1
第2 回 糖質( 炭水化物) ( 1 )
日紫喜光良
基礎生化学講義 2010.4.13
2
概要
• 1 . 糖質( 炭水化物) の役割
• 2 . 単糖
• 3 . 単糖の結合
• 4 . 糖質の消化
イラストレイテッド生化学 第7章に相当
3
1 . 糖質の役割
• エネルギー源
• エネルギー貯蔵形
態
– デンプン
– グリ コ ーゲン
• 細胞膜成分
– 糖タ ンパク 質の原料
• 構造の構成要素
– 細菌の細胞壁
– 昆虫の外骨格
– 植物繊維のセルロース
– 細胞外マト リ ク スを構成
するグリ コ サミ ノ グリ カ ン
の原料
など
4
2 . 単糖
炭素数 一般名 例
3 ト リ オース グリ セルアルデヒ ド
4 テト ロース エリ ト ロース
5 ペント ース リ ボース
6 ヘキソ ース グルコ ース
7 ヘプト ース セド ヘプツロース
9 ノ ノ ース ノ イ ラ ミ ン酸
イレストレイテッド生化学101頁図7.1
5
何に注目し て記憶するか?
• 炭素の数
• 官能基の種類、 数、 位置
6
炭素の数に注意し て代謝経路を理解
炭素数6 ( グルコ ースなど)
炭素数3 の中間代謝物
× 2分子(以下略)
炭素数2 の中間代謝物
CO
2炭素数4 の
中間代謝物
炭素数6 の
中間代謝物
炭素数5 の
中間代謝物 CO
2CO
27
単糖
• C が3 個以上7 個まで直線状( 直鎖状) に結合
– 天然には環状構造をと るこ と が多い
• 一番端のC が CHO- ( アルデヒ ド 基) または
端から 2 番目のC が C=O ( ケト ン)
– アルデヒ ド 基をも つも の: アルド ース
– ケト ン基をも つも の: ケト ース
• その他の C には、 H と OH が両方結合する。
– 終端には OH が1 つと H が2 つ
8
アルド ースと ケト ース
グリ セルアルデヒ ド ジヒ ド ロキシアセト ン
アルド ース ケト ース
( 上の図で、 C と 、 C に結合する水素は省略し ている)
9
アルド ースと ケト ース
イラストレーテッド生化学 図7.2
10
異性体と エピマー: 異性体
• 化学式は同一だが構造が異なる分子、 また
はそのよう な分子から なる化合物を異性体
(isomer) と いう 。
– 構造異性体
– 立体異性体
• エナンチオマー
• ジアステレオマー
– エピマー
イ ラ スト レイ テッ ド 生化学1 0 1 ∼1 0 2 頁への導入
11
構造異性体の例
ブタ ノ ール
C
4H
10O
イ ソ ブタ ノ ール
C
4H
10O
12
エナンチオマー
• 互いに鏡像の関係に
あっ て、 重ねあわすこ と
のできない一対の分子
種の一方
– エナンチオ異性
• エナンチオマーの関係
鏡像異性体と も いう
イラストレイテッド生化学102頁図7.5
13
ジアステレオマー
(2S,3S)-2,3,4-trihydroxybutanal
(2R,3R)-2,3,4-trihydroxybutanal 互いにエナンチオマー
D-エリトロース
(2R,3S)-2,3,4-trihydroxybutanal
(2S,3R)-2,3,4-trihydroxybutanal 互いにエナンチオマー
D-トレオース L-トレオース L-エリトロース
エナンチオマー でない
1
2
3 4
14
エピマー
(2S,3S)-2,3,4-trihydroxybutanal (2R,3S)-2,3,4-trihydroxybutanal L-トレオース
L-エリトロース
ただ1 つの特定の炭素原子についての空間配置
のみが異なる糖質の異性体どう し
1
2
3 4
ジアステレオマーのう ち、
15
イラストレイテッド生化学102頁図7.4
C −4 エピマー
異性体
16
フ ィ ッ シャ ー投影式( 導入)
D- グリ セルアルデヒ ド
C3 糖
CHO
CH
2OH
OH
X
a
b
c
d
( フ ィ ッ シャ ー投影式)
どう し て OH が右か?
X が 2 番目の C の
と き、 a~d に何が
はいるか?
