第26号科学衛星 (ASTRO-H)
プロジェクトについて
平成20年7月25日
宇宙航空研究開発機構
宇宙科学研究本部
高橋 忠幸
2
目次
0.
概要
3.
開発方針
1.
プロジェクトの目的
2.
プロジェクトの目標
4.
システム選定及び基本設計要求
5.
開発計画
(
スケジュール、実施体制、資金計画
)
6.
リスク管理
0-1. 宇宙科学のアプローチ
21世紀において我々は
という二つの大きな科学の課題を持つ。
宇宙科学は、この根源的な課題に以下のアプローチで挑む。
宇宙と物質・空間の起源
宇宙における生命の可能性
3
1. 宇宙の全容(果て)はどのようになっているか / 宇宙で
はどのような現象が起きているか
2. 宇宙はどのような物質・エネルギー形態で構成され、
それらはどのように循環しているか
3. 宇宙がどのように生まれ、どうやって現在のような
銀河や銀河団といった構造ができたのか
~宇宙の多様な構造~
宇宙は、超新星爆発から、空間の特異点であるブラックホール、銀河、銀河団と多様な姿
と構造を持つ。また、こうした宇宙の構成要素が互いに影響しあって、ダイナミックに進
化をとげてきたと考えられており、多様なアプローチの研究を行うことが重要である。
左図)銀河の中心の巨大ブラックホールと吹き出るジェット、宇宙
にはこうしたブラックホールが無数にあり、進化をとげてきた。
銀河団は、宇宙最大の天体であり、宇宙の中でどのように分布している
か、どのようにして進化したかを調べることが、宇宙の構造進化を解明す
る上で重要である。近年では、銀河団同士の衝突による成長などダイナ
ミックな進化が重要となっている(左図:大きな銀河団の中を小さな銀河
団が衝突、突き抜けている様をしめす。赤が
X
線観測による高温ガスの分
布、青が光の重力レンズによって求められたダークマターの分布)。
中心に巨大なブラックホールを持った銀河が
衝突し、星形成とブラックホールの成長を
伴って、大きな銀河を作っていくらしい
(右図:銀河衝突のシミュレーション)。
4
0-3. 課題を解くための天文学のアプローチ (2)
~宇宙進化~
(左図
)
宇宙進化の過程で、構造がどのようにでき
たかを示す計算機シミュレーション。
137
億年かけ
てダークマターが編み目のように発展し、節となっ
たところに集中した。この節に銀河が集まり銀河団
が形成されていると考えられている
5Mpc
銀河団は、宇宙で最大の天体である。銀河団を
研究し、その進化を探ることが宇宙の構造がど
のようにでき、進化してきたかを知ることにつ
ながる。その際、銀河団の構成要素である銀
河、あるいはその中のブラックホールが、どの
ように共に進化し、銀河団形成にどのような役
割を果たすかを知る事が、
重要である。
宇宙進化の計算機シミュレーションによる宇宙(現在)
0-4. JAXAの推進する天文観測
6
究極目標
宇宙と物質・空間の起源
太陽系形成史・環境及び生命誕生
宇宙最初の銀河・ブラック
ホールの発見、ダークマター、
暗黒エネルギーの正体解明か
ら極限状態の物理へ
超高温・宇宙線粒子
相対論的ジェット
ブラックホール
冷たい宇宙(星間ガス)
星と惑星系の形成
太陽系始原天体の生い立ち
太陽系天体の環境・惑星気候
生命誕生プロセス
太陽系探査
赤
外
線
観
測
電
波
観
測
7
0-5. 多波長の大型軌道上天文台将来計画
2013年度近辺は世界的にX線衛星の空白期となる可能性が憂慮されている。
電波・赤外線の大型将来計画と同時期に稼働させることが出来れば、科学的
成果を最大限に高めることが可能となる。
ASTRO-G 衛星
ALMA (地上天文台)
(エネルギー)
(年度)
2008
2010
2012
2014
Herschel 衛星
JWST 衛星
GLAST
未開拓の波長帯(ミリ波)での 干渉計による高解像度観測
電波天文学
可視光・
赤外線天文学
X線天文学
ガンマ線天文学
全天探査型ガンマ線観測衛星
次世代のハッブル望遠鏡へ
Chandra, XMM-Newton
8
100個以上もの銀河が集団をな し、宇宙で最大規模の構造を形 成しているのが見える
一千万度から一億度もの高温 ガスが重力の井戸に閉じ込め られているのが見える
X線天文学は高温・高エネルギー
の現象を通じて宇宙の姿を研究す
る学問分野である。
X線とは
・電磁波(光)の一種
・可視光の1000倍ものエネルギー
を持ち、透過力が極めて強い
・地球大気には吸収されるため、
観測は衛星軌道上でのみ可能
・
1960年代に、大気圏外に望遠鏡を打ち上げ ることができるようになって、はじめて可能と なった宇宙で直接検出可能な物質の90%は
温度が高いプラズマで、X線のみで観測可能
0-6. X線天文学
220万光年 銀河団の
X線画像
JAXA
銀河団の 可視光画像
軟
X
線:
10 keV
以下
硬
X
線:
10 keV
以上、
100 keV
以下
ASTRO-H
日経サイエンス(2008)より宇宙望遠鏡を用いたX線観測は、人類が予想もしていなかった、宇宙が数千万度、数億度と
いう超高温の現象の宝庫であることをあきらかにした、 宇宙が静的なものではなく、動的
な、ダイナミックなものであることを明らかにして、人類の宇宙観を変えたといえる。
ブラックホールの近傍や中性子星の表面をはじめとする“極限”の現場を探り、超新星の残骸
や銀河団など、X線でしか観測することのできない高温ガスや、極めて高いエネルギーに加
速された電子や陽子などからの放射を選択的に観測することが可能である。
X線天文学の発達により、ブラックホールについては、その生成、進化、高エネルギー現
象、そして銀河等への影響など、学問として体系化され天文学として位置づけられるよう
になった。また、銀河団については、銀河の数倍をしめる高温ガスの存在からダークマ
ター分布を求める重要なプローブとなっている。
近年では、X線で観測される現象が、可視光からガンマ線にいたる波長域で観測される現象
と強くつながっていることが示されており、宇宙の全体像やその歴史を理解する上で、き
わめて重要となっている。
10
0-8.
