自治体職員有志の会シンポジウム i n 高浜
日時:平成16年8月21日(土)
場所:高浜市いきいき広場いきいきホール
■ プログラム
1 基調報告/山路 栄一(三重県職員)
私のパーソナル・マニフェスト(脱「お役所仕事」提案)
∼自治体職員有志の会の設立の経緯をたどりながら∼ 2 基調講演/後 房雄(名古屋大学教授)
自治体の再生は可能か −マニフェスト、行政評価、NPO 3 事例発表
(1)自治体におけるコンピテンシー制度の導入/高知県 夕部 雅丈
(2)自治体コールセンターの取り組み/札幌市 北川 憲司
(3)『自治体DNA運動の取り組み』(一成果としての1/2委員会)/福岡市 秋吉 誠 4 パネルディスカッション「テーマ:自治体改革の戦略と新たな自治体職員像」
・コーディネーター:石原 俊彦(関西学院大学産業研究所教授)
・ パネリスト(順不同):穂坂 邦夫(埼玉県志木市長) 森 貞述(愛知県高浜市長) 白井 文(兵庫県尼崎市長) 後藤 國利(大分県臼杵市長) 戸崎 将宏(千葉県職員/会員) 藤井 理香(長崎県国見町職員/会員)
■ 記 録
1 基調報告/山路 栄一(三重県職員)
私のパーソナル・マニフェスト( 脱「お役所仕事」提案)
∼自治体職員有志の会の設立の経緯をたどりながら∼
【はじめに】
本日は、自治体職員有志の会主催のシンポジウムに地元東海地区はもとより北海道や沖縄といっ た遠方からも、また、自治体関係者のみならず、広く自治体経営に関心をお持ちの一般のみなさん にもお集まりいただき、ありがとうございます。また、ご多用のところ基調講演をお引き受けいた だきました後教授、パネルディスカッションにご出席を頂きました関西学院大学の石原教授、穂坂、 森、白井、後藤の各首長の皆様、そして開催にご尽力を賜った地元高浜市の森市長をはじめ、職員 の方、関係者のみなさまに改めてこの場をお借りして御礼申し上げます。
本日のプログラムのメインである名古屋大学の後先生の基調講演、3つの自治体、高知県、札幌 市、福岡市の先進事例の報告、さらには石原先生と4市長、2人の職員によるパネルディスカッシ ョンに入る前に自治体職員有志の会の紹介を兼ねて、これまでの会の取り組みと今後の会の活動に ついて私の想いも含めてお伝えしたいと思います。
本日、高浜市で開催する自治体職員有志の会主催のシンポジウムの参加者が当初予定していた 150人を大きく超えて200人近くになりました。
もちろん動員などは一切なく、自治体職員、地方議会議員の方など自治体関係者や自治体の課題 に関心をもっていただいている方が開催主旨に共鳴して自主的に申し込んでいただいた結果です。 かつて地方発の発信といえば補助金の恩恵に預かった豪華な箱物などのハードが中心でしたが、 今ではニセコ町の自治基本条例や三重県の政策評価システム、岩手県、高知県、三鷹市などの行政 経営品質向上活動、さらには高浜市や志木市などが取り組んでみえる市民、NPO との協働、パー トナー制度などソフトの政策で自治体が中央省庁をリードしています。
このシンポジウムではさらに進んで組織としての自治体だけではなく、個人としての職員も自治 体の枠を超えて連携すればここまでできるという志や気概といったものを広く示す機会にしたいと 念願しています。
これまで自治体職員のことがマスコミなどで取り上げられるのは、残念ながら汚職や官僚主義的 な仕事のスタイルに関することなどマイナス面のことが多かったのですが、今こそ、自治体職員の ワークスタイルをルールドライブ型からミッションドラブ型に転換することで「お役所仕事」から の脱却を宣言したいと夢に描いています。
ここ高浜でのシンポジウムは必ずや「脱・お役所仕事」の第一歩の場になるはずです。
「自治体職員有志の会」のそもそものはじまりは、昨年の1月に改革派の6県知事(高知県:橋本、 宮城県:浅野、鳥取県:片山、岩手県:増田、和歌山県:木村、三重県:北川(当時)を集めて四日市市で 開催された「シンポジウム三重」でした。その際、神戸都市問題研究所の大島さんと再会して、同 研究所で開催される金井壽宏神戸大学大学院経営学研究科教授のキャリア・デザインの講演に誘わ れました。
金井先生の講演には、神戸市職員の方と私のほかにも他の自治体の方もみえていたのですが、せ っかくの機会だから、神戸市職員の経営品質等のプロジェクト・チームを母体にキャリア・デザイ ンや自治体改革について議論するメーリング・リストを発足させようということになりました。
その後、主に口コミで会員が増え、顔を知らない人も多くなったので1回オフ会を開こうという ことになったのですが、せっかく開くのなら先進的自治体経営をされている首長さんが求める職員 像も聴きたいということになました。職員でも組織が大きくなると、自分の自治体でもなかなか首 長の話を聞く機会が少ないので、常設型の住民投票条例や自治体業務のアウトソーシングで有名な 高浜市の森市長に講師をお願いしたのがオフ会・講演会の始まりです。
さて、先の参議院選挙では定着した感もあって、以前ほど脚光浴びませんでしたが、最近の選挙 ではこれまでウィッシュリスト(おねだりリスト)としての役割しか果たしていなかった公約に代 わってマニフェスト(政権公約)が注目を集めています。
その本家の英国の例を持ち出すまでもなく、本来マニフェストは政党が作成するべきものです が、その有効性が北川前三重県知事らによって説かれて以来、増田岩手県知事、松沢神奈川県知事、 西川福井県知事などの地方自治体の首長によっても統一地方選の際にマニフェスト(ローカル・マ ニフェスト)が作成されています。
組織の長期の目標であるビジョンへの貢献と自分自身のキャリア・デザインのためにも組織に 属する個人もパーソナル・ビジョンを作成するべきであるという持論を持つ私は、この際個人もマ ニフェスト(パーソナル・マニフェスト)を作成してはどうかと思い、今回のお話のタイトルに使 わせていただいた次第です。
【自治体職員有志の会設立にかける想いときっかけ】 (1) 設立にかける想い
自治体の首長の任期の一期は4年間です。多選批判は一律には当てはまらないにしても永久にそ の座にあることはできませんから、改革を成し遂げるなどして優れた、評価の高い自治体経営者で もいつかは交替するときがきます。
それに対して職員は通常、中途採用を除き、40年あまりその自治体で働くのが普通です。 都道府県、市町村を問わず、多くの自治体で改革派の首長が登場し、話題を呼び、成果を挙げ、 注目を集めていますが、問題は首長が交替したときその方向がどうなるかです。
自治体の首長は企業経営者と違い、単に組織(都道府県や市町村)のトップという立場だけでは なく、いわばその地域の経営者という役割があります。公の地域の経営者を決めるのですから選挙 という民主的な手法で選出されます。よって、現首長による後継指名というのもおかしいし、なじ まない手法であると思います。
三重県の北川前知事が二期八年で引退を表明したとき、外部から興味本位で「三重県の改革の方 向はどうなるのか、後退するのではないか」とよく聞かれました。かつて県内を走る国道 23 号に なぞらえて「ルート23の県」といわれ、ほとんどの指標で47都道府県の真ん中くらいが定位置で あった三重県を一躍、全国に知られる改革先進県にした北川前知事の引退後のことが注目されたの です。
