59
2-4-3. 7
位 フ ェ ニ ル 基 に 着 目 し た 構 造 展 開
Table 2-4-2
より7
位の構造展開において、フェニル基を導入した化合物49
がVDR
阻 害活性を維持することを見いだした。この結果を受けて、構造展開の有利さを考慮し、7
位 フェニル基の構造展開を計画した。具体的にはLeu630
認識部位近傍に存在するLys260
の 塩基性アミノ酸側鎖との相互作用を期待して、カルボン酸誘導体の導入を試みた(Figure 2-4-4)
。Figure 2-4-4. 7
位フェニル基に着目した構造展開化合物の具体的な構造展開に関しては、フェニル基にカルボン酸の導入を計画したほか、
7
位ポケット内での水素結合形成を期待して、ヒドロキシル基を有する化合物の合成も行っ た(Figure 2-4-5)
。Figure 2-4-5. Lys260
残基との相互作用を期待したフェニル基誘導体Lys260
N H N
O R
H 2 N 7 Lys260
N H N
O
H
2N
カルボン酸誘導体合成には
Suzuki
カップリングを用いた。合成スキームを以下に示す(Scheme 2-4-11)
。Scheme 2-4-11. 7
位フェニル基の構造展開化合物
48
と4-
エトキシカルボニルフェニルボロン酸ピナコールエステルをSuzuki
カッ プリングすることで化合物50
を得た後、エステルを加水分解することでカルボン酸体51
を得た。また化合物52
を出発原料とし、NIS
を用いてヨウ素化した化合物53
を得た。ヨ ウ素化の位置はNMR
を用いてHMBC (Hetero-nuclear Multiple-Bond Connectivity)
を 測定することで決定した。次いでMitsunobu
反応を用いてフェノール性水酸基に置換基導 入を行った化合物54
を得た後、カップリングによりボロン酸ピナコールエステル体55
へ と導いた。ヨウ素化体48
とボロン酸ピナコールエステル体55
をSuzuki
カップリングし た後、中圧条件での接触還元によりベンジル基を除去した化合物57
を得た。NH N
O
50 H2N EtOOC
NH N
O
51 H2N HOOC
EtOOC OH EtOOC OH
I
EtOOC O
I OBn
EtOOC O
Bpin OBn
52 53 54 55
NH N
O
56 H2N
EtOOC O
OBn
NH N
O
57 H2N
EtOOC O
OH 48
Pd(dppf)Cl2 K3PO4
DMF 80 oC
Bpin
4 h 60%
EtOOC
Bpin B O KOH O
MeOH/H2O = 5/1 60 oC
6 h 46%
NIS AcOH 0 oC to r.t.
21 h 63%
HO O
PPh3 THF r.t.
DIAD
27 h 93%
O B O
B O O
Pd(dppf)Cl2 KOAc DMSO 80 oC 1.5 h
Pd(dppf)Cl2 K3PO4
DMF 80 oC 4 h 48
3% (2 steps)
Pd/C, H2 (2.5 atm) 1,4-dioxane
50 oC 17%
NH N
O I
H2N
61
得られた
7
位フェニル基誘導体群のVDR
阻害活性をレポータージーンアッセイで評価し た(Table 2-4-3)
。Table 2-4-3. 7
位フェニル基の構造展開a安息香酸エステルを導入した化合物
50
に最も強い活性が見られ、リード化合物10
より も2
倍程度活性が向上した。一方で安息香酸を導入した化合物51
では、VDR
阻害活性の 減弱が見られた。これはカルボン酸の導入により膜透過性が低下したことが一因であると 考察している。また7
位ポケット内部で水素結合形成を期待した化合物57
は、明確な活性 向上は見られなかった。N H N
O R
H 2 N
compound
RIC
50(µM)
10
26
49 24
51 > 30 (8 %)
b50 14
EtOOC
EtOOC O
OH HOOC
57 20
a1,25(OH)2D3 was used as a VDR agonist,
binhibition ratio at 30 µM
2-4-4.