第三期科学技術基本計画における位置づけ
(
参考
)
日本の
X
線天文学は、世界でトップレベルの競争力をほこる。
「
ASTRO-H
」衛星を実際に開発するチームには、被引用論文数
(citation)
が
1000
を越える者が日
本だけで
40
人近く存在する。科学衛星を用いた宇宙科学において、このような成果を誇るコミュ
ニティは他にない。「あすか」衛星では、世界各国から
1500
もの査読つき論文が出版され、
160
人を越える博士論文を産み出した。
1
.基礎研究の推進
多様な知と革新をもたらす基礎研究については、一定の資源を確保して着実に進める。
人類の英知を生み知の源泉となる基礎研究は、全ての研究開発活動の中で最も不確実性が高いものである。その多 くは、当初のねらいどおりに成果が出るものではなく、地道で真摯な真理探求と試行錯誤の蓄積の上に実現される ものである。また、既存の知の枠組みとは異質な発見・発明こそが飛躍知につながるものであり、革新性を育む姿 勢が重要である。基礎研究には、人文・社会科学を含め、研究者の自由な発想に基づく研究と、政策に基づき将来の応用を目指す 基礎研究があり、それぞれ、意義を踏まえて推進する。すなわち、前者については、新しい知を生み続ける重厚な 知的蓄積(多様性の苗床)を形成することを目指し、萌芽段階からの多様な研究や時流に流されない普遍的な知の 探求を長期的視点の下で推進する。
長期的な目標
X線、ガンマ線でのみ可能な、未知の新たなバリオン物質の存在形態・エネルギー形態を探査。それを通して、(1)宇宙、物質、空間の起 源に係る暗黒エネルギーや暗黒物質、(2)宇宙の極限状態と非熱的エネルギー宇宙、(3)星と銀河形成史の全容を探る。
今までの実績
‒「はくちょう」から「すざく」へ続く先進的かつ焦点を絞った衛星と観測装置により、世界の宇宙X線観測をリード。
‒ブラックホール等、人類の宇宙観を変えるような驚くべき発見に直接関与。
‒国際協力と国際コミュニティからの日本のX線天文コミュニティに対する強い支持と期待
‒国際宇宙ステーション実験MAXIの展開、HETE2、SWIFT、GLASTなど海外ミッションへの機器搭載を含む積極的な国際協力展開。 新しい展開(今後5年程度)
‒「すざく」衛星による研究の発展
‒
新しいX線天文学を切り拓く日本主導の次期X線国際天文衛星「NeXT」*の着手
‒暗黒エネルギー、暗黒バリオン、非熱的放射など宇宙物理学の新しい展開。
‒小型衛星等の機会を用いた、萌芽的・挑戦的なX線、ガンマ線ミッションの開拓と着手。 20年先までを視野にいれた今後10年の目標
‒銀河団の衝突・合体の軟X線精密分光観測。精密な運動学から暗黒物質が作り出す宇宙の大構造とその進化を理解。
‒硬X線・ガンマ線撮像観測による宇宙における加速の位置づけ、宇宙の高エネルギー粒子のエネルギー総量の解明。隠れたブラックホールの 発掘と銀河形成との関連を理解。
‒宇宙初期からの高エネルギー宇宙の全容理解に向け、「XEUS」など大型国際ミッションの検討と準備、主体的な貢献。さらに世界をリード する新世代の観測技術の開発。
0-9. 宇宙開発委員会・宇宙科学WGによる位置づけ
(参考)
宇宙
科
学WG
報告書
において
最優
先に
掲げ
られている
重
点研究分野(
1
)宇宙空間からの宇宙物理学・天文学
1.
X線天文学
(
地上
からは観測
不
能、研究
者数
、
技術
、成
果)
2
. 赤
外線天文学
(
地上
から高
感
度観測が
不
可能、
急
速な発展)
3
. スペースVLBI電波天文学(地球より大きな干渉計の実現、日本のオリジナ
ル技術)
日本が
優
位
性
を
誇
る宇宙観測の
重
点的開拓
3
分野
0-10. 宇宙開発長期計画における位置づけ
(参考)
我が国における宇宙開発利用の基本戦略
(平成16年9月9日 総合科学技術会議)多くの人々に夢や希望を与えるべく、未知のフロンティアとしての宇宙に挑む。宇宙空間を探査し、
利用することにより、宇宙の起源、地球の諸現象などに関する根源的な知識・知見を獲得する。
宇宙開発に関する長期的な計画
(平成20年2月22日 総務大臣、文部科学大臣)宇宙科学研究は、「宇宙がどのように成立し、どのような法則によって支配されているのか」を知るための高度な知的活動であるととも に、宇宙科学・宇宙開発に新しい芽をもたらす創造的・萌芽的な技術の源泉であり、宇宙開発利用の基盤を支えるものとして、我が国の宇 宙開発利用の持続的発展のために不可欠なものである。また、我が国は、これまでにX線天文学や太陽・地球磁気圏観測などにおいて、高 い創造性・先導性を有する世界第一線級の成果を挙げてきている。このため、我が国は、以下の方針により、宇宙科学研究を推進すること とする。
○ 長期的な展望に基づき我が国の特長を活かした独創的かつ先端的な宇宙科学研究を推進する。
国内外の関係する研究者グループとの密接な連携の下、研究者の自由な発想に基づく研究計画をピア・レビューを通じて精選し、 我が国の特長を活かして、科学衛星の打上げ・運用や理学的・工学的学術研究など独創的かつ先端的な宇宙科学研究を継続的に実施 し、世界最高水準の成果の創出を目指す。
今後重点を置く研究分野は、世界において広く認められる重要な科学目標を有していること、目標及び実現手段における高い独創 性と技術を持ったうえで、高い実現可能性を有していること、我が国の独自性と特徴が明確であること、並びに我が国が既に世界第 一級にある分野をのばすとともに、将来を担う新しい学問分野を開拓することにも留意することの観点から、以下のとおりとし、 ミッションに即した多様な規模の計画を展開する。
ア) 宇宙空間からの宇宙物理学及び天文学
科学的意義
○ 宇宙の大規模構造と、その進化の解明
○ 宇宙の極限状態の理解
○ 多様性にとんだ非熱的エネルギー宇宙の探求
○ ダークマター・暗黒エネルギーの探求
技術的意義
○ 次世代衛星の基盤アーキテクチャの確立
(ex. モジュール化技術、スペースワイヤ、データ処理コンピュータ、冷凍機、LSI)
社会的意義
○ 一流国家としての矜持:人類の知的共有財産を増やし、
我が国の科学が世界で一流であることを示す。
○ 国際協力: 我が国が主導する国際共同プロジェクトとして推進し、
最終的には国際宇宙天文台として運用することによって、
国際社会に貢献し、責務を果たす。
○ 産業応用: 搭載検出器の医療診断、分子イメージング、物質構造研究への応用。