私は、それに対して自治体の首長は職員が自分たちの組織のトップを選ぶのではないし、また自 分の一票以外は影響力を行使できないのだから、そんなことをあれこれ考えてしょうがない。職員 は職員として自らのベストを尽くすだけだと思いました。そして思うだけではだめなので、行動に 移すため、首長だけではなく職員のレベルでも自治体の枠を超えて連携しようと「自治体職員有志 の会」を、志を同じくする仲間と昨年6月に立ち上げました。
今の野呂知事も基本的にはその路線の継承を表明しています。要は、キャッチフレーズなり、や り方が変わっても基本となる理念、ビジョンがぶれないかどうかが重要だと思います。山への登頂 ルートは一つではないということです。
「生活者起点の県政」(北川前知事当時)が「県民が主役の県政」(野呂知事)になっても目指す ところは変わらないはずです。目標は、県民満足志向の県政ですが、そこへの到達ルートは様々あ り、その時の首長がどういった手法を選択するかではないかと思っています。
そしてその実務を担い成果を挙げるのは、首長が替わっても継続して働く我々職員の役目なので はないでしょうか。
(2) きっかけ
中日新聞や朝日新聞、共同通信の配信を受けた地方紙に報道されるのに「神戸キャリアデザイン グループ」では違和感がありましたのであまり深く考えず、名前を現在の「自治体職員有志の会」 に変えました。
新聞で報道されたこと効果もあり、問合わせや入会希望が全国の自治体職員から相次ぎ、8月2 1日現在240人の会員がいます。
これまで全国各地で自治体の枠を超えて勉強会、研究会をしていた職員や主旨に共感した地方議 会の議員の方が参加してくれたりしたためです。オフ会もこれまで5回開催し、会のホームページ http://plaza.rakuten.co.jp/careerdesign/ のアクセスも増えています。(新聞で予想外に大きく取り 上げられ、私の名前も出たことにより、予想もしない波紋(庁内で政治家になるのか、とか北川前知 事の個人秘書にでもなるのかとうわさされました)を呼んだのは私の不徳の致すところであり、脇 の甘さが出ましたが、庁内では知事、副知事、総合企画局長、総務局長といった方を回り、あくま でも個人の取り組みであって政治性を持つものではないことを説明して保身をはかりました。 公務員の世界では、このようなことを行うと、まだまだマイナス評価になるのだなと感じました。
【自治体職員有志の会設立のこれまでの活動】
(1) メーリング・リストによる意見交換
ウェブ上でメーリングリストグループを形成し、メンバー間で意見交換・情報交換を行い、相 互研鑚を行っています。話題としては政策評価、ISO、キャリアデザインなどです。
(2) ホームページによる情報提供、提言活動
当会のホームページを立ち上げ、当会の意見交換の内容や地方自治や公務員のキャリア・デザ インに関する提言等を行っています。
(3) 自治体首長を招いての講演会及びオフ会の開催
ウェブ上の意見交換に加えて、自治体改革に積極的に取り組まれている自治体首長をメインゲ ストにお迎えし、改革に向けた取り組みや課題等をお聞きするとともに、議論の場にお入りいた だき、活発な意見交換を行うための講演会及びオフ会を概ね二ヶ月に1回、開催しています。
【自治体職員有志の会のこれまでの成果と今後の展開】
では、成果は何かと聞かれると一番困りますが、職員の立場でのボトムアップには限界がありま すが、自治体職員同士が担当業務でない、自治体の課題、改革、経営について議論し、それを広め る場を持てたことが一番の成果だとも考えています。
全国の志ある自治体職員を勇気づけ、枠を超えて連帯の輪を広げたということで、一定の成果を あげたとは思うのですが、発足してから1年が過ぎ、今日記念のシンポジウムを開催している中で、 改めてこの会の目的、目標を考え、今後の新たな展開(民間企業経営者やNPO活動家との意見交換、 志や情報発信を目的とした会としての書籍の出版)に想いをはせているところです。
また今後は、ただ首長のお話を聞くだけでは成果につながらないので会として考えた政策などを 実施できるフィールドをもってみえる首長に提案していくことや将来的には会のNPO法人化も考 えています。
ただ、この会はあくまでフラットな集まりなので私の想いがそのまま会の活動につながるわけで はありません。
【「自治体プロ職員」にかける想いと呼びかけ】
みなさんが一般的に「プロ」という言葉を聞いて、真っ先に思い浮かべる職業としては、スポー ツ選手、芸術家などでしょうか。
しかし、組織に属する企業の社員や国の職員、自治体の職員もそれぞれ企業の発展、国の成長、 地域の活性化という仕事に携わる以上は一流のプロでなければならないというのが、私の信念です。
つまり、担当している仕事に関してはオンリー・ワンの能力を持ち、置き換えのできない人材、 余人をもって代えがたい存在つまり、他の誰によっても取って換わることができない人材にならな ければ自分がその仕事を担当している価値がないと言えます。
私は、「力及ばず敗れることは辞さないが、力尽くさず挫けることは拒否したい」と思い、自治体 職員としてプロをめざす中で「考えて正しいと思ったことは勇気をもって発言し、実行すること」 を自らのポリシーにしています。
その信念に基づき、志をもって、惰性にながされないように、現場や細部にこだわりを持ち、仕 事をしている中で生意気ですが、自らリスクをとって「カナリア職員」となり、「高位平準化」を目 指して「結合改善」し、自治体職員の世界で「北京の蝶々」を飛ばしたいと思います。
言うだけではNATO(No Action Talking Only)になってしまいますので、私が仕事以外で 個人的にやっていることをご紹介します。まず、新聞、書籍やインターネットなどのオープン情報 で共感する首長や経営者と連絡をとって意見交換するようにしています。また、2年前の5月から メールマガジンを庁内外に発行しています。今では私のコミュニケーションツールになっており、 やめるにやめられない状況です。そして昨年の4月に個人のホームページも立ち上げ、毎日更新し ています。
【最後に】
「お役所仕事」という言葉を死語にすることが私の夢であり、期限も財源も明示されていなくて 志だけなのでその意味では要件を満たしていませんが、これが本日主張したい私のマニフェスト「脱 お役所仕事宣言」です。4つあるのでお聞きください。
・(私たち、志ある自治体職員は)住民、企業や地域にとって必要で価値あることを迅速に実行する ことで「お役所仕事」という言葉を死語にするように努めます。
・(私たち、志ある自治体職員は)規則に縛られた「ルールドライブ型」の仕事から、行政の本来の 使命を達成する「ミッションドライブ型」の仕事のスタイルに転換します。
・(私たち、志ある自治体職員は)住民や企業がここで住みたい、活動したいと思うような地域づく りに貢献するために、自らのキャリアをデザインし、その達成に務めます。
・(私たち、志ある自治体職員は)住民やNPO、企業等と協働して地域の内発的発展と地域格の向 上をはかり、その高位平準化に務めることで日本の明るい未来を切り開いていきます。
森市長にもこれをお見せしたとき言われたのですが、どれも極めて当たり前ことですが、それが できていなかったということだと思います。ここにこれまでのそういったスタイルから脱却するこ とを宣言しましょう!
