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Ionization Fractionxiは宇宙の歴史に沿って見ていくと,次のように変化していく. まず, Recom-bination以前z & zrec〜1000では, 陽子や電子は自由な状態で完全にイオン化していると考えられ るため,xi = 1である. やがて, 宇宙の温度が下がってきて, z.zrec〜1000くらいになってくると, 中性水素原子が形成されはじめるため,xiは, 1から0に変化していき,宇宙は中性になっていく. 21 cm線のsignalが存在するのは,この宇宙が中性の時期である. さらにz〜6-10程度になってきて,星 が形成され始めると,徐々に,水素原子が電離され始め, Reionizationが起こると考えられる. そのた め,xiは再び0から1に変化していくと思われるが,このように中性水素原子が徐々に少なくなって いくと, 21 cm線は見えなくなっていく. 21 cm輝度温度の表式(2.30)に現れるxHI = 1−xiが0に なっていくからである. 後で, 21 cm線の揺らぎを考えるが,その際には, Neutral FractionxHIの揺 らぎδxHIも考慮する. しかしながら,現時点では, Reionizationの詳細についてはほとんど分かって いないため,この時期のNeutral Fractionの揺らぎδxHI やIonization Fractionの揺らぎδxiを見積 もるのは容易ではない.

6 21cm 輝度温度の揺らぎと Power Spectrum[1]

2章では(2.30)のように, 21 cm線の輝度温度を求めた. この章では,この輝度温度δTbobsの揺ら ぎδ21 δTbobsδT¯bobsδT¯bobsがどのように表されるかについて述べる. (2.30)を見ると分かるように,δ21は, δH,δxHI,δTγ,δTs,及び特異速度のgradient

³ dvdrp∥´

を用いて表すことができる.

6.1 21cm輝度温度の揺らぎ [16], [17], [18]

21 cm線の輝度温度の揺らぎδ21=δδTobs

b は, δ21(x, η;z) =δδTobs

b (x, η;z)≡ δTbobs

³ν21

1+z,x, η

´−δT¯bobs

³ν21

1+z, η

´

δT¯bobs

³ν21

1+z, η

´ =

δTbobs

³ν21

1+z,x, η

´

δT¯bobs

³ν21

1+z, η

´ 1 (6.1)

で定義される量である. ここでδT¯bobsは(ある固定した赤方偏移zにおいて),全空間にわたる輝度温 度の平均値であり, (2.30)から,

δT¯bobs = 3c3hA21x¯HIn¯H 32πν212 kB(1 +z)H(z)

· 1−T¯γ

T¯s

¸

(6.2) のように表される. 21 cm輝度温度は数10 mKの大きさである. ここで特異速度の項

δ∂v 1 +z H(z)

dvp

dr (6.3)

も摂動量として扱う. このとき21 cm輝度温度は,各物理量の揺らぎ(1.1)を考えると, δTbobs = 3c3hA21x¯HI(1 +δxHI) ¯nH(1 +δH)

32πν212 kB(1 +z)H(z)

"

1−T¯γ

¡1 +δTγ

¢ T¯s(1 +δTs)

#

(1−δ∂v)

= 3c3hA21x¯HIn¯H 32πν212 kB(1 +z)H(z)

µ 1−T¯γ

T¯s

(1 +δxHI) (1 +δH)×

× 1 1 +δTs

· 1 +

T¯sδTs−T¯γδTγ

T¯s−T¯γ

¸

(1−δ∂v)

δT¯bobs µ 1

1 +δTs

¶ ·

1 +δH +δxHI + T¯s

T¯s−T¯γ

δTs T¯γ

T¯s−T¯γ

δTγ−δ∂v +

½

δxHIδH + T¯s

T¯s−T¯γδxHIδTs T¯γ

T¯s−T¯γδxHIδTγ

−δxHIδ∂v+ T¯s

T¯s−T¯γδHδTs T¯s

T¯s−T¯γδ∂vδTs

¾¸

(6.4) のように表される. ここで,陽子の個数密度の揺らぎδH, CMB photonの温度揺らぎδTγ, Matterの 特異速度の揺らぎδ∂v はいずれも微少量であると考え,それらの積で表される,δHδTγ等の項は無視 した. 一方で, Neutral Fractionの揺らぎxHIは, Reionizationの時期などには,O(1)になり得る量 であるので, 必ずしも微少量ではない. また, (4.125)より, スピン温度の揺らぎδTsδC10 を通し て, δxHIに依存しているので, O(1)になり得る量であるとして扱った. (6.4)の{·}の部分は, δxHI