17
こ こ までのまと め( 1 )
• アルデヒ ド 基をも つ単糖をアルド ースと 呼び、
ケト 基をも つ単糖をケト ースと 呼ぶ。
• 単糖がグリ コ シド 結合でつながっ たも のが二
糖、 オリ ゴ糖、 多糖である。
18
こ こ までのまと め( 2 )
• 同じ 化学式を持ちながら 異なる構造を持つ化
合物を異性体と 呼ぶ。
• も し 2 つの単糖の異性体間でただ1 つの特定
の炭素原子についての空間配置のみが異な
る場合は( カ ルボニル炭素を例外と し て) 、 互
いにエピマーの関係にあると 定義する。
• も し も 1 対の単糖が互いに鏡像の関係にある
場合( エナンチオマー) は、 それぞれ D- 糖、 L-
糖と 呼ばれる。
19
キラ リ ティ
• 実像と それ自身の鏡像と が重ね合わせら れ
ない物質のこ と を、 キラ ルである、 または、 キ
ラ リ ティ をも つ、 と いう 。
– 重ねら れる物質は、 アキラ ルである、 と いう
20
キラ ル中心
• 中心と なる原子を X と し て、
• そのまわり に4 つの異な
る原子 a, b, c, d が結合し 、
正四面体構造をつく っ て
いると き、
• X をキラ ル中心と いう 。
• X は炭素原子であるこ と
が多い。
X a
b
c
d
21
C
④
①
②
③
紙の上
紙の向こ う
紙のこ ちら 側
C
④
② ③
①
C
④
①
②
③
C
④
③ ②
①
同じ
同じ
22
フ ィ ッ シャ ー投影式: 要点
HO H
CHO
C
C
2
1
3 H
HO
CH2OH
4
=
CHO
CH2OH
HO
HO
H
H
横棒: キラ ル中心の炭素に結合し た原子は紙の手前
に向かっ ている。
23
フ ィ ッ シャ ー投影式 (1)
(2S,3S)-2,3,4-trihydroxybutanal L-エリトロース
カルボニル基のついてい る炭素(1番)を上におい、 番号をふる。
1
2 3
4
1 2 3 4
24
フ ィ ッ シャ ー投影式 (2)
2番の炭素についているOHとHが、 上向きになるように1−2間のC-C 結合を回す。
1 2 3 4
図では H HO
C
C
C
HO H
C
C
右90度回転
C 2
2 1
3
1
3
このとき3 番目のC のまわりは H C OH
C
C 3 2
4
25
( 注) 正四面体の構造
正四面体の向かい合う 2 本の辺と 正四面体の
中心と でできる2 つの平面は互いに直交する
C
OH
H
C C
左の図の、 C を中心
と する正四面体の
辺( 点線) のう ち、
OH-H, C-C をそれ
ぞれ向かい合う 面
の対角線と するよう
な立方体に収めて
みると わかる
中心のCはOH-H, C-Cのそれぞれ中点を 結ぶ線(紫色)上にある。
26
フ ィ ッ シャ ー投影式 (3)
3番の炭素についているOHとHが、 上向きになるように2−3間のC-C 結合を軸として回す。
1 2
3 4
今の状態では
右90度回転 HO C H
C
CH2OH もとの構造式
H C OH C
CH2OH 3
2
4
このとき、2番の炭素のまわりの位置 関係はかわらない
回転後
27
フ ィ ッ シャ ー投影式( 4 )
以上をまと めると 、
HO H
CHO
C C 2 1
3
+
HO C H C
CH2OH 3
2
4
HO H
CHO
C C 2 1
3 H
HO
CH2OH 4
=
CHO
CH2OH HO
HO
H H
28
単糖( アルド ース) の例
D-グリセルアルデヒド
D-エリトロース
C3 糖
C4 糖
D-トレオース CH2OH
OH OH CHO
CH2OH OH OH
CHO CHO
CH2OH OH
29
単糖( アルド ース) の例( 2 )
D- エリ ト ロース
D- リ ボース D- アラ ビノ ース
CHO
CH2OH OH OH OH
CHO
CH2OH OH
OH OH
フィッシャーの投影式にあわせて原子間の結合をねじった。実 際の分子がこのような形をしているわけではない。
C5 糖
30
単糖( アルド ース) の例( 3 )
D- アラ ビノ ース D- グルコ ース
CH2OH OH OH OH
OH CHO
D- マンノ ース
CH2OH OH OH OH
OH
CHO
フィッシャーの投影式にあわせて原子間の結合をねじった。実 際の分子がこのような形をしているわけではない。
C6 糖
31
単糖( ケト ース) の例
CH2OH O HO
OH OH CH2OH D-フルクトース
1 2 3 4 5 6 1
3 2 4
5
6
フィッシャーの投影式にあわせて原子間の結合を回転させた。 実際の分子がこのような形をしているわけではない。
32
単糖の環化
• アルド ースのも っ と も 末端のキラ ル中心炭素( つまり 、
端から 2 番目のヒ ド ロキシ基) についているヒ ド ロキ
シ基は、 アルデヒ ド 炭素に接近し やすい位置にある。
1 2
3
4 5 6
D- グルコ ースの場合、 #5 の -
OH が #1 のアルデヒ ド 炭素に
も っ と も 接近し やすい
違う視点から見ると
1 2
3 4
5 6
イラストレイテッド生化学102∼103頁補足
33
単糖の環化( 2 )
• なかでも 、 も っ と も 末端のキラ ル中心炭素( つまり 、
端から 2 番目のヒ ド ロキシ基) についているヒ ド ロキ
シ基は、 アルデヒ ド 炭素に接近し やすい位置にある。
D- グルコ ースの場合、 #5 の -
OH が #1 のアルデヒ ド 炭素に
も っ と も 接近し やすい
別の角度から見ると
環状化後の投影式は O
1 2
3 4
5
1 2 3
4 5
CH2OH
H H OH
OH
H OH H
OH H
#5
#1
34
環状化: α と β
環状化により 、 新たに #1 の =O が -OH
になる。
#1 の炭素が新たなキラ ル中心になる。
α アノ マー
β アノ マー
1 5
1 5
1 5
5
1
新たな -OH が環状面に対
し てどちら にできるか?
