基礎統計学(第
12
回)
5.4
確率分布
(2)
前回は主な離散確率分布を紹介した。ここでは、正規分布を中心に連続確率分布を紹介する。
(1)矩形分布 · · · 区間[a, b]で一定の確率密度をもち、それ以外のところでは密度が0であるような分布であ
る。確率密度において、確率密度関数f(x)は次のように定義される。
f(x) =
⎧
⎨
⎩
1
b−a (a≤x≤b)
0 (x < a, x > b)
(84)
(例) コンピュータを用いて、区間[0, 100]内の値を1つ任意に選択するとき、任意に選択されたxを
する確率密度関数f(x)を表せ。
対象となる区間の幅が 100−0 = 100 であることから、
f(x) =
⎧
⎨
⎩
1
100 (0≤x≤100) 0 (x <0, x >100)
となる。
矩形分布の期待値E(x)、分散V (x)については、(66)および(68)より、
E(x)=
∞
−∞
xf(x)dx= 1
b−a
b
a
x dx= 1
2 (a+b) (85)
V (x)=
∞
−∞
{x−E(x)}2f(x)dx
=
b
a
x− 1
2 (a+b)
2
f(x)dx
= 1
b−a
1 3
x− 1
2 (a+b)
3b
a
= 1 3 (b−a)
1
2 (b−a)
3
−
1
2 (a−b)
3
= 1 3 (b−a)
1
4 (b−a)
3
=1
12(b−a)
2
(86)
(2)正規分布 · · · 平均値µ、標準偏差σにより決定される確率分布で、統計学において重要とされている確
率分布である。正規分布の確率密度関数f(x)は次のように定義される。
f(x) = 1 2√πσ e
−(x−µ)2
2σ2
(87)
正規分布は、平均値µ、標準偏差σを用いて、N
µ, σ2
と記号で表すことが多い。正規分布は図で表す
と、x=µを中心に左右対称の分布 となっている。ここで、確率密度関数f(x)の最も値の大きいところ
がx=µであり、σは分布の広がりに対応している。
正規分布において、特にµ= 0、標準偏差σ =σ
2
= 1の分布を標準正規分布という。先ほどの記号で表
すとN
0, 12
となる。また、その確率密度関数f(x)は次のように表される。
f(x) = 1 2√π e
−x
2 2
(88)
正規分布において、任意の区間(a≤x≤b)の値をとる確率の計算を行うとき、以下の式を用いること ができる。
P(a≤x≤b) =
b
a
1 2√πσ e
−(x−µ)2
2σ2
dx (89)
しかし、この計算を行うことは容易ではなく、通常は正規分布に関する数値表を用いて計算を行う(数値
表の読み方については後で説明する)。正規分布N
µ, σ2
は、平均値µ、標準偏差σの組み合わせによ
り、複数の正規分布が表現できるが、前に紹介した標準化変量の式を用いることにより、任意の正規分布
Nµ, σ2の確率計算を標準正規分布N
0, 12
に置き換えて考えることができる。
z= x−µ
σ (90)
この操作を標準化という。標準化により、標準正規分布の数値表があれば、あらゆる正規分布N
µ, σ2
の確率を計算することができる。
(例) 標準正規分布N
0, 12
において、P(0≤x≤1)の確率を求めよ。
数値 表 に は 、0以上x以下 の確 率 が ま と め られ て い る 。数値 表 に てx = 1.00の 確 率を 調 べ る と 「.3413(0.3413)」 と書かれている。よって、P(0≤x≤1)=0.3413となる。
(例) 標準正規分布N
0, 12
において、P(−2≤x≤0)の確率を求めよ。
数値表にてx= 2.00の確率を調べると「.4772(0.4772)」と書かれている。また、正規分布がx=µを中
心に左右対称の分布であることから、P(−2≤x≤0) =P(0 ≤x≤2)である。よって、P(−2≤x≤0)=0.4772 となる。
(例) 標準正規分布N
0, 12
において、P(1≤x≤1.5)の確率を求めよ。
数値表にてそれぞれの確率を調べるとx= 1のとき「.3413(0.3413)」、x= 1.5のとき「.4332(0.4332)」 と書かれている。ここで、
P(1≤x≤1.5) =P(0≤x≤1.5)−P(0≤x≤1)
となるから、P(1≤x≤1.5) = 0.0919となる。
(例) 正規分布N
6, 22
において、P(8≤x≤10)の確率を求めよ。
(90)を用いると、µ= 6, σ= 2より、
z= x−6 2
となり、確率を求める区間(8≤x≤10)は、標準正規分布N
0, 12
において(1≤z≤2)に置き
換えられる。数値表にてそれぞれの確率を調べるとx = 1のとき「.3413(0.3413)」、x = 2のとき
「.4772(0.4772)」 と書かれている。ここで、
P(1 ≤z≤2) =P(0≤z≤2)−P(0≤z≤1) = 0.1359
となるから、P(8≤x≤10) = 0.1359となる。
[確認課題27] 「正規分布」
正規分布N
6, 52
において、P(4≤x≤15)の確率を求めよ。