2013. 5.6.
数ベクトル空間の間の線形写像の行列表現
加藤賢悟
以下,K = R or K = Cとし,f はKnからKmへの線形写像とする.こ のとき,m× n行列Aが存在して,
f(x) = Ax, x ∈ Kn
と表すことができるのであった.この行列Aのことをfの(表現)行列と呼ぶ のであった.ところで,教科書では「fの行列A」と記述しているが、あま りしっくりこなかったので,「fの表現行列A」と言ってしまったが(この記述 も教科書にある),下の問題と関連して混乱を招いたようである(反省).そこ で,以下では,
f を定める行列A
と呼ぶことにする.
いま,Kn, Kmに(標準基底とは異なるかもしれない)基底E = {u1, . . . , un}, E′= {u′1, . . . , u′m}を入れる1.ここで,
✓問題 ✏
線形写像f の基底E, E′に関する(表現)行列を求める
✒ ✑
という問題を考えてみよう.いくつかのステップに分ける.
ステップ1. そもそも何が問われているのか?—表現行列?Aじゃないの? 答え: 違います!
「 問 題 」で 問 わ れ て い る こ と を お さ ら い す る .ま ず,Kn か ら Kn へ の 基底Eに関する座標写像 は
ϕ: x1u1+ · · · + xnun7→
x1
... xn
, Kn→ Kn
1
そういえば,標準基底を講義では定義していなかったかもしれないが,要は基本ベクトル からなる基底のことである.
1
2
で定義されていた.このϕは単射であり(なぜか?),その逆写像は
ϕ−1:
x1
... xn
7→ x1u1+ · · · + xnun, Kn→ Kn
と書ける.一方,KmからKmへの基底E′に関する座標写像をψとする.す なわち,
ψ: y1u′1+ · · · + ymu′m7→
y1
... ym
, Km → Km
である.このとき,ψ◦ f ◦ ϕ−1はKnからKmへの線形写像となる. Kn ←−−−−
ϕ−1 K n
f
y
Km −−−−→ Kψ m ここで,
ψ◦ f ◦ ϕ−1を定める行列を求める
ことが,「問題」で問われていることである.
もう少し「問題」の意味を考えてみると,まずベクトル
x=
x1
... xn
に対して,ϕ−1(x)は
ϕ−1(x) = x1u1+ · · · + xnun
であり,(f ◦ ϕ−1)(x) = f (ϕ−1(x)) = f (x1u1+ · · · + xnun)はKmの元であ るから,Kmの基底E′を用いて,
(f ◦ ϕ−1)(x) = y1u′1+ · · · + ymu′m, (y1, . . . , ym∈ K)
と(一意に)書くことができる.さらに,このy1, . . . , ymに対して,
(ψ ◦ f ◦ ϕ−1)(x) = ψ(y1u′1+ · · · + ymu′m) =
y1
... ym
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であるのだから,結局ψ◦ f ◦ ϕ−1とは,ベクトル
x1
... xn
に対して,f(x1u1+
· · · + xnun)をKm の 基 底E′に よ り 展 開 し た と き の 係 数 か ら な る ベ ク ト ル
y1
... ym
を対応させる写像である.
ステップ2. うーん,なんだかよくわかんないけど,具体的には何をするの? 答え:数ベクトル空間の間の写像だとわざわざ標準基底とは異なる基底を とってきてそれに関する表現行列を求める,というのはしっくりこないかも しれませんね.でも,色々勉強していくうちに,こういった操作は自然に思 えてくるようになります.
では,具体的には何をするのか?まず,ψ◦ f ◦ ϕ−1を定める行列をBとす る(Bを求めたい!).すなわち,
(ψ ◦ f ◦ ϕ−1)(x) = Bx
である.Bの第j列をbjと書く,すなわち, B= (b1, . . . , bn)
と書く.Bはm× n行列だから,各bj はm次元数ベクトルである.ところ で,ejをn次元数ベクトルで,第j成分が1でそれ以外は0であるものとす ると,
Bej = bj
であって,一方,
ϕ−1(ej) = uj
であるから,
bj = (ψ ◦ f )(uj) = ψ(f (uj)) = ψ(Auj).
つまり,
bj = AujをKmの基底E′により展開したときの係数からなるベクトル
となることがわかる.具体的な問題は自分で練習しておくこと.