-HC=O と 同じ 側で
結合( 新たな -OH は
下にできる
-HC=O と 反対側か
ら 結合( 新たな -OH
は上にできる
35
2 種類の D- グルコ ピラ ノ ース
#1と#5の酸素がcis(同じ側)
trans(反対側)
α -D-グルコース
β -D-グルコース 1
2 3
4 5
6
1 3 2
4
5 6
1
#1の炭素についている-OHの向きが違う
36
α アノ マーと β アノ マー
• ヘミ アセタ ールの閉環によっ て新たに生じ た
キラ ル中心をアノ マー中心と いう 。
– #1 の炭素がアノ マー炭素になる
• カ ルボニル炭素から 生じ た水酸基が、 カ ルボ
ニル炭素から 最も 遠いキラ ルな炭素の水酸
基と 、 平面に対し て同じ 側( シス) なら α アノ
マー、 違う 側( ト ラ ンス) なら β アノ マー
37
α アノ マーと β アノ マー間の相互変換
イラストレイテッド生化学 図7.6
溶液中の糖のα アノ マーと β アノ マーは互いに平
衡状態にあり 、 自発的に相互変換可能( 変旋光) 。
β −Dーグルコピラノース D-グルコース
α −D-グルコピラノース
38
還元糖
• 糖のアノ マー炭素に結合し ている炭素が他の
構造と 結合し ていない場合、 その糖は還元剤
と し てはたら き還元糖と 呼ばれる。
• 還元糖は発色試薬( 例えばベネディ ク ト 試薬
やフ ェ ーリ ング溶液) と 反応し て試薬を還元し
発色さ せ、 自ら のアノ マー炭素は酸化さ れる。
• 比色試験: 尿中に還元糖が存在するかどう か
の検査( 正常では尿中に糖は存在し ない)
– 陽性の場合、 還元糖を同定するためのより 特異
的な試験をおこ なう 。
39
こ こ までのまと め( 3 )
• 単糖が環化すると 、 アルド ースの場合はアル
デヒ ド 基から 、 ケト ースの場合はケト 基から 、
アノ マー炭素が生じ る。
• アノ マー炭素はα ないし β と いう 2 つの立体
配置のう ちいずれかをと る。
• も し アノ マー炭素の酸素が他の構造に結合し
ていなければ、 その糖は還元糖である。
40
ガラ ク ト ースの場合
β -D-ガラクトース α -D-ガラクトース
41
フ ルク ト ースの場合
ケトン基となっている#2の炭素に対して接近しやすいのは、
#5の炭素についている-OH(右図)または
#6の炭素についている-OH(左図) 1
2
4 5
6
1 2
3 4
6 5
3
42
ピラ ノ ース⇔フ ラ ノ ース構造
β -D-フルクトース(ピラノース構造) 2
1 4 3
5 6
β -D-フルクトース(フラノース構造) 2
1
3 4
5 6
43
二糖
ラ ク ト ース
α -グルコース β -ガラクトース
β -(1 → 4’) グリ コ シド 結合
1 2 3
4 5
6
1 32
4
5 6
α -グルコース
β -フルクトース
(1 α → 2’ β ) グリ コ シド 結合
スク ロース
1 2 3
1
2
44
グリ コ シド 結合
イラストレイテッド生化学 図7.3
2 つのヘキソ ー
スがグリ コ シド
結合し て二糖が
できる。
2 つのアノ マー炭
素間の結合→グ
リ コ シル基( グリ
コ シド 結合に関与
し ているアルド ー
スまたはケト ー
ス) が生成さ れる
45
グリ コ シド 結合による複合糖質の形成
イラストレイテッド生化学 図7.7
N- グリ コ シド 結合
