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要旨 105

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Academic year: 2018

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(1)

第 5 回日本 LCA 学会研究発表会講演要旨集(2010 年 3 月)

- 206 -

C2-09, P2-05

インドネシア、ランプン州のタピオカ澱粉生産の

ライフサイクルにおける温室効果ガス排出量

Life cycle greenhouse gas emissions from tapioca starch production

in Lampung, Indonesia

○蒲原 弘継

*1)

、ウディン ハサヌディン2)、アヌグラ ウィディヤント

1)

、熱田 洋一

1)

、橘 隆一

3)

後藤 尚弘

1)

、大門 裕之

1)

、藤江 幸一

4)

Hirotsugu KAMAHARA, Udin HASANUDIN, Anugerah WIDIYANTO, Yoichi ATSUTA, Ryuichi TACHIBANA, Naohiro GOTO, Hiroyuki DAIMON, Koichi FUJIE

1) 豊橋技術科学大学, 2) ランプン大学, 3) 長岡技術科学大学, 4) 横浜国立大学

*kamahara@see.eco.tut.ac.jp

1. はじめに

東南アジア地域におけるバイオマス利活用には、エネ ルギー供給のみならず、廃棄物処理や温室効果ガス

GHG)の排出量低減、さらには、経済政策をも担う役 割がある

1)

。したがって、当該地域におけるバイオマス利 活用へのクリーン開発メカニズム(CDM)の適用は発展 途上国の持続可能な発展を支援する意義からも重要であ る。特に、バイオマス加工工場の廃水処理過程等におい て発生している温室効果の高いメタンを含むバイオガス を回収しエネルギー利用することは、メタンの燃焼及び 工場内の化石燃料代替による GHG 排出量の削減が可能 であり、既にいくつかのCDM 事業がはじまっている

2)

。 しかしながら、発展途上国においては、現状のGHG排出 量推計に関する科学的知見が不足しており、実際の排出 量とはかけ離れた推計を余儀なくされる場合もある

3)

。加 えて、CDMの炭素クレジット算出法は、LCA のような ライフサイクルの視点が考慮されていない。バイオマス 利活用においては、ライフサイクルのような包括的な視 点でシステム全体を俯瞰することが、環境負荷低減策の 検討に有効である

2,4)

。本研究では、インドネシア、ラン プン州で栽培されたキャッサバを原料にしたタピオカ澱 粉生産のライフサイクルにおけるGHG 排出量の定量化 を試みた。さらに、廃水処理池からのバイオガス回収の 効果についてライフサイクルの視点から考察した。

2. 方法

本研究では、Fig.1に示すキャッサバの栽培から輸送、 加工、廃水処理までの各段階を評価した。筆者らはこれ までにインドネシア、ランプン州のあるタピオカ製粉工 場(生産規模:150 ton-tapioca/dayを対象に、物質エネ ルギー収支の調査

5)

やその廃水処理過程におけるバイオ ガスの発生量測定

6)

を行ってきた。評価対象とした工場に 搬入されるキャッサバは工場が管理する農園と近隣の農 家から供給されている。本研究において、温室効果ガス 排出量の評価は、筆者らが提案するバイオマスが固定し た炭素の収支を考慮する評価手法

7)

に基づいて行った。

FCE GHG

NE

GHG MC CME MME MC FC MCD BCE NGHG

O N

CH

2

) 4

( (1)

NGHG: 正味のGHG排出量 [ton-CO2eq/ton]

BCE: キャッサバに固定された炭素の排出量 [ton-C/ton] FC:キャッサバに固定された炭素量 [ton-C/ton]

MCD: 二酸化炭素の分子量 (44) MC: 炭素の分子量 (12)

CME: キャッサバに固定された炭素由来のメタン排出 量 [ton-C/ton]

MME: メタンの分子量 (16)

CH4

GHG : メタンのGHG排出量係数 (25) NE: 亜酸化窒素の排出量 [ton-N2O/ton]

O

GHGN

2 :

亜酸化窒素のGHG排出量係数 (296)

FCE: 化石燃料消費に伴うGHG排出量 [ton-CO2eq/ton]

Cassava farming Tapioca starch factory

Market

Cassava Tapioca starch

Wastewater Cassava peel, pulp

Outside

Biogas (CO2, CH4) Fertilizer CO2 Electricity, Heavy oil

N2O

Wastewater treatment pond

River

Fig.1 Tapioca starch production system.