0-12. X線観測のプログラムとプロジェクト
日本はこれまで特徴あるX線天文衛星を開発し、5番目の「すざく」(2005年打ち上げ) は、
軟X線から軟ガンマ線領域にいたる広帯域観測によって、
1)従来は隠されていて見えなかったようなブラックホールを近傍(8000万光年)で発見。
2)巨大ブラックホールからの鉄の輝線の変形を実証。
3)銀河系内の宇宙線の起源を解明した。
など、大きな成果をあげてきた。
われわれは、新たに、
・運動をはかる能力
・硬
X
線で集光撮像観測を行う能力
を追加し、めざすべき科学的意義に向かって、80億光年程度までの宇宙を探る。
X線天文学では、X線を用い、宇宙の果て (約130億光年) までを見て、
宇宙の構造の進化を探り、その成り立ちを理解することが究極目標である。
1. プロジェクトの目的
○ 「宇宙の大規模構造と、その進化の解明」のため
○ 「宇宙の極限状態の理解」のため
○ 「多様性にとんだ非熱的エネルギー宇宙の探求」のため
○ 「ダークマター・暗黒エネルギーの探求」のため
1. 銀河団という宇宙最大の天体における熱、銀河団物質の運動エネルギー、非熱
的エネルギーの全体像を明らかにし、ダイナミックな銀河団の成長を直接観測
する。
2. 厚い周辺物質に隠された遠方(過去)の巨大ブラックホールを「すざく」の100
倍の感度で観測し、その進化と銀河形成に果たす役割を解明する。
3. ブラックホール極近傍の物質の運動を測定することで重力のゆがみを把握し、
相対論的時空の構造を明らかにする。
4. 宇宙に存在する高エネルギー粒子(宇宙線)がエネルギーを獲得する現場の物理
状態を測定し、重力や衝突・爆発のエネルギーが宇宙線を生み出す過程を解明
する。
1. 銀河団成長の直接観測
2-1. 期待される科学成果 (1)
超高精度分光により、高温プラズマからの鉄などの輝線の幅や中心エネルギーのシフトを観測することができると 銀河団物質の速度を知る事ができる。また、硬X線領域の非熱的スペクトルからは、銀河団内の高いエネルギーの 宇宙線に含まれる非熱的エネルギー量を知ることができる。
銀河団総エネルギー = 熱的エネルギー + バルクな運動エネルギー + 非熱的エネルギー すざく
必要な観測
16
-運動の測定と、
硬X線集光撮像観測ができると
-銀河団がどのように成長したかは、ダークマターを含む銀河団の総質量(総エネルギー)を距離(過去)毎に測
ることで可能となる。その際、「すざく」などの従来のX線観測で行われてきた「銀河団の平均温度の測
定」だけではなく、乱流や衝突などの銀河団物質のバルクな運動エネルギー、宇宙線加速に分配されたエ
ネルギーをはかることが必要である。
エネルギー(キロ電子ボルト)
銀河団衝突
右上から小型の銀河団 が衝突している様子 (シミュレーション)
2つの銀河団の速度測定
ASTRO-Hによる 精密分光観測の シミュレーション
エネルギー(キロ電子ボルト)
引き起こされた乱流による線幅の広がり
「すざく」 のCCD
2-2. X線による銀河団の質量測定 (参考)
銀河団は、300万光年の広がりを持つ、
ダークマターの塊であり、その重力によ
り、大量のX線ガスをたたえる。
ペルセウス座銀河団
可視光 X線
X線ガスの温度×密度
→圧力
半径
重力の井戸の深さ :
ダークマターが濃いほど重力が強い
ダークマター分布
→重力
=
“静水圧平衡”の仮定ガスを支えているのが
ガス圧だけならば、
ダークマター分布、すなわち
銀河団の全質量が分かる
自転(遠心力)、乱流、磁場、
加速粒子など、ガスを「押す」
別の「ちから」が20%あれば、
20%だけ全質量を過小評価
ガスに働く「ちから」を、「全て」知る
X線ガス
濃い
100万光年
100万光年
明るい (高密度)
暗い (低密度) X線のピーク波長
=温度
X線が強いほど 圧力が高い
ー運動の測定ができるとー
2. 巨大ブラックホールの進化と銀河形成に果たす役割の解明
2-3. 期待される科学成果 (2)
これまでのX線観測(10キロ電子ボルト以下)では1度角に数1000個以上の巨大ブラックホールが発見され、X線背景放 射のほとんどが分離されている。 しかし、硬X線領域では、現在観測されている硬X線背景放射の数%しか、そのもと となる線源(ブラックホール)が発見されていない。この線源は厚い周辺物質に隠されたブラックホールであると考え られており、特にブラックホールが銀河の中で生まれる頃に対応していると言われている。
硬X線で集光撮像観測を実現する事で硬X線領域での感 度を「すざく」より100倍高い感度で行うことが可能と なり、
硬X線背景放射を担う40-50% の元となる
隠 された巨大ブラックホールを発見する事が可能となる。JAXA
上)厚い周辺物質によって、ほ とんどの方向が 遮られているた め、可視光や従来のX線衛星では 極めて観測の難しい活動銀河中 心の巨大ブラックホール。硬X線 では
周辺物質を突き抜けて観測され る事が期待される。
隠された巨大ブラックホール
1度
Subaru-XMM Deep Survey fields 0.5-10 keV
硬X線で集光撮像観測ができると
-期待される感度
下)軟X線で観測された銀河の中心の 巨大ブラックホール。1 %の銀河 には巨大ブラックホールが観測 されている。
19
2-4. 期待される科学成果 (3)
「一般相対性理論」の効果が顕著となるブラックホールの極近傍において相対論的時空の構造をX線ス
ペクトルを用いた物質量と運動の測定から理解する。 ブラックホール近傍での鉄輝線のひずみは日本の
ASCA衛星が最初に発見 した重要な結果である(Nature論文, 1995)。ブラックホールの極近傍で予
想される物質の運動の直接観測を行って、この現象が本当にブラックホール重力の効果であるかの議論
に決着をつけ、相対論的時空構造を探求する。
ブラックホールの事象の地平線
X線を放出しているブラックホー ルに吸い込まれる寸前の箇所
3. 相対論的時空構造の測定
想定されて
いる現象 ASTRO-H
すざくのX線 検出器(CCD)
静止したブラックホール
回転するブラックホール
エネルギー(キロ電子ボルト)
1. 回転していない降着円盤からの輝線放射
2. 回転している降着円盤からの輝線放射
3. 高速回転している降着円盤からの輝線放射
4. 中心に巨大なブラックホールがあるとき
