平成29年11月
犯罪収益移転危険度調査書
凡 例
法令の略称は、次のとおり用いる。
[略称] [法律名]
外為法 外国為替及び外国貿易法(昭和24年法律第228号)
国際テロリスト財産凍結法 国際連合安 全保障理事会 決議第千二百 六十七号等を踏まえ我
が 国 が 実 施 す る 国 際 テロ リ ス ト の 財 産 の 凍結 等 に 関 す る 特 別
措置法(平成26年法律第124号)
資金決済法 資金決済に関する法律(平成21年法律第59号)
銃刀法 銃砲刀剣類所持等取締法(昭和33年法律第6号)
出資法 出 資の 受 入 れ 、 預 り 金及 び 金 利 等 の 取 締 りに 関 す る 法 律 ( 昭
和29年法律第195号)
組織的犯罪処罰法 組 織的 な 犯 罪 の 処 罰 及び 犯 罪 収 益 の 規 制 等に 関 す る 法 律 ( 平
成11年法律第136号)
テ ロ資 金提 供処罰 法 公 衆等脅 迫目的 の犯 罪行 為のた めの 資金等 の提 供等の処罰 に
関する法律(平成14年法律第67号)
犯罪収益移転防止法 犯 罪 に よ る 収 益 の移 転 防 止 に 関す る 法律 (平 成 19年 法律 第 22
号)
施行令 犯 罪 に よ る 収 益 の移 転 防 止 に 関 す る 法律 施 行 令 (平 成 20年 政
令第20号)
規則 犯 罪 に よ る 収 益 の移 転 防 止 に 関 す る 法律 施 行 規 則( 平 成20 年
、 、 、 、 、 、
内閣府 総務省 法務省 財務省 厚生労働省 農林水産省
経済産業省、国土交通省令第1号)
風適法 風 俗 営 業 等 の 規 制及 び 業 務 の 適 正 化 等に 関 す る法 律 (昭 和 23
年法律第122号)
暴力団対策法 暴 力団 員 に よ る 不 当 な行 為 の 防 止 等 に 関 する 法 律 ( 平 成 3 年
法律第77号)
麻薬特例法 国 際的 な 協 力 の 下 に 規制 薬 物 に 係 る 不 正 行為 を 助 長 す る 行 為
等 の 防 止 を 図 る た め の麻 薬 及 び 向 精 神 薬 取締 法 等 の 特 例 等 に
関する法律(平成3年法律第94号)
労働者派遣法 労 働者 派 遣 事 業 の 適 正な 運 営 の 確 保 及 び 派遣 労 働 者 の 保 護 等
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥1
第1 危険度調査の目的
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1 背景 1
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2 目的 1
‥‥‥‥3
第2 危険度調査の方法及びマネー・ローンダリング事犯検挙事例の分析
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1 危険度調査の方法 3
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2 マネー・ローンダリング事犯検挙事例の分析 3
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(1) 主体 3
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(2) 手口 4
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥11
第3 商品・サービスの危険度
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1 危険性の認められる主な商品・サービス 11
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(1) 預金取扱金融機関が取り扱う商品・サービス 11
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(2) 保険会社等が取り扱う保険 19
‥‥‥‥‥‥‥‥
(3) 金融商品取引業者、商品先物取引業者等が取り扱う投資 21
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(4) 信託会社等が取り扱う信託 24
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(5) 貸金業者等が取り扱う金銭貸付け 26
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(6) 資金移動業者が取り扱う資金移動サービス 28
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(7) 仮想通貨交換業者が取り扱う仮想通貨 31
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(8) 両替業者が取り扱う外貨両替 33
‥‥‥‥‥‥‥
(9) ファイナンスリース事業者が取り扱うファイナンスリース 36
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(10) クレジットカード事業者が取り扱うクレジットカード 38
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(11) 宅地建物取引業者が取り扱う不動産 40
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(12) 宝石・貴金属等取扱事業者が取り扱う宝石・貴金属 42
‥‥‥‥‥‥‥‥
(13) 郵便物受取サービス業者が取り扱う郵便物受取サービス 45
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(14) 電話受付代行業者が取り扱う電話受付代行 47
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(15) 電話転送サービス事業者が取り扱う電話転送サービス 48
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(16) 法律・会計専門家が取り扱う法律・会計関係サービス 49
2 引き続き利用実態等を注視すべき新たな技術を活用した商品・サービス
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(電子マネー) 52
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥54
第4 危険度の高い取引
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1 取引形態と危険度 54
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(1) 非対面取引 54
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(2) 現金取引 56
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(3) 外国との取引 58
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2 国・地域と危険度 61
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
3 顧客の属性と危険度 63
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(1) 反社会的勢力(暴力団等) 63
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(2) 国際テロリスト(イスラム過激派等) 65
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(3) 非居住者 69
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(4) 外国の重要な公的地位を有する者 70
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(5) 実質的支配者が不透明な法人 72
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥76
第5 危険度の低い取引
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
1 危険度を低下させる要因 76