キャッサバ栽培時の化学肥料消費量及び作物収量は、 ランプン州のTamanbogoキャッサバ栽培試験場の単一栽 培時の試験栽培結果を用いた。化学肥料の製造における GHG排出量は文献より得た。タピオカ製粉工場における 電力と重油の消費量は2006年の各月の消費量の平均値を デフォルト値として用いた。廃水処理池からのメタン発 生量は2006年における各月の季節毎(雨季、乾季)の測 定結果

6)

の平均値を用いた。電力、軽油消費に伴う一次エ ネルギー消費量及びGHG排出量はインドネシアの原単 位

8,9)

及びIPCCの原単位をそれぞれ用いた。

(2)

第 5 回日本 LCA 学会研究発表会講演要旨集(2010 年 3 月)

- 207 -

インドネシア、ランプン州のタピオカ澱粉生産の

ライフサイクルにおける温室効果ガス排出量

○蒲原 弘継 、ウディン ハサヌディン2)、アヌグラ ウィディヤント 、熱田 洋一 、橘 隆一 、 後藤 尚弘 、大門 裕之 、藤江 幸一

豊橋技術科学大学 ランプン大学 長岡技術科学大学 横浜国立大学

はじめに

東南アジア地域におけるバイオマス利活用には、エネ ルギー供給のみならず、廃棄物処理や温室効果ガス

( )の排出量低減、さらには、経済政策をも担う役 割がある。したがって、当該地域におけるバイオマス利 活用へのクリーン開発メカニズム( )の適用は発展 途上国の持続可能な発展を支援する意義からも重要であ る。特に、バイオマス加工工場の廃水処理過程等におい て発生している温室効果の高いメタンを含むバイオガス を回収しエネルギー利用することは、メタンの燃焼及び 工場内の化石燃料代替による 排出量の削減が可能 であり、既にいくつかの 事業がはじまっている。 しかしながら、発展途上国においては、現状の 排出 量推計に関する科学的知見が不足しており、実際の排出 量とはかけ離れた推計を余儀なくされる場合もある 。加 えて、 の炭素クレジット算出法は、 のような ライフサイクルの視点が考慮されていない。バイオマス 利活用においては、ライフサイクルのような包括的な視 点でシステム全体を俯瞰することが、環境負荷低減策の 検討に有効である 。本研究では、インドネシア、ラン プン州で栽培されたキャッサバを原料にしたタピオカ澱 粉生産のライフサイクルにおける 排出量の定量化 を試みた。さらに、廃水処理池からのバイオガス回収の 効果についてライフサイクルの視点から考察した。

方法

本研究では、 に示すキャッサバの栽培から輸送、 加工、廃水処理までの各段階を評価した。筆者らはこれ までにインドネシア、ランプン州のあるタピオカ製粉工 場(生産規模: )を対象に、物質・エネ ルギー収支の調査やその廃水処理過程におけるバイオ ガスの発生量測定を行ってきた。評価対象とした工場に 搬入されるキャッサバは工場が管理する農園と近隣の農 家から供給されている。本研究において、温室効果ガス 排出量の評価は、筆者らが提案するバイオマスが固定し た炭素の収支を考慮する評価手法 に基づいて行った。

G

GHG 正味の 排出量

BCE キャッサバに固定された炭素の排出量 FC キャッサバに固定された炭素量

CD 二酸化炭素の分子量 MC 炭素の分子量

CME キャッサバに固定された炭素由来のメタン排出 量

ME メタンの分子量

G メタンの 排出量係数 NE 亜酸化窒素の排出量

G 亜酸化窒素の 排出量係数 FCE 化石燃料消費に伴う 排出量

キャッサバ栽培時の化学肥料消費量及び作物収量は、 ランプン州の キャッサバ栽培試験場の単一栽 培時の試験栽培結果を用いた。化学肥料の製造における

排出量は文献より得た。タピオカ製粉工場における 電力と重油の消費量は 年の各月の消費量の平均値を デフォルト値として用いた。廃水処理池からのメタン発 生量は 年における各月の季節毎(雨季、乾季)の測 定結果 の平均値を用いた。電力、軽油消費に伴う一次エ ネルギー消費量及び 排出量はインドネシアの原単 位 及び の原単位をそれぞれ用いた。

3. 結果と考察

3.1 タピオカ製粉工場における炭素収支

Fig.2にタピオカ製粉工場における炭素収支とエネルギ ー消費量を示す。キャッサバに固定された炭素の内、40% が製品であるタピオカ澱粉に、40%がバイオマス残渣に、 さらに、20%が廃水になる。バイオマス残渣は工場外に 持ち出され、家畜の飼料や肥料等に利用されている。本 研究では、この持ち出されたバイオマス残渣はすべて、 そのライフサイクルにおいて二酸化炭素に変換されるも のと仮定した。一方、廃水処理池に流入した工場廃水の 炭素の約14%はメタンに変換されている。この他の、メ タンに変換されない廃水処理池に流入した炭素のすべて はライフサイクルにおいて二酸化炭素に変換されるもの と仮定した。Fig.2において、キャッサバに固定された炭 素の一部はメタンに変換されることから、この炭素によ る正味の GHG 排出量は固定した炭素による大気中から のGHG削減量とメタンのGHG排出量の差である。