よく自治体や公務員がマスコミで話題になることは汚職など懲戒のことやその旧態依然とした仕 事ぶりでした。それでは、我々は何のために自治体職員になったのかわかりませんし、地域の明る い未来も描けません。白井市長がおっしゃるように退職したときに市役所などを誇りを持てる職場 にしたいと思います。
ぜひ、地域経営に携わり、地域の内発的発展を使命とするプロとして顔の見えるこだわりをもった 仕事をしていきましょう。
夏休みの土曜日という貴重な時間に、呼びかけに応じて全国から集まっていただいた200名近く のみなさまに心から感謝申し上げます。 この後の発表、パネルディスカッション、懇親会での交流 をお楽しみ下さい。
2 基調講演/後 房雄(名古屋大学教授)
自治体の再生は可能か−マニフェスト、行政評価、NPO
今日のタイトルの後半は行政職員像ですが、私の話は前半の自治体改革を中心に、自治体の再生 は可能かというテーマで進めていきたいと思います。副題は、当初の戦略経営というのをあえて少々 変えて、もうひとつマニフェストをいれたほうがいいのかなと思い、自治体改革の手段としてのマ ニフェスト、行政評価、そしてNPOというこの3つの視点で話をします。
私の専門は、政治学、行政学だが、現実政治へのかかわりは、90年代初頭の政治改革、小選挙区 制の導入からだ。小選挙区制での総選挙はこれまで3回あったが、小選挙区制は、当初、導入過程 での議論が十分なされなかったために、制度の意義がなかなか理解されなかった。昨年11月総選 挙でマニフェストという道具を得て、ようやく有権者の政権選択の機会を保障するという本来の趣 旨が理解されるようになってきた。
小選挙区制についての解説の中でも、ほとんどのマスコミは、小選挙区の導入で、選挙区が小さ くなることから、人柄で選ぶべきだというような俗説を振りまいていた。人柄のいい議員が500 人集まったとして、いったい何をするのか全くわからない、白紙委任になってしまう。
そうではなく、マニフェストを掲げている複数の政党のうちのどれに4年間の政権を委ねるかを、 小選挙区のどの政党の候補を選ぶかを通して選択する、政権選択が制度の趣旨だ。そして、その政 権の実績は、マニフェストに照らして4年後に検証される。
制度の趣旨と実態がずれるということはよくあることだが、制度の導入を経て 10 年でようやく 当初の意図した方向に向かうようになった。当初から政権選択という議論をしてきた者として感慨 深い。
こうした展開になった起点は、昨年1月ごろだったか、四日市のシンポジウムで北川前三重県知 事から出された、ローカルマニフェストの提唱だった。それが、春の一斉地方選挙の首長選挙で広 まり、11月のマニフェスト総選挙につながった。もともと首長選挙は、定数1の小選挙区制とも いえ、もっともわかりやすい政権選択の制度だったが、それが実質化しはじめている。
社会活動としては、もう一つ、市民フォーラム21・NPOセンターの代表理事を97年の設立以 来務めている。
98年にできたNPO法に基づくNPO法人は、現在までに2万近くになっている。それぞれ1万 数千の社団法人、財団法人、社会福祉法人などよりも、数としては多くなった。
しかし、組織や財政基盤などをみると、自治体改革の本当のパートナーとしてはまだ不十分な存 在だ。これからが本番。
このため、NPOセンターとしても、NPOの普及啓発に加えて、最低限、有給職員を雇用できる ような事業型 NPOの育成をNPO支援の中軸にすえている。自治体の事業を受託することも重視 している。
市民フォーラム自体は昨年の決算で言うと7200万の収入で、常勤職員7名、パート10名程 度の組織になっている。介護 NPOの世界以外では、この規模の事業型のNPOは、あまりない。 事業型NPOのモデルを実例として見せることもNPOセンターの役目として重要だと思っている。
要するに、零細企業の経営者のようなことを、ここ数年やっている。NPO の体験であるととも に、自治体改革を経営、公共経営、NPM の発想から見ていくうえでも非常にいい経験だったと思 っている。
NPO と自治体の関係で言えば、新日鉄の立地する東海市という財政的に豊かな市の、第五次の 総合計画を市民フォーラムとして受託して作成過程に深くかかわった経験が大きい。
青森県の政策マーケティングに習い、市町村レベルでまちづくり指標を作成する試みを行った。 この東海市での経験は、行政評価を使った戦略経営を目指すものである。
以上のような経験を前提にしながら、マニフェスト、行政評価、NPO という3つの関連する話 題を中心に話していきたい。最初に資料の紹介をしたい。
本日のゲストでもある穂坂志木市市長の話、東海市のまちづくり指標など、内容の詳しくは既存 の書籍等を御覧いただきたい。
98年に始まったイギリスの政府とNPOとの間のコンパクト(協約)を元にして、愛知県で策 定した愛知県とNPOとが共同署名した「あいち協働ルールブック2004」を配布させてもらっ た。愛知県は、全職員に配布したそうである。
まず、自治体改革の中で、マニフェスト、戦略経営、NPO がなぜ有力なツールなのか?「自治 体のマネジメントは生徒会に毛の生えたようなものだ」という穂坂市長の発言は我意を得たりと思 った。いろいろな改革をしている穂坂市長の原点にある発想だと思う。要するに税金を集めて、市 民のためになることをやっているということなのに、何のために作ったのか良くわからない組織に なっている。新しいことが非常にやりにくい。穂坂市長がのこのような発想が改革のためには不可 欠だ。
ただ、首長がひとりで乗り込んでもなかなか改革はできるものではない。雰囲気や風土は、なか なか変えられない。
しかし、市長は4年間の政権の付託を受けた存在で、4年間は任せるべき。だめならば次の選挙 で落選させればよいのだから、まわりからしばられて制約を受けてやりたいこともできないという のはおかしい。
首長の指導力を強化する有力なツールが小選挙区制でありマニフェストだ。小選挙区制は爆弾の ような制度である。使いこなせれば、かなりの破壊力がある。しかし、それが理解されてこなかっ た。人柄で選ぶ選挙だと言われたりしてきた。
カナダでは、政権交代が起きたときに、与党が一回の選挙で2議席にまでになってしまった例が ある。一回一回がご破算となる。前回、2議席でも、きちんと候補を立てれば、次に一回で政権が 取れる可能性もある。
これまでの日本の選挙では、事前に自民党政権だということが決まっていて、有権者は政権選択 権を事実上奪われていた。そこでしかたなく、身近な交通事故の処理や就職斡旋を頼める「先生」 を身近に確保するために使ったりしていたわけだ。
しかし、有権者として、何10兆もの予算について議会に白紙委任を与えていいのか。
ローカルマニフェストというのは、北川さんが自分では掲げずに、他の知事が掲げたという経緯 がある。北川さんは、2回選挙に出たが、マニフェストは出していない。
その代わりに、岩手の増田さんなどが、マニフェストを掲げた。
三重県から始まった行政評価システムは、マニフェストと結びついてはじめて完成するものなの で、三重の事例は画竜点睛を欠くともいえる。
マニフェスト運動は21世紀臨調がかなり意図的に仕掛けたもので、11月の選挙はうまい具合に
マニフェスト選挙になった。マニフェスト選挙を経て、ようやく次に政権交代という段階になった。
選挙で何を選ぶのか?いい人を選ぶのは、白紙委任にしかならない。