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
2 危険度の低い取引 77
‥‥‥‥‥‥‥
(1) 金銭信託における特定の取引(規則第4条第1項第1号) 77
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(2) 保険契約の締結等(規則第4条第1項第2号) 77
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
‥ (4) 有価証券市場(取引所)等において行われる取引(規則第4条第1項第4号) 78
‥
(5) 日本銀行において振替決済される国債取引等(規則第4条第1項第5号) 78
‥‥‥‥‥
(6) 金銭貸付け等における特定の取引(規則第4条第1項第6号) 78
‥‥‥‥‥‥
(7) 現金取引等における特定の取引(規則第4条第1項第7号) 78
(8) 社債、株式等の振替に関する法律に基づく特定の口座開設(規則第4条
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥
第1項第8号) 79
‥ (9) スイフト(SWIFT)を介して行われる取引(規則第4条第1項第9号) 79
‥ (10) ファイナンスリース契約における特定の取引(規則第4条第1項第10号) 79
‥ (11) 現金以外の支払方法による貴金属等の売買(規則第4条第1項第11号) 79
‥‥‥‥‥
(12) 電話受付代行における特定の取引(規則第4条第1項第12号) 79
‥‥‥‥‥‥‥‥‥
(13) 国等を顧客とする取引等(規則第4条第1項第13号) 79
1 マネー・ローンダリ ングとは、一般に、犯罪によって得 た収益を、その出所や真の所有者が分からないようにして、
*
捜 査 機 関に よ る 収益 の 発 見や 検 挙 を 逃れ よ う とす る 行 為で あ る 。 我が 国 で は、 組 織 的 犯罪 処 罰 法及 び 麻 薬特 例 法 に おいてマネー・ローンダリングが罪として規定されている。
2 の略。マネー・ローンダリング等への対策に関する国際協力を推進するため設置され
* Financial Action Task Force
ている政府間会合。
3 は 、マネ ー・ロ ーンダ リング等 への対策として、各国が法執 行、刑事司法及び金融規制の各分野 において講
* FATF
ずるべき措置を、「FATF勧告」として示している。
4 同 項 では 「 国 家 公安 委 員 会は 、 毎 年 、犯 罪 に よる 収 益 の移 転 に 係 る手 口 そ の他 の 犯 罪に よ る 収 益の 移 転の 状況 に
*
関 す る 調査 及 び 分析 を 行 った 上 で 、 特定 事 業 者そ の 他 の事 業 者 が 行う 取 引 の種 別 ご と に、 当 該 取引 に よ る犯 罪 に よ
る 収 益 の移 転 の 危険 性 の 程度 そ の 他 の当 該 調 査及 び 分 析の 結 果 を 記載 し た 犯罪 収 益 移 転危 険 度 調査 書 を 作成 し 、 こ
れを公表するものとする」と規定している。
5 マ ネ ー・ ロ ー ン ダリ ン グ とテ ロ 資 金 供与 に は 、① テ ロ 資金 は 必 ず しも 違 法 な手 段 で 得ら れ る と は限 ら な いこ と、
*
② マ ネ ー・ ロ ー ンダ リ ン グと 比 較 し てテ ロ 資 金供 与 に 関係 す る 取 引は 小 額 であ り 得 る こと 、 ③ マネ ー ・ ロー ン ダ リ
ン グ と テロ 資 金 供与 で は 送金 先 等 に 関し て 注 意を 要 す る国 ・ 地 域 等が 異 な る場 合 が あ るこ と 等 の相 違 点 があ り 、 本
調 査 書 では 、 当 該相 違 点 を踏 ま え た 危険 度 等 の記 載 を して い る と ころ で あ る。 ま た 、 テロ 資 金 供与 自 体 が犯 罪 と さ
れ 、 テ ロ資 金 そ のも の が 犯罪 に よ る 収益 と し てマ ネ ー ・ロ ー ン ダ リン グ の 対象 に も な り得 る こ とか ら 、 他の 犯 罪 に
よ る 収 益と 同 様 、テ ロ 資 金供 与 を 行 おう と す る者 は 、 その 移 動 に 際し て 様 々な 取 引 や 商品 ・ サ ービ ス を 悪用 す る こ
と に よ りそ の 発 見を 免 れ よう と す る もの と 考 えら れ る 。し た が っ て、 本 調 査書 に 記 載 する 取 引 や商 品 ・ サー ビ ス の
危険度には、テロ資金供与に利用される危険度も含まれる。
第1 危険度調査の目的 1 背景
技術の進歩や経済・金融サービスのグローバル化が進む現代社会において、マ
IT
ネー・ローンダリング(Money Laundering: 資金洗浄) 及びテロ資金供与(以下「マ *1
ネー・ローンダリング等」という。)に関する情勢は絶えず変化しており、その対策
、 。
を強力に推進していくためには 各国の協調によるグローバルな対応が求められる
金 融活 動 作業 部 会(FATF) は 、 平成 24年 ( 2012年) 2月に 改訂 した新 「40の 勧 *2
告」 に おい て、 各国に 対し 「自 国にお ける 資金 洗浄及 びテロ 資金 供与 のリスク を *3
、
特定、評価」すること等を要請している。
また 、25年( 2013年 )6 月のロ ック ・ア ーン・サミ ットにおいて は、所有・支 配
構造 が不透 明な 法人等 がマ ネー・ ロー ンダ リング や租 税回避 のた めに利 用さ れて い
る現 状を踏 まえ 、各国 が「 リスク 評価 を実 施し、 自国 の資金 洗浄 ・テロ 資金 供与 対
策を 取り巻 くリ スクに 見合 った措 置を 講じ る」こ と等 が盛り 込ま れたG 8行 動計 画
原則の合意がなされた。
我 が 国 で は 、 同 月、FATF の 新 「 40の 勧 告」 及 びG 8 行動 計画 原 則を 踏 まえ 、 警
察庁 を中心 に金 融庁等 の関 係省庁 を加 えた 作業チ ーム を設け て取 引にお ける 犯罪 に
よ る 収 益 の 移 転 の 危 険 性 の 程 度 ( 以 下 「 危 険 度 」 と い う 。 ) の 評 価 を 行 い 、 2 6 年
12月 、警 察庁が 「犯罪 に よる収 益の移 転の 危険 性の程 度に 関する 評価 書」を公表 し
た。
2 目的
本調 査書は 、平 成26年 12月 に公 表した 「犯罪 によ る収 益の移転の 危険性の程度 に
関する 評価書 」の 内容 も踏ま え、 26年 の犯 罪収 益移転 防止 法の改 正に より新設さ れ
た同法第3条第3項 の規定に基づき、事業者が行う取引の種別ごとに、危険度等を
*4
5
記載したものである。 *
また、FATF 勧告1が、各国に対し、「自国における資金洗浄及びテロ資金供与の
リス クを特 定及 び評価 する こと」 を要 請す るとと もに 、同勧 告の 解釈ノ ート にお い
て、事業者に対し、「自らが取り扱う商品・サービス等の資金洗浄及びテロ資金供与
のリ スクを 特定 、評価 する ための 適切 な手 段をと るこ と」と して 、事業 者自 らが リ
スクベ ース・ アプ ロー チを実 施す るこ とを要 請し ている こと も踏まえ、28年10月 1
日に は、特 定事 業者に 対し 、本調 査書 の内 容を勘 案し つつ、 疑わ しい取 引の 届出 に
1 特定事業者が取引時確認等を的確に行うための措置等の詳細については、9項参照。
*
- 2
-いて 定める こと などを 内容 とする 改正 犯罪 収益移 転防 止法、 施行 令及び 規則 が施 行
1
されたところである。 *
特 定事業 者に おいて は、 上記の 法令 改正 等を踏 まえ た適切 な取 組を実 施し 、取 り
扱う 取引が 犯罪 による 収益 の移転 に悪 用さ れるこ とを 効果的 に防 止する こと が求 め
1 こ れ らの ほ か 、 危険 度 を 高め る 要 因 とし て 、 事業 者 の 規模 が 挙 げ られ る 。 取引 量 や 取引 件 数 が 多い ほ ど、 その 中
*
に 紛 れ た犯 罪 に よる 収 益 を特 定 し 、 追跡 す る こと が 困 難と な る こ と等 か ら 、一 般 に 事 業者 の 規 模が 大 き くな る ほ ど
危 険 度 が上 昇 す ると い え る。 こ れ に 対し て 、 犯罪 収 益 移転 防 止 法 では 、 事 業者 に 取 引 時確 認 等 を的 確 に 行う た め の
措 置 を 義務 付 け 、使 用 人 に対 す る 教 育訓 練 の 実施 そ の 他の 必 要 な 体制 の 整 備に 努 め な けれ ば な らな い こ とと し 、 規
模に応じた体制整備を通じて、危険度の低下を図っている。