O(1)になり得る量であること(その結果, δTsO(1)になり得る)を考慮したために現れた項であ

る. Neutral Fractionの揺らぎδxHIが十分小さいときには,{·}の部分は無視してよい. (6.1)と(6.4)より, 21 cm輝度温度の揺らぎδ21は,

δ21 =

µ 1 1 +δTs

¶ ·

1 +δH +δxHI+ T¯s

T¯s−T¯γ

δTs T¯γ

T¯s−T¯γ

δTγ −δ∂v +

½

δxHIδH+ T¯s

T¯s−T¯γ

δxHIδTs T¯γ

T¯s−T¯γ

δxHIδTγ

−δxHIδ∂v+ T¯s

T¯s−T¯γδHδTs T¯s

T¯s−T¯γδ∂vδTs

¾¸

1

(6.5) のように表されることが分かる. この式に, δTsδH,δxHI, δTg,δTγ,δTα,δP10 で表した式29を代入 すると, 21 cm線の輝度温度の揺らぎは,結局,「陽子の個数密度の揺らぎδH」,「Neutral Fraction の揺らぎδxHI」,「CMB photonの温度揺らぎδTγ」,「ガス(水素原子)の温度揺らぎδTg」,「(星 などから放射される)Lymanαphotonの温度揺らぎδTα」, 「Lymanαphotonによる遷移の効果 を表すP10の揺らぎδP10」,及び「特異速度のgradientδ∂v」で表されることが分かる.

以下では,平衡状態のときのスピン温度の形を仮定して話を進める. このとき最も一般の形のδ21は, (6.5)に(4.124)及び, (4.125)を代入することで求められる. しかしながら,それは煩雑な式になり, 後で宇宙論的パラメータの制限に使う際にも使わないので,次の2つの場合をここでは考える.

³

(1)δxHI を微少量として扱うことができるとき(→δ21δの一次の項だけで書ける.)

(2)Ts≫Tγが成り立っているとき

³

(2.30)で

³

1TTγs´

の項を無視することができる.

´

µ ´

6.1.1xHI 1)の場合の21 cm輝度温度の揺らぎ

RecombinationやReionizationなどのように, Ionization FractionあるいはNeutral Fractionが大 きく変化する時期以外では,基本的にこの仮定は成り立っていると考えられる. このときδ21は, (6.5) で,δδの形になっている項を全て無視できるので,

δ21 (1−δTs)

·

1 +δH +δxHI+ T¯s

T¯s−T¯γδTs T¯γ

T¯s−T¯γδTγ −δ∂v

¸

1

δH +δxHI+ T¯γ

T¯s−T¯γδTs T¯γ

T¯s−T¯γδTγ −δ∂v (6.6) のように表すことができる. 当然のことながら,δ21δの一次の式で表される. ここに,平衡状態のと きのスピン温度の式(4.124)と,δxHI が微少量として扱えるときの,スピン温度の揺らぎの式(4.127) を代入すると,詳細な計算はAppendixに記すとして,ここでは結果を書くと,

δ21 qHδH +qxHIδxHI+qTγδTγ+qTgδTg +qTαδTα+qP10δP10+q∂vδ∂v (6.7) のようになる. (6.7)は, ここの文脈では, 実空間での表式である. すなわち省略されている引数は,

(x, η;z)である. しかしながら,全ての揺らぎが線形の形で寄与しているので,そのままフーリエ空間

29平衡状態のスピン温度の表式(4.124)を用いた場合には(4.125)のこと. もっと一般には, (4.117)を解いて,Tsの表 式を求め,さらにそこからδTsの表式を求めることになる.

