歴史や人のこと を学び、これからもっと土木について知っていきたいと思います。そして私もいつか中村哲さんのように人の ためと、人の幸せのために働けるようになりたいと思い、そのためにこれからも学校でしっかりと勉強し就職 しようと思いました。(原文のまま)』

日本の一医師と若者たちが、アフガニスタンの現地住民とともに十数年を掛けて行ってきた土木事業を、生 徒たちは身近なものとして理解し、自分が目指す土木を誇りに思うようになっている。

用水路掘削現場2003年9月10 水路沿いの柳並木は緑が鮮やかです。

(2005年8月23日撮影)

写真5 写真6

写真3 写真4

図 1 (その3)最初の講義「中村 哲医師の土木事業」                   アフガニスタンの子供たちを写した上記2 枚の写真がある。「中村 哲医師の土木事業」 によって、 如何に子供たちの生活が激変したかを物語るものである。周知のように、2001年の同時多発テロ後、アフガニスタンでは米軍侵攻による紛争が勃発し、すでに生じていた大干ばつによる水不足とも相俟って、国内で多数の餓死者や病死者が発生した。いまもその状況は続い ている。写真 1 は、泥水を飲まざるを得ないアフガニスタンの子供たちの悲惨

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