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求愛・交尾行動 (1) 求愛行動と交尾行動

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5. 求愛・交尾行動 (1) 求愛行動と交尾行動

雄は縄張り内を通過する雌に対して求愛行動を行った。 さらに, 縄張りか ら0.5・2 m離れた所を通過する雌に対しでも縄張りを飛び出して求愛し, 自 分の縄張りへ導こうとする行動 が観察された。 しか し, 縄張り外の雌に求愛 することは, 他の雄の縄張りに侵入することを意味し, 侵入雄は縄張り雄か ら激しく攻撃を受けた。 雄の求愛行動は以下に示す一連の行動によって行わ

『司�

Nov.25, 1986 11 :00・11 :15

5m

o

Start

End

Fig.

52.

Swimming path of an Older female and territories of males in

Neoditrema ransonnetì .

れた。

(a)求愛ダンス(courtship dance)

雄は縄張り内, またはその周辺に雌が来遊すると求愛ダンス(courtship dance)を行う。 これは, 雌の前方や上方で雌の進行方向を横切るように素 早く泳ぐ求愛行動である( Fig. 53・A)。

(b)体側誇示行動(lateral display)

courtship danceの後, 雄は雄と並行に定位しつつ頭部を雌の方へ傾けて,

雌を縄張りの中心へ誘導しようとするか, あるいは, 体を水平に倒し, 雌に 腹部を近づけて泳ぐ 体側誇示行動(lateral display)を行う(Fig.53-8)。

雄は courtship dance やlateral display を行う問, 体色を変化させた。 この 時の雄の体色は, 縄張り雄同士の誇示行動を行う場合と同様で, 体側に一本 の白色縦帯と白色斑紋が認められた。 以上の過程を経て, 雄は雌を群れから 誘い出し, 雌雄はベアを形成した。

(c) copulation

交尾(copulation)は, 縄張りが海底部分を合む場合には海底の物陰

(=mating site)で行われたが, 縄張りが表層ー中層部分しか合まない場合に は, 縄張りの中心付近の水深1-3 mの中層で行われた。 それぞれの交尾に至 る行動を以下に記す。

(c) -1 縄張りが mating siteとなる海底を合む場合

mating site が海底にある場合には, ベアはゆっくりと泳ぎながら海底の mating site へと移動した。 そこで雌雄は各鰭を拡げて直径約15 cmの円を描 くようにお互いを追尾しながら泳いだ(chasing each other, Fig. 53・C・1)。

A

Female

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ぐφ))</'/

一��ー

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保諺《 》之さ診

〉建造診

0・1

0-2

Female

Fig.53. Sequence of courtship behavior and copulation in

Neoditrema ransonneti.

A: couはship dance of the male,

8:

lateral display,

C-1:

chasing each other (the male and the female chase each other while swimming in a circle),

D・1

: copulation near the bottom by the pair,

C・2:

circling (the male swim around the female which remains motionless in his territory) in

この円運動は最初はゆっくりであったが, 次第に早くなり5-8秒間継続した。

この円運動 のスピードが最高になると, 雌雄共に急に泳ぐ速力を落とし雄は 雌のやや前に出て体を水平に倒した。 さらに, 雄はその姿勢のまま胸鰭を 使って泳ぎながら雌の頭部のすぐ下を腹部の方から通り過ぎた。 このように,

雄は体を水平にして雌の下を一往復した後, その姿勢のまま生殖口を雌の生 殖口に接触させて交尾した(Fig.53・D・1)。 雄が体を水平に倒して泳ぐ時聞 は約7秒で, 交尾は約2-3秒で終わった。

(c)・2 中層域だけに縄張りを持つ場合

中層域に縄張りを持つ雄は, ベアを形成した後に雌の周囲を直径約50-80 cmの円を描いて泳いだ(circling, Fig. 53-C-2)。 この時, 雌は雄の描く円の 中心で静止していた。 さらに, 雄は時々雌の前方で静止して轡鰭付近を小刻 みに震わせた。 circlingは約20・30秒間続き, こ の後雄は雌の横に平行に定位 して雌雄は腹部を合わせた。 その瞬間雄は啓鰭付近を震わせて交尾を行った (Fig.53・D・2)。 交尾の時間はやはり約2-3秒の短時間であった。