政党を選ぶというのは比例代表制で、これは政党への包括委任となる制度。小選挙区制は政権選 択であり、マニフェストは政権が4年間に何をするのか事前に示すもの。物を買うときに、ブラッ クボックスなのは福袋くらいのもの、事前に品質を確かめるように、政権の中身を検証可能なよう にして示してもらう必要がある。
決定的なのは、政権選択。有権者からすれば、その政権に何をさせるかがポイント。政権選択権 こそが民主主義の核心だが、戦後の日本では民主主義の制度はできていたが、民主主義の核心であ る政権を選べたことがなかった。自民党以外の選択肢がなかった。
現在、民主主義をさらに民主化することが必要となっている。つまり、政権交代の機能しない民 主主義から「政権交代のある民主主義」への転換だ。
ようやく今回の総選挙は、政権選択ができるということを示したもので、有権者が考えて投票す る必要が出てくる。
自治体の首長は行政の代表者で、中立であるべきだとみられてきたが、実は政治家だ。選挙で選 ばれた政治家は党派的であって当然で、政治家は中立ではない。思いっきり、党派的だ。行政職員 は当然中立が求められる。
その党派的であるべき首長が中立的な行政組織のなかに埋もれてしまう事が多く、有権者がコン トロールできなくなっている。政権選択選挙を可能にすることで有権者が首長をコントロールでき るようになる。
また、このプロセスを経た首長であるからこそ、行政や議会に対して指導力を発揮できる。有権 者にマニフェストを理解してもらったうえで信任をもらい、多数の有権者に縛ってもらえばもらう ほど、行政組織に対して強い指導力を発揮することができる。マニフェストを実行するための指導 に誰も抵抗する正当性はないからだ。
有権者にとっても、首長にとっても、マニフェストは、一番の武器になる。
さらにマニフェストは、行政評価の最大の基準にもなる。日本では行政評価といえば事務事業評 価と一致してしまっている。これは三重県の功罪双方あるが、むしろ真似したほうが悪いのかもし れない。三重県は、職員の意識改革のために事務事業評価から始めただけで、その後政策推進シス テムにまで展開させている。
まねしてはじめたところは、事務事業評価を止めようとしている自治体も出てきている。これは、 やる手間の割に価値がないからだ。
ある政令市の事務事業評価の外部委員を私の妻がしている。外部委員に2次評価させるという評 価システムだが、これは行政評価といえるのか?
外部評価をもとに予算を削減する梃子としての仕組みとしてはわかるが、外部の人間が15分ほ ど担当職員からヒアリングして評価ができるだろうか。さらに、事務事業はそれぞれを個別に見て も、よいものかわるいものかは判断しようがない。上位の施策、政策に貢献しているかという基準 でしか、評価できないはずだ。ところが、一番上位にあるはずの総合計画はお飾りだから、要する に行政評価の基準自体がなかったわけだ。
三重の場合も、マニフェストがないままに、事務事業評価、政策評価のシステムを作っていった。 一応は、総合計画があるが、それが何を根拠につくられたのか良くわからないし、責任も取れない。
だから、飾っておくだけの存在になってしまう。
本来はマニフェストがあって、それを実現するために総合計画を首長の当選後に作り変えるのが 本来の姿で、だからこそ行政評価の起点になる。マニフェストがどれだけ実現しているかこそが行 政評価のポイントでなければおかしい。
最後に東海市のまちづくり指標を紹介したい。
これは、事務事業評価ばかりがはやっているので、もう一つのやり方、ベンチマーク型、社会指 標型で作ったもので、市民が「市政の通信簿」を作ろうとしたといえる。
6 グループに分かれた数人ずつの市民に、東海市で生活していて感じている生活課題を自由にい くつでも出してもらう。小中学生や20代の青年などのグループも加えて、これらのグループイン タビューをすべて録音して100程度の生活課題に抽出した。それらを目指す方向性、理念がおなじ ようなものでグループ化したら、7つの方向に分かれることがわかった。これらの方向性にキーワ ードをつけて、7つのキーワード候補が浮かび上がった。 こうした作業のうえで3500人の住 民アンケートを行った。まず、7つのキーワード候補から5つが絞られた。さらに、それぞれのキ ーワードのもとに集まっている20前後の生活課題から5つずつ重要なものを選んで、合計25の 重要課題が決まった。それに、生活課題それぞれの5段階評価で高かったものを13補充して、最 終的に38の重要生活課題を選んだ。要するに、これらが改善されることが、東海市がより住みよ くなるということになる。
そこで、それぞれの生活課題が改善しているかどうかを数字で把握するために、生活課題一つ当 たり、2つか3つの指標を付けて 99 個のまちづくり指標ができた。これを成果指標として市政の 成果を市民が毎年点検評価していくことが可能になった。第5次の総合計画は、まちづくり指標を 基本にして、それを実現するための戦略計画として作った。総合計画は議会で全員賛成で可決され た。住民ニーズにここまで基礎を置くと誰も反対しようがないのだろう。
ただし、社会指標型の指標では、市以外に、県、国、民間団体などのようなほかの主体や、景気 などの外部要因の影響が大きい。それだけに市行政が多様な主体のなかで責任を果たしていくとい う姿勢になっていく。市民参加や協働の必要性もわかりやすい。
以上の作業はコンサルに委託したのでなく、普通の市民でやってしまった。その方が使い勝手もよ いし、親しみもわく。市長がそうした評価の俎上に乗る決断をしたことが決定的に重要だった。
このプロセスを通して協働ということが見えてくる。様々な主体にそれぞれの役割分担値がある。 目標達成には、みんながどう協力するかということが自然に必要になる。
NPO向けに、このまちづくり指標に即した形で企画を出してもらうという助成金制度も作った。 まちづくり指標を申請にからめることで、NPO にもなるべくなら住民ニーズに応じた活動をして もらうことを狙っている。
行政職員は地方自治体の間の異動がないので、その組織に根ざすという植物のような存在である。 なかなか改革の先頭に立つ首長には出会えないという悩みがあると思う。
一つの方向としては、首長の政治的任命職が拡大すればチャンスが出てくるのではないか。本来、 大統領制なのに首長が一人で行政に乗り込むというのは現実的ではない。このような首長を支える 自前のスタッフが不可欠だ。こうしたことも含め、今後制度も変わっていくだろうから、日々の皆 さんの研鑽が活きる可能性も出てくるのではないか。
3 事例発表
(1) 自治体におけるコンピテンシー制度の導入/高知県 夕部 雅丈
1.はじめに
土木技術者で工事検査専門職であった私が、5年前に自治研修所の所長を命ぜられました。所属 長研修を行っていましたが、ある課長はずーっと5日間の研修期間中寝てました。これでは、ダメ だなと思い、税金で研修をするからには、効果的なものにしようとしました。まずそこでやりまし たことは、これまで行われていた12の階層別研修を、3分の一の4階層(新採用、係長、補佐、 課長)に縮小し、研修期間も1週間から4週間行われていたものを僅か1日としました。その代わ りに、基本的な研修は職場研修指導者を養成し、職場で日常的にやっていただくことにしました。 そして、研修をやって人事を行う、人事と研修の連携を考えました。職についてから実施する階層 別研修に代え、職に就く前に研修を行い、能力証明された者を当該職に就けるという、人事と連携 した研修に構造転換をしました。この能力測定をするためにコンピテンシーを導入しました。
2.コンンピテンシーとは何か?
