3-2-3.
化 合 物 デ ザ イ ン
PLHSpT
ペプチド等価体の化合物デザインにあたり、Plk1
とPLHSpT
ペプチドとの複合体
X
線結晶構造解析を参考にした(Figure 3-2-2)
。Figure 3-2-2. Plk1
とPLHSpT
ペプチドの複合体X
線結晶構造解析PDB ID: 3HIKより作成した。PLHSpTペプチドフラグメントは緑で表示した。Plk1の表面構造における 炭素原子は白で示した。加えて結晶化条件における buffer 中のグリセロールをシアンで示した。また
PLHSpTペプチドの認識に重要なリン酸基を黄色円で、Plk1に特徴的なArg519との相互作用を黄色点線
で示した。
pThr
77
先行研究3-1-11)では、
Plk1
とPLHSpT
ペプチドの相互作用を模倣するには、以下の4
つの相 互作用が鍵になり得ると主張されている。①
SpT
モチーフによる静電相互作用
(Ser-pThr
からなるモチーフでPlk1
に結合するペプチドに必須)
②
N
末端Pro
残基の静電相互作用および疎水性相互作用
[Plk1
に特徴的なArg516
のグアニジンとPro
残基のカルボニルの静電相互作用(Plk2
とPlk3
はArg
残基ではなくLys
残基が対応している)
、および、Trp414
とPhe535
との疎水性相互作用]
③結晶化条件において観察されたグリセロール
(PBD
によるリン酸化ペプチド認識への関与を示唆)
④水分子によるネットワーク
(PBD
によるリン酸化ペプチド認識への関与を示唆)
上記の相互作用模倣に重要と考えられる部位を模式化した図を示す
(Figure 3-2-3)
。著 者は重要な相互作用を模倣しうる化合物として、ターフェニル骨格を有するPLHSpT
ペプ チド等価体を設計した(Figure 3-2-3)
。ターフェニル骨格を採用した理由は、ターフェニル骨格が
PLHSpT
ペプチドにおけるファーマコフォアを良く模倣した剛直な骨格であり、かつ誘導体合成が容易であると考えたためである。特に、ターフェニル骨格の両端のベン ゼン環上に二つの親水性基を導入することにより、相互作用に重要である
SpT
モチーフおよび
Arg516
と相互作用するカルボニルを模倣できると考えた。さらに中央ベンゼン環より水酸基を伸長させることにより、
X
線結晶構造解析で見られたグリセリンの相互作用を模倣 することを期待した。Figure 3-2-3. Plk1-PLHSpT
ペプチド相互作用模式図と化合物デザインPlk1とPLHSpTペプチドの相互作用に重要な部位をそれぞれ緑 (N末端相互作用) 、青 (グリセロール) 、 赤 (SpTモチーフ) で表記した。またPlk1側で相互作用に寄与する残基を灰色で表記した。
OH OH
OH glycerine N
NH O
O NH O
N NH
HN
O
NH OH OO OH
O P HO OHOH HN
NH2 NH
Arg516
NH Asp416
Trp414 & Phe535
Trp414
O
O
OH
Plk1 inhibitor designed as PLHSpT peptide mimetics green: carbonyl mimic
blue: glyceline mimic (from crystlization buffer) red: phosphoric acid mimic
gray: Plk1 residue
hydrophilic group hydrophilic group
3-2-4.
化 合 物 の 合 成化合物の合成スキームを以下に示す
(Scheme 3-2-1)
。Scheme 3-2-1.
ターフェニル化合物の合成出発原料
61
を一塩化ヨウ素・ピリジン複合体を用いてヨウ素化し、2-
ヨウ化エタノール とS
N2
反応させることで、Suzuki
カップリングの共通中間体63
を得た。化合物63
を4-
シア ノフェニルボロン酸ピナコールエステルとSuzuki
カップリングすることで、ジニトリル体64
を得た。さらに64
を加水分解することで、ジカルボン酸体65
を得た。またジニトリル体64
をアジ化ナトリウムと反応させ、ニトリル基をカルボン酸のバイオアイソスターとして 知られる脂溶性酸性官能基であるテトラゾール基へと変換したところ、モノテトラゾール 体66
とジテトラゾール体67
を得た。O CN
N N
N NH OH
O
OH COOH HOOC
OH OH
O
OH
I I
I I
61 62 63
65
O
OH CN NC
64
64
N O N
N NH OH HN NN
N
66 67
ICl-pyridine CH2Cl2/H2O = 2/1
0 oC to r.t.