交尾終了後, いずれの場合も雄は雄の縄張りからすぐに泳ぎ去った。

chasing each otherや circlingを行っている雄には, courtship danceや

Iateral display の際と同様の体色変化が見られた。 また, 交尾直前から交尾 の瞬間までの数秒間, 中央部を走る一本の黒線を残し, 体側が銀白色に輝く のが観察された。

(d)交尾観察例

交尾期間の日中, 雄の求愛行動(courtship dance, lateral display)は頻繁 に観察された。 しかし, ほとんどの場合, 雌は雄の求愛を無視して泳ぎ去っ てしまい交尾には至らなかった。 本研究では長時間の観察にもかかわらず,

交尾は1980年には11月15日に蒲戸で1回, 1986年には11月, 12月に4回

(Table 13 )の合計5回しか観察されず, 求愛の頻度に比べて交尾の頻度は 非常に低かった。 1980年の観察では, 求愛によるベア形成の後, 海底へ移動 して交尾した。 1986年の観察例は, いずれも中層での交尾であった。 交尾の 観察時刻は1986年の場合, 午前7時10分, 11時33分, 午後15時49分, 15時50 分で一定の傾向は認められなかった(Table 13 )。

以上のようにオキタナゴの交尾は海底で行われる場合と中層で行われる場 合とがあったが, courtship da nce, later al dis playによる求愛行動を行った 後, 縄張りの中で雌と雄が腹部を合わせて短時間のうちに交尾を行うという 点は共通していた。

(2 ) YOY雄の盗み交尾(streaking)様行動

1986年12月10日に観察したOlder個体の交尾時の際には, YOY雄による 盗み交尾(streaking)様行動が観察された。 午前11時33分に, 体長110 mm の#71雄(Older雄 )がOlder雄にlateral displayを行っているのを発見した ので観察を開始した。 雄はこの行動を観察開始後もさらに約3秒間継続した。

この間雌は, #71雄の縄張り中心付近の水深約2 mの位置に静止していた。

次に雄は circ1ingの過程を省略して, 雌と並行に定位して腹部を合わせて交 尾しようとした(Fig.54・A)。 この瞬間, #71雄の縄張りの外からYOY雄 が素早く侵入してきでOlder雌雄の聞に割り込んだ(Fig.54・B)0 YOY雄は 雌と一瞬腹部を合わせた。 しかし, この時, #71雄が雄の侵入に気づき YOY雄を追い払った(Fig.54・C)。 この後直ちに, #71雄は雌と再び並行 に定位して腹部を合わせて交尾した。

YOY雄がOlder雌雄のベア問に割り込む行動は, 同年12月16日にも1例観 察された。 この場合も中層(水深約1.5 m)でOlder雌雄が交尾をしようとす

る直前であった。 これら2例のYOY雄による streaking様行動は, いずれも

Table 13. Date, time of copulation, individual number of male,

and size of both sexes of Neoditrema ransonneti .

Observation Date in Time Tag no. Male size Female size No. 1986 of male (SL in mm) (SL in mm)

Nov.21 7:10 6 75 90

2 Nov.28 15:50 unknown 100 105

3 Dec.10 11 :33 71 110* 110

4 Dec.21 15:49 57 100 105

合Streaking like behavior by YOY male (80 mm SL)

A

B

C

Older female

ダタ 〆ぷ守

YOY male

Fig.54. Streaking-like behavior by a YOY male of Neoditrema ransonneti.

A: a pair of the Older male and female in the mid water column just before copulation. A YOY male rushed toward the pair, B: the YOY male intrude between the pair and tried copulation, C: the Older male trying to drive away the YOY male out.

YOY躍の出現個体数が少なく, Older雌だけが出現する状況下で観察された。

(3) size assortative matingの有無

(a) 1980年の観察

(a)・1 蒲戸における観察

11月15日の観察では, 約10個体のOlder雄が防波堤外側に互いに隣接した 縄張りを作り, その近くに約30個体のOlder雌が群れを作っていた。 この場 所ではYOY雌は少数しか認められず, Older雄の縄張りの外側を静かに泳い でいた。 Older雌の群れは海底から少し離れてゆっくり泳ぎ, 時折その内の 10個体位が縄張りの近くに寄って来た。 すると, 縄張りのOlder雄は各鰭を 広げて雌の群れに向かって突進して, 求愛行動を行った。 このように, 追尾 や求愛行動はOlder個体の雌雄間だけで行われていた。 一方, この場所にお けるYOY雄の求愛・交尾行動は不活発であった。