運動の測定ができると
20
4. 宇宙線を生み出す過程の解明
2-5. 期待される科学成果 (4)
多様性にとんだ非熱的エネルギー宇宙を調べるには、その担い手である高エネルギー粒子(宇宙線)が生み出される過程 を調べることが必要である。超高分解能分光によって得られる高温ガスの速度や、電子・イオン温度、また、最も高いエネ ルギーに加速された粒子の出す硬X線領域における軟X線やTeVガンマ線と同程度の角度分解能のイメージやスペクトルに よって、加速された電子のエネルギー分布や、粒子が加速される現場を直接調べることが可能となる。
Tychoの超新星残骸の中で、殻が膨張する速度を直接 測定することができる(シミュレーション。2000km/ 秒で手前に飛んでくるガスからの放射が青、同じ速度 遠び去るガスからの放射が赤)。実際には、さらにイ オン温度を反映して広がったラインが期待される。
超新星残骸 RX J1713-5946
10 キロ電子ボルト以下の
軟X線のイメージ(すざく、等高線 はテラ電子ボルトのガンマ線の強度)
10キロ電子ボルトの以上の領域で、X線領域と同じ数分角の分解能で 画像をとることができると、粒子が最も高いエネルギーにま加速され る現場を調べることができる。
現在、10 キロ電子ボルト以上の 硬X線領域で得られている 画像(すざく)
エネルギー(キロ電子ボルト) 強度
ー運動の測定ができるとー
硬X線で集光撮像観測ができると
2-6.プロジェクトの目標設定
21
意義
目的
目標
宇宙の大規模構造 とその進化の解明
宇宙の極限状態の 理解
非熱的エネルギー 宇宙の探求
ダークマター・暗黒 エネルギーの探求
銀河団の成長の直接観測
ブラックホール極近傍での 相対論的時空の構造の理解
重力や衝突・爆発のエネル ギーが宇宙線を生み出す過 程を解明
ダークマターと暗黒エネル ギーが宇宙の構造形成に果 たした役割の探求
巨大ブラックホールの進化 と銀河形成に果たす役割
1) 10個程度の代表的な銀河団において、熱エネルギーを測定し、鉄輝線 のエネルギー領域(6キロ電子ボルト)で300km/sの速度分解能の分光性能 を実現し、銀河団物質の運動エネルギーを測定する。 硬X線帯域で「すざ く」の100倍の感度で分光観測することで非熱的エネルギーを測定する。
3) 代表的な数個の活動銀河中心の巨大ブラックホールを、数10キロ電 子ボルト程度までの範囲で連続スペクトルを取得し、同時に輝線や吸収 線を7電子ボルト程度の分解能で分光測定する。
4) 数個の若い超新星残骸を、硬X線帯域で「すざく」の100倍の感度で 分光観測して硬X線放射を測定し、電子のエネルギー分布を決定する。巨 大ブラックホールにおいては、かに星雲の1000分の1程度の強度でべき 1.7を持つ巨大ブラックホールの のスペクトルを600 キロ電子ボルトま での帯域で10個以上取得する。
5) 目標1)を達成した後、さらに10倍程度の天体の観測を行って約80億光 年までの宇宙(赤方偏移<1)で銀河団内のダークマターの総質量を測定し、 総質量と銀河団数の関係を年代ごとに決定する。(エクストラな目標)
2-7. 目標の具現化
22
軟X線分光システム
軟
X
線撮像システム
軟ガンマ線検出器
硬
X
線撮像システム
ASTRO-H衛星
1) 10個程度の代表的な銀河団において、熱エネルギーを測定し、鉄輝線 のエネルギー領域(6キロ電子ボルト)で300km/sの速度分解能の分光性能 を実現し、銀河団物質の運動エネルギーを測定する。 硬X線帯域で「すざ く」の100倍の感度で分光観測することで非熱的エネルギーを測定する。
3) 代表的な数個の活動銀河中心の巨大ブラックホールを、数10キロ電 子ボルト程度までの範囲で連続スペクトルを取得し、同時に輝線や吸収 線を7電子ボルト程度の分解能で分光測定する。
4) 数個の若い超新星残骸を、硬X線帯域で「すざく」の100倍の感度で 分光観測して硬X線放射を測定し、電子のエネルギー分布を決定する。 巨大ブラックホールにおいては、かに星雲の1000分の1程度の強度で べき1.7を持つ巨大ブラックホールの のスペクトルを600 キロ電子ボル トまでの帯域で10個以上取得する。
5) 目標1)を達成した後、さらに10倍程度の天体の観測を行って約80億 光年までの宇宙(赤方偏移<1)で銀河団内のダークマターの総質量を測定 し、総質量と銀河団数の関係を年代ごとに決定する。
2) 遠方にある10個程度の隠された巨大ブラックホールの候補天体を、硬 X線帯域で「すざく」の100倍の感度で分光観測し、母銀河との関係を明 らかにする。
2-8. ASTRO-H衛星成功基準
(サクセスクライテリア)
23
目的 ミニマムサクセス フルサクセス エクストラサクセス
銀河団の成長の 直接観測
銀河団からの鉄輝線の観 測を、軟X線分光システム で行う。
1) 10個程度の代表的な銀河団において、熱エネルギーを測定 し、鉄輝線のエネルギー領域(6キロ電子ボルト)で300km/sの 速度分解能の分光性能を実現し、銀河団物質の運動エネル ギーを測定する。 硬X線帯域で「すざく」の100倍の感度で 分光観測することで非熱的エネルギーを測定する。
―
巨大ブラック ホールの進化と その銀河形成 に果たす役割
100キロ秒の観測でかに星雲 の10万分の1の強度の隠さ れたブラックホールを硬X線 撮像システムで観測する。
2) 遠方にある10個程度の隠された巨大ブラックホールの候補 天体を、硬X線帯域で「すざく」の100倍の感度で分光観測 し、母銀河との関係を明らかにする。
宇宙硬X線背景放射の正体とされる隠 されたブラックホールの寄与を全体の 40-50% まで解明し、銀河進化との関 係を明らかにする。
ブラックホール 極近傍での相対 論的時空の構造 の理解
―
3) 代表的な数個の活動銀河中心の巨大ブラックホールを、 数10キロ電子ボルト程度までの範囲で連続スペクトルを取 得し、同時に輝線や吸収線を7電子ボルト程度の分解能で分 光測定する。
―
重力や衝突・爆 発のエネルギー が宇宙線を生み 出す過程を解明
―
4) 数個の若い超新星残骸を、硬X線帯域で「すざく」の 100倍の感度で分光観測して硬X線放射を測定し、電子のエ ネルギー分布を決定する。巨大ブラックホールにおいては、 かに星雲の1000分の1程度の強度でべき1.7を持つ巨大ブ ラックホールの のスペクトルを600 キロ電子ボルトまでの 帯域で10個以上取得する。