7 h 69%
I OH
Cs2CO3 DMF 0 oC to 80 oC
9.5 h 84%
NC
Bpin Pd(dppf)Cl2
K3PO4 DMF 80 oC 65%
5 h
KOH EtOH reflux 6.5 h 13%
NH4Cl LiCl NaN3 DMF 100 oC
18 h
43% 11%
Bpin B O O
79
3-2-5. ELISA
に よ るPBD-PLHSpT
ペ プ チ ド 相 互 作 用 阻 害 活 性 評 価得られたターフェニル化合物群の
PBD-PLHSpT
ペプチド相互作用阻害活性を評価すべ く、先行研究3-1-11)を元に、ELISA
に基づく評価系の構築を行った。評価系の原理を以下に 示す(Figure 3-2-4)
。Figure 3-2-4. PBD-PLHSpT
ペプチド相互作用阻害活性評価の原理
Plk1
はHeLa
細胞に高発現しているため、評価系のPlk1
はHeLa
細胞のライセートに含ま れるものを使用した。予めHeLa
ライセートとペプチド等価体をプレインキュベーションした後、
PLHSpT
ペプチドが固定されたプレート上で、Plk1
に対してPLHSpT
ペプチドとペプチド等価体を競合させた。インキュベーション終了後、プレートの洗浄操作を行い、プ レート上の
PLHSpT
ペプチドと結合したPlk1
を1
次抗体、HRP
標識2
次抗体、およびTMB
の酸化による発色で検出することで、PBD-PLHSpT
ペプチド相互作用阻害活性の評価を行 った。!GGGGG!PLHST P !GGGGG!PLHST P !GGGGG!PLHST P !GGGGG!PLHSTP
!GGGGG!PLHST P !GGGGG!PLHST P
!GGGGG!PLHST P !GGGGG!PLHSTP
!GGGGG!PLHST P !GGGGG!PLHST P !GGGGG!PLHST P !GGGGG!PLHSTP
!GGGGG!PLHST P !GGGGG!PLHST P
!GGGGG!PLHST P !GGGGG!PLHSTP
!GGGGG!PLHST P !GGGGG!PLHST P !GGGGG!PLHST P !GGGGG!PLHSTP
!GGGGG!PLHST P !GGGGG!PLHST P
!GGGGG!PLHST P !GGGGG!PLHSTP
PLHSpT )
HeLa Plk1 )
PLHSpT
PLHSpT )
PLK1
1 HRP 2 )
TMB PLK
Plk1)(in)cell)lysate) Pep<de)mime<cs
washout incuba<on
H2N
NH2 TMB (3,3',5,5'-tetramethylbenzidine)
PBD-PLHSpT
ペプチド相互作用阻害活性の評価結果を以下に示す(Figure 3-2-5)
。DMSO
処理時の結合強度を100%
として規格化して示した。Figure 3-2-5. PBD-PLHSpT
ペプチド相互作用阻害活性aポジティブコントロールとして用いた
PLHSpT
ペプチドは、期待通りPDB
とプレート上 のPLHSpT
ペプチド相互作用を阻害した(IC
505.27 µM)
。一方で期待に反して、ターフェ ニル化合物群64-67
にはPBD-PLHSpT
ペプチド相互作用を増強する傾向が見られ、化合物66
では顕著にその傾向が見られた。なお化合物64
は溶解性が悪く100 µM
までの評価しか 行っていない。本実験で得られた結果は、ターフェニル化合物が
PBD-PLHSpT
ペプチド相互作用を阻害 するとした作業仮説に反して、ターフェニル化合物がPBD-PLHSpT
ペプチド相互作用を増 強することを示唆する結果であった。その作用機序は不明であるが、ターフェニル化合物 がPlk1
に作用し、そのPLHSpT
ペプチド認識の活性コンフォメーションを変えることによ0"
100"
200"
300"
400"
500"
600"
700"
800"
900"
3"μM" 10"μM" 30"μM" 100"μM" 0.1"mM" 0.3"mM" 0.8"mM" 1"mM" 0.1"mM" 0.3"mM" 0.8"mM" 1"mM" 0.1"mM" 0.3"mM" 0.8"mM" 1"mM"
64 65 66 67
O OH
CN
NC O
OH COOH
HOOC O
N CN N
N NH OH
N O N
N NH OH HN NN
N
aPlk1 kinase activity was calculated based on the value of the DMSO-treated sample, taken as 100%.!
bIC50 value of PLHSpT pentapeptide, used as a positive control is 5.27 μM.!
cThe maximum solubility of compound 64 was about 100 μM under the buffer condition for this assay system.
