• 検索結果がありません。

荷重および拘束作用下における溶接後熱処理による応力緩和および変形生成機構の解明 名古屋大学 廣畑 幹人

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2018

シェア "荷重および拘束作用下における溶接後熱処理による応力緩和および変形生成機構の解明 名古屋大学 廣畑 幹人"

Copied!
2
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

102 溶 接 技 術 特別企画

日本溶接協会 2016年度

「次世代を担う研究者助成事業」成果報告

1

 はじめに

腐食や疲労損傷が生じた既設鋼構造物の要補修部位 は,狭あいで複雑な形状であることが多く,ボルト接合 による補修が困難な場合がある。その際に溶接による補 修の可能性が考えられるが,溶接残留応力が疲労強度に 及ぼす影響や,入熱による熱影響部のぜい化が懸念され る。これに対し溶接後熱処理(PWHT:Post-weld Heat Treatment)の適用の有効性が一般的に知られている。

しかし,土木鋼構造物は大型で複雑な形状をしており 加熱炉を用いた熱処理が容易ではない。また,一般に溶 接後熱処理が適用される圧力容器等の構造物と比較し, 土木鋼構造物は板厚が薄く,熱処理による変形が生じや すい可能性がある。これらの問題に対し,本研究では, 現場での作業に適し局所加熱が可能な熱源としてセラ ミックヒータ1)を使用した。土木鋼構造物の溶接後熱処

理過程における応力緩和および変形挙動の解明を目的と した一連の基礎的実験および数値解析を実施し,数値解 析により,拘束下での溶接後熱処理で生じる変形の特徴

を検討した。

2

 溶接および熱弾塑性解析

実験供試体には,500×500×12mmのSM400A(図1) を用いた。鋼板の中央線に沿ってビードオンプレート溶 接を施し,溶接供試体とした。また,溶接実験の熱弾塑 性解析を行い,実験時の温度履歴および面外変形( )を精度良く再現するモデルを構築した。

3

 溶接後熱処理および熱弾塑性解析

鋼板供試体および溶接供試体に溶接後熱処理を実施し た。溶接後熱処理時の入熱にはセラミックヒータ1)を使

用し,JIS Z 37002)を満たすように鋼板に熱電対を取り

付けて温度管理を行った。供試体の下側にヒータを設置 して片面から加熱を行い,溶接供試体では溶接ビード側 を下向あるいは上向に設置する条件で加熱した。溶接後 熱処理時には鋼板の端部に対する中央の相対鉛直変位の 履歴を計測した(図3)。

溶接供試体の溶接後熱処理のシミュレーションでは, 溶接過程の解析モデルに溶接後熱処理過程を追加し,セ ラミックヒータからの入熱は解析モデルの表面に入熱を 与えることで再現した。

熱処理前後における残留応力を図4に示す。熱処理の 前後で溶接ビード近傍の残留応力が低下したことが分 かった。しかし,鋼板および溶接供試体の両者におい

荷重および拘束作用下における溶接後熱処理による

応力緩和および変形生成機構の解明

廣畑 幹人

名古屋大学

図1 鋼板供試体および溶接供試体

図3 加熱範囲および鉛直変位の測定位置 図2 溶接実験および熱弾塑性解析結果

(2)

2018年2月号  103

(a) 鋼板供試体 (b) 溶接供試体

て,加熱範囲外では圧縮応力が増加し,全体的に残留応 力が増加する傾向が確認された。本研究における加熱条 件では,溶接ビード近傍では応力が緩和された可能性が ある一方で,それ以外では,応力が増加する傾向がある と分かった。熱処理時の面外変形挙動を図5に示す。実 験と解析はおおむね一致しており,解析は実験を精度良 く再現していることを確認した。溶接供試体は加熱面に 関わらず溶接による変形(初期変形)と同じ傾向の面外 変形が供試体に生じており,溶接による変形よりも 0.2mm程度大きな残留変形が生じていた。

