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第8回研究会資料 原因論 原因論研究会

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原因論 第十三章 改訂版1

小林 剛

115 魂すべてにおいて感覚可能な諸事物が存在するのは1、それら諸事物にとって[魂が] 範型であるということによってである。そして知性的諸事物が魂において存在するの は2[魂が]それら知性的諸事物を知っている3からである。

In omni anima res sensibiles sunt per hoc quod est exemplum eis, et res intellectibiles in ea sunt, quia scit eas.

116 [魂が]そのようになっているのはただ魂が、動かされないものである知性的諸事物 と、動かされるものである感覚可能な諸事物との間に広がっている4からである。 Et non facta est ita nisi quia ipsa expansa est inter res intellectibiles quae non moventur et inter res sesibiles quae5 moventur.

117 そして魂はこのようであるので、物体的諸事物に刻印するということになる。この ため[魂は]諸物体の原因となっており、かつ、魂以前に在る知性体に由来する結果ともな っている。

Et quia anima sic est, fit quod imprimit res corporeas, quapropter facta est causa corporum et facta est causata ex intelligentia quae est ante eam.

118 だから、魂によって刻印される諸事物は、魂においては範型という意味で存在す る。すなわち、感覚可能な諸事物は魂が有する範型にかたどられる6のである。そして、 魂の上位に位置する諸事物は、魂においては獲得されるという仕方で存在する。

1 11107「感覚が魂のうちに魂的な在り方で[在る]」を意識しているのであろう。

211107「知性体が魂のうちに魂的な在り方で [在る]」を意識しているのであろ う。

3 アラビア語原文では「魂がそれら知性的事物にとってしるしである」となっている。そ れがどうしてこのようにラテン語訳されたかは不明。「しるし」ʻalamunを「知っている」 ʻalimaと読んでしまったのかもしれない。しかしここでは主語が女性名詞「魂」nafsを指 す女性形の指示代名詞なので、「知っている」ならばʻalimatとなっていなければなら ないはずである。

4 アラビア語原文のライデン写本では「媒介する」mutawassiとなっているが、イスタン ブール写本では「広がっている」mabsūṭとなっている。ラテン語訳者はこちらの系統の写 本を見ていたのかもしれない。

5 アラビア語原文のライデン写本ではここでは関係代名詞を使っていないが、イスタンブ ール写本では使っている。ラテン語訳者はイスタンブール写本系統の写本を見ているのか もしれない。

6 アラビア語原語では「類似する」mathalat

(2)

Res igitur quae imprimuntur ex anima, sunt in anima per intentionem exempli, scilicet quia res sensibiles exemplificantur secundum exemplum animae, et res quae cadunt supra animam, sunt in anima per modum acquisitum.

119 それゆえ、以上のようであるので、我々は戻って次のように言おう。すべての感覚 可能な諸事物が魂のうちに在るのは原因という仕方でである。ただし魂は[感覚可能な諸事 物の]範型因である。

Cum ergo hoc sit ita, redeamus et dicamus quod res sensibiles omnes in anima sunt per modum causae, praeter7 quod anima est causa exemplaria.

120 そして私は魂[ということ]によって、感覚可能な諸事物を生み出す8力のことを考え ている。

Et intelligo per animam virtutem agentem res sensibiles,

121 しかしながら、魂における作用力は質料的なものではなく、魂における物体的力は 精神的なものである。そして、広がり9を有する諸事物に刻印をする力は広がりなしに存 在する。

verumtamen virtus efficiens in anima non est materialis, et virtus corporea in anima est spiritualis, et virtus imprimens in rebus habentibus dimensiones est sine

dimensione.

122 知性的諸事物は、魂においては付帯的な仕方で存在する。すなわち、分割されない ものである知性的諸事物は、魂においては分割可能な仕方で存在する。だから、一体的で ある知性的諸事物は、魂においては多数化される仕方で存在し、動かないものである知性 的諸事物は、魂においては運動という仕方で存在する。

Res autem intellectibiles in anima sunt per modum accidentalem, scilicet quia res intellectibiles quae non dividuntur sunt in anima per modum divisibilem. Ergo res intellectibiles unitae, sunt in anima per modum qui multiplicatur, et res intellectibiles quae non moventur sunt in anima per modum motus.

7 Pattinpropterと読んでいるが、アラビア語原文は「~以外」ghayraなので、Taylor に従ってpraeterと読む。

8 「に作用する」とも訳せるが、諸訳は「を生み出す」に近いニュアンスで訳出してい る。すなわち旧和訳は「生ぜしめる」、英訳はmakes、仏訳はproduitと訳している。し かしTaylor訳acting upon、独訳wirktは「に作用する」に近い。

9 三次元のことが考えられている。

(3)

123 だから以下のことはすでに明らかとなっている。すなわち、知性的諸事物と感覚可 能な諸事物とが魂において存在する10。しかしながら、感覚可能で、物体的で、動く諸事 物は、魂においては魂的で、精神的で、一体的な仕方で存在し、知性的で、一体的で、休 らっている諸事物は、魂においては運動しつつ多数化される仕方で存在する。

Iam ergo ostensum est quod res intellectibiles et sensibiles sunt in anima, verumtamen res sensibiles, corporeae, motae sunt in anima per modum animalem, spiritualem, unitum, et quod res intellectibiles, unitae, quiescentes, sunt in anima per modum qui multiplicatur, motum11.

10 アラビア語原文では「諸事物はすべて、知性的なものも感覚的なものも魂のうちに在 る」となっている。

11 motumのアラビア語原語mutaḥarrikatmutaḥarrikatanと読むべきであると思われ る。つまり、主語である「諸事物」al-ashyā’を指す女性、単数の指示代名詞hiyaと性、 数が一致している非限定、対格の能動分詞で、主語の状態を示しており、「運動しつつ」な ど訳すべきである。ここをPattinはsecundum motum「運動に即して」)と読んだが、 motumだけでも、形容詞が中性、対格で副詞化したものと捉えれば同様に読めるので、 多くの写本とともにTaylorに従ってsecundumを削除する。

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