Ubuntu 導入事例と導入の背景
Ubuntu は、世界的には全パソコンの 1%程度で利用されていると見積もられています。そのほと んどが、Windows 用に販売されているパソコンに改めてインストールされたものと考えられます。 Windows を利用せずに Ubuntu を利用する理由は様々でしょう。消極的な理由は、「無料で使え る Windows の代用」です。Windows のライセンスが切れたパソコンで最新の OS の機能を利用 したいときに、無料で使える Ubuntu が選ばれるわけです。
しかし、より積極的な理由で Ubuntu が選ばれる場合もあります。パソコンの OS の 90%以上を占 める Windows は Microsoft というアメリカの一私企業の製品であり、その製品にすべてを依存し てしまうことは決して好ましいことではありません。Ubuntu のベースとなっている Linux は公共性 の強いオープンソースのプロジェクトです。ですから、各国政府はそれぞれ Linux ベースの OS の 利用を真剣に検討し、たとえば日本では産総研が Knoppix というディストリビューションを推進し てた時期がありました。中国、韓国、インドなども、国家プロジェクトとして Linux の利用を研究して います。Ubuntu の利用がこのような流れの中で検討される場合もあるのです。
夕張市の導入事例
北海道夕張市では、財政難から 2009 年 6 月に一部の部署で Ubuntu の導入を決めました。こ れは道内の企業から中古パソコン 26 台を無償で譲り受けたことを受けてのことで、Windows の ライセンス料を節約する意味での Ubuntu 導入事例です。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20090629/332831/
ドイツ企業の導入事例
2011 年 4 月、ドイツの大手保険会社 LVM が 1 万台にも上る Ubuntu マシンの導入で、全社的 な OS の Ubuntu への移行を決めました。これは、Windows XP のレガシー化に伴うアップグレー ドの必要性に際し、ライセンス料を削減することが目的だったようです。
http://gihyo.jp/admin/clip/01/linux_dt/201104/27
スロバキアの Skalica 市役所の導入事例
詳細な時期は不明ですが、東欧のある市役所で、それまで Windows XP がインストールされてい た庁内の 120 台のパソコンを Ubuntu にアップグレードし、全く問題なくスムーズな移行ができた という事例報告があります。これは XP から Vista へのアップグレードのライセンス料削減が目的 ですが、これによって IT 予算が 70%削減できたそうです。
http://www.canonical.com/about-canonical/resources/case-studies/skalica-city-hall- reduces-costs-70-cent-ubuntu
箕面市の導入事例
箕面市は、2009 年 7 月に小中学校のパソコンの入れ替えを行った際に余剰になった旧式のパソ コンを教職員用のパソコンとして再利用するために、全面的な Ubuntu の導入を行いました。これ は旧式のパソコンの低性能を補うためにこれらをシンクライアントとして使用するアイデアを実現さ せるためのものです。シンクライアントとしての利用の場合、Windows をインストールするよりも、
http://ubuntu.d-lights.jp/organizations
もともとメインフレーム-クライアント形式で利用されていた Unix を源流にもつ Linux を使うほうが 有利です。つまり、箕面市の場合は、旧式のパソコンの再利用という意味では経費削減の事例で すが、単に Windows ライセンス料の節約以上の積極的な意味をもっていたわけです。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Watcher/20111007/370323/?ST=oss&mkjt&P=2
フランス議会の導入事例
フランスでは、議会で使用されるパソコン(議員用・議員秘書用)の 1154 台を 2007 年 6 月から Ubuntu に移行することに決めました。これは、アメリカ企業の製品に自国の中枢部を委ねること に対する政策的な懸念から決定されたようです。フランスではこの他、2009 年には憲兵隊で使用 されるパソコンも Ubuntu となりました。国家的に「卒 Windows」を進める流れができつつあるよう です。
http://japan.zdnet.com/cio/analysis/20345073/
日本企業の導入事例
これはかなり特殊なケースになりますが、日本企業の株式会社アシストが 2012 年 6 月に社内で 使用するパソコン 950 台のすべてを Ubuntu に変更することを発表しました。これは同社がオー プンソースソフトウェアのサポートを事業としているからであり、2011 年から Ubuntu そのものの サポートも行なっているからです。自社で扱う製品を自社内で使うのは、ある意味当然の選択で しょう。ただし、同社製品は全て Linux 製品というわけでもないので、ガチガチに Linux で固めよう という発想ではなく、使いやすさで Ubuntu を選んだ側面が強いのではないでしょうか。
http://cloud.watch.impress.co.jp/docs/news/20120618_541008.html http://japan.internet.com/busnews/20120619/10.html
次の導入事例はあなたの会社かも?
日本ではまだまだ企業・団体での Ubuntu 導入事例は多くありません。それだけに、早くに導入を 決めた企業は、大小を問わず、先進事例として注目されることになるでしょう。同じオープンソース 製品の導入では、OpenOffice の導入が 2003 年頃から自治体や企業で始まり、既に多くの事例 が蓄積されています。
http://wiki.services.openoffice.org/wiki/JA/Marketing/OpenOffice.org_Deployment s
Ubuntu でも同様に、これから事例が増大していくことでしょう。その先駆けとなるのは、あなたの 会社かもしれないのです。
http://ubuntu.d-lights.jp/organizations