第2 危険度調査の方法及びマネー・ローンダリング事犯検挙事例の分析 1 危険度調査の方法
危険度の調査に当たっては、FATF の新「40の勧告」等を参照し、「商品・サービ ス」、「取引形 態」、「国・ 地域 」及 び「顧 客」の 観点か ら、危険度に 影響を与える 要
因 を特定し、当該要因ごとに
*1
○ 犯罪による収益の移転に悪用される固有の危険性
○ 危険度 を低 下させ るた めに取 られ てい る措置 (事 業者に 対す る法令 上の 義務 、
所 管 行政 庁 によ る事 業者 に対す る指 導・ 監督、 業界 団体又 は事 業者に よる 自主 的
な取組等)に関する状況
を分析した上で、
○ 疑わしい取引の届出状況
○ マネー・ローンダリング事犯の検挙事例(下記2参照)
を分析し、多角的・総合的に危険度の評価を行った。
調 査にお いて は、関 係省 庁が保 有す る統 計、事 例等 を利用 した ほか、 関係 省庁 を
通じ て業界 団体 や事業 者に 対し、 マネ ー・ ローン ダリ ング等 への 対策の 状況 や、 行
って いる取 引、 取り扱 って いる商 品・ サー ビスの 脆弱 性の認 識等 につい て調 査を 行
った 。また 、疑 わしい 取引 の届出 状況 及び マネー ・ロ ーンダ リン グ事犯 の検 挙事 例
、 ( ) 。
については 主に過去3年間 平成26年から28年まで を対象として分析を行った
2 マネー・ローンダリング事犯検挙事例の分析 (1) 主体
、 、 、
マネー・ローンダリングを行う主体は様々であるが 主なものとして 暴力団
来日外国人、特殊詐欺の犯行グループ等がある。
ア 暴力団
我 が国 に おい て は、 暴 力団 によ るマ ネー・ ロー ンダリ ング がとり わけ 大き な
脅威 とし て 存在 して いる 。平 成28年中 のマネ ー・ ローン ダリ ング事 犯の 検挙 事
、 ( 「 」
例のうち 暴力団構成員及び準構成員その他の周辺者 以下 暴力団構成員等
という。)によるものは76件で、全体の19.6%を占めている(図表1参照)。
暴 力団 は 、経 済 的利 得 を獲 得す るた めに職 業的 に反復 して 犯罪を 敢行 して お
り、巧妙にマネー・ローンダリングを行っている。
暴 力団 に よる マ ネー ・ ロー ンダ リン グは、 国際 的に敢 行さ れてい る状 況も う
かがわ れ、米 国は 、23年 (2011年) 7月、「国 際組 織犯罪対策戦 略」を公表す る
とと もに 大 統領 令 を制 定 し、 その 中で 、我が 国の 暴力団 を「 重大な 国際 犯罪 組
織」 の一 つ に指 定 し、 暴 力団 の資 産で あって 、米 国内に ある もの又 は米 国人 が
所有 ・管 理 する も のを 凍 結し 、米 国人 が暴力 団と 取引を 行う ことを 禁止 した 。
図表1【暴力団構成員等による組織的犯罪処罰法及び麻薬特例法に係るマネー・ ローンダリング事犯の検挙件数(平成26~28年)】
26 27 28
年
区分
300 389 388
マネー・ローンダリング事犯検挙事件
60 94 76
暴力団構成員等による事件
20.0% 24.2% 19.6%
1 特 殊 詐欺 と は 、 被害 者 に 電話 を か け るな ど し て対 面 す るこ と な く 信頼 さ せ 、指 定 し た預 貯 金 口 座へ の 振込 みそ の
*
他の方法に より、不特定多数の者から現金等を だまし取る犯罪(現金等を脅し取る 恐喝を含む。)の総称であり、振
り 込 め 詐欺 の ほ か、 金 融 商品 等 取 引 名目 、 ギ ャン ブ ル 必勝 法 情 報 提供 名 目 、異 性 と の 交際 あ っ せん 名 目 等の 詐 欺 が
ある。
- 4 -イ 来日外国人
平 成2 8年中 のマ ネー ・ロー ンダ リン グ事犯 の検 挙事例 のう ち、来 日外 国人 に
よるものは35件で、全体の9.0%を占めている(図表2参照)。
来 日外 国 人に よ るマ ネ ー・ ロー ンダ リング には 、日本 国内 で得た 犯罪 によ る
収益 を外 国 に送 金 して い たも のや 、外 国で得 られ た犯罪 によ る収益 を日 本国 内
に送 金さ せ てい た もの 等 、法 制度 や取 引シス テム の異な る他 国への 資金 移動 が
多く認められる。
図 表2【 来日 外国人 によ る組 織的犯 罪処罰 法及 び麻 薬特例法に 係るマネー・ ロ ーンダリング事犯の検挙事件数(平成26~28年)】
26 27 28
年
区分
300 389 388
マネー・ローンダリング事犯検挙事件
36 34 35
来日外国人による事件
12.0% 8.7% 9.0%
比率(%)
ウ 特殊詐欺の犯行グループ等
近 年、 我 が国 に おい て は、 電話 をか けるな どし て対面 する ことな く、 不特 定
多数の者から現金等をだまし取る特殊詐欺 が多発している。特殊詐欺の犯行グ
*1
ルー プは 、 首謀 者 を中 心 に、 だま し役 、詐取 金引 出役、 犯行 ツール 調達 役等 に
それ ぞれ 役 割分 担 した 上 で、 組織 的に 詐欺を 敢行 すると とも に、詐 取金 の振 込
先と して 架 空・ 他 人名 義 の口 座を 利用 するな どし 、マネ ー・ ローン ダリ ング を
敢行している(図表3参照)。
ま た、 自 己名 義 の口 座 や偽 造し た身 分証明 書を 悪用す るな どして 開設 した 架
空・ 他人 名 義の 口 座を 遊 興費 や生 活費 欲しさ から 安易に 譲り 渡す者 等が おり 、
マネー・ローンダリングの敢行をより一層容易にしている。
図表3【特殊詐欺の認知件数・被害総額(平成26~28年)】
26 27 28
年
区分
13,392 13,824 14,154
認知件数
56,550,685,877 48,197,981,078 40,765,652,881
被害総額(円) (実質的な被害総額)
注1:警察庁の資料による。
2:実質的な被 害総額とは、キャッシュカードを直接受け取る手口の特殊詐欺におけるATMからの引出(窃
取)額(実務統計 による集計値) を被害総額に加えた額である。
(2) 手口
ア 前提犯罪
1 平 成 26年か ら 28年 まで の 間 に おけ る 組 織的 犯 罪 処罰 法 及 び 麻薬 特 例 法に 係 る マネ ー・ ロー ン ダリ ング 事犯 の検 挙
*
事件数は1,077件であるが、前提犯罪別の 検挙事件数の合計は1,083件である(図表4参照)。これは、複数の前提犯
罪にまたがるマネー・ローンダリング事犯が存在するためである。
和34年法律第127号)、銀行法(昭和56年法律第59号)、著作権法(昭和45年法律第 48号)、銃刀法等の特別法犯が含まれる。
26年 から 28年まで の間 におけ るマ ネー ・ロー ンダ リング 事犯 の前提 犯罪 別の 検 挙 事 件 数 は 、 窃 盗 が 3 6 8 件 と 最 も 多 く 3 4 . 0 % を 占 め 、 次 い で 、 詐 欺 ( 2 8 4 件 、
*1
26.2%)、出資法・貸金業法(昭和58年法律第32号)違反(85件、7.8%)、風適法 違反(44件、4.1%)、常習賭博及び賭博場開帳等図利(37件、3.4%)となってい る(図表4参照)。
図表 4【組 織的 犯罪処 罰法 及び 麻薬特 例法に 係る マネ ー・ローン ダリング事犯 の 前提犯罪別の検挙事件数・割合(平成26~28年)】
前 窃 詐 出 風 常 売 わ 電 商 恐 銀 覚 著 入 そ 合
提 盗 欺 資 適 習 春 い 子 標 喝 行 せ 作 管 の 計
犯 法 法 賭 防 せ 計 法 法 い 権 法 他
罪 ・ 違 博 止 つ 算 違 違 剤 法 違
貸 反 及 法 物 機 反 反 取 違 反
金 び 違 頒 使 締 反
業 賭 反 布 用 法
法 博 等 詐 違
違 場 欺 反
反 開
帳
等
図
利
368 284 85 44 37 33 33 31 26 21 17 15 14 10 65 1083 件数
34.0% 26.2% 7.8% 4.1% 3.4% 3.0% 3.0% 2.9% 2.4% 1.9% 1.6% 1.4% 1.3% 0.9% 6.0% 100% 割合
34.0%
26.2% 7.8%
4.1% 3.4% 3.0% 3.0% 2.9%
2.4% 1.9% 1.6%
1.4% 1.3% 0.9% 6.0%
窃盗
詐欺
出資法・貸金業法違反
風適法違反
常習賭博及び賭博場開張等 図利
売春防止法違反
わいせつ物頒布等
電子計算機使用詐欺
商標法違反
恐喝
銀行法違反
覚せい剤取締法違反
著作権法違反
入管法違反
1 本 調 査書 で は 、 犯罪 に よ る収 益 等 の 隠匿 ・ 収 受の た め の手 段 と し て悪 用 さ れた 取 引 等の ほ か 、 犯罪 に よる 収益 の
*
形態を変えるために利用された取引等についても分析対象としている。