はじめてガンマ線で天体の偏光を観測 し、ガンマ線の放射環境に制限を加え る。
ダークマターと 暗黒エネルギー が宇宙の構造形 成に果たした役 割の探求
― ―
24
3-1. ASTRO-H衛星の開発方針(1)
•
「ASTRO-E」によって開発が行われ、以降の一連の天文衛星に受け継がれたバスアーキテク
チャ(ASTROバス)を出来る限り継承する。
•
観測機器については、日本が国際的に優位な技術を用い、コミュニティにおけるフロントロー
ディングの成果を基本として、高い信頼性をもって開発する仕組みを導入する。
•
高信頼化をはかるために従来技術にモジュール化の考え方を導入するとともに、データ処理系
には抽象化層からハードウェア層にいたるまで標準化を持ち込み、異なったメーカー間のイン
ターフェースの不一致によるトラブルを未然に防ぐ。
•
科学面、技術面において積極的な国際協力に基づいて開発を行う。特にX線マイクロカロリ
メーター(SXS)については、NASAとの緊密な協力の下に、ジョイントシステムエンジニアリ
ングチーム(JSET)を作り、開発の情報交換を定期的に行って、双方でリスクの低減をはかる。
•
Technical Working Groupを設け、JAXA内や国内の大学や研究機関の有識者、海外の研究者
の中から広くメンバーを集めて、設計や開発状況のCritical Reviewを行い、助言を得る。
25
3-2. ASTRO-H衛星の開発方針(2)
「すざく」のXRSの教訓は、新しい技術課題を含む先端観測機器を国際協力で実現す
る際のインターフェースの問題、さらに一つのミッション機器を通した開発の進め方
のあり方など幾つかの問題を提起した。われわれは、「ASTRO-H」を進めるにあた
り、原因究明のために組織された「XRS不具合原因究明チーム」のレポートの勧告を
真摯に受け止め、「すざく」XRSの教訓を生かすことを第一に考える。
「すざく」における “Lessons Learned”
・冷却系液体ヘリウム消失による短寿命化
・サイドパネルの熱歪みによる指向誤差増加
・軌道上コンタミネーション
・ヒートパイプ動作不良
・太陽電池セル剥がれ不具合
・ホイール微小擾乱に起因するセンサへの干渉
・日照時のバッテリコントロールユニットからの電磁干渉
3-3.「すざく」XRSとの関連
(開発の背景)
2005年に打ち上げられた「すざく」は、本来は超精密分光と広帯域を特徴として、
2000年に打ち上げられた米欧のミッション Chandra, XMMーNewtonと並びたつ予
定であった。我々は「すざく」に世界ではじめてのX線マイクロカロリメータ(XRS)を
搭載し、軌道上で60mKの極低温と7 eVという驚異的なエネルギー分解能を達成した
が、液体ヘリウムの予想外の蒸発というトラブルのために、宇宙
X
線源を観測すること
ができなかった。
マイクロカロリーメータによる宇宙
X
線観測は宇宙物理学に全く新しい世界を開くもの
であり、世界中の期待がかかっていただけにこの事実に対する我々の責任は非常に重
い。「すざく」に期待されていたのは超精密分光による新たな知見の開拓であり、この
復活は我々に課せられた緊急の責務である。
すざくXRSの軌道上実証スペクトル すざくXRSフライトモデル
1. H-IIAで打上げ可能
2. 打ち上げは2013年度
3. 宇宙線によるバックグラウンドを低減するため、
軌道は高度550km 傾斜角31度以下
4. 観測寿命3年以上の信頼性を確保すること
5. SXSはすざくで確立した技術を用いること
4-1. システム選定と基本設計要求
前提
1. 焦点距離
軟X線分光システム、及び、軟X線撮像システムは固定式光学ベンチを
用いて焦点距離6m、硬X線撮像システムは伸展式で12mを実現する。
2. 伸展式光学ベンチ
伸展は望遠鏡側ではなく、検出器側を伸展させる。
3. 冷凍機の最適化
液体ヘリウムとJT冷凍機を併用してロバストな冷却系を実現する。
28
4-2. 目標寿命の考え方
ASTRO-Hで宇宙の大規模構造の進化を探るためには、様々な距離にある100個程
度の銀河団を長時間観測することが要求される。この目的のために、MDR時点で
の2年のミッション目標寿命を3年に延ばすことで、この科学界からの要求に応え
ることを目指す。
そのためにはカロリメータ冷却系にジュールトムソン(JT)冷凍機が必要である。
(c) NEC
4-3. ASTRO-H衛星概要
・2013年打ち上げ
・高度550km, 傾斜角31度
・総重量: 2.4t
・全長(伸展後): 14m
4-4. 全体配置図
30
4-5. ASTRO-H衛星観測機器
硬X線撮像システム
世界初の硬
X
線帯での集光撮像系
軟
X
線分光システム
超高分解能
X
線マイクロカロリメータ
+
冷凍機
(すざく
XRS
の改良版)
軟
X
線撮像システム
世界最高性能の国産
X
線
CCD
カメラ
軟ガンマ線検出器
日本独自の超高感度半導体ガンマ線
コンプトンカメラ
4
種類の観測システムによって、
3
桁におよぶ広帯域において、
「すざく」より
10
倍から
100
倍高感度の観測を実現する
観測エネルギー
(電子ボルト)
4-6. 観測機器配置
32
(SXS 43> @ ) (SXI 43>@ ) (HX I 43>@ ) SXT-I SXT-S HXT1 HXT2 STT-S-A STT-S-B伸展式光学 ベンチ(6m)
天体X線
硬X線撮像検出器 (HXI)
軟X線望遠鏡
(
SXT-S
,
SXT-I
)
X線マイクロ
カロリメーター
(
SXS
)
X線CCD
(
SXI
)
硬X線望遠鏡 (
HXT
)
軟ガンマ線検出器
(SGD)
焦点距離=12m
焦点距離=6m
HXT HXT
SXT-I
STT
SXT-S
太陽方向 固定式光学 ベンチ(6m)
4-7. 観測機器基本要求・仕様一覧
基本要求 基本仕様 硬X線撮像システム
(HXT+HXI)
5-80 キロ電子ボルト (keV)
かに星雲の10万分の1の強度の天体(点源)の観 測が可能な感度を10 キロ電子ボルト以上で確 保すること。放射化バックグランドのラインを 同定できるエネルギー分解能を持つ事。
有効面積 300 cm2 (@30 keV)
角度分解能 1.7 分角(HPD) エネルギー分解能 2 keV 視野 9分角 @30 keV 軟X線分光システム