コンピテンシーとは能力のことです。ですが、これまで能力測定で使われてきましたのは、学習 したものをどれだけ習得しているかを測るための「知能指数」と呼ばれるIQでした。IQは10 0年前にビネーという人が、フランスの軍隊を強くするために開発したものです。これに対して「心 の知能指数」などと言われていますEQを中核としたコンピテンシーが1970年代に、アメリカ の国務省で誕生しました。それは、高い成果を上げてきた外交官は、IQよりも自分の感情を知っ て、それを旨くコントロールし、相手の気持ちを察して共感しながら、いつもプラス思考で信念を 持って取り組んでいることが分かったからなんです。EQを中心にその職務を遂行するうえで必要 となるコンピテンシー、すなわち能力要素を定義しまして、そしてレベルを5段階くらいに分けて 表示し、その人がどのレベルにあるかという能力要件を測定できるようになりました。
このコンピテンシーは、日本では97年武田薬品が、99年富士ゼロックスが導入し、その後資生 堂、花王、アサヒビールなど、大企業は勿論のこと、中小企業までものがどんどん導入をしている ところです。
3.自治体でコンピテンシーを導入および作成をしているところ
現在私が把握していますのは、99 年に静岡県、01 年宇都宮市、三重県、神奈川県、大阪府、高 知県、02 年豊中市、東京都、03 年岸和田市、岩手県、04 年加賀市、長野県、佐賀県(作成中)、 伊勢市など 15 自治体ではないかと思います。その使われ方も、賞与や人事考課、育成、登用、配 置、キャリア・デザイン研修、総合人事システムとしてなど、様々な使われ方がされています。
4.高知県のコンピテンシー・システム
高知県のコンピテンシー・システムの目的は、住民の価値を高める視点を常に持ち、仕事の出来 る人材を育成・登用していくこと」、と「住民の価値を高めるゴールを設定し、そのゴールに向かっ てプロセスを設計し、着実に成果を上げていける能力を身につけてもらう」という、この二つです。 財政状況などから変革型に特化しているところ特徴があります。
5.能力要素
高知県のコンピテンシーは「これからの県庁の使命を果たすために必要な変革型リーダーの行動 能力」として、10の能力要件項目を決めました。その項目は、「倫理」をベースにして、顧客であ る住民の価値を高める仕事をしていく「県民本位指向力」、そのために「リーダーシップ」を発揮し て、県民や職員と「コミュニケーション」をとりならが、職員の自己実現も意識し「職員満足度向
上」に努め、「現状を打破する企画(ブレイクスルー思考)」をして、企画および実践のための情報 を集めることのできる「情報指向力」があり、その仕事を「プロジェクト・マネジメント」として
「危機管理」をしながら、「プロセス思考」で進めていくこととしました。
6.コンピテンシー・レベル
高知県のコンピテンシーは、変革型に特化して使っています。レベル0は「従来行動をしており、 変革の意識がない」。レベル1は「人が変革を言えばやれるという、変革受動行動」です。レベル2 は「変革を提案している」です。レベル3は「変革達成行動」で、課長職としての期待レベルです。 レベル4は「変革主導行動」で、これがあれば、副部長、部長コースが開けているということにな ります。レベル5は「革新創造行動」で、すぐに大企業の課長・部長を務めることができるレベル になっています。
7.評価結果
コンピテンシーの高い者は、どの項目も高い得点を獲得しています。低いものは、危機管理能力 がことのほか低く、なんにも心配していませんから、情報を取ろうとなどしません。また、新しい 概念であるプロセス思考やプロジェクト・マネジメントなどの得点が低くなっています。
それから、実践企画書の評価得点とコンピテンシーの総合得点の間には、一定の相関関係があり ます。
高知県では、変革型リーダーとして必要な能力要件を10項目定義しました。そして、手挙げ式 で応募を募り、6科目について1日1科目の割合で1週間の講義を行います。そして職場で3ヶ月 かけて行ってもらう事務改善の実践企画書を提出してもらいます。企画書は、講義がどれだけ理解 されているか、自分が3ヶ月のリソースを与えられて中で、顧客の価値が高まった状態として「成 功の情景」というゴールを定めてもらい、そのゴールに確実に到達するプロセスを設計してもらっ て実践に取り組んでもらうようにしています。
最後に外部評価者1人を含む4人の評価者の前で、実践内容を20分間プレゼンテーションして もらい、評価者と40分の質疑応答をして、評価者がコンピテンシー・レベルを確定し、一定のレ ベルに達している者は、係長や課長に登用・配置されます。
8.効果
これまで50歳で課長になっていたのが、10歳ほど若い課長が誕生しています。そして、この ことにより、これまでの加齢序列的な人事がなくなり、本当に変革を進めていけることのできるリ ーダーに率いられた組織として脱皮できることになると思っています。
9.おわりに
コンピテンシーの高い者が実践しますと、数々の感動的な話が生まれています。取り組んだメン バーが感激し、仲間の会を設けたり、県庁全体にその取り組みがひろがったり、これまで不信を持 っていた県民が、逆に県職員に対して信頼を寄せるようになったりしています。
逆にコンピテンシーの低い者が実践しますと、直属の部下からも協力してもらえないという現実 があります。この者には、これまでいかに職権で仕事をさせていたのかに気づいてもらい、できる だけ多くの者から協力の得られる仕事の仕方や、人との良い関係をこれから築いていただけたらい いのになあと祈っているところです。
今年で4年目、まだまだ、このシステムもヨチヨチ歩き状態ですが、受講生は受講してよかった と言ってくれていますし、やっと成果が出始めたところです。これからはメンター制をさらに充実 し、Eラーニングと補助教材の充実を通して、システムの高度化を図っていこうと考えています。
(2)自治体コールセンターの取り組み/札幌市 北川 憲司
これまで役所は役所の都合でサービスしていた。一方的にサービスを提供して、財政が悪化した ら役所の都合でサービスを削減する。これは、非常に市民からしたら迷惑な行政。
市役所が市民に体を向けなおす時期がきているという認識で、札幌市でのコールセンターの経験 をお話します。
コールセンターのサービスは簡単に言えば、電子申請の電話版とみればよい。
あなたのまちの人、あなたの役所の困っていることは何ですか?この簡単な問いで、問題解決の サイクルをまわすことが大事。CRMは経営方針そのものである。
最近、協働・パートナーシップ・住民自治などとよく言われています。その前提は、市民から信 用される市役所に関係を改善すること。パートナーになってほしいというのは、「結婚してください」 といっているようなもの。いままで話を聴かなかったのに突然信用してくれるわけがありません。 CRMは、市民の問題解決を共有していくための恋愛期間だと思っている。
自治体の経営状況のひとつに団塊世代の大量退職がある。札幌市においても、今後 10 年で三分 の一以上の6400人が退職してしまいます。その補充は全員分はできません。ベテランのナレッ ジの維持、少ない人員でいかに役所を回すか、が課題。
この例では、皆さんどっちがよいでしょうか?