(a) -2 福泊における観察

11月15, 16日に福治港堤防外側で観察した際には, YOY雄約1∞個体が長 さ約110 mの堤防外側のテトラポット群の間に縄張りを作り, その中に少数 の01der雄が混じっていた。 堤防に沿って泳ぎ個体数を計数した結果,

Older雄の割合は4.8 % (105個体中5個体)に過ぎなかった。 観察時には多 くの雌がやや沖を群れを作り堤防に沿って泳いでいたが, その多くはYOY 雌で, Older雌は3.4 % (207個体中7個体)に過ぎなかった。 YOY雄は, 雌 の群れが近づくと縄張りから一斉に飛び出して求愛した。 その際, Older雌 が群れに合まれていると, それに対しでも同様に求愛行動を示していた。 一 方, YOY雄に混じって縄張りを持つOlder雄で最も目立った行動は, その周 囲にいる多くのYOY雄を追い払う行動で, 多くの時間をこれに費やしてい

た。 これらのOlder雄はYOY雌の群れが近づいてもこれに対しては無関心で,

Older雌に対してだけ求愛行動を示した。

以上のような蒲戸と福泊における観察結果の比較から, オキタナゴの交尾 に際して, 場所によりOlder雌雄が主に見られる場合と , 多くのYOY雌雄の 中に少数のOlder雌雄が混じっている場合のある事が明らかになった。 後者 の場合, YOY雄は少数のOlder雌に対しでも求愛したが, Older雄はOlder雌 に対してだけ求愛していた。

(b) 1986年の観察

本種は観察区内の中層ー表層に出現するために観察が容易で, 出現個体数 を正確に把握することが可能であった。 従って size assortative matingの有 無の検討はウミタナゴと同様に, まず� YOY雌とOlder雌の出現割合を求め,

次にYOY雄と Older雄の求愛行動の相手を観察することにより行った。 ただ し, オキタナゴでは1980年の観察結果に示されるように, 観察区内に出現す る雌の個体数がYOY雌の出現個体数によって大きく変化した。 そこで, 15・

20分間で観察区内に出現するYOY雌の個体数を計数し, そのまま引き続い てYOY雌の個体数が変化しないうちに雄の求愛相手を記録するという観察 を繰り返し行った。 YOY雄の求愛行動は, YOY雌の出現個体数が約1∞個 体以上の場合に活発になる傾向が認められた。 そこで結果の集計は, 観察区 内にYOY雌が多数(100個体以上)出現した場合と, 少数(1∞個体未満) しか出現しなかった場合に区分して行った。 観察は合計19日延べ29回, 2200 分行った。

調査時間の合計では, YOY賂4110個体(88.1 %)とOlder雌555個体

(11.9 %)が出現し, 延ベ364回(YOY雄=214回, Older雄=150回)の求愛 行動を観察した。 YOY雄はYOY雌に179回(83.6 %)と高い割合で求愛し たが, Older雌にもあ回(16.4 %)求愛した(Table 14・A)。 一方, Older雄

Table 14・A. Patterns of size-specific cou代ship in Neoditrema ransonneti,

inl 986 (total). Frequencies

(%)

are noted for each of the flωr possible combinations. Results are based on

2200

min.

observation.

Size c1ass of male YOYmale

Older male

Courtship directed toward (No. of event)

observed

(%)

observed

(%)

YOY female Older female Total

179

35

21

4

(83.6) (16.4)

6

(4.0)

144

(96.0)

150

Table 14・B. Pattems of size-specific courtship in Neoditrema ransonneti,

in

1

986 (individual number of YOY female was over than

100

indiv.). Older males courted Older females more often than expected (Fisher's exact probability test,

p <0.0001).

YOY males, however, courted both YOY and Older females based on propo代ions of YOY and Older females

(p >0.05).

Size c1ass of male Courtship directed toward (No. of event) YOY female Older female Total

YOY male observed 163

20

183

expected

169.1

13.9 183

Older male observed 6

76 82

expected

75.8

6.2

82

Table 14・C. Patterns of size-specific courtship in Neoditrema ransonneti,

in

1

986 (individual number of YOY female was fewer than 1

00

indiv.). Older males only courted Older females

(p <0.0001).

