財政金融政策と国際政策協調
(2)経常収支・GDP・金利
の相互関係
(国際資本移動がない場合)
1. 為替レート と 経常収支 の関係
2. GDP と 経常収支 の関係
3. 金利 と GDP の関係
4.GDP・金利・経常収支の関係
1
Y. KUROSAWA
1 . 為替レートと経常収支の関
係
● ドル建て・円建ての経常収支
経常収支 = 輸出等 - 輸入等
= 円建ての輸出価格 P ( \ )
為替レート E ( \/$ )×US -等への輸出数量 Xドル建て輸入価格 P ( $ ) × 米国等からの輸入数量 M
= 円建ての輸出価格 P ( \ ) ×US 等への輸出数量 X
-ドル建て輸入価格 P ( $ ) × 為替レート E ( \/$ ) × 米国等 からの輸入数量 M
CA = P(\)
E ×X - P($)×M
CA = P(\)×X - { P($)×E }×M
ドル・ベース
円・ベース
2
● 為替レートと輸入の関係
輸 入
曲
線
輸入価格 P ( \ )
輸入数量( M ) M
M’ P($)×E’(\/$)
P($)×E(\/$)
円ベース: P[$]×E(\/$)×M ドルベース: P[$]×M
e.m=1 e.m>1 e.m<1
P( $ ) ×E ( \/$ )
M
P( $ ) ×E ( \/$ ) P( $ ) ×E ( \/$ )
M M
変化なし 減少 増加
輸入金額
P×M 大
小
大
小
減少 減少 減少
e.m. = σM
σE 輸入弾力性
輸入数量が何 % 変化 為替レート 1% の変化
Y = - ax + b a = e.m.
E が 1%円安になった
とき
3
● 為替レートと輸出の関係
*円安になったときの変化*
輸 出
曲
線
輸出価格
輸出数量( X ) X
X’ P(\)
P(\)
1 4
7 8
2 3 5
6
P( $ ) =E P(\)
E E’
e.x = σX
σE 輸出弾力性
e.x=1
P(\)/E P(\)/E’
e.x>1
P(\)/E P(\)/E’ e.x<1
P(\)/E
P(\)/E’
X X X
e.x=0
P(\)/E
P(\)/E’
X
ドルベース: P(\)/E×X 円ベース: P(\)×X
輸出金額
減少 変化なし 増加
減少
変化なし 微増 増加 増加
□1784 □8356 のとき ドルベース輸出金額は減少
□1784 □8356 のとき ドルベース輸出金額は増加
すなわち…
8
Y = - ax + b a = e.x.
4
輸出・輸入を総合する:為替レート・経常収支の関係
(マーシャル・ラーナー条件)
● 経常収支の変化=輸出額等の変化-輸入額等の変化
輸出の弾力性( e.x )+輸入の弾力性 (e.m) > 1
マーシャル・ラーナー条件 が満たされている
自国通貨が 安くなる
経常収支が改善する
経常収支=輸出等-輸入等 の式に輸出および輸入の弾力性の式を代入して
M/L 条件が満たされる場合には円安のとき経常収支が改善することを確認してください5
貿易収支等(CA)と GDP の関
係
GDP(Y)
Y = C + I + G + (X – M)
X – M = Y - C - I - G
CA = Y - (C+cY) – I - G
= Y- cY - (C + I + G)
= (1-c)Y – A
CA = sY – A
s 0
+ -
CA = X - M = X - (M + mY)
= -mY + (X - M)
-m
Y
2.GDPと経常収支の関係
CA
- A X - M
6
財政拡大政策
GDP(Y)
CA = sY – ( C + I +G )
= sY - ( C + I + G + Δ G
)
s 0
+ -
TB=X-M = X – (M + mY)
= -mY+X-M
-m
Y
● 財政政策と経常収支の関係
Δ G
GDP拡大・経常収支悪化
CA
( ΔG によって Y が増加したときに M が増加する可能性を考慮していないので部分均衡の考え方です)7
円安政策
GDP(Y)
CA = sY – ( C + I +G )
s 0
+ -
CA = X - M = X – (M + mY)
= -mY + X + ΔX – M
( マーシャル・ラーナー条件が満たされてい れば)
-m
Y
● 金融政策(円安政策)と経常収支の関係
GDP拡大・経常収支改