市民から、コールセンターに問い合わせがありました。すぐに解決して400円のコストがかか りました。市民もすぐに解決して、満足度があがりました。
市民から、市役所に問い合わせの電話がありました。「それは、どこが担当課か調べますので、し ばらくお待ちください。あ。分かりました、○ ○ 課です。電話をかけなおしてください。・・・・。
○ ○課ですが、今日は担当者が不在です。また、後日改めて、電話します。」これで、市民は怒って しまいます。クレームが出ました。クレームを担当する課が、該当する課に経過の報告を求めます。 担当課が経過を文書にまとめて部長決裁をもらって、クレーム担当課に文書で回答して、それを市 民に回答します。
コストは 6000円、市民の満足度が下がりました。貴重な職員の労力をどこに注力すべきか?高 度な業務に特化した運営形態へとするでしょう。
お役所仕事の防止、電話中心のサービスで、障害者、高齢者にもサービス可能、ナレッジの共有 化ができる。
アウトソーシングにより、産業振興、雇用創出の相乗効果もある。安価で良質なプロのサービスを アウトソースできるようになった。
相談のマルチチャンネル化により、携帯のメールなどでも相談可能になった。また、税の初期督 促なども可能、多機能のコールセンターにしたい。総務省には、全国に呼びかけて3桁番号になれ ば最高である。もし導入を検討したければ、私が皆さんのコールセンターになるので、ぜひ声をか けてほしい。
(3) 自治体DNA運動の取り組み (一成果としての 1/ 2 委員会) /福岡市 秋吉 誠
【イントロ】
博多といえば「からし明太子」。明太子はスケトウダラの卵から作られる。スケトウダラを韓国語 で「メンタイ」と言い、その卵だから「明太子(めんたいこ)」。
今や自治体の間で、博多といえば明太子と並び称されるぐらい有名になった福岡市の「DNA運 動」。
いずれも発祥は、海の向こう。スケトウダラはオホーツク海・ベーリング海・アラスカ海が漁場 であり、DNA運動は、アメリカのデビッド・オズボーンさんが提唱された『行政革命』が発端で すから、太平洋を越えてきたわけです。
余談ながら2年前の2002年8月29日に福岡市がオズボーンさんを招聘して、DNA運動に ついてプレゼンテーションも行った。
【DNA運動】
P36から福岡市の「DNA運動」について書いています。
"DNA運動"とは、すべての職員が自らの仕事の価値と意味を認識し、課題を見つけ自ら解決に 取り組む運動。市役所の隅々まで活力の溢れる組織風土・やり甲斐のある職場づくりを目指してい ます。
基本的精神は「できる、納得、遊び心」。課などの単位で自主的、自律的な運動として取り組むも ので、画一的な結果を求めるものではなく、より良い方向に向かう取り組みのプロセスを重視しま す。
「DNA」という言葉は、職員によるベストブラクティスチームが考えついた。 D:「できる」から始めよう。できない、しない理由から探さない。
N:納得できる仕事をしよう。市民の納得を自分の納得に。
A:遊び心を忘れずに。ガチガチな考え方や対応でなく、ゆとり、人間らしさ、明るさを持って 取り組もう。
そして、ベストプラクティス(優れた取り組み)を認め、共感・共有し、広めることで、継続的 にレベルアップしていきます。
平成10年の福岡市長選挙において、現職3期連続当選の桑原敬一市長を破って、山崎広太郎氏 が当選。福岡市にとって、戦後初めての政変であった。
翌年8月。市長公約に基づき「サービス精神と経営感覚に立脚した新たな自治体経営」検討のた めに外部委員会『福岡市経営管理委員会』を設置した。
委員会のメンバーは、JR九州の会長だった石井 幸孝(よしたか)さんを始め7名で、後でコー ディネーターを務めていただく、関西学院大学の石原 俊彦先生も、そのお一人です。
私も助役から「お前の仕事の半分以上はこれに当たれ」と言われて事務局側として参加したが、 委員会はまさに初期の高速道路民営化委員会を彷彿とさせるような全然シナリオのないバトルだっ た。
一例を挙げると課長7名から構成されるプロポーザル委員会で、全職員からアンケートをとった 4000件の中から「青・黄・赤」に分類した。青:今すぐ実行可能、黄:検討が必要、赤:法律 等制度的に無理。8割は青であったが、皆が赤だと思い込んでいた。この"やろうと思えば出来る" という壁を越えることが一番難しい。
(1)DNA運動の全体像は、P37に示している9個の箱で表れており、これを全部やっていって、 最終的には右上の『コミュニティの自立経営』につながるように、やっていきましょうね、とい う話です。ところが残念ながら、本来はこれ全体が『DNA運動』であるのに、左下のDNA運
動だけがクローズアップされてDNA運動=事務改善運動として捉えられたため、段々段々尻す ぼみしていったというのが現状です。
(2)P39から42に「DNA計画実施の成果」について詳しく書いています。なぜこういう細々し たものまで載せたかという、「こういうこともやれるのか」ということを皆様に知っていただきた いと思ったからで、後でみていただければ、と思います。
(3)P38の(3)に「DNA運動の拡がり」のところで、"DNAどんたく"のことを書いています。
"どんたく"は元々"ゾンターク"というオランダ語に由来するもので、"お祭り・祝日"という意味で す。「DNA運動」を推進するため、各局におけるDNA運動の発表の場として、設けられている ものです。平成13年2月に第1回が開催され、以後DNAどんたくは幹部・上司・同僚が「活 動と努力を認めて、褒めて、励ます」会として定着し、毎年2月に開催され、現在までに4回実 施されています。
このような動きは、全国の十数カ所の自治体に飛び火して、後でパネリストをお願いしている尼 崎の白井市長さんの所では、"YAAるぞ運動"、名古屋市さんでは"名古屋カップ"などとして展開 され、本家本元よりも凄いんじゃないかなという気がしています。
【1/2委員会】
DNAの成果の筆頭に書いてある「1/2委員会」は、私が直接担当したものです。 (1)『1/2委員会』の成果
清掃工場の定期修理費用の前年度比50%削減を目標に、リエンジニアリングの手法で業務を見直 した結果、大幅なコスト節減を達成し、2002(平成14)年2月議会で310,000,000円を減額 補正した。平成13年度の第2回「DNAどんたく」において『ベストDNA賞』を受賞
(2)現場主義の徹底(パートナーシップ の強化)
顧客とは誰か? →いきなり市民では遠すぎる部署が多い。 工場整備課→清掃工場職員→市民〈後工程はお客様〉
清掃工場の皆様を通して初めて市民が見えてくるのではないか
情報格差の解消 →本庁が持っている情報を積極的に開示することを最優先 意識のバリアフリー →本庁がエライという意識の払拭
