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本種においてもウミタナゴ同様に, 求愛・交尾行動はOlder雌雄間, YOY 雄雄間だけで観察され, Older個体とYOY個体の聞では配偶は行われないと いう size assortative matingが行われていることが明らかになった。 また,

前述のようにOlder雄とYOY雄の縄張りは重なり合っており, 両者間で縄張 り行動は見られないことが分かつた。 本種では size assortative matingが行 われるために, Older雄とYOY雄の閣で雌を獲得する競争が起こらないと考 えられた。

交尾期におけるYOY雄とOlder雄閣の体長差を検討してみると, Older雄 では, 採集標本では体長102.3 mmの1歳魚から体長145.0 mmの2歳魚までが 認められた。 Older雄内の体長差は最大1.42倍認められ, このOlder雄内で Older雌獲得を巡って競争が行われた。 また, YOY雄間の体長差は最大1.52 倍で, これら雄間でYOY雌獲得の競争が認められた。 次に, YOY雄と 01der雄聞で、平均体長を比較すると, Older雄の体長はYOY雄の体長の1.64 倍であったが, この両者間では求愛・交尾行動は行われなかった。

この理由として, ウミタナゴの場合と同様に幾つかの可能性が考えられ

る。(i)YOY雄はOlder雌との体長差が大きい(Older雌/yOY雄=1.70) ため にOlder雌と精子の受け渡しができず交尾できない。(ii)体長差1.42倍の Older雄聞で‘は雌獲得を巡って競争する利益がある。 しかし, 体長差が1.64 倍あるOlder雄とYOY雄間では, YOY雄側の損失が大きい。 従って1年目の

交尾期には, YOY雄(雄間の最大体長差1.52倍)はOlder雄と競合しない YOY雌とだけ求愛・交尾する。 さらに, YOY雄ではfeed ing with fe male(s ) によって雌をmat ing s ite に誘導する等により, 交尾期間中も摂餌量を増や し, 成長率, 生残率を上げて翌年以降の繁殖成功度を高くしていることが推 察される。

7. 摂餌頻度

交尾期間中の摂餌頻度はYOY雌が最も高く, 次にYOY雄, Older雌の順 でOlder雄の摂餌頻度は低かった。

Older雄が摂餌頻度を押さえて繁殖成功, すなわち, 雌の獲得個体数を最 優先させることは, 自己の子孫をより多く残すために適応的であると考えら れる。

YOY雄で比較的高い摂餌頻度が見られたことは, 交尾期とはいえ摂餌を より多く行うことが必要なことを示している。 YOY雄には翌年以降にも交 尾の機会が残されているため, 当歳の交尾期には繁殖行動を行いつつも摂餌

頻度を高めてエネルギーを蓄えることは, 生活史戦略上適応的であると推測 される。

一方, 雌については, YOY雌, Older雌いずれにおいても交尾期の後に俵 妊するため(Hayase and Tan aka, 1980a) , 交尾期間中に十分摂餌する必要 があると考えられる。

以上のように, 各群の生活史戦略が, 交尾期における摂餌頻度に反映して

いるものと考えられた。

第4章 オキ タナゴの交尾生態

オキタナゴNeoditrema ransonnetiは北海道南部から九州中部の外洋性岩

礁域に広く分布する。 標準体長は12cmにしか達せず, 日本産ウミタナゴ科 魚類の中では最も小型の種である(Igarashi,1961 ;益田他,1984 ;中坊他,

1993)。 オキタナゴ属の本種はウミタナゴ属の2種に比ベて体高が低く, 体 は伸長する。 生時の体色は背面がやや黒色を帯びるが, それ以外は銀白色を 呈している(Fig.42)。 フォルマリン国定後は, 背面は黄褐色ー褐色, 腹面 は銀色を呈す。 また, 岩礁域の中層・表層にしばしば200-3∞個体以上の大群 で出現し(益田他,1984), 動物プランクトンを摂餌する(Hayase and Tanaka, 1980c)など, ウミタナゴ属と生息場所や食性などの生態が異なる ことが知られている。

本研究では, 交尾期に採集と潜水観察を行った。 これにより, 交尾期にお けるYOY個体とOlder個体の体サイズの相違を検討し, 雄の二次性徴を明ら かにすること, また, 交尾期の社会構造, 求愛・交尾行動, size assortative matingの有無について明らかにすることを研究の目的とした。 これらの結 果より, 中層-表層に生息する本種の交尾生態の特徴について考察を行った。

1. 方法

1.