での関係(引数が(k, η;z)ということ)と見なすこともできる. ここで登場した各揺らぎの係数qは,

qH = 1 +

C¯10

nA10

T

³ 1 T¯γ T¯1g

´ +P¯T¯10

γ

³ 1 T¯α T¯1g

´o hC¯10

³ 1 T¯γ T¯1g

´ + ¯P10

³ 1 T¯γ T¯1α

´i ³A10

T +C¯T¯10

γ +P¯T¯10

γ

´ (6.8)

qxHI = 1 +

C¯10 nA10

T

³ 1 T¯γ T¯1g

´ +P¯T¯10

γ

³ 1 T¯α T¯1g

´o hC¯10

³ 1 T¯γ T¯1g

´ + ¯P10

³ 1 T¯γ T¯1α

´i ³A10

T +C¯T¯10

γ +P¯T¯10

γ

´×

×

C¯10HH

C¯10 x¯HI

1−x¯HI

X

i=e,p

C¯10iH C¯10

(6.9) qTγ =

A10

T +C¯T¯10

g +PT¯¯10

α

C¯10

³ 1 T¯γ T¯1g

´ + ¯P10

³ 1 T¯γ T¯1α

´

1

A10

T

A10

T +C¯T¯10

γ +P¯T¯10

γ

 (6.10)

qTg =

C¯10

T¯g

C¯10

³ 1 T¯γ T¯1g

´ + ¯P10

³ 1 T¯γ T¯1α

´

+

C¯10

nA10

T

³ 1 T¯γ T¯1g

´ +P¯T¯10

γ

³ 1 T¯α T¯1g

´o hC¯10

³ 1 T¯γ T¯1g

´ + ¯P10

³ 1 T¯γ T¯1α

´i ³A10

T + C¯T¯10

γ +P¯T¯10

γ

´

 X

i=H,e,p

C¯10iH C¯10

d lnκiH10 ¡T¯g

¢ d ln ¯Tg

 (6.11) qTα =

P¯10

T¯α

C¯10

³ 1 T¯γ T¯1g

´ + ¯P10

³ 1 T¯γ T¯1α

´ (6.12)

qP10 =

P¯10

nA10

T

³ 1 T¯γ T¯1α

´ + C¯T¯10

γ

³1 T¯g T¯1α

´o hC¯10

³ 1 T¯γ T¯1g

´ + ¯P10

³ 1 T¯γ T¯1α

´i ³A10

T + C¯T¯10

γ +PT¯¯10

γ

´ (6.13)

q∂v = −1 (6.14)

のように表される. δH, δxHI,δTγ については, (2.30)式に直接含まれていると同時に, (2.30)式中の スピン温度Tsを通して間接的にも含まれている. 係数qには, そのことが現れており, 第一項が前 者の寄与(直接的な寄与)を,第二項が後者の寄与(スピン温度の表式を通じての寄与)を表している. 一方で,δTα,δTg,δP10は,スピン温度を通じて21 cm輝度温度の揺らぎに寄与している. またδ∂vは,

(2.30)式に直接含まれており,それが21 cm輝度温度の揺らぎに寄与している.

ここでδH, δxHI, δTγ, δTg, δTα, δP10 は, いずれも等方的な揺らぎであるのに対して, 特異速度の

gradient δ∂vだけは非等方的な揺らぎであることに注意しておく. これはδ∂vの表す式からも分か

るように,視線方向という特定の方向に関する量だからである. このことが後で, 21 cm線のPower SpectrumからMatterのPower Spectrumを分離するのに役立つ. 30

(6.7)で,等方的な揺らぎの部分を,

δiso21 =qHδH +qxHIδxHI+qTγδTγ+qTgδTg +qTαδTα+qP10δP10 (6.15) のように書いておく.

30フーリエ空間の波数ベクトルと視線方向のなす角の余弦(cos)=µのベキでまとめたときに,µ4の項の係数はMatter Power Spectrumになる. →後述

○(δxHI 1)の場合で, さらにTg ≈Tαが成り立つとき. ここまでの議論では, Lymanα photon のColor TemperatureTαとガス(水素原子)の運動学的な温度Tgは一般に異なるとしてきた. しか しながら,この両者が近似的に一致する場合も実際には多くある. (→[1], [19]) それは例えば次のよ うな場合である. [19]でS. A. Wouthuysenが述べているように, Lymanα photonの散乱相手であ る中性水素原子(ガス系の温度=Tg)が多く,光学的に厚い領域の場合には, Lymanα photonは何 度も何度も散乱されることになって,その結果, photonの分布は, Lymanα周波数付近のところでは, 温度Tgの黒体分布に近づいていくと考えられる. このような場合にはTα≈Tgとできる. この近似 により,δ21の表式(係数qの表式) は比較的簡単な形になる. そのときの係数をq˜と表すと, (6.7)は, δ21|Tα=Tg ≈q˜HδH + ˜qxHIδxHI+ ˜qTγδTγ + ˜qTgδTg+ ˜qP10δP10+ ˜q∂vδ∂v (6.16) のようになる. この係数q˜は,