(SXT-S+SXS)
0.3-10 キロ電子ボルト
代表的な銀河団において、300 km/sの速度に 対するドップラー分光が鉄輝線の領域(6キロ電 子ボルト)で可能なこと。赤方偏移~0.1の典型 的な銀河団でそのビリアル半径の1/5を含む視 野とすること。
エネルギー分解能 7 eV 角度分解能 1.7 分角(HPD) 有効面積 210 cm2 (@6 keV)
視野 3分角 @6 keV 軟X線撮像システム
(SXT-I+SXI)
0.5-12 キロ電子ボルト
正確な広帯域スペクトルを測定するために、硬 X線撮像システム、軟X線分光システムよりも倍 以上広い視野を持ち、観測天体の周辺領域を同 時に観測できること。
角度分解能 1.7 分角 (HPD) 有効面積 360 cm2 @6 keV
エネルギー分解能 150 eV 視野 35 分角 @6 keV 軟ガンマ線検出器
(SGD)
10-600 キロ電子ボルト
かに星雲の1000分の1程度の強度で、べき1.7 の放射を持つ天体(点源)10個以上に対して、ス ペクトルを600 キロ電子ボルトまでの領域で観 測できる感度を持つ事。
有効面積 100cm2 @100 keV
エネルギー分解能 2 keV @40 keV 角度決定精度<0.6度 (E<150 keV)
ミッション
機器群
(c) NEC
4-8. ASTRO-H衛星ブロックダイアグラム
従来の科学衛星の経験/資産を活かす
バス系機器は冗長構成を基本とし、ミッション機器はバス系と独立設計
スペースワイヤーネットワークを用いた分散、高信頼度設計を採用
望遠鏡重量比較
Chandra 1500 kg
X MM 440 kg
Suzaku 20 kg
ASTRO -H 70-80 kg
X
線望遠鏡有効面積
エネルギー
(
キロ電子ボルト
)
有効面積
(cm
2
)
4-9. 硬X線望遠鏡 (HXT)
•
日本の独自技術を用いた初めての硬X線望遠鏡
•
10 キロ電子ボルト以上での大きな集光面積
•
「すざく」を継承した軽量化技術
•
気球実験などにより技術実証済み
ASTRO-H/HXT
4-10. 硬X線撮像検出器(HXI)
36
シリコン撮像素子(4層)
+
テルル化カドミウム(CdTe)撮像素子
BGO結晶
+アバランシェ
フォトダイオード
コールドプレート
衛星伸展プレート
衛星
放熱板
•
独自技術を用いた広帯域撮像素子(化合物半導体)
•
10キロ電子ボルト以上の硬X線帯での高い検出効率
•
すざくの技術を継承した低バックグラウンド化
•
多段構成による性能の向上
エネルギー (キロ電子ボルト)
4-11. 軟X線分光撮像検出器 (SXS)
実験室での
最高分解能
スペクトル
日米国際協力
X線領域で,4-7電子ボルトのエネルギー分解能をもち,
超精密分光観測が可能な最先端観測装置(冷却システムをロバストな設計に)
‒
すざくで実証済みの技術を用いる
‒
宇宙の極限状態を量子力学のレベルで観測可能に
‒
X線でしか直接測れない銀河団高温ガスの乱流,銀河団の衝突の速度を測定できる
‒
宇宙の極限状態を量子力学のレベルで観測可能に
エネルギー (電子ボルト)
温度計
熱容量
X線エネルギー
熱伝導度
低温熱浴
4-12. 軟X線撮像検出器(SXI)
50mm
専用ASIC開発
(阪大、JAXA)
CCD開発
(阪大、京大 + 浜松ホトニクス)
38
CCDアセンブリ
バッフル
冷凍機
•
国産の高性能X線CCD
•
広い視野(約30分)での撮像・分光
•
エネルギー帯域:0.3-12キロ電子ボルト
4-13. 軟ガンマ線検出器(SGD)
•
日本のオリジナルの 設計概念「狭視野コンプトンカメラ」
• コンプトン運動学を用いた検出器バックグラウンドの低減
• コンプトン散乱による偏光測定
•
エネルギー帯域:10-600 キロ電子ボルト
• エネルギー分解能 < 2 keV @ 40 keV
cos
=
1
+
m
ec
2E
1
+
E
2m
ec
2E
2
コンプトン運動学
4-14. 技術成熟度の分析
-
X線マイクロカロリメータ (SXS): すざくの踏襲
-
硬X線望遠鏡 (HXT): 気球実験実証済み
-
X線CCD(SXI) : 試作試験モデル(BBM)試作・評価実施済み
-
硬X線イメージャー(HXI): BBM試作・評価実施済み
-
軟ガンマ線検出器(SGD): BBM試作・評価実施済み
(世界トップレベルの独自技術であり、民生応用が進行中)
•
全ての機器で「すざく」などの既存資産を最大限に活用している
•
光学ベンチ伸展機構:「はるか」の技術を利用
•
スペースワイヤ: 小型衛星計画と連携、国際委員会の中心メンバー
•
新規開発要素の多い観測機器についても、これまでのフロントローディング
により、すでに十分な開発実績を持っている。
5-1. ASTRO-H衛星スケジュール(計画)
FY
H19
H20
H21
H22
H23
H24
開発段階
研究段階
打ち上げ
H25
H26
定常運用
初期
運用
H27
H28
試験観測フェー
ズ
第一回公募観測期間
第二回公募観測期間
42
5-2. 開発体制 (全体)
データ共有
ミッション
機器開発
宇宙科学研究本部
ASTRO-H
NASA他
国内大学・研究機関
(24機関)
+
国内メーカー
全世界の宇宙物理学研究者に公開
検証ずみサイエンスデータ
宇宙科学データベース
海外 (大学・研究機関の所属国)
米、 英、 独、仏、カナダ、オ
ランダ他
衛星バス
機器開発
国内メーカー
Technical /Science
Working Group
5-3. JAXA内実施体制
理事長
構造・機構グループ 誘導・制御グループ
熱グループ
宇宙科学研究本部内
専門技術組織
・・・ ほか8グループ
研究開発本部
プロジェクトの技術 開発支援
安全・信頼性推進部
安全・信頼性に関する チェック・提言 連携・支援
連携・支援
評価・支援
評価・支援
プロジェクト サイエンティスト
システムズ・エンジニア リング推進室
コストを含めたプロジェクト 推進に関するチェック/提言
サ
イ
エン
スチー
ム (大学、研究機関)
プロジ
ェクト共同研究員
サ
イ
エン
スチー
ム (
JAXA
)
プロジェクトマネージャ
・プロジェクトチーム業務の統括 ・衛星システム開発・運用 ・上記に付帯する試験 ・上記に必要な施設・設備
・プロジェクトの品質保証・安全管理
宇宙科学研究本部 本部長