"ご用聞き"→現場の実状を知るため、こちらから出向いていって「どういう問題があるんです か?」「何が困ってるんですか?」「どうしたいんですか?」ということをかなり膝詰めで聴いてい きました。
(3)当時の状況
福岡市が処理している可燃ごみは、右肩上がりで増えていた。
※ 現在、全国のごみの伸びはほぼ横ばい、決して減ってはいない。この状況は、昭和50年代 の後半とよく似ている。景気の回復基調が見られれば、ごみは急増する恐れもある。 修繕料も、右肩上がりで増えていた。
特に平成6年度(1994)くらいから急激に増えていたが、財政課もごみ処理を優先させるため、バ ンバンお金をつけた。
私は、長年、廃棄物処理施設の建設・維持管理に携わってきていて、このまま予算が膨らむのは 非常にマズイと感じていた。
(4)発想の転換
定期点検修理というのは、年に1回やるんですが、今まではお金があるから、3億円予算があっ たらキッチリ3億円使っちゃう、ということをやっていたわけです。極端に言う、分解しなくても いいような機械までどんどん分解しちゃう。機械は分解すれば調子が良くなるかという、そんなこ とはない。かえって具合が悪くなる場合もある。ならば、そんな予算は使わないで、不要不急な機 械は壊れた時に替えればいいじゃないか、という風に考え方を変えたのです。
だから予算を半分にしよう、と考えたわけです。もちろん、いきなり言い出したわけじゃありま せん。そんなこと言ったら「バカだ」と言われるだけで、誰も相手をしてくれませんから、「まず考 え方を変えましょうよ」と言ったわけです。
(5)徹底した権限委譲
本庁が色々やるんじゃなくて、「現場の人が考えて下さいよ」、「あなた方が一番分かってるんでし ょう」だから、現場でどんどんやって下さい。今まで本庁で取り仕切っていた、予算要求→設計→ 工事発注→監査を原則として現場に任せるわけです。
この時、面白かったのは現場の上の方の人達は、すごく嫌がった。権限委譲なんか本音では、誰 だって嫌なんです。責任が伴うから、そんなことはしたくない、というわけです。
若手の職員は、やる気があるので、工場長からヒラの職員まで全員入れた中で、議論をした。そ うすると工場長も反対できないわけです。それで実行しちゃった。
(6)「1/2委員会」の実績
西部工場の焼却炉定期修理で、対前年度比35%マイナスを達成! 3工場全体で、対前年度比20%削減に成功。
予算総額15億7千万円に対して、3億6千万円の削減。 計数整理を行い、3億1千万円を予算の減額補正を行った。
(7)"バカの壁"
部長連中は、過激なパフォーマンスを恐れている。「DNAどんたく」で3億6千万円の削減とい うような具体的数字には、言及しないことと釘を刺された。→発表では、3億円の宝くじ程度とい う表現にした。
「1/2委員会」という名前が生意気だ、と言うわけです。「効率改善委員会」あたりの無難な名 前がいいんじゃないかという意見が強かったが、断固押し切りました。
減額補正することに対しても、強い抵抗感があった。
従来の発想では、市議会から見通しの甘さを指摘される恐れがあった。
共産党の議員さんから、「元々の予算査定が甘かったのではないか、以後注意するように」との発言 がありました。まぁ建前論ですから、「ご指摘の点を踏まえて、以後注意します」と答弁すれば、何 と言うことはない場面です。ところが、日頃から予算執行については厳しい質問をされるT議員が、
「ちょっと待って欲しい。職員が必死になって予算を削減したことは大いに褒めるべきではないか。 今のような発言では、二度と減額補正なんか上がらなくなってしまう」と発言されたのです。委員 会で議員さん同士が議論するというのは異例なことですが、その場の雰囲気は「もっともだな」と いう感じで我々のことを肯定していただきました。
【『1/2委員会』から見えてくるモノ】 (1)「1/2委員会」のその後
私が平成14年度に職員研修センターへ異動。
平成15年度より「1/2委員会」を「技術調整会議」に名称変更。こうなると大体、腰砕けと
いうのが分かりますね。
人事異動等により工場の技術力が低下し、メーカーの言いなりになって定期修理金額の削減が見 られない。
工場の自主性に任せていると、工場間のバラツキが出てきているので、平成16年度から工場整 備課が各工場の指導を強化する。
なぜ、後退してしまうかと、常に旗を振ってやかましく言う人間がいないと、皆「やらなくても、 いいかなぁ」と思ってしまう。
(2)DNA運動の現状(P44)
職員のアンケートでは、「もうDNA運動なんて止めてくれ!」という意見は根強い→改革疲れ 市議会議員さんからは、「全てが中途半端だ」という意見がある。→身近な例では、"見やすい名 札"の不徹底、"電話に出たら自分の名前を名乗ろう"という運動もなかなか進んでないじゃないか。
私は17年前から、こういう"見やすい名札を作る会"会長をやっている。会員はゼロだけど、賛 同する人は増えてきて、区役所や交通局など徐々に色々な職場に拡がっているが、まだまだ半数以 下しかつけていない。
デビッド・オズボーンさんに「1/2委員会」を説明した時も、「それだったら、ボーナス出たの? 昇任したの?」と聞かれた。そんなことないよ、と答えると、「そんなことで、どうして続くの?」 と非常に不思議な顔をされました。そういう意味で、 "やる気を持続させる仕組み"に乏しい。
(3)DNA運動の展望
今年度から市長は、DNA運動の最終目標である『コミュニティの自律経営』に取り組んでいま す。
福岡市は,本独特の制度として昭和28年から半世紀にわたって続けてきた非常勤特別職である 町世話人制度を,3月いっぱいで廃止しました。新たに,自治会や町内会,各種団体で構成する「自 治協議会」というものを作って、住民自治をどんどん高めていこうとしています。
結構混乱も起こってまして、上手くいくかどうか分かりません。市長も政治生命を賭けて、住民 がやるべきことは住民がやるんだ、市民と言ってもお客様ではなく主権者なんだから、「ダメなもの はダメだ」とハッキリ言え、と言っています。
市長自身の強い意向で、今年度から市長室に「DNA課」という文字通りDNA運動を推進する 組織を作りました。課長・係長・係員の3人しかいない組織ですが、本気でやっていくつもりです から、まだまだDNA運動は死んでいないわけです。
「隣の芝生が青い」とは誰もが思うことです。DNA運動は、福岡市役所職員よりも他都市の方 の方が、注目しています。他都市に行った時によく分かるのですが、「福岡市のDNA運動は凄いで すね」と言われます。内心では、全然凄くないじゃないかと思うのでする最近よく分かってきたの は、「どうも他都市も大したことしてないんじゃないか」というのが一つ。もっと大事なのは、私が なんでこんな所でしゃべってるかと言いますと、皆さん方から我々がエネルギーをいただく、"お互 いが励まし合う仕組み"が大事じゃないか、と思うからです。だから今度、皆様方の所へ福岡市職員 がお邪魔した時は、「福岡市は凄いことやってるんですね」と言って欲しい。「本当は違うだろう」 と思うのは心の中だけにしておいて下さい。言われた職員は、「福岡市は、そんな凄いことをやって るのか」と思って元気になるわけです。それを私は"元気のお裾分け"って言ってるんですが、そう いう形でお互いに高め合うことによって、少しでもこの日本という国が元気になることを願ってい ます。