˜

qH = 1 + C¯10

C¯10+ ¯P10

A10

T

A10

T +C¯10T+ ¯¯P10

γ

(6.17)

˜

qxHI = 1 + C¯10 C¯10+ ¯P10

A10

T

A10

T +C¯10T+ ¯¯P10

γ

C¯10HH

C¯10 x¯HI 1−x¯HI

X

i=e,p

C¯10iH C¯10

 (6.18)

˜ qTγ =

T¯g

T¯g−T¯γ

A10

T +C¯10T+ ¯¯P10

g

A10

T +C¯10T+ ¯¯P10

γ

(6.19)

˜

qTg = T¯γ

T¯g−T¯γ

+ C¯10

C¯10+ ¯P10

A10

T

A10

T +C¯10T¯+ ¯P10

γ

 X

i=H,e,p

C¯10iH C¯10

d lnκiH10 ¡T¯g

¢ d ln ¯Tg

 (6.20)

˜

qP10 = P¯10

C¯10+ ¯P10

A10

T

A10

T +C¯10T¯+ ¯P10

γ

(6.21)

˜

q∂v = 1 (6.22)

で表される量である. このとき, (6.15)と同様に,揺らぎの等方的な部分は, δ21iso¯¯

Tα=Tg = ˜qHδH + ˜qxHIδxHI+ ˜qTγδTγ+ ˜qTgδTg + ˜qP10δP10 (6.23) である. (→詳しい計算はApenndixへ)

6.1.2 (Ts≫Tγ)の場合の21 cm輝度温度の揺らぎ

星形成から十分時間が経って, 星からの輻射でガス(水素〜バリオン)が十分に加熱された場合に は,ガスの温度TgはCMB photonの温度Tγよりも十分大きくなっていると考えられる. このときス ピン温度Tsも, CMB photonの温度Tγより十分大きくなっているはずである. こういう状況のとき には,この近似が成り立つと考えられる. この場合, (2.30)の式で

³

1TTγs´

1のように近似できる から,スピン温度TsとCMB photonの温度Tγを考慮しなくてもよくなる. 従って, (6.5)式で,δTs, δTγ については,考えなくてもよいことになる. このときδ21は,

δ21 £

1 +δH +δxHI −δ∂v+xHIδH−δxHIδ∂v}¤

1

δH +δxHI −δ∂v+xHIδH−δxHIδ∂v} (6.24)

のように比較的簡単な形に書くことができる. ここで, δの1次の項のうち, δH +δxHIの部分は等 方的な揺らぎである. 一方, 1次の項のうちδ∂vは, 視線方向に依存するようなので非等方な揺らぎ となる. また, 後でPower Spectrumを考えるときに少し述べるが, δxHIδ∂vのような項は, 一般に 複雑なµ = |kk|依存性を与え得る. これには, 実空間での積がフーリエ空間では畳み込みになると いうことが影響している. (F.12)の表式は基本的には実空間での表式であり, フーリエ空間での関 係と見なす際には注意が必要である. というのは,一般にA(x)B(x)をフーリエ変換したときには, ABg(k) = ˜A(k) ˜B(k)とならず,畳み込みの形ABg(k) =R d3k

(2π)3

A˜¡ k¢B˜¡

kk¢

になるからである. このことを考慮してフーリエ空間での式を書くと,

δ˜21(k, η;z) δ˜H(k, η;z) + ˜δxHI(k, η;z)−δ˜∂v(k, η;z) +

nδ^xHIδH(k, η;z)−δ^xHIδ∂v(k, η;z) o

δ˜H(k, η;z) + ˜δxHI(k, η;z)−δ˜∂v(k, η;z) +

Z d3k (2π)3

δxHI¡

k, η;z¢δ˜H¡

kk, η;z¢

−δ˜xHI¡

k, η;z¢δ˜∂v¡

kk, η;z¢o (6.25) のようになる. このとき, 21 cm線の輝度温度の揺らぎを決めているのは, δH, δxHI, δ∂vの3つの 揺らぎである. さらに, 今考えているような時期(z≪zeq) 31 では, 特異速度の揺らぎはフーリエ空 間では,δ∂v =−µ2f δbのようにバリオンの密度揺らぎを用いて表されるので, 21 cm線の揺らぎは, Ionization Fractionの揺らぎδxHI とバリオンの密度揺らぎδb(〜δH)で決まると言える.