理事 井上 一
宇宙科学研究本部の業務を掌理する
宇宙科学プログラムディレクタ
教授 小野田淳次郎
本部長を補佐し、その命を受け、宇宙科 学プログラムに関する業務を総括する
宇宙輸送ミッション本部
追跡運用支援
44
5-4. 国内の実施体制
東京大:
スタッフ2+学生8
埼玉大:
スタッフ3+学生10
理化学研究所:
スタッフ8+学生7
岩手大:
スタッフ1
ぐんま天文台:
スタッフ2
金沢大:
スタッフ4+学生7
広島大:
スタッフ4+学生19
愛媛大:
スタッフ2+学生6
宮崎大:
スタッフ3+学生8
芝浦工大:
スタッフ1
中央大:
スタッフ1+学生3
東工大:
スタッフ3+学生9
京都大:
スタッフ4+学生11
神戸大:
スタッフ1+学生5
大阪大:
スタッフ6+学生10
名古屋大:
スタッフ8+学生11
宇宙科学研究本部: スタッフ21+学生30
首都大:
スタッフ3+学生8
工学院大:
スタッフ1
青山学院大:
スタッフ3+学生11
東京理科大:
スタッフ1+学生10
日本大:
スタッフ3+学生2
立教大:
スタッフ3+学生7
日本のX線天文グループ
合計: 96 + 182 = 約280人
大型科学ミッションは、
それを支えるコミュニティの
強い「力」の結集が必要
JAXA(科学研究本部):
スタッフ7
日本福祉大:
45
USA:カリフォルニア州立大学
USA : カリフォルニア工科大学
USA : NASA/GSFC
フランス : CEA/SACLAY
HXI/SGD
5-5. 国際協力による実施体制
宇宙科学
研究本部
国内大学
X線グループ
イギリス:レスター大学
イギリス:ケンブリッジ大学
ドイツ:マックスプランク研究所
USA:NASA/GSFC
Science Working Group
USA:GSFC
USA : ウィスコンシン大学
オランダ:SRON(予定)
USA : イェール大学(予定)
SXS
ドイツ:マックスプランク研究所
USA : MIT
イギリス:レスター大学
SXI
Technical Working Group
XRT
USA:NASA/GSFC
+
USA : スタンフォード大学
Technical Working Group
Technical Working Group
46
5-6. 資金計画
ASTRO-Hプロジェクトの資金計画は、JAXAが負担する
衛星開発費(約161億円)と運用費
(注)
(約14億円)で、
合計
約175億円
を目標とする。(打ち上げロケットを含まない)
(注: 地上系、ソフトウェア開発を含む。ただし他ミッションとの共通経費は含まない)
NASAは、$44MをSXS開発・運用・打ち上げ後の科学
プログラム費用として供出することを決定済み (参考資料参照)。
参考: 過去のX線衛星開発費
Chandra (米国、重量 4.8t) : $1650M (+ 運用費 $750M)
Swift (米国、重量 1.5t) : ~$210M
6-1.リスク管理方針
(1)リスク管理方針
ASTRO-Hプロジェクトのリスクについては、JAXAの標準である「リスクマネジメ
ントハンドブック」(JMR-011) に基づき、「ASTRO-Hリスクマネジメント計画書」
としてまとめ、開発期間を通して維持管理を行う。
(2)リスク管理の実施計画
リスク管理体制の構築
プロジェクト内外の役割と責任を決定し、リスク管理を実行する体制を構築する。
経営企画部
安全・信頼性推進部
JAXA
企業
宇宙科学研究本部
・プロジェクトのリスクマネジメントの把握 ・リスクが顕在化した場合の本部内対応 (資金・スケジュール再配分、体制強化等) ・プロジェクトのリスク
マネジメントの把握
・リスクが顕在化した場合の 全社的対応(資金・スケ ジュール再配分、体制強化等)
・JAXAの活動のルールの設定 ・ハンドブックの制定・維持改訂
・プロジェクトのリスクマネジメントの責任者 ・リスクマネジメントの計画
・リスクマネジメントの実行 (識別、評価、対処、監視) ・リスク情報の伝達 (関係者への伝達、後続への反映)
・企業内のリスクマネ ジメントの計画 ・リスクマネジメントの 実行
宇宙科学プログラムSE室
47
6-2. リスク管理方法
リスク管理の実行
プロジェクトの開始から終了まで、継続的に以下のリスク管理を実行し、
開発へのフィードバックを図る。
リスク項目の識別
リスクの評価
リスク項目への対処
リスク項目の監視
プロジェクト
の開始から終
了まで継続的
に実施する
リスク情報の伝達
⑤関係者への伝達を行い、リスク情報を共有する。
プロジェクト完了後は後続プロジェクトへの反映・教
訓をまとめる。
①設計結果に基づく知見、既開発衛星からの知見、不具合
情報システム、信頼性解析手法、独立評価等からリスク
項目を識別する。
②発生可能性、影響度からリスク
の大きさを評価する。(*)
③許容できないリスクに対し対処策
または代替策を準備、許容できる
リスクは監視を継続する。
④リスク項目の対処状況を監視し、リスク項目が
完了基準を満たした場合は完了とする。
未了のリスクについては、再度リスクの識別・評価を行う。
(*)リスク中以上は
特に詳細に管理する
小- 中 -大 発生の影響度 発
生 可 能 性
大 | 中 | 小
リスク大
リスク中
リスク小
6-3.リスク識別と対処方針
(衛星プロジェクトレベルのマネジメントリスク)
(注)カテゴリ1:JAXA/プロジェクトのコントロールが困難な外的要因が主で、必要に応じて追加コスト、スケジュール見直しを要するもの カテゴリ2:内的要因が主で、開発研究段階で新たにリスクとして識別されたもの
カテゴリ3:内的要因が主で、開発研究段階で処置されたため、リスクが低減したもの
リスク項目 プロジェクト 開発研究段階での対処計画 H-IIAロケット打上げの遅延
【カテゴリ1】
ロケット H-IIA打ち上げの遅延に備え、代替ロケットを想定し、それらの ロケットに適合できる衛星設計要求とする。また、打ち上げ遅 延の状況に応じた対応を取る計画とする。
衛星開発の遅延 【カテゴリ2】
衛星 開発作業項目をブレークダウンし、衛星開発の全フェーズでク リティカルパスを明確化するとともに、マスタスケジュール等 でスケジュールの進捗管理を徹底して、スケジュール遅延を未 然に防ぐ。
円滑な国際協力 【カテゴリ1】
衛星 情報共有のための定期的な打合せを行う。また国際メンバーに よる技術ワーキンググループを立ち上げる。
