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マクロ経済学 14
財政政策の再検討
慶田 昌之
財政政策
IS-LMモデルでは、政府が財政支出Gを増加させることに
よって、Y を増加させることができた。
新古典派マクロ経済モデルでは、Gの増加はY になんら影響 を与えない。
公債の発行
財政支出をまかなう方法は、税T による方法と、国が公債を 発行する方法(国債)がある。
税は、短期的には大きく変動させることが難しいために、財 政支出をまかなうために、しばしば国債が発行される。
公債の発行
現在の日本では、長期に渡る不況のために多額の国債発行に よって、国債発行残高が多額になっている。
公債の発行
財政乗数
公債発行による財政支出(すなわちTを増やさずGを増や す政策)は、45度線の理論によれば、限界消費性向をcとす ると、財政支出Gが一単位増える毎に1/(1 − c)分だけY を 増やす。
∆Y
∆G = 1 1 − c これを財政乗数とよぶ。
税による財政支出の効果は、これよりは小さいと考えられ る。(可処分所得Y − T が減少するため)
この分析では、ケインズ型消費関数が重要な役割をはたして いることに注意すること。
財政乗数
ここに図1が入ります。
公債の中立命題
将来にわたって合理的に行動する家計を仮定すると、この結 果は修正されることになる。
いま、2期間生きる家計を考えよう。単純化のため、1期目 に所得w = Y のみを得るとする。
公債の中立命題
この家計が、財政支出や税に影響を受けないとする。 貯蓄をSとすると、この家計の1期目の予算制約は
C1+ S = w
2期目は、貯蓄Sを取り崩して消費をするので、 C2 = (1 + r)S
2期目の予算制約をSで解いて、1期目の予算制約に代入す ることで
C1+ C2
(1 + r) = w が得られる。
公債の中立命題
公債の中立命題
さて、1期目に税T1を家計から徴収し、1期目に財政政策を 行う場合を考えよう。したがって、G = T1
1期目の予算制約はT1を支払わなければならないので、 C1+ S + T1= w
2期目は、財政政策はなんら影響を持たないので、前の場合 と同様、
C2 = (1 + r)S 同様の代入によって、
C1+ C2
(1 + r)+ T1 = w が得られる。
公債の中立命題
次に、G = T1の財政支出を、公債(国債)発行でまかない、 2期目にそれを償還する方法を考える。
この場合、償還する際には、税を家計に課して資金を得る。 この税T2とする。(前の場合のT1とは関係ないことに注意。)
公債の中立命題
国債の発行額をBとしよう。財政支出Gの額は変わらない ので、B = Gである。
家計の1期目の予算制約は、国債を購入しなければならない ので
C1+ S + B = w
2期目は、貯蓄Sとともに、国債Bも利子をともなって償還 される。
しかし、同時にT2が税として課される。 C2+ T2 = (1 + r)(S + B)
公債の中立命題
これを(S + B)について解いて、1期目の予算制約式に代入 することで、
C1+ C2 (1 + r) +
T2
(1 + r) = w が得られる。
公債の中立命題
ところで、政府はBの国債発行によって財政支出Gをまか なう。したがって、
B = G
また、税T2は、発行した国債に利子をつけて支払えなけれ ばならない。
T2= (1 + r)B これは、政府の予算制約式と考えられる。
公債の中立命題
家計が、この政府の予算制約式を正しく理解しているとす ると、
G = T1 = B = T2 (1 + r) であることがわかる。
したがって、
T1= T2 (1 + r)
より、税による財政支出と、公債発行による財政支出は、家 計の予算制約式を変化させないことがわかる。
したがって、家計の消費には何の影響も与えないことがわ かる。
公債の中立命題
以上の分析から理解される、税による財政支出と公債発行に よる財政支出が家計の行動に変化をもたらさない、という主 張を、公債の中立命題という。
公債の中立命題が成立するためには、
発行された公債を購入した世代に償還され、償還のための課 税もされる。
家計は政府の予算制約を理解している。 一括税(lump-sum tax) である。
公債の中立命題
公債の中立命題が成立するかどうかは、実証上の問題である。 政府が財政支出のために国債を発行すると、家計はある程度 の貯蓄を増加させる傾向があるが、将来の課税に完全に対応 できるほどではないという結果もある。
課税平準化の理論
現実の税は、一括税ばかりではない。
公平な税を国民の間で負担し合うために、累進的な税制が導 入されている。
一括税ではない税制は、家計やその他の経済主体の経済行動 に歪みをもたらすという意味で、distortionary taxと呼ば れる。
課税平準化の理論
このような課税の歪みによるコストを最少化する方法とし て、課税平準化の理論が考えられている。
課税平準化の理論によると、
将来、財政支出が増える豊そうされる場合には、現在から課 税を増やすべき。
戦争のように、一時的に大きく財政支出が増加する場合には、 公債の発行によって財政支出をまかなうべき。
という結論が得られている。