○(Ts ≫Tγ)の場合でさらにδxHI 1のとき もしこのような状況のときには, (6.24)あるいは,

(6.25)で, {·}の部分は無視することができるので, 輝度温度の揺らぎは, 実空間でもフーリエ空間

でも

δ21≈δH +δxHI−δ∂v (6.26)

のように簡単な形で表される.

6.2 21cm 3D Power Spectrum [16]

この節では, 21 cm 輝度温度の3 次元(3D)Power Spectrumについて考える. 3次元のPower Spectrum P21は,

­δ21(k)δ21 ¡ k¢®

= (2π)3δD¡

kk¢

P21(k) (6.27)

のように定義される. 〈·〉はアンサンブル平均を表す. または複素共役の意味である. また揺らぎを 表すのにδという文字を用いているので,ここではDiracのでdelta関数をδD(·)のように表記して いる. ここでのフーリエ変換とフーリエ逆変換の定義(notation)は,

A˜(k) = Z

−∞

Z

−∞

Z

−∞d3xA(x) eik·x (6.28) A(x) =

Z

−∞

Z

−∞

Z

−∞

d3k (2π)3

A˜(k) eik·x (6.29) である. ただし(˜·)なしの量を実空間での量, ˜(·)付きの量をフーリエ空間での量とした.

ここで, 今扱っている揺らぎδ(x)は, いずれも実数(実関数)なので, δ(x) = δ(x)から, ˜δ(k) = δ˜(k)が成り立っていることに注意する. 従って, (6.27)は,

­δ21(k)δ21¡ k¢®

= (2π)3δD¡

k+k¢

P21(k) (6.30)

31zeq,物質のエネルギー密度と輻射のエネルギー密度が等しくなるm=ρr)ときの赤方偏移.

のように書いてもよい.

6.1節と同様に,この節でも「δxHI 1」の場合と,「Ts≫Tγ」の場合を考える.

6.2.1xHI 1)の場合の, 21 cm輝度温度の3D Power Spectrum

この場合には,δ21は, (6.7)のように表されるので,それを(6.27)に代入することにより, 21 cm輝 度温度の揺らぎのPower SpectrumP21を求めることができる. (6.15)のように,揺らぎの等方的な 部分を定義したので,その表記を用いると,

(2π)3δD¡

kk¢

P21(k) =

Dhδ˜21iso(k)−δ∂v(k)

i h˜δiso21 ¡ k¢

−δ∂v

¡k¢iE

=

Dδ˜iso21 (k) ˜δ21iso¡ k¢E

D

δ˜21iso(k) ˜δ∂v¡ k¢E

D

δ˜∂v(k) ˜δ21iso¡ k¢E

+

δ∂v(k) ˜δ∂v ¡ k¢E

= (2π)3δD¡

kk¢ h Pδiso

21δiso21 (k) +Pδiso

21δ∂v(k) +Pδ

∂vδiso21 (k) +Pδ∂vδ∂v(k) i

→P21(k) = Pδiso

21δiso21 (k)−Pδiso

21δ∂v(k)−Pδ

∂vδ21iso(k) +Pδ∂vδ∂v(k) (6.31) のように, 21 cm輝度温度の揺らぎのPower Spectrumを書き表すことができる. ただし, ここで二 つの揺らぎδA, δBに対して,

­δA(k)δB ¡ k¢®

= (2π)3δD¡

kk¢

PδAδB(k) (6.32)

のように,PδAδB を定義した. ここでは, P{δAδB}(k) = 1

2 h

PδAδB(k) +PδBδA(k) i

(6.33) という表記を導入して, (6.31)を,

P21(k) =Pδiso

21δ21iso(k)2P{δ21isoδ∂v}(k) +Pδ∂vδ∂v(k) (6.34) のように書いておく. (6.31)あるいは, (6.34)では,引数は全てkと書いたが,δiso21 は等方的な揺らぎ なので,Pδiso

21δ21isoは,kの大きさk=|k|にしかよらない. また,今考えている時期では,δ∂v ≈ −µ2f δH

のように書ける µ

ただし, µ= |kk|

ことを思い出すと,P21は「波数ベクトルkの大きさk=|k|」と

「その視線方向成分の大きさµ= k

|k|」に依存していることが分かる. そのことを表すために,P21(k) の代わりに,P21(k, µ)のようにも書いたりもする. これらのことを考慮すると, (6.34)は,