外的要因(他のミッションでの不具合など) により安全性、設計基準が変わる
【カテゴリ1 】
衛星 明らかになった時点でスケジュール及びコストのインパクトが 最小になるように対策を実施する。
プロジェクト化の遅れによる大学等の離脱 【カテゴリ2】
--- プロジェクト化が遅れた場合、全国の大学・研究機関からなる ASTRO-H開発・実施体制が崩れる恐れがあるので、早期のプ ロジェクト化に努める。
リスク項目
サブシステム
開発研究段階での計画
JT冷凍機を用いた冷却系
【カテゴリ
2
】
ミッション
(SXS)
PMの設計と熱構造解析を実施する。
固定式・伸展式光学ベン
チと軌道上アライメント
【カテゴリ
2
】
システム、構造
系、姿勢系
早期に設計を行い、構造解析を実施する。 衛星
姿勢系と合わせた設計検討と地上実証を行う。
実現性の見通しがあるものの、クリティカルな技術として開発研究に
おいて意識する必要がある以下のものに関しては、可能な限りのフロ
ントローディングを行い、リスクの低減をはかる。
(注)カテゴリ1:JAXA/プロジェクトのコントロールが困難な外的要因が主で、必要に応じて追加コスト、スケジュール見直しを要するもの カテゴリ2:内的要因が主で、開発研究段階で新たにリスクとして識別されたもの
カテゴリ3:内的要因が主で、開発研究段階で処置されたため、リスクが低減したもの
6-4.リスク識別と対処方針
(技術リスク)
これまでの経緯
52
平成
14
年
6
月
NeXT
ワーキンググループを結成
平成
15
年
11
月
「
NeXT
計画提案書」を宇宙理学委員会に提出。
平成
17
年
7
月
「すざく」衛星打ち上げ成功
平成
17
年
9
月
「
NeXT
計画提案書」を宇宙理学委員会に提出。
平成
18
年
2
月 第
9
回宇宙理学委員会における審査で、プリフェーズ
A
が終了
したという判断が行われる。この段階でミッション要求審査
(MDR)
と
システム要求審査(
SRR
)とが完了。
平成
19
年
6
月
JAXA
内プロジェクト準備審査
ミッション機器に対するフロントローディングや設計検討を実施
平成
20
年
2
月
衛星バス部開発に対し、指名型の無償技術提案
(RFP)
を実施
平成
20
年
5
月
システム定義審査
(SDR)
平成
20
年
6
月
NASA SMEX MoO(
注
)
に
NeXT
搭載検出器
SXS
が選定
(
全
17
件中の
2
件
)
SMEX MoO :“小規模から中規模の宇宙科学計画を推進するためのプログラム(Small Explorer Program;
宇宙の進化と構造
暗黒エネルギー
ダークマター
バリオン
現代の学説:宇宙が膨張するにつれて物質の 密度が暗黒エネルギーの密度に近づいて宇宙 膨張の速度が減速から加速に転じた。宇宙の 構造はこの過程で作られた。
宇宙のエネルギー密度
72% 23%
4.6%
今日の宇宙
53
ビッグバン インフレーション
最初の 星々
星、銀河 ブラックホー ルの発達
宇宙膨張の加速
ダークマター優勢 暗黒エネルギー優勢
137
133
50
0
ビッグバン
現在からさかのぼった宇宙の年齢(億年)
日経サイエンス(2007)より
http://hetdex.org/より
宇宙マイクロ波
背景放射 WMAPによる最新結果
スローンデジタルスカイサーベイ
(可視光)による銀河の分布
網の目の大規模構造が観測されている。
~
3
億光年
(100 Mpc)
青
:
ダークマター
白
:
銀河
宇宙の大規模構造と銀河団
網の目の構造の結節点に銀河団
(
直径~数
Mpc)
ができ
る。
宇宙進化の計算機シミュレーション
銀河団は宇宙最大の天体。
90%
の質量を占めるダーク
マターの作る重力ポテンシャルに高温ガスと銀河がト
ラップされている。
エクストラに期待される科学成果
5. 銀河団進化におけるダークマター・暗黒エネルギーの役割の探求
1
)銀河団内の暗黒物質の分布と総質量を、従来の高温ガスの静的な分布だけではなく、運動エネル
ギーや非熱的エネルギーを加えて測定し、他の波長の結果などと比較しながら、X線データに基づいた
正確な質量決定の手法を開拓することが必要。
55
2
)暗黒エネルギーが重要な役割を果たし始める約80億光年までの宇宙(赤方偏移<1)で、数10個
の銀河団内の暗黒物質の総質量を測定し、総質量と銀河団数の関係を年代ごとに決定して、銀河
団の進化を解明し、それをダークマターやダークエネルギーの考えにもとづく宇宙論的進化のシ
ナリオと比較する。
暗黒物質の分布 対応する銀河団高温ガスの分布
暗黒物質の分布の進化
スーパーコンピュータによる シミュレーション
スーパーコンピュータによる シミュレーション
スーパーコンピュータによるシミュレーション
宇宙誕生後 47億年後
現在
ASTRO-G
ASTRO-H
ASTRO-G
と
ASTRO-H
による相補的観測
56
ASTRO-Gは、数10Mpc までのブラックホールに対して、超高空間分解能(数10マイク
ロ秒角)で直接撮像観測を行って、ブラックホールに肉迫した領域の構造の解明を行う。
ASTRO-Hは、さらに100倍程度も遠い距離までのブラックホールに対して、精密分光
観測と広帯域エネルギースペクトル取得を行って、ブラックホール極近傍での相対論的
時空構造の解明や、隠れたブラックホールの探査を行う。
巨大ブラックホールからのジェットの模式図
巨大ブラックホールのジェットからの 広帯域エネルギースペクトルの例
巨大ブラックホールのジェットからは、15桁以上にも及ぶ広い波長のエネルギーが放射
2000
2005
2010
2015
海外ミッション
日本のミッション
Suzaku
MAX I
海外ミッション(日本参加予定)
2020
全天サーベイ(ISS)
Con-X
Swift
Chandra
XMM-Newton
世界のX線天文学将来計画
Xeus
ASTRO -H
硬X線ミラー+カロリメータ+X線CCD+軟ガンマ線検出器 によるX線国際天文台
究極の大ミッション
ガンマ線バースト +硬X線全天サーベイ
N uStar
硬X線ミラーだけのミッション
Simbol-X
硬X線ミラーだけのミッション
SRG
ASTRO-Hの海外競合ミッション
Spect r o- imaging inst r ument
Cd(Zn)Te Si