2 平成26年か ら28年までの間に おけるマネー・ローンダリング事犯 の検挙事件数は1,077件であるが、マネー・ロー
*
ン ダ リ ング に 悪 用さ れ た 取引 等 の 合 計は 1,136件 で ある ( 図 表5 参 照)。 これ は 、複 数の 取引 等 にま たが るマ ネー ・
ローンダリング事犯が存在するためである。
3 銀 行 等の 預 金 取 扱金 融 機 関は 、 為 替 取引 を 行 うこ と ( 顧客 か ら 、 隔地 者 間 で直 接 現 金を 輸 送 せ ずに 資 金を 移動 す
*
る 仕 組 みを 利 用 して 資 金 を移 動 す る こと を 内 容と す る 依頼 を 受 け て、 こ れ を引 き 受 け るこ と 等 )を 業 務 の一 つ と し
ている。こ こでは預金取扱金融機関を利用した 国内送金(預貯金の預入れ・払戻し や手形・小切手の利用は除く。)
を内国為替取引として計上した。
- 6
-イ マネー・ローンダリングに悪用された取引等
マ ネー・ ローン ダ リング 事犯の 検挙 事例 (平成 26年から 28年まで の3 年間 )
を分 析し 、 捜査 の 過程 に おい て判 明し た範囲 内で 、マネ ー・ ローン ダリ ング に
1 2
悪用された取引等 を集計した。
* *
内国為替取引 が455件、次いで現金取引が291件で、両者がマネー・ローンダ *3
リングに悪用された取引等の大半を占めている(図表5参照)。
検 挙さ れ たマ ネ ー・ ロ ーン ダリ ング 事犯、 さら には、 疑わ しい取 引と して 届
出が あっ た 取引 の 分析 の 結果 を踏 まえ ると、 我が 国にお いて は、犯 罪に よる 収
益の 移転 を 企図 す る者 が 、迅 速か つ確 実な資 金移 動が可 能な 内国為 替取 引を 通
じて 、架 空 ・他 人 名義 の 口座 に犯 罪に よる収 益を 振り込 ませ る事例 が多 く認 め
られる。そし て、最終的には、当該収益は ATM に おいて現金で出金され、そ
の後の資金の追跡が非常に困難になることが多い。
こ のよ う に、 我 が国 に おい ては 、内 国為替 取引 及び現 金取 引が犯 罪に よる 収
益の移転の多くに悪用されている。
図表5【マネー・ローンダリングに悪用された取引等(平成26~28年)】
悪 内 現 預 外 宝 郵 法 投 電 金 資 保 不 法 手 ク 貸 電 物 物 合
(
用 国 金 金 国 外 石 便 人 資 子 銭 金 険 動 律 形 レ 金 話 品 理 計
さ 為 取 取 と 国 ・ 物 格 マ 貸 移 産 ・ ・ ジ 庫 転 譲 的
れ 替 引 引 の 為 貴 受 ネ 付 動 会 小 ッ 送 受 隠
た 取 取 替 金 取 け サ 計 切 ト サ 匿
ー
ー ー
取 引 引 等 属 サ 専 手 カ
引 ビ 門 ビ
) ー ー
等 ビ ス 家 ド ス
ス
、
*1 勧告10(顧客管理)の解釈ノートは、マネー・ローンダリングやテロ資金供与の危険度を高める状況の例として
「 顧 客 が非 居 住 者 であ る」、「 法 人 又は 法 的 取極 の 形 を とる 個 人 的な 資 産 保有 形態 であ る」、「 取 引が 現金 中心 であ
る」、「会 社 の 支配 構 造 が 異常 又 は 過度 に 複 雑で あ る」、「 相 互 審査 、 詳 細な 評価 報告 書、 公表 さ れた フォ ロー アッ プ
報 告 書 等の 信 頼 の でき る 情 報源 に よ り 、適 切 な マネ ー ・ ロー ン ダ リ ング や テ ロ資 金 供 与対 策 が 取 られ て いな いと さ
れた国」、「非対面の業務関係又は取引」等を挙げている。
2 の 第3次 対日相互 審査で は 「写真が付いていない書類を本 人確認に用いる場合は、二次的な補 完措置をと
* FATF 、
る こ と」、「 法 人で あ る 顧 客の 実 質 的支 配 者 の確 認 に つ いて は 、 自然 人 ま で遡 る必 要が ある」、「 顧客 が外 国の 重要 な
公 的 地 位を 有 す る 者で あ る 場合 に は 、 通常 の 顧 客管 理 措 置に 加 え て 、一 定 の 措置 を 実 施す べ き」、「 非対 面取 引に お
ける身分確認及び照合に関する義務が十分でない」等の指摘を受けている。 【危険度調査の方法に関する補足】
FATF National Money Laundering and Terrorist Financing
危険度調査の方法は、 ガ イダンス「
( 2013)」を参照した。同ガイダンスは、世界共通の方法はないとし
Risk Assessment February
つつ、一般的な手順として以下のものを示している。
○ リ ス ク は 、脅 威 ( 国 家 、社 会 、 経 済 等 に 危害 を 加 え る おそ れ の あ る人 、 物又 は活 動)、 脆 弱 性 ( 脅 威 に よ っ て 利 用 さ れ た り 、 脅 威 を 促 進 し た り す る 事 柄 ) 及 び 影 響 ( マ ネ ー ・ ロ ー ン ダ リ ン グ や テ ロ 資 金 供 与 が も た ら し 得 る 衝 撃 や 危 害 ) の 3 要 素 の 作 用 と 考 え ら れ る 。 た だ し 、 影 響 を 判 定 す る こ と の 難 し さ に 鑑 み 、 脅 威 及 び 脆 弱 性 の 理 解 に 主 に 焦 点 を 合わせてもよい。
○ 把握している脅威や脆弱性をもとに、分析対象とするリスクを暫定的に特定する。当初
特定されなかったものが後に特定されることもあり得る(特定プロセス)。
、 、 ( )。
○ 特定したリスクについて その性質 具体化する見込み等を検討する 分析プロセス
○ リスクへの取組の優先度を判定する(判定プロセス)。
本危険度調査では、FATF の新「40の勧告」、その解釈ノート 、犯罪収益移転防止法上の
*1
措 置 、FATF の 第 3 次 対 日 相 互 審 査 で 指 摘 さ れ た 事 項 、 マ ネー ・ ロ ー ン ダリ ン グ 事 犯 の 検
*2
挙事例等を参考にして、把握している
○ 脅威(暴力団等の犯行主体及び窃盗等の前提犯罪)
○ 脆弱性(非対面取引、預貯金口座等)
を俎上に載せ、それらの
そ
○ 影響(移転され得る犯罪収益の大きさ等)
1 外国所在為替取引業者との間で、為替取引を継続的に又は反復して行うことを内容とする契約。
*
- 8
-【マネー・ローンダリング等の危険度を踏まえた法令改正】
本調査書では、FATF の 新「40の勧告」、FATF の第3次対日相互審査での指摘、把握さ
れているマネー・ローンダリング事犯の手口等を踏まえ、「商品・サービス」、「取引形態」、
「国・地域」及び「顧客」の観点から、マネー・ローンダリング等の危険度に影響を与える 要因を特定している。
当該要因等を踏まえ、我が国では、危険度を低下させるための措置として、犯罪収益移転 防止法、施行令及び規則の改正を行い、事業者に対する法令上の義務を厳格化している。
最近の主な犯罪収益移転防止法等の改正事項は次のとおりである。
○ 28年10月1日に施行された犯罪収益移転防止法等の改正事項
・疑わしい取引の届出に関する判断の方法の明確化
、 ( 。)
疑わしい取引の届出を行うかどうかの判断について 特定事業者 司法書士等を除く
は、取引時確認の結果、当該取引の態様その他の事情に加え、本調査書の内容を勘案し、 か つ 、 規 則 で 定 め る 方 法 ( 通 常 行 う 特 定 業 務 に 係 る 取 引 の 態 様 と の 比 較 等 ) に よ り 行 わ なければならないこととした。
・コルレス契約 締結の際の確認義務
*1
業 と し て 為 替 取 引 を 行 う 特 定 事 業 者 は 、 外 国 所 在 為 替 取 引 業 者 と の 間 で コ ル レ ス 契 約 を 締 結 す る に 際 し て は 、 当 該 外 国 所 在 為 替 取 引 業 者 が 取 引 時 確 認 等 に 相 当 す る 措 置 を 的 確に行うために必要な体制を整備していること等を確認しなければならないこととした。 ・外国政府等において重要な公的地位を有する者との取引の際の厳格な取引時確認の実施 外 国 政 府 等 に お い て 重 要 な 公 的 地 位 を 有 す る 者 と の 特 定 取 引 を 厳 格 な 取 引 時 確 認 の 対 象に追加することとした。
・実質的支配者の確認義務
法 人 の 実 質 的 支 配 者 に つ い て 、 議 決 権 そ の 他 の 手 段 に よ り 当 該 法 人 を 支 配 す る 自 然 人 まで遡って確認すべきこととした。
・顔写真のない本人確認書類に係る本人確認方法
健 康 保 険 証 や 年 金 手 帳 等 の 顔 写 真 の な い 本 人 確 認 書 類 が 用 い ら れ る 場 合 、 当 該 書 類 の 提 示 に 加 え 、 顧 客 等 の 住 居 に 宛 て て 取 引 関 係 書 類 を 転 送 不 要 郵 便 等 と し て 送 付 さ せ る な どの追加的措置を講ずることとした。
