セミナー1: 食生活におけるオメガ3系脂肪酸の重要性
麻布大学 生命・環境科学部 教授 守口 徹
これまで栄養学領域において,食事中の栄養素は血液成分を変化させても,脳 の 働きには影響しないと考えられていた. ところが油脂(あぶら)の中の2 種類の必須脂肪酸(オメガ3系とオメガ6系脂肪酸)は,脳内の脂肪酸バラン スを変化させ,脳の働きを変えることがわかってきた. 食生活の欧米化は, 魚食離れを加速させ,オメガ3系脂肪酸の摂取不足に陥り,脳機能に基づいた 精神的な社会問題に関わっていると考えられている. オメガ3系脂肪酸の働 きは,対応するオメガ6系脂肪酸との バランスも重要と考えられているた め,我々が日常使用している油脂だけでなく, 食品に潜む油脂を詳しく知る ことが重要になる. 本講演では,脂質の基本を再確認し,オメガ3系脂肪酸 を効率よく摂取する方法も含め,その重要性を考えてみたい.
セミナー2: 脳機能におけるオメガ3系脂肪酸の役割
麻布大学 生命・環境科学部 特任准教授 原馬 明子
現代の食生活では,オメガ3系脂肪酸の摂取する機会が減少し続けており,そ の 結果,脳内のドコサヘキサエン酸(DHA)を減少させ,若者の感情のキレ やすさや 母親の育児放棄,中高年の自殺・うつなど,社会的に広がりを見せ ている“心の病(気分障害)”に関わっていることがわかってきた. これを 詳細に解析するため,食事性オメガ3系脂肪酸欠乏マウス(ω 3欠乏マウス) を用いて,周産期(妊娠期,授乳期)を含む胎仔期から老齢期までライフス テージに合わせた疾患,QOL に対するオメガ3系脂肪酸の有用性を検討してい る. また,脂肪酸の代謝酵素である Δ6 不飽和化酵素を欠損させたマウス
(D6D KO マウス)を利用して,エイコサペンタエン酸(EPA)やドコサヘキ サエン酸(DHA)など各オメガ3系脂肪酸とそれに対応したオメガ6系脂肪酸 の役割を明らかにしている. 本講演では,動物実験の結果を中心に概要を紹 介し,オメガ3系脂肪酸の役割について考えてみたい.