コ バ レ ン ト ド ラ ッ グ 化 の 検 討コバレントドラッグとは分子内に共有結合性を有する構造を持ち、タンパク質等の標的 分子と共有結合を形成する低分子化合物である。コバレントドラッグのメリットとしては、
①
potency
の向上、および、低濃度でも高濃度の基質等と十分に競合する、②共有結合を形成する残基の有無による選択性の獲得、③
(
タンパク質半減期に依存する)
投与間隔の長期 化・投与の低濃度化、およびoff target
との相互作用や薬物間相互作用のリスク低減、④薬 剤耐性変異に対する活性獲得等のメリットが知られている2-4-4)。
Table 2-4-3
より7
位フェニル基にカルボン酸誘導体を導入すると活性が向上するという結果得た。これを受けて活性や選択性の向上を期待し、
7
位にLys260
の塩基性側と共有結 合を形成する官能基の導入を計画し、LXXLL
ペプチド等価体をコバレントドラッグ化する ことを試みた。Lys
残基との相互作用を期待した官能基としてはフルオロニトロベンゼンを 採用した。以下に合成スキームを示す(Scheme 2-4-12)
。Scheme 2-4-12.
コバレントドラッグ化を期待した化合物60
の合成出発原料
58
をボロン酸ピナコールエステル体59
へと変換し、ヨウ素体48
とSuzuki
カップリングすることで目的化合物60
を得た。Br F NO2
(PPh3)2PdCl2 OB O
B O O
KOAc 1,4-dioxane
100 oC 9.5 h 11%
Bpin F NO2
Pd(dppf)Cl2 K3PO4
DMF 80 oC
9 h 39%
48
NH N
O H2N
F NO2
58 59 60
NH N
O I
H2N 48
Bpin B O O
63
得られた化合物
60
をVDR
レポータージーンアッセイで評価したが細胞毒性が見られ、また有効濃度的には、阻害活性の向上は見られなかった
(Table 2-4-4)
。LXXLL
ペプチド 等価体のコバレントドラッグ化には、今後の更なる検討が必要だと考えている。Table 2-4-4.
コバレントドラッグ化を期待した化合物60
の活性評価acompound R IC50 (µM)
10 26
49 24
60 toxicb F
a1,25(OH)2D3 was used as a VDR agonist,
bToxic at 20 µM NH
N O R
H2N
NO2
7
2-4-5.
小 括 ②著者は本節において、前節で見いだしたベンゾジアゼピン型
LXXLL
ペプチド等価体の構 造展開を行った。その結果、8
位アミノ基がVDR
阻害活性に寄与していることを明らかに した。また7
位炭素鎖の構造展開より、分岐炭素鎖をフェニル基に置換しても許容される ことを見いだし、ビフェニル構造を有する化合物49
を、リード化合物10
よりも高活性な 化合物として見いだした(Figure 2-4-6)
。またコバレントドラッグ化を検討したが、明確 な結果を得ることが出来ず、今後の更なる検討が期待される。Figure 2-4-6.
ベンゾジアゼピン型LXXLL
ペプチドの構造活性相関N H N
O H 2 N
EtOOC
7
8
7
VDR
49
65
2-5 節 LXXLL ペプチド等価体創製の総括
2-5-1. LXXLL
ペ プ チ ド 等 価 体 創 製 の 総 括著者は本章において、核内受容体の転写活性化に必須である、核内受容体とコアクチベ ーターとの
LXXLL
配列を介したタンパク質間相互作用に着目し、LXXLL
ペプチド等価体 を創製することで、核内受容体の転写活性化を抑制することを達成した。具体的には
VDR
—コアクチベーター相互作用を阻害し、VDR
を介した転写を抑制するベ ンゾジアゼピン型のLXXLL
ペプチド等価体を創製した(Figure 2-5-1)
。活性は弱いもの の、これは私の知る限り非セコステロイド型ならびに非ペプチド型のVDR
阻害物質として 初の報告である。また得られたLXXLL
ペプチド等価体はERα
に対して阻害活性を示さず、VDR
とERα
において選択性を示した。また著者は本章において、前節で見いだしたベンゾジアゼピン型
LXXLL
ペプチド等価体 の構造展開を行った。その結果、8
位アミノ基がVDR
阻害活性に寄与していることを明ら かにした。また7
位炭素鎖の構造展開より、分岐炭素鎖をフェニル基に置換しても許容さ れることを見いだし、ビフェニル構造を有する化合物を、リード化合物よりも高活性な化 合物として見いだした(Figure 2-5-1)
。Figure 2-5-1. LXXLL
ペプチド等価体の創製本研究は「タンパク質間相互作用におけるファーマコフォアを模倣して、論理的にペプ チド等価体を設計する」という研究コンセプトの実証例の一つであり、また新規作用機序・
新規骨格を有する
VDR
阻害薬を提案できたものと考えている。VDRE% TATA%box%
NR NR
coac.vator
LXXLL
transcrip.on
LXXLL
No% transcrip.on VDRE% TATA%box%
RXR VDR
coac.vator
LXXLL
NH N
O H2N
7
8 10
NH N
O H2N
EtOOC
7
8 49