P21(k, µ) = Pδiso

21δ21iso(k)2f µ2P{δ21isoδH}(k) +f2µ4PδHδH(k)

= Pµ0(k) +µ2Pµ2(k) +µ4Pµ4(k) (6.35) のように書くことができる. 第二行目は,µのべきを意識した表記である. (6.35)で重要な点は,P21

はさまざまな揺らぎを反映してはいるが,µのベキで分けたときに,µ4の項がMatter(〜Baryon)の 密度揺らぎのPower Spectrumだけで書けているということである. このことから, Matterの密度 以外の揺らぎ(例えば, Neutral Fractionの揺らぎ等)がどうなっているか分からなかったとしても,

「原理的」には, 21 cm線のPower SpectrumからMatterのPower Spectrumの情報だけを引き出す ことができる. (→7章)

ここで,µの各べきの“係数” Pµ0, Pµ2, Pµ4 は,以下のように表される. Pµ0(k) = Pδiso

21δiso21 (k)

= qH2 PδHδH(k) +q2x

HIPδxHIδxHI (k) +q2TγPδδ (k) +qT2gPδTgδTg (k) +q2TαPδδ(k) +q2P10PδP

10δP10(k)

+2qHqxHIP{δHδxHI}(k) + 2qHqTγP{δHδ}(k) + 2qHqTgP{δHδTg}(k) +2qHqTαP{δHδ}(k) + 2qHqP10P{δHδP10}(k) + 2qxHIqTγP{δxHIδ}(k)

+2qxHIqTgP{δxHIδTg}(k) + 2qxHIqTαP{δxHIδ}(k) + 2qxHIqP10P{δxHIδP10}(k) +2qTγqTgP{δδTg}(k) + 2qTγqTαP{δδ}(k) + 2qTγqP10P{δδP10}(k)

+2qTgqTαP{δTgδ}(k) + 2qTgqP10P{δTgδP10}(k) + 2qTαqP10P{δδP10}(k) (6.36) Pµ2(k) = 2f P{δ21isoδH}(k)

= 2f

"

qHPδHδH(k) +qxHIP{δxHIδH}(k) +qTγP{δδH}(k) +qTgP{δTgδH}(k) +qTαP{δδH}(k) +qP10P{δT10δH}(k)

#

(6.37)

Pµ4(k) = f2PδHδH(k) (6.38)

各項の係数qは, (F.5), (F.6), (F.7), (F.8), (F.9), (F.10)の通りである. 21 cm輝度温度の揺らぎ のPower Spectrumは, このようにさまざまなPower Spectrumを足し合わせたものになり,一般に はかなり複雑なものになる. しかしながら,µのべきで分けてやることにより, “Physical”な情報であ るMatterのPower Spectrum PδHδH を“Astrophysical”な情報であるPδxHIδxHI 等から区別するこ とが原理的に可能になるのである.

いろいろなPower Spectrumが登場したが,このうち現時点で理論的に見積もるのが容易でないな のは,δxHI, δTg,δTα, δP10 が関わる項である. その理由は次の通りである. まず, δxHIは, Ionization history(Reionizationの仕組み)の詳細が分かっていないために,見積もるのが難しい. 水素原子の温 度Tgについては, X-ray hetaingや, Lymanαhetaingなど星形成の仕組みが関わってくるものがあ るため,見積もるのが容易ではない. また,δTα,δP10については,星形成でLymanα photonがどれ くらい生成されるかということが分からないと評価するのは困難である. 以上のような事情から, 21

cm Power Spectrumを理論的に見積もるのは一般に容易なことではないと言える. しかしながら,後

で考えるTs≫Tγの状況のときには,評価が困難なこの4つの揺らぎのうち,δTg,δTα,δP10について は考慮しなくてよくなるため, Ionization historyさえ評価してやれば, 21 cm Power Spectrumを見 積もることができることになる.