4

 変位拘束下における溶接後熱処

理で生じる変形および残留応力

溶接後熱処理の解析モデルの端部(x=0, 500mm) において溶接線方向(x方向)の変位を固定し,拘束下 における溶接後熱処理で生じる変位の挙動を検討した。 なお,溶接時には変位は拘束しておらず,溶接後熱処理 時にのみ拘束条件を変更した。図6に溶接線に沿う方向 の面外変形の分布を示す。拘束を与えない場合(無拘 束)と比較して,変位を拘束する(変位拘束)ことで熱 処理後に9mm程度大きな面外変形が生じた。また,熱 処理後に拘束を解放する(拘束解放)ことで,さらに9 mm程度大きな面外変形が生じた。図7に変位拘束時と 拘束解放時の残留応力を示す。変位拘束時では無拘束時 と比較して,溶接ビード近傍の引張残留応力がσxおよ

びσyはともに3倍以上大きくなった。また,熱処理後

に拘束を解放することで,σxおよびσyはともに圧縮方

向へと応力が変化し,とくに,σxは残留応力が引張か

ら圧縮に転じた。

5

 結言

(1)溶接後熱処理により,溶接ビード近傍では応力が緩 和された可能性がある一方で,それ以外では,応力が 増加する傾向があることを確認した。

(2)溶接後熱処理により,供試体には加熱面に関わらず 溶接変形と同じ傾向の面外変形が生じ,溶接変形より も0.2mm程度大きな残留変形が生じた。

(3)溶接線方向の変位を拘束することで,溶接後熱処理 後の面外変形が無拘束時より9mm程度大きくなり, 熱処理後に拘束を解放することでさらに9mm程度大 きな面外変形が生じることを確認した。

(4)溶接線方向の変位を拘束することで,溶接後熱処理 後の残留応力は無拘束時より大幅に増加し,熱処理後 に拘束を解放することで圧縮方向へ応力が変化するこ とを確認した。

(5)本研究の成果により,比較的薄い鋼板で構成される土 木鋼構造物に対し,熱処理を適用するうえでの留意点 (拘束による影響)が明確になった。さらに,本研究で 構築した熱弾塑性解析モデルにより熱処理で生じる変 形・残留応力が精度良く予測できることが分かったた め,実構造物において熱処理を適用する際の加熱範囲や 加熱保持時間等の条件探索に活用できると考えられる。

参 考 文 献

1)平松卓也:溶接後熱処理(PWHT),熱処理,第51巻,第6号, pp. 332-337, 2011.

2)日本規格協会:溶接後熱処理方法 JIS Z 3700:2009・同解説, 22p, 2009.

図6 変位拘束下の熱処理で生じる面外変形

図7 変位拘束下の熱処理で生じる残留応力 図4 溶接後熱処理の加熱条件による溶接供試体の残留応力

(a) 溶接後の残留応力 (b) 熱処理後の残留応力

参照

関連したドキュメント

方法 理論的妥当性および先行研究の結果に基づいて,日常生活動作を構成する7動作領域より

振動流中および一様 流中に没水 した小口径の直立 円柱周辺の3次 元流体場 に関する数値解析 を行った.円 柱高 さの違いに よる流況および底面せん断力

UVBVisスペクトルおよびCDスペクトル を測定し、Dabs-AAの水溶液中での会へ ロ

熱力学計算によれば、この地下水中において安定なのは FeSe 2 (cr)で、Se 濃度はこの固相の 溶解度である 10 -9 ~10 -8 mol dm

In this paper, we consider the discrete deformation of the discrete space curves with constant torsion described by the discrete mKdV or the discrete sine‐Gordon equations, and

タービンブレード側ファツリー部 は、運転時の熱応力及び過給機の 回転による遠心力により経年的な

一方、Fig.4には、下腿部前面及び後面におけ る筋厚の変化を各年齢でプロットした。下腿部で は、前面及び後面ともに中学生期における変化が Fig.3  Longitudinal changes

連続デブリ層と下鏡との狭隘ギャップ形成およびギャップ沸騰冷却