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黄銅の生成実験の改良について 研究発表一覧 第46回関東理科教育研究発表会千葉大会

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Academic year: 2018

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……… 第46回関東理科教育研究発表会

1 はじめに

 黄銅は真鍮とも呼ばれ、金物や5円硬貨などに広く用いられている合金である。その生成実験は、銅の色 が銀色を経て金色へと大きく変わるため、金属の変化が視覚的にもわかりやすい実験である。

 だが、従来の実験手順には、安全面や実験後の廃棄処理などにいくつかの問題点が見られる。そこで、よ り安全に実験を行なえ、かつ廃棄処理についても簡便に行えるよう改良を試みたので、ここに報告する。

2 従来の実験手順とその問題点

 黄銅を生成する実験として広く紹介されているものは、以下のような手順である。  ① 銅板をサンドペーパーなどで磨き、さびや汚れを落とす。

 ② 蒸発皿に亜鉛(粉末または顆粒状)を入れ、水酸化ナトリウム水溶液を加える。  ③ 溶液が沸騰するまでバーナーで加熱する。沸騰したら弱火にする。

 ④ 銅板を、加熱を続けている溶液に浸す。銅板を未反応の亜鉛に接触させておくと、粉末を使用したと きは、1分以内に、顆粒状を使用したときは、3~4分たつと、銅板が銀白色になってくる。

 ⑤ 亜鉛めっきされた銅板を水道水で十分に洗い、水分を取り乾かす。

 ⑥ 亜鉛めっきされた銅板をバーナーの炎の中に入れゆっくり加熱する。数秒続けると金色になる。

 この手順における問題点として、以下のことが考えられる。  (1)濃塩基溶液の煮沸

   用いられる水酸化ナトリウムの濃度は、20%あるいは6mol/Lとされており、かなり濃度が高い上に、 この溶液を煮沸する必要がある。安全ゴーグルの着用が必須となるが、それでも煮沸中に溶液が飛散す るため、安全とはいえない。

 (2)粉末亜鉛の使用

   実験後に、未反応の亜鉛粉末が残る。反応性が高くなっており、ぬれた紙に包んでも着火することが ある。ゴミ箱に捨てると短時間に燃え上がることもあるため、金属製の器などに入れて完全に酸化させ るなどの処理が必要となる。

黄 銅の 生成 実 験の 改良につ いて

前橋市立前橋高等学校 

比企  貴

 

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千葉大会

3 改良した実験手順とその利点

 この実験における亜鉛めっきの反応については、次のように報告されている。(左下図参照)  ・亜鉛と水酸化ナトリウムとの反応で、テトラヒドロキソ亜鉛(Ⅱ)酸イオンが生じる。

 ・銅板と未反応の亜鉛との間で局部電池が構成され、銅板へ移動してきた電子によって、テトラヒドロキ ソ亜鉛(Ⅱ)酸イオンが亜鉛に還元される。

 そこで、ほぼ同じ反応が起こるよう、以下のような手順を考案した。(右上図参照)  ① 硫酸亜塩水溶液に、水酸化ナトリウム水溶液を白色沈殿が消えるまで加える。

   →亜鉛イオンから水酸化亜鉛、さらにテトラヒドロキソ亜鉛(Ⅱ)酸イオンへと変化させる。  ② この溶液に銅板と亜鉛板を入れ、銅板を陰極、亜鉛板を陽極として電気分解を行なう。    →電気分解によって、銅板が亜鉛めっきされる。

 ③ 亜鉛めっきされた銅板を水洗して乾かし、バーナーの炎で加熱すれば、黄銅が生成される。    →従来の実験と同様。

 この手順における利点として、以下のことが挙げられる。  (1)溶液を煮沸する必要がない。

   2種の溶液を混合するだけでテトラヒドロキソ亜鉛(Ⅱ)酸イオンを得られるため、濃塩基溶液を煮 沸しなくて良い。これにより、安全性をかなり高めることができる。

 (2)粉末亜鉛を用いる必要がない。

   粉末亜鉛を用いずに、亜鉛化合物の水溶液から亜鉛イオンを得ている。このため、前述したような粉 末亜鉛の廃棄処理は不必要である。また、残った溶液の処理についても、酸によって中和して水酸化亜 鉛を沈殿させた後、ろ過すれば良いので、廃棄処理が簡便となる。

 (3)実験時間が短縮される。

   従来の実験では、溶液の煮沸及び亜鉛めっきさせるために10分程度を要するが、電気分解によるめっ きでは数秒しかかからない。これにより、実験時間が大幅に短縮される。

4 終わりに

 黄銅の生成実験の改良案としては、塩基の代わりに酸を用いるものなどが既に紹介されているが、従来の 実験とは異なる反応が起こる。そこで本報告では、従来の実験で起こる反応をできるだけ踏襲した形での改 良を試みた。その結果、安全面や廃棄処理の簡便化に加え、時間の短縮にもつながり、手軽に行える実験と して改良できたと考えている。今後も、様々な実験について考案・改良を行っていきたい。

参考文献

1.中澤克行,黄銅をつくってみよう, http://www.eonet.ne.jp/~nakacchi/Brass.htm 2.山田暢司,目立つメダル, http://rakuchem.com/medal.html

3.左巻健男編,楽しくわかる化学実験辞典,東京書籍 (1996),p.264 ~ 265,平林輝一,“金・銀・銅”

参照

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