○さらに, Tα ≈Tgのように近似できるとき この場合には, 21 cm輝度温度の揺らぎは, (F.12)の ように表されるので, Power Spectrumは, (6.35)のδiso21δ21iso¯¯

Tα=Tgで置き換えたものになる. すな わち,

P21(k, µ) = Pδiso

21|Tα=Tgδiso21|Tα=Tg (k)2f µ2P

δiso21|Tα=TgδH(k) +f2µ4PδHδH(k)

= PµT0α=Tg(k) +µ2PµT2α=Tg(k) +µ4PµT4α=Tg(k) (6.39) のように書き表される. µの各べきの“係数” PµT0α=Tg, PµT2α=Tg, PµT4α=Tg は,先ほどと同様にして,

PµT0α=Tg(k) = Pδiso

21|Tα=Tgδ21iso|Tα=Tg(k)

= q˜H2PδHδH(k) + ˜qx2HIPδxHIδxHI(k) + ˜qT2γPδδ (k) +˜q2TgPδTgδTg(k) + ˜qP210PδP10δP10(k)

+2˜qHq˜xHIP{δHδxHI}(k) + 2˜qHq˜TγP{δHδ}(k) + 2˜qHq˜TgP{δHδTg}(k) +2˜qHq˜P10P{δHδP10}(k) + 2˜qxHIq˜TγP{δxHIδ}(k) + 2˜qxHIq˜TgP{δxHIδTg}(k) +2˜qxHIq˜P10P{δxHIδP10}(k) + 2˜qTγq˜TgP{δδTg}(k) + 2˜qTγq˜P10P{δδP10}(k)

+2˜qTgq˜P10P{δTgδP10}(k) (6.40)

PµT2α=Tg(k) = 2f P

δiso21|Tα=TgδH(k)

= −2f

"

˜

qHPδHδH(k) + ˜qxHIP{δxHIδH}(k) + ˜qTγP{δδH}(k) + ˜qTgP{δTgδH}(k) + ˜qP10P{δT10δH}(k)

#

(6.41)

PµT4α=Tg(k) = f2PδHδH(k) (6.42)

のように表される. 各項の係数q˜は, (F.13), (F.14), (F.15), (F.16), (F.17)に書いてある通りである.

6.2.2 (Ts≫Tγ)の場合の, 21cm輝度温度の3D Power Spectrum

この状況のときの21cm Power Spectrumは,同様に(6.27)に, (6.25)を代入することによって, (2π)3δD¡

kk¢

P21(k) =

Dhδ˜H(k) + ˜δxHI(k)−δ˜∂v(k) +

nδ^xHIδH(k)−δx^HIδ∂v(k) oi×

×h δ˜H

¡k¢ + ˜δxHI

¡k¢

−δ˜∂v¡ k¢

+

nδ^xHIδH

¡k¢

−δx^HIδ∂v¡

k¢oiE

=

Dδ˜H(k) ˜δH¡ k¢E

+

Dδ˜xHI(k) ˜δxHI¡ k¢E

+

Dδ˜∂v(k) ˜δ∂v ¡ k¢E +

Dδ˜H(k) ˜δxHI¡ k¢E

+

Dδ˜xHI(k) ˜δH ¡ k¢E

D

δ˜H(k) ˜δ∂v ¡ k¢E

D

δ˜∂v(k) ˜δH¡ k¢E

D

δ˜xHI(k) ˜δ∂v ¡ k¢E

D

δ˜∂v(k) ˜δxHI¡ k¢E +

( Dδ^xHIδH(k) ˜δH¡ k¢E

+

Dδ˜H(k)δ^xHIδH

¡ k¢E +

Dδ^xHIδH(k) ˜δxHI¡ k¢E

+

Dδ˜xHI(k)δ^xHIδH

¡ k¢E

D

δ^xHIδH(k) ˜δ∂v¡ k¢E

D

˜δ∂v(k)δ^xHIδH¡ k¢E

D

δ^xHIδ∂v(k) ˜δH ¡ k¢E

D

˜δH(k)δ^xHIδ∂v¡ k¢E

D

δ^xHIδ∂v(k) ˜δx

HI

¡k¢E

D

δ˜xHI(k)δ^xHIδ∂v¡ k¢E +

Dδ^xHIδ∂v(k) ˜δ∂v ¡ k¢E

+

Dδ˜∂v(k)δ^xHIδ∂v¡ k¢E +

Dδ^xHIδH(k)δ^xHIδH¡ k¢E

+

Dδ^xHIδ∂v(k)δ^xHIδ∂v¡ k¢E

D

δ^xHIδH(k)δ^xHIδ∂v

¡ k¢E

D

δ^xHIδ∂v(k)δ^xHIδH

¡ k¢E)

= (2π)3δD¡

kk¢"

