“スマホ”を支える情報理論

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“スマホ”を支える情報理論

大学院情報科学研究科 准教授

大鐘

おおがね

武雄

たけお

(工学部情報エレクトロニクス学科メディアネットワークコース)

専門分野 : 通信工学

研究のキーワード : 無線通信,情報理論,無線 LAN, 携帯電話,インターネット

HP アドレス : http://w-icl.ist.hokudai.ac.jp

スマホって,何を研究するのですか?

スマートフォン(スマホ)ユーザが爆発的に増えています。ガラケーと呼ばれる携帯電 話は、音声通話が主であり、インターネットアクセスは補助的なものでした。しかし、ス マホの出現でインターネットアクセスが欠かせないものとなり、今や、音声通話もSkype やLINEといったアプリにとって変わられそうです。実は、皆さんがアプリを使用したり

WEB を見たりする度に、多くのデータ(携帯ではパケット=1024ビットという単位で表

されています)がやり取りされます。世界の各通信事業者によれば、このデータ量の総数 が、2020年には2010年比で数10倍から最大で約1000倍にまで膨れ上がると試算されてい

ます。これは、通信事業者にとっては非常に頭の痛い問題なのです。研究者の端くれとし て、その一助を目指した研究を行なっています。

情報理論って何ですか?

アインシュタインは特殊相対性理論という素晴らしい理論を残しました。私はほとんど 理解していませんが、有名な式:Emc2というのは知っています。この単純な式が、宇

宙が無から生成できたことを端的に表しています。一方、通信の分野では、情報理論が基 礎となっています。これはシャノンと呼ばれる数学者が1948年に発表したものです。シャ ノンは通信路を経て受信された信号の電力Sと、雑音の電力Nの比(SN比: S/N)が与

えられると、以下の式で表されるデータ量を誤りなく伝送できることを明らかにしました。 CWlog2

1S/N

[ビット/秒]

ここで、Wは信号の帯域幅 [Hz] を表します。この美しい式こそが、通信の可能性と限界

を示しているのです。特に、携帯電話に代表される無線通信は、信号電力が通信距離の2 乗(あるいはそれ以上)に反比例して小さくなっていきます。したがって、光ファイバな

どの有線通信と異なり、SN比が低く、多くのデータを送ることができなかったのです。 無線通信におけるこの問題を解決したものが、MIMO伝送と呼ばれる技術です。具体的

には、送信側、受信側にそれぞれ複数のアンテナを設置し、同時に複数の信号を送受信す る技術を指します。この技術の特長は、シャノンの情報理論を拡張した理論を用いて、1995

年にテラターという数学者によって明らかにされました。MIMO技術を用いて誤りなく伝 送できるデータ量は次式で表されます。

CMIMO2Wlog2det

IHHH/N

[ビット/秒]

出身高校:北海道札幌北高校

最終学歴:北海道大学大学院工学研究科

電気・機械/情報

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ただし、detは行列式、Iは単位行列、Hは通信路の複

素振幅を表す行列、 H

は行列の複素共役転置を表します。 式がいきなり難しくなってしまいましたが、シャノンの式 と似た単純な式であることはわかるでしょう。説明は省き

ますが、この式は、SN 比が変わらなくても、送受信アン テナ数に比例して伝送可能なデータ量を増加できること示

しています。すなわち、伝送できるデータ量を増加させる には、アンテナ数を増やせばよいのです!

この技術は無線LAN規格IEEE802.11nで初めて使用され、2010年からはLTEと呼ば れる携帯電話の新規格でも実用化されています。このように世界中の多くでその恩恵にあ ずかっている技術が、実は情報理論という美しい理論に支えられているのです。

具体的にどのような研究をしているのですか?

私も、シャノンやテラターといった数学者たちと同じように、新しい理論を打ち立てた い!という夢を持っています。ただ、残念ながら、未だその夢は達成できていません。こ

のような理論の検討とは別に、工学の立場から、より具体的な技術の研究も行なっていま す。最初にデータ量の総数が2020年には1000倍になるかもしれないと書きました。しかし、

携帯電話や無線LANでアンテナ数を1000倍にするのは不可能です。そのために、他の技 術が必要になるのです。

例えば、MIMO技術は、受信アンテナ数が送信アンテナ

数と同等以上でないと、効果が発揮できません。そこで、 多数のアンテナを持つ携帯基地局に対して、少数のアンテ

ナを持つ携帯端末しかない場合、複数台同時に携帯基地局 と通信するマルチユーザMIMO技術があります。このと

き、各端末への送信信号が、互いに深刻な干渉とならない よう、また、十分なデータ量を確保できるように送信信号

を制御する技術について検討しています。また、20年後を 見据えて100素子以上のMIMO 伝送を可能とする受信信

号処理も新たに開発しました。他にも、通信事業者などとの共同研究など、将来の携帯電

話、無線LANをよりよくする技術に取り組んでいます。

研究の喜びは何ですか?

新しい理論・よい研究成果を生み出すことが目標ですが、何より研究に取り組んだ学生

の成長、また、学生の新しい考えからヒントを得て互いに高め合うことが、大学の研究者 としての大きな喜びです。卒業生が社会で活躍する姿を見るのは感動モノです!

参考書

(1) 大鐘武雄・小川恭孝著,『わかりやすいMIMOシステム技術』,オーム社(2009) MIMO の概念図(素子数4の例)

マルチユーザ MIMO

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参照

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