・敷居値以下に分割された取引に対する取引時確認の実施
敷 居 値 以 下 の 取 引 で あ っ て も 、 1 回 当 た り の 取 引 の 金 額 を 減 少 さ せ る た め に 一 の 取 引 を 分 割 し た も の で あ る こ と が 一 見 し て 明 ら か な も の で あ る と き は 、 一 の 取 引 と み な す こ ととした。
○ 29年4月1日に施行された犯罪収益移転防止法の改正事項
【特定事業者に課された法令上の義務と特定事業者の違反内容】
犯 罪 収 益 移 転 防 止 法 、 施 行 令 及 び 規 則 は 、 特 定 事 業 者に 対 し 、 特 定 取引 を 行 う に 際し て 、 取 引 時 確 認 及 び 確 認 記 録 等 の 作 成 ・ 保 存 を 義 務 付 け て いる ほ か 、 当 該 取引 に お い て 収受 し た 財 産 が 犯 罪 に よ る 収 益 で あ る 疑 い 又 は 顧 客 等 が 犯 罪 収 益等 隠 匿 罪 等 に 当た る 行 為 を 行っ て い る 疑 い が あ る と 認 め ら れ る 場 合 に お け る 疑 わ し い 取 引 の届 出 を 義 務 付 けて い る 。 ま た、 同 法 は 、 そ の 施 行 に 必 要 な 限 度 に お い て 、 所 管 行 政 庁 が 特 定事 業 者 に 対 し て報 告 又 は 資 料の 提 出 の 要 求 、 立 入 検 査 、 指 導 、 是 正 命 令 等 を 行 う こ と が で きる こ と 並 び に 国家 公 安 委 員 会が 所 管 行 政 庁 に 対 し て 意 見 陳 述 及 び そ の た め に 必 要 な 調 査 を 行う こ と が で き るこ と を 規 定 し、 是 正 命令違反等に対しては罰則規定を置いている。
平 成 26 年 か ら 2 8 年 ま での 間 に お け る 同法 に 基 づ く 是 正命 令 の 実 施 件数 は 8 件 ( 下 記図 表 参 照)で、違反内容は取引時確認及び確認記録等の作成・保存に関するものが主であった。
当該違反に対しては、所管行政庁から特定事業者に対し、
○ 社内教育等を通じた犯罪収益移転防止法の規定内容の再確認
○ 犯罪収益移転防止法に関する事務を円滑に進めるためのマニュアル等の整備
○ 再発防止策の策定及び業務の見直し
○ 過去に契約を締結した顧客に関する取引時確認及び確認記録の作成・保存の実施
等の是正措置を定められた期間内で講ずるよう命令を行っている。
ま た 、 2 8年 中 に 国 家 公 安 委 員 会 が 行 った 特 定 事 業 者 に対 す る 報 告 徴 収に よ り 判 明 した 具 体 的な違反内容として
○ 顧客の取引目的や職業等の確認を怠った
○ 法人の顧客の実質的支配者等の確認を怠った
○ 非対面取引において取引関係文書を書留郵便等で送付していない
○ 確認記録を作成又は保存していない
こと等が認められた。
26 27 28
年
区分
10 11 9
国家委員会による報告徴収
5 2 0
都道府県警察に対する調査指示
11 10 8
所管行政庁に対する意見陳述
3 5 0
意見陳述に基づく是正命令
【事業者によるリスク管理(リスクベース・アプローチに基づく内部体制の整備)】
上 記 の 違 反 に お い て は 、 取 引 時 確 認 等 を 的 確 に 履 行 する た め の 内 部 管理 規 定 が 整 備さ れ て い な い も の 、 取 引 時 確 認 等 を 行 う 担 当 者 等 が 法 令 を 理 解し て い な い も の等 、 特 定 事 業者 に お
。 、
ける取引時確認等を的確に行うための体制に改善を要するものが認められた これを踏まえ
28 年 1 0 月 1 日 に 施 行 さ れた 改 正 犯 罪 収 益移 転 防 止 法 、 施行 令 及 び 施 行規 則 に お い て 、特 定 事 業者は、取引時確認等を的確に行うため、
○ 使用人に対する教育訓練の実施
○ 取引時確認等の措置の実施に関する規程の作成
○ 取 引 時 確 認 等 の 措 置 の 的 確 な 実 施 の た め に 必 要 な 監査 そ の 他 の 業 務を 統 括 管 理 する 者 の 選任
○ その他本調査書の内容を勘案して講ずべきものとして規則で定める措置
を講ずるよう努めなければならないこととされ、また、規則で定める措置として、
○ 特定事業者自らによるリスク評価の実施(特定事業者作成書面等の作成等)
○ 取引時確認等の措置を行うに際して必要な情報の収集、整理及び分析
○ 保存している確認記録・取引記録等の継続的精査
○ リスクの高い取引を行う際の統括管理者の承認取得
- 1 0
-○ 取引時確認等の措置の適格な実施のために必要な監査の実施
等が定められた。
特定事業者によるリスク評価の実施状況を調査した結果、好事例として、
○ 自 然 人 の 職 業 に 関 し 、 現 金 の 取 扱 い が 多 い 業 種 か 否か を リ ス ク 評 価の 指 標 の 1 つと し て いる事例(顧客の属性に関する評価)
○ 外 国 の 公 的 機 関 や 民 間 団 体 が 公 表 し た 資 料 等 に つ いて 、 幅 広 い 情 報収 集 を 行 っ てい る 事 例(国・地域に関する評価)
○ リ ス ク が 高 い と 評 価 し た 顧 客 や 国 ・ 地 域 に 対 す る 取引 と そ の 他 の 取引 を 区 分 し 、前 者 に 、 関する疑わしい取引等の届出の判断基準額を後者に関するものより引き下げることにより リスクの低減を図っている事例(顧客の属性、国・地域に関する評価)
○ リ ス ク が 高 い と 評 価 し た 商 品 ・ サ ー ビ ス に つ い て 、使 用 状 況 を モ ニタ リ ン グ す ると と も に、新規顧客との取引を中止した事例(商品・サービスに関する評価)
等が認められた。
1 本 調 査書 で は 事 業者 ご と にそ の 取 り 扱う 商 品 ・サ ー ビ スを 記 載 し てい る が 、事 業 者 が取 り 扱 う 商品 ・ サー ビス の
*
範 囲 は 一様 で は な い。 事 業 者は 、 取 り 扱う 商 品 ・サ ー ビ スに 応 じ て 、本 調 査 書に お け る関 連 す る 記載 を 勘案 する こ
とが求められる。
。
*2 犯罪収益移転防止法第2条第2項第1号から第16号まで及び第36号に掲げられた者(銀行、信用金庫等)をいう
3 全国銀行協会「28・中間期全国銀行中間財務諸表分析 (対象は116行のみ)を参照。
* 」
4 銀行法第10条第1項各号に定める業務をいう。
*
5 金 融 庁は 、 監 督 対象 で あ る金 融 機 関 等の 監 督 に関 す る 事務 に つ い て、 監 督 の考 え 方 、監 督 上 の 着眼 点 と 留意 点、
*
具体的監督手法等を示した監督指針等を策定している。
第3 商品・サービスの危険度
1
1 危険性の認められる主な商品・サービス
*
(1) 預金取扱金融機関 が取り扱う商品・サービス
*2
ア 預金取扱金融機関の概要
銀 行等 の 預金 取 扱金 融 機関 は、 銀行 法等に 基づ く内閣 総理 大臣の 免許 等を 受
ける 必要 があ ると ころ 、平 成2 9年3 月末 現在 、当 該免許 等を受 けている ものは
、 、 ( 。 )、
1,394機関存在しており 主なものとして 銀行 140行 外国銀行支店を除く
協同組 織金融 機関 (信 用金庫 (264金庫)、 信用協 同組合( 151組合)、労働金 庫
(13金庫)、農業協同組合及び漁業協同組合(758組合)、農業協同組合連合会及
び漁業 協同組 合連 合会 (61連合 会)) がある 。そ のう ち銀行 の預 金残高 は、28 *3
年9月末現在で737兆9,616億円となっている。
預金取扱金融機関は、その固有業務 である預金等の受入れ、資金の貸付け、
*4
手形 の割 引 及び 為 替取 引 (内 国為 替・ 外国為 替) のほか 、こ れに付 随す る業 務
とし て、 例 えば 、 資産 運 用に 係る 相談 、保険 商品 の販売 、ク レジッ トカ ード 業
務、 事業 継 承に 係 る提 案 、海 外展 開支 援、ビ ジネ スマッ チン グ等幅 広い 業務 を
取り扱っている。
こ のほ か 、信 託 業務 を 兼営 する 銀行 におい ては 、上記 の銀 行業務 (付 随業 務
を含む。)に加え、信託業務として、金銭、有価証券、金銭債権、動産、不動産
等の 信託 の 引受 に 係る 業 務を 、信 託併 営業務 とし て、不 動産 関連業 務( 売買 仲
介、 鑑定 等)、証 券代行 業務 (株 主名簿 管理 等)、 相続関 連業 務(遺 言執 行、 遺