Although, YOY males courted both YOY and Older females based on propo代ions of YOY and Older females

(p >0.05).

Size dass of male Courtship directed toward (No. of event) YOY female Older female Total

YOY male observed

1

6

15

31

expected 16.1

14.9 31

Older male observed 。 6

8

68

expected

35.4 3

2.6 68

はYOY雄ヘ6回(4.0 %) , Older雌へ144回求愛した(96.0 %, Table 14-A)。

これらの観察結果を, YOY雌の出現個体数が多い状況と少ない状況に分 けて検討する。

(b)・1 YOY雄の出現個体数が多い状況 (観察1回当たりのYOY雌個体数

=100個体以上)

総出現雌個体数は, YOY雌=3850個体(92.4 %) , Older雌=315個体

(7.6 %)であった。 観察1回当たりに出現した雌個体数はYOY雌=213.9個 体(+81.3 SD, n=18) , Older雌=17.5(土9.6, n=18)であった。 このよう な場合について, 14日間に行った合計18回の観察結果を検討する(Table 14・

B)

0

YOY雄はYOY雌に163回(89.1 %) , Older雌に20回(10.9 %)求愛 するのが観察された。 YOY雄が求愛するYOY雄とOlder雌の比率は, それ ぞれの雌の出現比率と同じ(Fisher's exact probability test,

p

>0.05)であり

size assortative matingが崩れていた。 一方, 01der雄は01der雌に76回(92.7

%)求愛したがYOY雌には6回(7.3 %)しか求愛せず, Older雄は01der雌

に選択的に求愛して(Fisher's exact probability test, p

<

O.∞01) size assortative matingを行うことが示された。

(b)・2 Older雌は見られるがYOY雌の出現個体数が少ない状況(観察1 回当たりのYOY雌個体数=100個体未満)

総出現雌個体数は, YOY雌=260個体(52.0 %) , Older雌=240個体 (48.0 %)であった。 観察1回当たりに出現した雌個体数はYOY雌=23.6

(土34.7 SD, n=11) , Older雌=21.8(+16.1, n=11)であった。 このよう な場合について11日間の合計11回の観察結果を検討する(Table 14・C)。 こ の状況下では, Older雄は縄張りを維持しているものの, YOY雄の出現個体 数も少ない。 YOY雄はYOY雌に16回(51.6 %) , Older雌に15回(48.4 %)

求愛するのが観察され, やはりYOY雄の求愛相手の比率はYOY雌とOlder 雌の出現比率と同じ(Fisher's exact probability test, p >0.05) であり slze assortative matingは崩れていた。 一方, Older雄はYOY雌には1回も求愛せ ずにOlder雌だけに68回求愛し, Older雌に選択的に求愛した(Fisher's exact probability test, p < o.α氾1) 0 YOY雄のOlder雌への求愛行動は, Older雄 と同様に courtship danceや lateral display が観察されたが, YOY雄では,

さらに加えて前述の streaking様行動による交尾が観察された。 streaking様 行動の観察例は2例だけであるが, これ以外にも, Older雄がOlder雌へ求愛 する際に, YOY雄が縄張り外に出てOlder雌雄のベアに接近する行動もしば しば観察された。

以上のように, 本種の求愛・交尾行動に関しては, (i)求愛行動は,

courtship dance, lateral displayの求愛行動の後, circlingを経て海底の物陰 で, または chasingeach otherを経て中層域で行われること, (ii)YOY雄が Older雌雄の交尾に割り込むstreaking様行動が行われること, (iii)求愛行動 は頻繁に行われるが, 交尾に至る例は希であること, (iv)YOY雄は, YOY 離の出現個体数が多い場合でも少ない場合でも, YOY雄とOlder雌の両者に 求愛を行い size assortative matingが崩れる。 一方でOlder雄はOlder雌にし か求愛せず size assortative matingを行うことが明らかになった。

6. 筏餌頻度

前述のように, オキタナゴはカラヌス目やアミ目等の動物プランクトンを 擦餌していた。 動物プランクトンはウミタナゴ属が餌とする底棲小型動物と 異なり, 一時的にパッチ状に出現した。 つまり, 餌となるプランクトンの出 現状況により摂餌頻度が大きく変化した。 従って, オキタナゴにおいては,

ウミタナゴ属の2種のように雄雄, YOY個体とOlder個体問で胃内容物量や

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