O- グリ コ シド 結合
-NH
2基に結合
-OH 基に結合
N ーグリ コ シド の形成
O- グリ コ シド の形成
46
こ こ までのまと め( 4 )
• アノ マー炭素が他の構造に結合し ている場合、
その単糖をグリ コ シル基と よぶ。
• 単糖が− NH 2 基に結合し た場合、 N- グリ コ シ
ド が生じ 、 − OH 基に結合し た場合 O- グリ コ シ
ド が生じ る。
47
多糖
セルロースの繰り返し単位
アミロースの繰り返し単位 β -グルコピラノース α -グルコピラノース
β -(1 → 4’) グリ コ シド 結合
α -(1 → 4’) グリ コ シド 結合
48
炭水化物の種類
• 多糖
– 植物では
• でんぷん( アミ ロースと アミ ロペク チン)
• セルロース: ヒ ト は消化できない と し て貯蔵
– 動物ではグリ コ ーゲンと し て貯蔵
• ( オリ ゴ糖)
• 二糖
– ラ ク ト ース: ガラ ク ト ースと グルコ ース
– ショ 糖: フ ルク ト ースと グルコ ース
• 単糖
– グルコ ース( ブド ウ糖)
– ガラ ク ト ース
49
炭水化物の種類( 2 )
• 複合糖質
– グリ コ シド 結合により 、
• プリ ン・ ピリ ミ ジン
• 芳香環
• タ ンパク 質
• 脂質
等と 結合する。
核酸
ステロイ ド やビリ ルビン
糖タ ンパク
糖脂質
50
炭水化物の消化
• 口腔
– 唾液中の酵素
• 胃
– 低 pH により 唾液アミ ラ ーゼの活性を停止
• 小腸
– 膵液中の酵素: 多糖の消化
– 粘膜細胞表面の酵素: 単糖に消化
– 腸管粘膜細胞が単糖を吸収する
• 特異的な輸送体( ト ラ ンスポータ ー)
51
でんぷん 乳糖 ショ糖
セルロース
セルロース:糞便 に排出
α -アミラーゼによって: でんぷんをデキストリン、イ ソマルトース、マルトース(麦 芽糖)に分解
膵臓のα -アミラーゼによって: デキストリンはさらにイソマ
ルトース、マルトースに分解
小腸粘膜細胞の膜結合酵素
(イソマルターゼ、マルターゼ、 ラクターゼ、スクラーゼ)によっ て:
2糖を単糖(グルコース、フ ルクトース、ガラクトース)に 分解
門脈から吸収 肝臓へ
小腸粘膜細胞 から吸収
イラストレイテッド生化学 図7.10
52
α - アミ ラ ーゼによる多糖の分解
α - アミ ラ ーゼはα ( 1 →4 ) 結合だけを切る。
糖鎖の分岐をつく るα ( 1 →6 ) 結合は切れな
い。
グリ コ ーゲン
マルト ース
と オリ ゴ糖
α ( 1 → 6 ) 結合をも
つ2 糖やオリ ゴ糖
イラストレイテッド生化学 図7.9
53
こ こ までのまと め( 5 )
• 唾液中のα ーアミ ラ ーゼが食事中の多糖に作用し
てオリ ゴ糖が生じ る。
• 膵臓のα ーアミ ラ ーゼが多糖の消化をおこ なう 。
• 最終的な糖質消化は小腸の粘膜細胞でおこ なわれ
る。
• いく つかのジサッ カ リ ダーゼにより 単糖が生じ る。
• こ れら の酵素は腸管粘膜細胞の刷毛縁膜から 分泌
さ れそこ にと どまる。
• 糖質の吸収には特異的な輸送体( ト ラ ンスポー
タ ー) が必要である。
54
乳糖不耐症
• ラ ク タ ーゼの
欠損または活
性が不十分
乳糖 小腸
ラクターゼ 欠損
ガラクトース グルコース 大腸 大腸で乳糖は
細菌のえさに。 乳糖
水素
2炭糖 3炭糖
二酸化炭素
鼓腸、 下痢、 脱水
水分を吸収 図7.11
浸透圧性下痢
55