Rela4ve"intensity"of"Plk1?PLHSpT"pep4de"binding"(%)
81
3-2-6. ELISA
に よ るPlk1
キ ナ ー ゼ 阻 害 活 性 評 価前項
3-2-5
にて、ターフェニル化合物がPlk1
のPLHSpT
ペプチド認識能を向上させること が示唆されたため、ターフェニル化合物66
によるPlk1
キナーゼ阻害活性を評価した。評価 系の原理を以下に示す(Figure 3-2-6)
。Figure 3-2-6. Plk1
キナーゼ阻害活性評価の原理本実験ではキナーゼドメインの活性化ループ
(active-site loop)
にT210D
の変異を有し、恒常的に活性化されている変異
Plk1
の生成タンパク質を用いた。変異Plk1
をATP
およびタ ーフェニル化合物存在下でプレート上に固定した基質タンパク質とインキュベーションす ることにより、基質タンパク質のリン酸化を行い、そのリン酸基を1
次抗体、HRP
標識2
次 抗体、およびTMB
の酸化による発色を用いて検出・定量を行った。Plk1 ATP '
'
1 HRP 2 TMB '
Plk1''
(T210D'ac2vated'mutant) Terphenyl'compounds
washout
substrate substrate
P
substrate substrate
P
TMB
incuba2on
H2N
NH2 TMB (3,3',5,5'-tetramethylbenzidine)
Plk1
キナーゼ阻害活性の評価結果を以下に示す(Figure 3-2-7)
。DMSO
処理時のキナー ゼ活性を100%
として規格化して示した。Figure 3-2-7. Plk1
キナーゼ阻害活性a本実験系では
PLHSpT
ペプチドはPlk1
キナーゼ阻害活性を示さなかったのに対して、タ ーフェニル化合物66
は用量依存的にPlk1
キナーゼ活性を阻害した(IC
50151 µM)
。本結果 は、ターフェニル化合物がPlk1
のPLHSpT
ペプチド認識部位とは別の部位に作用すること で、Plk1
キナーゼ活性を阻害する可能性を示唆する結果である。続いてターフェニル化合物
66
に見られたPlk1
キナーゼ阻害活性に着目し、本活性の構造 活性相関を得るべく、さらなる構造展開を計画した。0"
20"
40"
60"
80"
100"
120"
PLHSpT"100"μM" 30"μM" 100"μM" 300"μM" 1000"μM"
Pl k1 "k in as e" ac 9v ity "(% )
66
O CN
N N
N NH OH
66
aPlk1"kinase"ac9vity"was"calculated"based"on"the"value"of"the"DMSOItreated"
""sample,"taken"as"100%
83
3-2-7.
タ ー フ ェ ニ ル 化 合 物 の 構 造 展 開ターフェニル化合物の構造活性相関を得るべく、種々の化合物の合成を行った。化合物 の合成には、共通中間体
63
と対応するフェニルボロン酸誘導体をSuzuki
カップリングする ことで誘導遺体の合成を行った。以下に合成スキームを示す。Scheme 3-2-2.
親水基のリンカー長が異なる誘導体72a-c
の合成
Scheme 3-2-2
では親水基のリンカー長を検討すべく、リンカー長の異なる誘導体72a-c
を合成した。即ち化合物
68a-c
のカルボキシル基をベンジル基で保護し、ピナコールエステ ル誘導体へと変換した後、共通中間体63
とSuzuki
カップリングおよびベンジル基の除去を 行うことで、目的とする化合物72a-c
を得た。Br
OH O n
Br
OBn O
n OBn
O n
O OH
COOBn BnOOC
n n
O OH
COOH HOOC
n n 68a (n = 0)
68b (n = 1) 68c (n = 2)
Bpin 69a (n = 0) (82%)
69b (n = 1) (73%) 69c (n = 2) (83%)
70a (n = 0) (64%) 70b (n = 1) (56%) 70c (n = 2) (54%)
71a (n = 0) (69%) 71b (n = 1) (63%) 71c (n = 2) (79%)
72a (= 65) (n = 0) (81%) 72b (n = 1) (78%) 72c (n = 2) (38%) Bpin B
O O Br
DMF 100 oC
13 h K2CO3
(PPh3)2PdCl2 O
B O
B O O
AcOK 1,4-dioxane
100 oC 3-6.5 h
O OH
I I
63
Pd(dppf)Cl2 K3PO4
DMF 80 oC 3 h
63 H2, Pd/C
1,4-dioxane r.t.