Outside Cassava pulp

42 ton-C/d

Tapioca starch 56 ton-C/d

(Weight:150 ton/d)

COD25,000mg/L Cassava

140 ton-C/d

(Weight:750 ton/d)

Skin, tip 14 ton-C/d 1 0 0 %

Tapioca starch factory 40%

40%

CH4: 3.9 ton-C/d Flow rate:3,000 m3/d 2 0 %

Wastewater 28 ton-C/d

CO2,Effluent, Sediment: 24 ton-C/d

Wastewater treatment pond Energy consumption

Heavy oil: 38 L/ton-tapioka Electricity: 209 kWh/ton-tapioka

Fig.2 Carbon balance and energy consumption in tapioca starch factory.

3.2 タピオカ澱粉生産のライフサイクルにおけるGHG 排 出量とバイオガス回収の効果

本研究では式1 に従い、タピオカ澱粉生産のライフサ イクルにおけるGHG排出量を算出した。その結果、タピ オカ澱粉生産のライフサイクルにおけるGHG 排出量は 約1,367 kg-CO2eq/ton-tapiocaであったTable.1その内、 廃水処理池で発生しているメタンが最も寄与率が大きい ことが明らかになった。したがって、このメタンを含む バイオガスを回収し、工場内のエネルギーを代替するこ とは、タピオカ澱粉生産のライフサイクルにおけるGHG 排出量の低減において最も有効な対策であるといえる。

次に、本研究ではこのバイオガス回収によるGHG排出 量削減効果について検討した。廃水処理池における季節 毎のメタン発生量から推計したエネルギー生産可能量は、 2.2 GJ/ton-tapiocaであった。このエネルギーによりタピオ カ製粉工場の乾燥工程で使われる軽油のすべてを代替す ることが可能である。したがって、このバイオガス回収 と軽油代替により、タピオカ澱粉生産のライフサイクル

における GHG 排出量はその約 65%が削減でき、478 kg-CO2eq/ton-tapioca まで削減することが可能であること が明らかとなった。また、現在、京都議定書においてバ イオマス由来の炭素はすべてカーボンニュートラルとし て計上されている。CDMの炭素クレジット算出では、後 にメタンに変換される炭素の大気中からの温室効果ガス 削減量(-95 kg-CO2eq/ton-tapioca)が考慮されていない。 このため、CDMの炭素クレジット算出においては、バイ オマスに固定された炭素を考慮した実際のGHG 削減効 果に比べ大きな削減効果を見積もっている可能性がある。

Table.1 GHG emissions of tapioca starch production system (Base line: current condition. Projected activity: biogas recovery and substitute of diesel fuel in factory)

Base line Projected activity N-fertilizer 50 50 Other fertilizer 15 15 N2O emission 129 129 Absorbed CO2 of cassava

which will convert to CH4* -95 -

Transportation Diesel fuel 20 20

Heavy oil 116 0

Electricity 263 263 Wastewater

treatment pond CH4 emission 868 - 1,367

478

*Biogenic carbon was assumed carbon neutral source. In projected activity, CH4 will be burned out as fuel in tapioca starch factory.

Process Items

GHG emissions (kg-CO2eq/ton-tapioca)

Cassava farming

Tapioca starch factory

Total

4. まとめ

本研究では、インドネシア、ランポン州におけるタピ オカ澱粉生産のライフサイクルにおけるGHG 排出量を 明らかにした。次に、廃水処理池からのバイオガス回収 と乾燥工程で使用されている軽油代替により、その約 65%が削減可能であることを明らかにした。今後、さら に、コジェネ設備や高効率なメタン発酵槽の導入による GHG削減策の検討が期待される。

5. 参考文献

1) RM Carlos, D Ba Khang, Biomass and Bioenergy, 32(6), 525-532, 2008.

2) 蒲原弘継, 藤江幸一, 水環境学会誌, 32(2), 69-72, 2009. 3) 河井紘輔, 山田正人, 廃棄物資源循環学会誌, 21(4),

165-170, 2009.

4) 橘ら, 環境科学会誌, 22(4), 257-269, 2009. 5) 藤江ら, 環境資源工学会誌, 55(2), 103-108, 2008.

6) H Kamahara et al, Journal of Ecotechnology Research, in press. 7) 蒲原ら, 環境科学会誌, 22(4), 247-256, 2009.

8) A Widyanto et al, Proceedings of EcoDesign2003, 26-33, 2003. 9) A Widyanto et al, JSME international journal. Series B. Fluids

and thermal engineering, 46(4), 650-659, 2003.

参照

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