4 パネルディスカッション「テーマ:自治体改革の戦略と新たな自治体職員像」
(敬称略・順不同)
・コーディネーター:石原 俊彦 関西学院大学産業研究所教授
・パネリスト:穂坂邦夫(埼玉県志木市長) 、森 貞述(愛知県高浜市長)
白井 文(兵庫県尼崎市長) 、後藤國利(大分県臼杵市長)
戸崎将宏(千葉県職員) 、藤井理香(長崎県国見町職員)
○ 石原:
前半は自治体改革の戦略、後段は新たな自治体職員像についてパネルを進めていく。
後教授の講演や3人の抱負を聴いてがんばらなければと思っていたが、4市長は既に盛り上が っているので、大丈夫だろう。
進め方は、まず自治体改革の方向性の新たな戦略について整理する、続いて、激しい環境変化、 いい意味で競争関係のある中で、自治体職員はどうするのか、前段の議論とも関連させながら進 めていきたい。
私は役所のシステム改革を重視する立場、後先生のように NPOや市民との協働を重視する立 場など戦略の相違があるなかで、自治体職員、NPO、トップ、外部など、今までの経験を共有し たい。ただ、住民がハッピーな自治体という到達点は一緒であるが、手法は違う。その意思決定 の壁に直面しているのが現場の実情であろう。
ここからこの後の自治体職員のミッション、方向性を探りたい。
まず 10 分ずつ4市長から取り組みの話を頂く。並び方は、単純に東から西という順番でお願 いしたい。
○ 穂坂:
もともと県庁職員、市町村職員、議員、市長として活躍している。いままでは適当にやればお 金が入ってきてやっていればよかった。
都市間競争が激化して、この5年間が正念場になるだろうと思っている。国家構造、行政構造 も転換を迫られる。 2006年からは人口減少、消費税1%で 2 兆円。 大改革が迫られる。 ぬるま湯もだいぶ冷えてきた。
4点だけ申し上げたい。
都道府県のあり方も曲がり角にきている。これから道州制の問題もある。広域機能を持つ都道 府県が何をすべきか?
補助金から税源へ。都道府県と市町村関係のあり方が課題になってくる。税源委譲は地方6団 体の要請もあったが、前途は困難だか進むことを願っている。いまは市町村の重要性が高まって いる。
国の職員は知識の切り売りをしているだけで、取り立ててキャリアだからといって優秀だとは 限らない。一方で、市町村の職員が一番難しいのは確か。一番大事だと思っている。
そして、地域力の結集が国力である。これはパキスタンのような軍事政権でも共通。
2つめは、自治体という非営利独占的なサービス供給主体の構造も転換が必要であるというこ と。そこで第二の市役所である市民委員会をつくった。住民も一緒に考える。
民間と違うのは、特殊意見や少数意見の尊重の姿勢が必要なところだが、システムを変えてい こうと思っている。
3つ目は、自治体に個性があってよいということだ。今までは護送船団方式、金太郎飴だった。 限られた財政では、あれもこれもできない。都市と農村、西と東、寒冷地とそうでないところい ろいろある。
地方自治に関する特殊な経歴だけは負けない。行ったりきたりで33年、贖罪の意味もかねて頑 張らないといけないと思う。
4つ目としては、そうは言っても首長は一人、役所を変えるのはある時期までは首長であるが、 トップダウンには限度がある。改革の原動力は職員、新しい職員、組織をどうかみんなで造って いてほしい。
○ 森:
まず全国各地からきていただいて歓迎申し上げる。
志木市長の話、いつも私が言っていることと同じことが言われているようだ。従来のようにあ れもこれもではなく、財政難のなか選択と集中が必要。
政策とは、実際の条例・予算を通して執行してその適否を首長が選挙で問われる、という姿勢 で取り組んでいる。
競争に勝ち抜くには、トップダウンで一定のところまで追及するとともに、職員の力をどう引 き上げるかが競争上重要、そうでなければ、住民が誇りを持つまち(裏返せば職員がやりがいを 持てるまち)を造りだすことはできない。
職員の力、住民の力、住民力があれば、行政の自治体の職員の力が総合力になって、大きなま ちづくりができるのではないかとおもう。究極的には、地域の力は住民力である。
協働の機会を数多く持つことが現実にできている。そして、ここにもカリスマ職員がいる。カ リスマ性をもったリーダーシップをもつプロフェッショナルが求められ、活躍するようになれば、 大きな力を持って来ると思う。
この今日の会場は難儀をしている再開発事業の一区画だが、商業施設ではなく将来を見据えて、 専門学校を誘致した。計画を変えること、あえて変化を恐れずに挑戦した結果だ。こうしたチャ レンジによる無限の可能性があるし、自信を持って取り組むべきだ。
今日はせっかくの機会なので、まちの歴史・伝統を知って頂いて、明日からそれぞれの地域で プロフェッショナル、カリスマ職員として羽ばたいて頂ければ、まちも発展することができるの ではないか?
○ 白井:
今日を楽しみにしていたが、他の有名な3市長に比べてまだ実績はないもので、プレッシャー を感じている。食事ものどを通らないと思いながらも一緒に来た職員よりも早く昼食を食べ終え た(笑)。
尼崎市は財政難で、財政再建が大命題である。
自分の就任時には、すでに行政内部にNPMの発想があった。個人的には「行政経営」という 言葉にひっかかる。効率一辺倒の経営に疑問はあるが、今は「尼崎市を経営してゆく」という視 点で取り組んでいる。実際にいろいろなシステムを導入しているが、なかなか苦戦中。悩み相談 も兼ねて、以下、個別にお話したい。
まず、「事務事業評価制度」は、平成13年12月に決算とは別に導入した。事務量が多い割に 活用されておらず、管理職のなかでも評価は分かれている。
「ネットモニター制度」は比較的うまくいっている制度である。サイレントマジョリティの市 民層(特に20代∼30代)からの応募を得た。オフ会も開催し、顔の見える関係になった。調 査項目の選定から市民にやらせてほしいとの申し出を受け、嬉しく思った。
「YAAるぞ運動(全庁的改革改善運動)は成功事例。初年度である昨年度は、113チーム、 計1915人の参加があった。強制ではなかったこと、事務局の盛り上げ上手、ノリが良い組織 文化などが成功の秘訣か。市としての自信に繋がる成功体験となった。
「施策評価委員会」は、石原先生が座長を務めてくださっている。評価委員会で最低評価(D)