18 h (for 72a)
or
2 N NaOH aq MeOH
r.t.
1 d (for 72b-c)
Scheme 3-2-3.
メタ位にカルボキシル基を有する誘導体76
の合成
Scheme 3-2-3
ではフェニル基上の親水性基の位置の影響を調べるべく、フェニル基のメタ位にカルボキシル基を有する誘導体
76
の合成を合成した。出発原料73
のカルボキシル基 をベンジル保護し、カップリングによりピナコールエステル誘導体へと変換した後、共通中間体
63
とSuzuki
カップリング、およびエステル加水分解を行うことで、目的とする化合物
76
得た。Scheme 3-2-4.
アミド基を有する誘導体79
の合成O
OH
COOH HOOC
COOH
Br 73
COOBn
Br 74
COOBn
Bpin 75
76
Bpin B O O
O
OH
I I
63
Pd(dppf)Cl2 K3PO4
DMF 80 oC 6 h
2N NaOH aq MeOHr.t.
23 h 43 % (2 Steps)
Br
K2CO3 DMF 100 oC
96%
6.5 h
(PPh3)2PdCl2 O
B O
B O O
AcOK 1,4-dioxane
100 oC 10 h83%
63
Br Br
HN
O
HN
O
O
OH 68b
Bpin
77 78
79
NH O NH
O OH
O
MeNH2 in MeOH HOBt•H2O
DIPEA EDCI CH2Cl2
r.t.
23 h 32%
(PPh3)2PdCl2 O
B O
B O O
AcOK 1,4-dioxane
100 oC 4.5 h
46%
Pd(dppf)Cl2 K3PO4
DMF 80 oC
4 h 14 %
63
Bpin B O O
O
OH
I I
63
85
Scheme 3-2-5.
ジフルオロフェノールを有する誘導体82
の合成ジフルオロフェノールはカルボキシル基のバイオアイソスターとして知られている3-2-3)。
Scheme 3-2-5
では、出発物質80
をNBS
を用いてブロモ化し、ピナコールエステル誘導体へと変換した後、共通中間体
63
とのSuzuki
カップリングを行い、ジフルオロフェノールを有 する誘導体82
を得た。Scheme 3-2-6.
中央ベンゼン環から水酸基を伸長しない化合物84
の合成
Scheme 3-2-6
ではグリセロールを模倣すべく導入した水酸基の効果を検討すべく、中央ベンゼン環から水酸基を伸長しない化合物
84
の合成を行った。中央ベンゼン環のフェノー ル性水酸基が無置換の中間体62
に対してSuzuki
カップリングを行い、ベンジル基を除去す ることで、目的化合物84
を合成した。上記得られた化合物群に関して、
Plk1
キナーゼ阻害活性の評価を行った。3-2-3)
Meanwell NA. “Synopsis of some recent tactical application of bioisosteres in drug design.” J. Med. Chem. 2011, 54 , 2529
F F
OH
F F
OH Br
OH HO
F F
F F O
80 81 OH
82 NBS
DMF 0 oC to r.t.
88 %24 h
AcOK 1,4-dioxane
100 oC 10.5 h
Pd(dppf)Cl2 K3PO4
DMF 80 oC 3 % (2 steps)9 h
63
O
OH
I I
63 (PPh3)2PdCl2
O B O
B O O
OH COOBn
BnOOC
62 83
OH COOH
HOOC
84
I I
OH
OBn O
B Pd(dppf)Cl2
K3PO4 DMF 80 oC 29 %3 h
H2 Pd/C 1,4-dioxane
r.t.
22 h 11 %
O O
70a 70a