CA 善
ΔX
8
3.金利と GDP の関係( IS-LM モ
デル) (Keynes-Hicks)
i
GDP(Y)
LM (Money Market)
(liquidity of Money)
IS (Real Goods Market)
(Investment and Savings)
Y0
i
09
IS 曲線の導出プロセス (1)
Expenditure (計画支出)
Y(GDP) 45deg
Y=C+I+G+X-M
i
Y(GDP) Y0
Y0 i
Investment i0
I0 i1
I1 Y1
ΔI
IS curve
短期間のうちに金利が下がらない場合は
政府が財政支出を増加させれば、
I の代わりに G が増加するので
IS 曲線が右にシフトして
GDP が増加する(金利は i0 のまま)
(
ΔG)
IS’
10
IS 曲線導出のプロセス (2)
interest rate
Investment
Savings
Y(GDP) i0
I0
S=I
S0
Y=sY+α Y0
i1
I1
S1
Y1
IS curve
11
LM 曲線導出のプロセス
interest rate
interest rate
interest rate
interest rate M/p
M/p M0/p
L0(I,Y)
(money demand) i0
Y0 Y1
LM curve
i0
M0/p Y0 Y1
LM LM’ GDP
GDP
①
② ③
①
②
③
12
i
Y LM
IS
CA
Y CA=sY-A
CA=-mY+X-M
IS’
0 +
-
ΔY
ΔCA
ΔG = s×ΔY + m×ΔY
Δ G
Therefore
ΔY = ΔG / ( s + m )
ΔCA = - m×ΔY
Therefore
ΔCA = -ΔG × m / (s+m)
① 財政拡大( Δ G)**ISシフト
GDP拡大( Δ Y)**金利上昇
② CAシフト**CA赤字( Δ CA)
4.GDP・金利・経常収支の関係(1)財政政策
s -m
13
Δ Y
ΔCA
Δ G
s
s
傾き s の意味は
1 に対して s 上昇
したがって、
1 : s = ΔY :
x
x = sΔY
x
-m 同様に、
1:m=ΔY:ΔCA
ΔCA=mΔY
Δ G = x + ΔCA = sΔY + mΔY
ΔY = Δ G / ( s + m )
ΔCA = mΔ Y = Δ G ×m/(s+m)
④
14
● 財政政策についての練習問題
不況対策として 200X 年度に 総額 2 兆円
の給付金 を支給することを決定したとする。
他の条件に変化がない(セトリス・パリバス)とすると
GDP はいくら増加し、経常収支はいくら減少するか
計算しなさい。
ただし、現在の GDP=500 兆円
貯蓄性向 (s) は 20%(s=0.2)
輸入性向 (m) は 40%(m=0.4) であるとする。
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GDP・金利・経常収支の関係(2)金
融政策
① 円安または通貨切り下げの場合
CA=-mY+X-M
LM
i
●通貨安介入(ドル買い・円売り)
**輸出増加( Δ X)
** CA 黒字
**マネー・サプライ増加
** LMシフト
**GDP拡大( Δ Y)
**金利下降
Δ X Δ Y
ΔCA
ΔX = s×ΔY + m×ΔY
Therefore ΔY = ΔX / (s+m)
-m s
1:s=ΔY:ΔCA
Therefore ΔCA = s×Δ Y
= ΔX × s / (s+m)
i
CA
Y(GDP)
16
② マネーサプライ増加の場
合
CA=sY-(C+I+G)
LM LM’
+C or +I i
i
Y(GDP) CA
0 +
- ΔC or ΔI
ΔY
ΔCA
●金融政策(MS増加)*LMシフト
**GDP拡大( Δ Y)*金利低下
●MS増加によって
**CまたはIが増加
GDP増加( Δ Y)*CA悪化( ΔCA )
ΔC = s×ΔY + m×ΔY
Therefore
ΔY = ΔC / ( s + m )
ΔCA = -m×ΔY
Therefore
ΔCA = -ΔC × m / (s+m)
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