産整理等)等の業務を取り扱っている。
我 が国 の 預金 取 扱金 融 機関 の規 模や 活動範 囲は 千差万 別で あり、 監督 官庁 で
ある 金融 庁 等に お いて は 、預 金取 扱金 融機関 を主 要行等 (メ ガバン ク等 )と 中
小・ 地域 金 融機 関 (地 方 銀行 、第 二地 方銀行 及び 協同組 織金 融機関 )に 区分 し
て監 督を 行 って い る。 3 メガ バン クグ ループ はい ずれも 、日 本全国 に支 店を 有
Global Systemically Important
す る と と も に 、 シ ス テ ム 上 重 要 な 金 融 機 関 (
: ) に選定され、国際展 開も推し進めている。地方
Financial Institutions G-SIFIs
銀行 及び 第 二地 方 銀行 は 、そ れぞ れ一 定の地 域を 営業の 中心 として いる が、 一
部に は多 地 域展 開 を図 っ てい るも のも 存在す る。 協同組 織金 融機関 は、 特定 の
地区内においてのみ営業活動を行っている。
危険 度 の低 下に 資す る措置 とし て、 犯罪収 益移 転防止 法は 、後述 のと おり 、
預金 取扱 金 融機 関 に対 し 、特 定の 商品 ・サー ビス の提供 に際 して取 引時 確認 等
の義務を課している。
ま た、 同 法に 基 づく 監 督上 の措 置に 加えて 、例 えば、 銀行 法にお いて は、 必
要に 応じ 行 政機 関 が銀 行 に対 して 報告 徴収、 立入 検査、 業務 改善命 令等 を行 う
5
ことができることが規定されている。さらに、金融庁が策定している監督指針 *
1 具 体 的に は 、 取 引時 確 認 を的 確 に 実 施す る た めの 体 制 、疑 わ し い 取引 の 届 出を 的 確 に実 施 す る ため の 体制 、取 引
*
時 確 認 と疑 わ し い取 引 の 届出 を 一 体 的・ 一 元 的に 管 理 する た め の 体制 、 海 外営 業 拠 点 のマ ネ ー ・ロ ー ン ダリ ン グ 等
対策を的確に実施するための体制等の内部管理体制の構築を求めている。
2 所 管 行政 庁 は 、 疑わ し い 取引 に 該 当 する 可 能 性の あ る 取引 と し て 特に 注 意 を払 う べ きも の の 類 型を 例 示し た「 疑
*
わ し い 取引 の 参 考事 例 」 を特 定 事 業 者に 対 し て示 し て いる 。 そ し て、 特 定 事業 者 が 疑 わし い 取 引の 届 出 を行 う 際 に
は、当該参考事例のうち主にいずれに該当するかを記載することとなっている。
- 1 2
-1
管理体制の構築に係る留意点が示されている。 *
各 業界 団 体も 、 事例 集 や各 種参 考例 の提示 、資 産凍結 等の 措置の 対象 者に 関
する デー タ ベー ス の提 供 、研 修の 実施 等によ り、 各事業 者に よるマ ネー ・ロ ー
FATF
ンダリング等対策を支援している。また、一般社団法人全国銀行協会は、
のマ ネー ・ ロー ン ダリ ン グ等 対策 の検 討状況 を常 時フォ ロー し、海 外の 銀行 協
会 等 と の 情 報 交換 ・ 共 有 を 継 続 的 に行 う と と も に 、FATF の 対 日 相 互 審 査 へ の 対応 を行 う など 、 国内 外 のマ ネー ・ロ ーンダ リン グ等に つい て組織 的な 対策 を
進め てい る 。各 事 業者 に おい ても 、マ ネー・ ロー ンダリ ング 等対策 の実 施に 当
たり 、対 応 部署 の 設置 や 規程 ・マ ニュ アルの 整備 、定期 的な 研修の 実施 等を 行
って いる ほ か、 内 部監 査 の実 施、 危険 度が高 いと 考えら れる 取引の 洗い 出し 、
危険 度が 高 い取 引 のモ ニ タリ ング の厳 格化等 に取 り組む など 、内部 管理 体制 の
確立・強化を図っている。
イ 疑わしい取引の届出
平 成26年か ら28年ま での間 の預 金取 扱金融 機関 による 疑わ しい取 引の 届出 件
数は108万6,105件で、全届出件数の92.2%を占めている。
「疑わしい取引の参考事例」 に例示された類型のうち届出件数が多かったも
*2
のと類型ごとの届出件数等は、以下のとおりである。
○ 職員 の 知識 、 経験 等 から 見て 、不 自然な 態様 の取引 又は 不自然 な態 度、 動
向等が認められる顧客に係る取引(19万8,171件、18.2%)
○ 暴力団員、暴力団関係者等に係る取引(16万71件、14.7%)
○ 多数 の 者か ら 頻繁 に 送金 を受 ける 口座に 係る 取引。 特に 、送金 を受 けた 直
後に当該口座から多額の送金又は出金を行う場合(10万7,797件、9.9%)
○ 多額 の 現金 又 は小 切 手に より 、入 出金( 有価 証券の 売買 、送金 及び 両替 を
含む。以下同じ。)を行う取引。特に、顧客の収入、資産等に見合わない高額
な 取 引及 び 送金 や 自己 宛 小切 手 によ るの が 相当 にもか かわ らず、 あえ て現 金
による入出金を行う取引(6万6,943件、6.2%)
○ 経 済的合 理性 のな い多額 の送 金を他 国か ら受 ける取 引(6 万4,181件、5.9
%)
○ 多額の入出金が頻繁に行われる口座に係る取引(5万5,969件、5.2%)
○ 経済的合理性のない目的のために他国へ多額の送金を行う取引(4万5,353
件、4.2%)
○ 通常 は 資金 の 動き が ない にも かか わらず 、突 如多額 の入 出金が 行わ れる 口
座に係る取引(4万1,930件、3.9%)
○ 架空 名 義口 座 又は 借 名口 座で ある との疑 いが 生じた 口座 を使用 した 入出 金
(3万8,469件、3.5%)
○ 多数 の 者に 頻 繁に 送 金を 行う 口座 に係る 取引 。特に 、送 金を行 う直 前に 多
額の入金が行われる場合(2万3,570件、2.2%)
○ 口座 開 設時 に 確認 し た取 引を 行う 目的、 職業 又は事 業の 内容等 に照 らし 、
不自然な態様・頻度で行われる取引(2万1,892件、2.0%)
a 現状
預 貯金 口 座は 、 預金 取 扱金 融機 関 への 信 頼 や預 金保 険 制度に 基づ く預 金
者保 護制 度 の充 実 等に よ り、 手持 ち 資金 を 安 全か つ確 実 に管理 する ため の
。 、 、 、
手段として広く一般に普及している また 昨今は 店頭に赴くことなく
イン ター ネ ット を 通じ て 、口 座を 開 設し た り 、取 引を し たりす るこ とが 可
能となっており、その利便性はますます高まっている。
一 方で 、 この よ うな 特 性に より 、 預貯 金 口 座は 、犯 罪 による 収益 の移 転
を企 図す る 者に と って は 、犯 罪に よ る収 益 の 収受 や隠 匿 の有効 な手 段と し
て悪用され得る。
犯 罪収 益 移転 防 止法 は 、預 金取 扱 金融 機 関 に対 して 、 顧客等 との 預貯 金
契約 (預 金 又は 貯 金の 受 入れ を内 容 とす る 契 約) の締 結 に際し ての 取引 時
確認 の義 務 及び 確 認記 録 ・取 引記 録 等の 作 成 ・保 存義 務 を課し てい る。 ま
た、 取引 時 確認 の 結果 、 当該 取引 の 態様 そ の 他の 事情 に 加え、 本調 査書 の
内容 を勘 案 し、 か つ、 通 常行 う特 定 業務 に 係 る取 引の 態 様との 比較 等を 行
って 、当 該 取引 に おい て 収受 した 財 産が 犯 罪 によ る収 益 である 疑い 又は 顧
客等 が犯 罪 収益 等 隠匿 罪 等に 当た る 行為 を 行 って いる 疑 いがあ ると 認め ら
れる場合における疑わしい取引の届出義務を課している。
ま た、 犯 罪利 用 預金 口 座等 に係 る 資金 に よ る被 害回 復 分配金 の支 払等 に
関する法律(平成19年法律第133号)は、預金取扱金融機関に対して、預金
口座 等に つ いて 、 捜査 機 関等 から 当 該預 金 口 座等 の不 正 な利用 に関 する 情
報の 提供 が ある こ とそ の 他の 事情 を 勘案 し て 、特 殊詐 欺 等の一 定の 犯罪 に
利用 され て いる 預 金口 座 等で ある 疑 いが あ る と認 める 場 合に、 当該 預金 口
座等に係る取引の停止等の措置を適切に講ずることを義務付けている。
b 関連犯罪の検挙状況
売 買等 に より 不 正に 入 手さ れた 架 空・ 他 人 名義 の口 座 は、特 殊詐 欺や ヤ
、 、 、
ミ金融等において 犯罪による収益の受け皿として悪用され これにより
収益の移転が行われている。