PδHδH(k) +PδxHIδxHI (k) +Pδ∂vδ∂v(k) +

h

PδHδxHI (k) +PδxHIδH(k) i

h

PδHδ∂v(k) +Pδ∂vδH(k) ih

PδxHIδ∂v(k) +Pδ∂vδxHI (k) i

+ ( h

P(δxHIδH)δH(k) +Pδ

H(δxHIδH) (k) i

+ h

P(δxHIδH)δxHI (k) +Pδ

xHI(δxHIδH) (k) i

h

P(δxHIδH)δ∂v(k) +Pδ

∂v(δxHIδH) (k) i

h

P(δxHIδ∂v)δH(k) +Pδ

H(δxHIδ∂v) (k) i

h

P(δxHIδ∂v)δxHI(k) +Pδ

xHI(δxHIδ∂v) (k) i

+ h

P(δxHIδ∂v)δ∂v(k) +Pδ

∂v(δxHIδ∂v) (k) i

+P(δxHIδH)(δxHIδH) (k) +P(δxHIδ∂v)(δxHIδ∂v) (k)

h

P(δxHIδH)(δxHIδ∂v) (k) +P(δxHIδ∂v)(δxHIδH) (k) i)#

→P21(k) = PδHδH(k) +PδxHIδxHI (k) + 2P{δHδxHI}(k)

2P{δHδ∂v}(k)2P{δxHIδ∂v}(k) +Pδ∂vδ∂v(k) +

(

2P{(δxHI δH)δH}(k) + 2P{(δxHI δH)δxHI}(k)2P{(δxHI δH)δ∂v}(k)

2P{(δxHI δ∂v)δH}(k)2P{(δxHI δ∂v)δxHI}(k) + 2P{(δxHI δ∂v)δ∂v}(k)

+P(δxHIδH)(δxHIδH) (k)2P{(δxHI δH)(δxHIδ∂v)}(k) + 2P(δxHI δ∂v)(δxHI δ∂v) (k) )

(6.43) のようになる. ここで表記は, (6.32)及び, (6.33)に従っている. δ∂v≈ −µ2f δH であることを考慮す ると,

P21(k) = PδHδH(k) +PδxHIδxHI (k) + 2P{δHδxHI}(k)

+2µ2f P{δHδH}(k) + 2µ2f P{δxHIδH}(k) +µ4PδHδH(k) +

(

2P{(δxHI δH)δH}(k) + 2P{(δxHI δH)δxHI}(k)2P{(δxHI δH)δ∂v}(k)

2P{(δxHI δ∂v)δH}(k)2P{(δxHI δ∂v)δxHI}(k) + 2P{(δxHI δ∂v)δ∂v}(k)

+P(δxHIδH)(δxHIδH) (k)2P{(δxHI δH)(δxHIδ∂v)}(k) + 2P(δxHI δ∂v)(δxHI δ∂v) (k) )

(6.44) のように,µのべきでまとめることができる. ここで,{·}以外の部分(すなわち揺らぎのlinearの項だけ からできているところ)は,µ4の項までで書けるが,P{(δxHI δH)(δxHIδ∂v)}(k),P(δxHI δ∂v)(δxHI δ∂v) (k) のところはµの複雑な依存性をもつことになる. それは, 畳み込みの積分が出てくるせいである. P{(δxHI δH)(δxHIδ∂v)},P(δxHI δ∂v)(δxHI δ∂v)のなどのように高次の項については, Appendixで少しコメ ントする. [1], [25]

○さらにδxHI 1であるとき このときには, (6.44)において,{·}の部分を無視することができる ので, 21 cm Power Spectrumは,

P21(k) = PδHδH(k) +PδxHIδxHI(k) + 2P{δHδxHI}(k)

+2µ2f P{δHδH}(k) + 2µ2f P{δxHIδH}(k) +µ4PδHδH(k) (6.45) のように比較的簡単な形で書くことができる. この場合には,µのべきは, µ4までで書けていること が分かる. そして,µ4の項はMatter揺らぎのPower SpectrumPδHδHの形になっていることが分か る.

6.3 21 cm 3D Power Spectrumの特徴

ここまでの議論では,δxHI 1の場合と,Ts ≫Tγの場合という二つの場合を考えた. (6.35), (6.45) などを見ると分かるように,δxHI 1の場合には, 21 cm輝度温度のPower Spectrumのµ4の項は,