野外観察

(1)観察場所

大分県南海部郡上浦町の福治漁港, 蒲戸漁港と, これら漁港周辺の水深

Oふ20 mの岩礁を調査場所とした。 これらの水域は豊後水道に面する佐伯湾 の湾口近くである(Fig.43・A, B)。 福治漁港には岸より延びる長さ120 m

と40 mの2本の防波堤があり, 1箇所の関口部を持っている。 船だまり面積

Fig.42. A school of Neoditrema ransonneti in the mid water column at the study area.

A

B

Kamlura

Salkl Bay

2 Km

Fig.

43.

Maps of Kyushu (A) and Kamiura (8) showing locations of study

area of

Neoditrema ransonneti.

約580m2, 最大水深約7mの小漁港である(Fig. 44-A )。 防波堤外側の岸壁 に沿って消波のためのテトラポットが設置されている(Fig. 44-B, C)。 福泊 港周辺の底質は岩盤または砂質で(Fig. 44-B), 直径1m前後の転石が散在 し, 中には直径5m, 高さ8m以上になる大きな岩もあったo 岩盤 の一部に は, ホンダワラ類やカジメが繁茂して藻場となっており, 温帯性魚類が生息 した。 調査場所にはウミタナゴ類はオキタナゴの他にウミタナゴが出現し,

縄張り行動や求愛行動が観察された。 海水温は1月に11.2 0 Cまで低下した が, 8月には27.2 oC に達した。 水中の透視度は部分的には梅雨期に3m以下 に低下することもあったが, 調査地の大部分では常時5・18mの透視度が得ら れ, 潜水観察に適していた。

(2)観察方法

1980年と1986年-87年に潜水調査を実施した。 本種では, 昼間は調査場所 に生息する個体が夜間は福泊港内で休息する, つまり, 薄明薄暮期に昼間の 活動場所と夜間の休息場所との間を移動する習性が報告されている

( Sakurai and Nakazono, 1995)。 このように, 本種もウミタナゴ属同様に 昼行性であった。 従って, 本研究の観察もすべて日出ー日没の聞の日中に実 施した。 1980年には蒲戸と福泊の 2 地点でSCUBAまたは素潜りによる観察 を原則として月 1回実施し, さらに, 交尾期の10・11月には潜水観察を出来 るだけ数多く行った。

1986年9月・翌年8月にかけては, 月3・25回の素潜りによる観察を行った。

さらに, 1986年10・12月の聞には, 福治漁港の外側に約4∞m2の観察区を設 け, 観察区内の海底地形図を作成した。 水中での雌雄の判別は, 後述する雄 の尾鰭に現れる二次性徴(Fig.45)によって行ったo 観察区内に出現した雄 57個体につ いては体長, 体側や鰭膜の傷の特徴から個体識別した。 雌は形態 的特徴が少なく, 個体識別は困難であったが, Older雌2個体は体側の傷によ

A C

:'.Beach'

30 m

Water surface

3m

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Tetrapod

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Fukudomari Harbor

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Fig. 44. Bottom feature of the study area at Fukudomari Harbor. A: Map of the Fukudomari Harbor, B: horizontal view,

C:

cross section at line

C.

A

B

Fig.45. Secondary Sexual dimorphism in caudal fin of male Neoditrema ransonneti.

A: male, 79 mm SL. Upper and lower lobes of caudal fin elongated into a filament. B: female, 86 mm SL. Both lobes of caudal fin do not elongated.

り識別できたので観察区への出現を連日観察した。 調査項目は個体識別した 雄の出現と出現場所, 遊泳軌跡, 求愛・交尾行動, 闘争行動, 摂餌行動, お よび雌の出現個体数である。 YOY個体とOlder個体の関係を調べるために求 愛・交尾行動, 雄同士の闘争行動は, 相手がYOY個体かOlder個体かを記録 した。 これらについて計173時間の潜水観察を行った。 観察結果は水中で耐 水紙に記録すると共に, 35ミリ水中カメラで記録した。

2. 形態学的特徴の観察

1980年10-12月には水中モリと釣りにより計68個体(雄34個体, 雄34個体) を採集した。 月別採集個体数は, 雄では, 10月12個体, 11月21個体, 12月 1 個体の計34個体, 雌では, 10月2個体, 11月32個体の計34個体であった。 採 集個体は直ちに10%フォルマリンにて液浸標本とした。 これらの標本は後日 実験室に持ち帰り, 尾鰭と腎鰭の二次性徴の有無から性別を判断し, 標準体 長, 体重の測定を行った。 すべての個体は胸鰭基部より鱗を採集して輪紋に より年齢査定を行った。 また, 一部の個体については胃内容物を顕微鏡下で 観察して食性を調査した。