警 察で は 、預 貯 金通 帳 ・キ ャッ シ ュカ ー ド 等の 不正 譲 渡等関 する 犯罪 収
益移転防止法違反事件の捜査を強化している(図表6参照)。
ま た、 他 人に 譲 渡す る 目的 を秘 し て、 郵 便 物受 取サ ー ビス業 者の 所在 地
を口 座開 設 時の 住 居と 偽 るな どし て 、預 金 取 扱金 融機 関 から預 貯金 通帳 等
をだ まし 取 る詐 欺 (口 座 詐欺 )や だ まし 取 っ た預 貯金 通 帳等で ある こと を
知り なが ら 譲り 受 ける 盗 品等 譲受 け の積 極 的 な検 挙も 行 ってい る( 図表 7
参照)。
図表6【犯罪収益移転防止法違反の検挙事件数(平成26~28年)】
年 26 27 28
区分
預貯金通帳等の譲渡等(業) 19 25 29
預 貯 金 通 帳 等 の 譲 渡 等 1,584 1,559 1,902
預 貯 金 通 帳 等 の 譲 渡 等 の 勧 誘 ・ 誘 引 14 16 42
為 替 取 引 カ ー ド 等 の 譲 渡 等 33 19 2
そ の 他 1 0 4
合 計 1,666 1,619 1,979
- 1 4
-図表7【口座詐欺等の検挙事件数(平成26~28年)】
年 26 27 28
区分
1,587
口 座 詐 欺 1,928 1,741
4
盗 品 譲 受 け 7 12
1,591
合 計 1,935 1,753
。 注 :都道府県警察から警 察庁に特殊詐欺を助長 する犯罪として報告 があったものを計上した
c 事例
預貯金口座がマネー・ローンダリングに悪用された事例として、
○ 本国 に 帰国 し た外 国 人や 死者 の 口座 に つ いて 、解 約 手続等 の措 置を 採
る こ とな く 利用 し 、詐 欺 や窃 盗 等の 犯 罪に よる 収 益を 収 受又 は 隠匿 し た
事例
〇 金銭 の 対価 を 得る 目 的で 売却 さ れた 口 座 、架 空名 義 で開設 した 口座 、
不 正 に開 設 され た 営業 実 態の な い会 社 名義 の口 座 等を 利 用し 、 詐欺 、 窃
盗 、 ヤミ 金 融事 犯 、風 俗 事犯 、 薬物 事 犯、 偽ブ ラ ンド 品 販売 事 犯等 の 様
々な犯罪による収益を収受又は隠匿した事例
等がある。
(イ) 預金取引 a 現状
終 日営 業 のコ ン ビニ エ ンス スト ア 等と の 連 携を 始め と したA TM の普 及
等に より 、 預金 取 扱金 融 機関 は、 預 貯金 の 預 入れ 又は 払 戻し( 以下 「預 金
」 。) 、 、
取引 という を行う預貯金口座の保有者に対して 時間・場所を選ばず
迅速かつ容易に資金を準備又は保管できる高い利便性を提供している。
一 方で 、 犯罪 に よる 収 益の 移転 を 企図 す る 者は 、口 座 に係る 安全 ・確 実
な資 金管 理 及び 預 金取 引 の高 い利 便 性に 着 目 して 、口 座 に送金 され た収 益
の払 出し や 取得 し た収 益 の預 入れ を 通じ て 、 犯罪 によ る 収益の 移転 を敢 行
するおそれがある。
犯罪収益移転防止法は、預金取扱金融機関に対して、顧客等と200万円(為
替取 引又 は 自己 宛 小切 手 の振 出し を 伴う も のに あって は、 10万 円) を超 え
る現 金の 受 払い を する 取 引に 際し て の取 引 時 確認 の義 務 及び確 認記 録・ 取
引記 録等 の 作成 ・ 保存 義 務を 課し て いる 。 ま た、 取引 時 確認の 結果 、当 該
取引 の態 様 その 他 の事 情 に加 え、 本 調査 書 の 内容 を勘 案 し、か つ、 通常 行
う特 定業 務 に係 る 取引 の 態様 との 比 較等 を 行 って 、当 該 取引に おい て収 受
した 財産 が 犯罪 に よる 収 益で ある 疑 い又 は 顧 客等 が犯 罪 収益等 隠匿 罪等 に
当た る行 為 を行 っ てい る 疑い があ る と認 め ら れる 場合 に おける 疑わ しい 取
引の届出義務を課している。
b 事例
預金取引がマネー・ローンダリングに悪用された事例として、
○ 外国 で 発生 し た詐 欺 事件 の収 益 が国 内 の 口座 に送 金 された 際に 、正 当
な事業収益であるように装い、払戻しを受けた事例
○ 窃盗 、 詐欺 、 横領 、 薬物 犯罪 、 賭博 等 に よる 収益 を 他人名 義の 口座 に
預け入れて隠匿していた事例
等がある。
(ウ) 内国為替取引 a 現状
内 国為 替 取引 は 、給 与 、年 金、 配 当金 等 の 振込 金の 受 入れや 公共 料金 、
かつ 迅速 な 決済 が 可能 で 、隔 地者 間 の取 引 に 便利 であ る ほか、 AT Mや イ
ンタ ーネ ッ トバ ン キン グ の普 及等 か ら、 身 近 な決 済サ ー ビスと して 広く 国
民一般に利用されている。
一 方で 、 この よ うな 特 性や 他人 名 義の 口 座 を利 用す れ ば匿名 性の 確保 も
可能 とな る こと に より 、 内国 為替 取 引は 犯 罪 によ る収 益 の移転 にも 有効 な
手段となり得る。
犯 罪収 益 移転 防 止法 は 、預 金取 扱 金融 機 関に 対して 、金 額が10万 円を 超
える 現金 の 受払 い をす る 取引 で為 替 取引 を 伴 うも のに 際 しての 取引 時確 認
の義 務及 び 確認 記 録・ 取 引記 録等 の 作成 ・ 保 存義 務を 課 してい る。 また 、
取引 時確 認 の結 果 、当 該 取引 の態 様 その 他 の 事情 に加 え 、本調 査書 の内 容
、 、 、
を勘案し かつ 通常行う特定業務に係る取引の態様との比較等を行って
当該 取引 に おい て 収受 し た財 産が 犯 罪に よ る 収益 であ る 疑い又 は顧 客等 が
犯罪 収益 等 隠匿 罪 等に 当 たる 行為 を 行っ て い る疑 いが あ ると認 めら れる 場
合に おけ る 疑わ し い取 引 の届 出義 務 を課 し て いる 。さ ら に、同 法は 、他 の
金融 機関 へ の資 金 の支 払 を伴 う内 国 為替 取 引 の場 合に は 、移転 元の 金融 機
関に 対し 、 移転 先 の金 融 機関 から 当 該取 引 に 係る 顧客 の 確認を 求め られ た
とき に、 そ の日 か ら三 営 業日 以内 に 当該 顧 客 の確 認記 録 を検索 する こと を
可能 にす る 事項 に 関す る 記録 の作 成 を、 移 転 先の 金融 機 関に対 し、 当該 取
引に 係る 情 報を 検 索す る こと を可 能 にす る 事 項に 関す る 記録の 作成 を、 そ
れぞれ義務付けている。
b 事例
内国為替取引がマネー・ローンダリングに悪用された事例として、
○ 暴力 団 幹部 が 、知 人 が詐 欺に よ り得 た 収 益を 自己 の 名義の 口座 に振 り
込ませて収受した事例
○ 会社 の 経営 者 が、 地 下銀 行の 運 営に よ る 収益 をそ の 運営者 に同 社の 口
座に振り込ませて収受した事例
○ わい せ つD V Dを 代 金引 換郵 便 で販 売 し 、宅 配業 者 が顧客 から 受け 取
った代金を他人名義の口座に振り込ませていた事例
○ 顧客 に 指示 を して 、 覚醒 剤の 代 金、 ヤ ミ 金融 の返 済 金や無 許可 営業 の
風俗店の利用料金を他人名義の口座に振り込ませていた事例
等がある。
(エ) 貸金庫 a 現状
貸 金庫 と は、 保 管場 所 の賃 貸借 で あり 、 何 人で も貸 金 庫業を 営む こと は
可能 であ る が、 銀 行等 の 預金 取扱 金 融機 関 が 店舗 内の 保 管場所 を有 償で 貸
与するサービスが一般に知られている。
預 金取 扱 金融 機 関の 貸 金庫 は、 主 に有 価 証 券、 通帳 、 証書、 権利 書等 の
重要 書類 や 貴金 属 等の 財 産の 保管 に 利用 さ れ るも ので あ るが、 実際 には 、
預金 取扱 金 融機 関 は保 管 され る物 件 その も の の確 認は し ないた め、 保管 物
の秘 匿性 は 非常 に 高く 、 著作 権法 違 反、 ヤ ミ 金融 事犯 等 の犯罪 によ る収 益
を銀行の貸金庫に保管していた例がある。
一 方で 、 この よ うな 特 性に より 、 貸金 庫 は 犯罪 によ る 収益を 物理 的に 隠
匿する有効な手段となり得る。
犯 罪収 益 移転 防 止法 は 、預 金取 扱 金融 機 関 に対 して 、 顧客等 と貸 金庫 の
貸与 を行 う こと を 内容 と する 契約 を 締結 す る に際 して の 取引時 確認 の義 務
及び 確認 記 録・ 取 引記 録 等の 作成 ・ 保存 義 務 を課 して い る。ま た、 取引 時
1 小 切 手法 ( 昭 和 8年 法 律 第57号 ) 第 5条 第 1 項 第3 号 に 掲げ る 持 参人 払 式 と して 振 り 出さ れ た小 切手 又は 同条 第
*
2 項 若 しく は 第 3項 の 規 定に よ り 持 参人 払 式 小切 手 と みな さ れ る 小切 手 を いい 、 同 法 37条 第 1 項 に規 定 する 線引 が
ないものをいう。
2 小 切 手法 第 6 条 第3 項 の 規定 に よ り 自己 宛 に 振り 出 さ れた 小 切 手 をい い 、 同法 第 37条 第1 項 に規 定す る線 引が な
*
いものをいう。
- 1 6
-し、 かつ 、 通常 行 う特 定 業務 に係 る 取引 の 態 様と の比 較 等を行 って 、当 該
取引 にお い て収 受 した 財 産が 犯罪 に よる 収 益 であ る疑 い 又は顧 客等 が犯 罪
収益 等隠 匿 罪等 に 当た る 行為 を行 っ てい る 疑 いが ある と 認めら れる 場合 に
おける疑わしい取引の届出義務を課している。
b 事例
、 、
貸金庫がマネー・ローンダリングに悪用された事例として 我が国では
○ だま し 取っ た 約束 手 形を 換金 し 、そ の 現 金の 一部 を 親族が 契約 した 銀
行の貸金庫に保管していた事例
等があり、外国でも、
〇 偽名 を 使い 多 数の 銀 行と 貸金 庫 の賃 貸 借 契約 を締 結 して犯 罪に よる 収
益を隠匿していた事例
等、 犯罪 に よる 収 益の 移 転を 企図 す る者 が 、 他人 名義 に よる貸 金庫 の賃 貸
借契 約に よ り、 真 の利 用 者を 隠匿 し つつ 、 当 該収 益の 物 理的な 保管 手段 と
して貸金庫を悪用している実態がある。
(オ) 手形・小切手 a 現状
手 形及 び 小切 手 は、 信 用性 の高 い 手形 交 換 制度 や預 金 取扱金 融機 関に よ
る決 済等 に より 、 現金 に 代わ る支 払 手段 と し て有 用で あ り、我 が国 の経 済
社会 にお い て幅 広 く利 用 され てい る 。手 形 及 び小 切手 は 、等価 の現 金よ り
物理 的に 軽 量で 運 搬性 が 高く 、預 金 取扱 金 融 機関 を通 じ て現金 化も 簡便 で
ある 。ま た 、裏 書 等の 方 法に より 容 易に 譲 渡 する こと が でき、 流通 性が 高
いことも特徴である。
一方で、このような特性により、手形・小切手は犯罪による収益の収受・
隠匿に有効な手段として悪用され得る。
犯 罪収 益 移転 防 止法 は 、預 金取 扱 金融 機 関 に対 して 、 顧客等 との 手形 の
割引を内容とする契約の締結、取引の金額が200万円を超える線引きのない
持参 人払 式 小切 手 や 自己 宛 小切 手 の 受払 い をす る 取引 (現金 の受 払い を
*1 *2
する 取引 で 為替 取 引又 は 自己 宛小 切 手の 振 出しを 伴う ものに あっ ては 、10
万円 を超 え るも の )等 に 際し ての 取 引時 確 認 の義 務及 び 確認記 録・ 取引 記
録等 の作 成 ・保 存 義務 を 課し てい る 。ま た 、 取引 時確 認 の結果 、当 該取 引
の態 様そ の 他の 事 情に 加 え、 本調 査 書の 内 容 を勘 案し 、 かつ、 通常 行う 特
定業 務に 係 る取 引 の態 様 との 比較 等 を行 っ て 、当 該取 引 におい て収 受し た
財産 が犯 罪 によ る 収益 で ある 疑い 又 は顧 客 等 が犯 罪収 益 等隠匿 罪等 に当 た
る行 為を 行 って い る疑 い があ ると 認 めら れ る 場合 にお け る疑わ しい 取引 の
届出義務を課している。
さ らに 、 手形 ・ 小切 手 を振 り出 す ため に は 、原 則と し て当座 預金 口座 を
保有 して い る必 要 があ る が、 犯罪 収 益移 転 防 止法 は、 預 金取扱 金融 機関 に
対して、口座開設時の取引時確認等の義務を課している。
b 事例
手 形・ 小 切手 が マネ ー ・ロ ーン ダ リン グ に 悪用 され た 事例と して 、我 が
国では、
1 犯 罪 収益 移 転 防 止法 第 2 条第 2 項 第 35号 は 、 特 定事 業 者 とし て 、 電子 債 権 記 録機 関 を 規定 し てい る。 電子 記録 債
*
権 は 、 磁気 デ ィ スク 等 を もっ て 電 子 債権 記 録 機関 が 作 成す る 記 録 原簿 へ の 電子 記 録 を する こ と によ っ て 発生 、 譲 渡
等 が 行 われ る も ので 、 債 権譲 渡 の 円 滑性 等 に 関し て 手 形と 類 似 の 機能 を 有 して い る こ とか ら 、 犯罪 に よ る収 益 の 移
転に悪用される危険性があると認められる。
2 犯 罪 収益 移 転 防 止法 第 2 条第 2 項 第 27号 は 、 特 定事 業 者 とし て 、 無尽 会 社 を 規定 し て いる 。 一定 の口 数及 び給 付
*
金 額 を 定め 、 定 期に 掛 金 を払 い 込 ま せて 、 一 口ご と に 抽選 、 入 札 等の 方 法 によ り 、 掛 金者 に 対 し金 銭 以 外の 財 産 の
給 付 を 行う 無 尽 は、 掛 金 ・給 付 の 仕 組み が 預 金に 類 似 する 部 分 も ある こ と から 、 犯 罪 によ る 収 益の 移 転 に悪 用 さ れ
る危険性があると認められる。
出 し 郵送 さ せ、 預 金取 扱 金融 機 関の 取 り立 てに よ り他 人 名義 の 口座 に 入
金させていた事例
等があり、外国でも、
〇 高額な資金を外国に密輸する手段として悪用された事例
○ 薬物 密 売組 織 によ り 高額 な資 金 を分 割 し て移 転す る 手段と して 悪用 さ
れた事例
等が ある な ど、 犯 罪に よ る収 益の 移 転を 企 図 する 者が 、 当該収 益を 容易 に
運搬 する 手 段又 は 正当 な 資金 と仮 装 する 手 段 とし て、 手 形又は 小切 手を 悪
用している実態がある。
エ 預金取扱金融機関が取り扱う商品・サービスの危険度
預 金取 扱 金融 機 関は 、 安全 かつ 確実 な資金 管理 が可能 な口 座を始 め、 時間 ・
場所 を問 わ ず、 容 易に 資 金の 準備 又は 保管が でき る預金 取引 、迅速 かつ 確実 に
遠隔 地間 や 多数 の 者と の 間で 資金 を移 動する こと ができ る為 替取引 、秘 匿性 を
維持 した 上 で資 産 の安 全 な保 管を 可能 とする 貸金 庫、換 金性 及び運 搬容 易性 に
優れた手形・小切手等、様々な商品・サービスを提供している。
一 方で 、 これ ら の商 品 ・サ ービ スは 、それ ぞれ が有す る特 性から 、犯 罪に よ
る収 益の 移 転の 有 効な 手 段と なり 得る 。預金 取扱 金融機 関は 、取引 相手 とな る
顧客 も個 人 から 大 企業 に 至る まで 様々 であり 、ま た、取 引件 数も膨 大で ある た
め、 それ ら の取 引 中か ら マネ ー・ ロー ンダリ ング 等に関 連す る顧客 や取 引を 見
極め、排除していくことは容易ではない。
実 際、 口 座、 預 金取 引 、為 替取 引、 貸金庫 並び に手形 及び 小切手 を悪 用す る
、 、
ことにより 犯罪による収益の収受又は隠匿がなされた事例があること等から
預金 取扱 金 融機 関 が取 り 扱う これ らの 商品・ サー ビスは 、犯 罪によ る収 益の 移
1 2
転に悪用される危険性があると認められる。 * *
ま た、 疑 わし い 取引 の 届出 の状 況や 事例等 を踏 まえる と、 取引時 の状 況や 顧
客の属性等に関して、次のような要素が伴う取引(「第4 危険度の高い取引」
で取り上げる取引は除いている。)は、危険度がより一層高まると認められる。
○ 多額 の 現金 又 は小 切 手に より 、入 出金を 行う 取引( 顧客 の収入 、資 産等 に
見 合 わな い 高額 な 取引 及 び送 金 並び に自 己 宛小 切手に よる のが相 当と 認め ら
れ る 場合 に もか か わら ず 、あ え て現 金に よ る入 出金を 行う 取引は 、危 険度 が
特に高まると認められる。)
○ 短期 間 のう ち に頻 繁 に行 われ る取 引で、 現金 又は小 切手 による 入出 金の 総
額が多額であるもの
○ 口座 名 義人 や 貸金 庫 の利 用者 名義 が架空 又は 他人の もの である 、又 は実 態
のない法人のものであるとの疑いが生じた入出金や貸金庫取引
○ 多数 の 口座 を 保有 し てい る顧 客( 屋号付 名義 等を利 用し て異な る名 義で 保
有している顧客を含む。)の口座を使用した入出金
○ 口座 開 設後 、 短期 間 に多 額の 又は 頻繁な 入出 金が行 われ 、その 後、 解約 さ