1986年12月にはさらに計26個体(雄10個体, 雌16個体)を水中モリにより 採集し, 10%フォルマリン液浸標本として実験室に持ち帰った。 後日, 体長,

体重を測定・計量すると共に雄雄による形態、の差異と二次性徴を観察した。

このうち峰雄各2個体については, 顎骨部分の骨格標本を作製し, 歯骨と前 上顎骨を実体顕微鏡下で観察して, 鋸歯状突起の有無や形態を詳細に観察し た。

11. 結果

1. 雄の二次性徴

本種の雄では二次性徴が顕著であった。 Fig.45に採集された雌雄を示す。

雄の体色は雌に比べて全体に黒色が強く, 背鰭以外の各鰭と腹部が赤紫色を 帯びていた。 また, 雄の尾鰭上, 下端部の軟条は伸長し上端の軟条は下端の それよりやや長かった。

雄の前上顎骨と歯骨には鋸歯状の突起が発達した。 すなわち, 前上顎骨の 下面縁辺部には外側に向いて9本の, 歯骨の上面先端部にも前方を向いた1本 の鋸歯状突起が見られた(Fig.46・A)。 しかし, これらの突起は交尾期の 後半に採集した多くの雄では, 1・数本が欠損していた。 一方, 雌の顎骨には 交尾期にも鋸歯状の構造物は全く認められなかった(Fig.

46- B)。

雄の啓鰭にはウミタナゴ, オキタナゴと同様に, 鰭膜上に腺様体が発達し た。 しかし, 啓鰭軟条の後端が伸長することはなく, 瞥鰭付け根の半円状の くぼみも顕著ではなかった(Fig.45・A)。

2. YOY個体とOlder個体の体サイズの相違

1980年の採集標本に基づいて, 月別の採集標本を合わせた(雄=10四12月,

雌=10・11月)年齢, 体長組成, 体重を検討する。

まず, 雄の体長組成(Fig.47)と, 体長, 体重の測定と計量の結果

(Table 11)を示す。 体長組成を見ると, 各月を合わせても重ならず, 標準 体長72・86mm (mean 78.0 mm土4.4 SD, n =20)の群と, それより大きい 92・107mm (98.3 +4.2 SD, n=14)の群に明瞭に2分された。 年齢査定の結果 と照合すると, 小型群は当歳のYOY雄であった。 一方, 大型群はウミタナ ゴ属の2種と異なり, すべての個体が1歳のOlder雄であったo これらの2群は 体重も異なっており, YOY群は7.3 ・12.3 g (1 0.1 +1.4, n=20 ), Older群は

14.8・ 26.1 g (19.0+2.9, n=14) であった( Fig. 48, Table 11) 。 体長と体重の聞に は, YOY群, Older群ともにY=0.9113eo.0307x(r=0.9721, n=34)の式で示

される高い相関関係が認められた(Fig.48)。

A B

5 mm

Fig. 46. Sexual dimorphism of premaxillary and dentary in Neoditrema ransonneti.

Upper = premaxillary, lower = dentary. A: male, 78 mm SL. Nine

serrations directed outer side develop at lower margin of the premaxillary,

and a serration develops at upper tip of the dentary. 8: female, 88 mm SL.

No serrations develop at the premaxillary and dentary.

『司司...- �・h

ω eコs

3

官z

3

-‘。圃・

。 z

Total number

=

34

YOY male Older male

層圏0+

Cコ1+

5 4

3

2

60 70 80 90 100 110

SL (mm)

Fig.

47.

8tandard length (8し) distribution, age and two size groups (YOY and Older) of male

Neoditrema ransonneti

during the mating season.

120

Table 11. Standard length (SL), body weight

(BW)

of YOY and Older Neoditrema ransonneti collected during mating season in 1980. Size ratio shows average propo代ional value of each group to YOY -male.

Number of Sし(mm)

BW

(g) Size ratio

speclmen mean土SD mean+SD (/YOY-male)

(range) (range) SL

BW

ト4 YOY-male 20 78.0+4.4 10.1 :t 1 .4

炉ー・‘

.þ‘ (72-86) (7.3-12.3)

Older-male 14 98.3+4.2 19.0土2.9 1.26 1.88

(92・107) (14.8-26.1 )

YOY-female 9 91.0+5.5 16.2:t3.1 1.17 1.60

(83-100) (11.8-22.7)

Older-female 25 108.4士5.0 25.7 +4.5 1.39 2.55

(100-121 ) (15.4・35.3)

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