この節では, Alcock-Paczy´nski Effect(以下, AP Effectと呼ぶ)について考える. AP Effectとは一 言で言うならば, 観測から天体などの位置(=共動座標)を求める際に, 視線方向と,視線方向に垂直 な方向とで,その方法が異なることによって,非等方性が生まれるという効果である. 以下では,話を 簡単にするために, 視線方向にx3軸をとり, 視線方向に垂直な方向にx1-x2平面をとることにする. 観測から分かるのは,天体等からやってくる光の周波数スペクトルのずれを表す赤方偏移zと,天球 上の位置を表す角度(天体上のある点を見込む角度)θ=¡
θ1, θ2¢
である.
図 12: 位置関係を表す図
視線方向¡
x3方向¢
に光の放射源が広がっている場合には, 観測者との距離がそれぞれ異なるの で, さまざまなredshiftの光が観測されることになる. そのいろいろなredshiftの中心値を z∗ と し, 視線方向の基準点とする. すなわち, 観測者から視線方向に共動距離χ(z∗)の点を原点Oとす る. このときredshiftがzP, 観測者が見込む角度がθP = ¡
θP1, θ2P¢
である, 一般の点Pの共動座標 xP = ¡
x1P, x2P, x3P¢
は次のようにして求められる. ただし, zP はz∗に十分近いとし, 見込む角度 θP1, θ2P は十分小さいとする.
まずx3座標は,我々観測者(A点とする. redshiftは0)と原点O(redshift z∗)及び,点P(redshift zP)の共動距離が, Appendixに書いた共動距離の式(H.1)より,
AO = χ(z∗) = Z z∗
0
c dz
H(z′) (6.46)
AP = χ(zP) = Z zP
0
c dz
H(z′) (6.47)
のように表されることに注意すると,
x3P = OP =AP −AO
= Z zP
0
cdz H(z′) −
Z z∗
0
cdz H(z′) =
Z zP
z∗
cdz H(z′)
≈ c(zP −z∗)
H(z∗) (6.48)
のように求めることができる. ただし最後の変形では, zP とz∗が十分に近いとして近似した. すな わち,光の放射源が視線方向に広がっているサイズが十分小さいとした.
次に点Pのx1, x2座標を求める. ここで, Comoving Angular Diameter Distance dA(z)の定義は天 体のcomovingなサイズをl,その天体を見込む角度をθとしたときに,
dA(z)≡ l
θ (6.49)
というものであった. これより, dA(zP) = x1P
θP1 = x2P θP2 →
(
x1P =dA(zP)θP1 ≈dA(z∗)θ1P
x2P =dA(zP)θP2 ≈dA(z∗)θ2P (6.50) のように, Comoving Angular Diameter DistancedAを用いて,点Pのx1, x2座標が求められる. た だし,≈の後は,zP ≈z∗であるとして,dAの値をz∗で評価した. 以上より,
¡x1P, x2P, x3P¢
= µ
dA(z∗)θP1, dA(z∗)θ2P,c(zP −z∗) H(z∗)
¶
(6.51) のように,一般の点Pの共動座標が求めることができた. 点Pは一般の点だったので,以下では添字 Pを省略して,単に
x=¡
x1, x2, x3¢
= µ
dA(z∗)θ1, dA(z∗)θ2,c(z−z∗) H(z∗)
¶
(6.52) のように書くことにする. (6.52)からも明らかなように,観測で分かった赤方偏移z及び,見込む角度 θ =¡
θ1, θ2¢
から,共動座標を求める際に,視線方向¡
x3方向¢
と視線方向に垂直な方向¡
x1, x2方向¢ で,求める方法が違う. 実際,前者はHubble ParameterH(z)を用いるのに対して,後者はComoving Angular Diameter Distance dA(z)を用いている. このため, x1, x2方向と, x3方向で非等方性を生 じ得る. 実際に, (6.52)のようにして, 観測から共動座標を求めるときには,一つCosmologyを仮定 する必要がある. すなわち,H(z),dA(z)の形を決めてやることが必要となる. 例えば,LCDMモデ ルの場合には, Ωm,ΩΛ,Ωk等のCosmological Parameterの値を一つに決めてやる必要がある. その 際に「仮定した」Parameterの値が「本当の」Parameterの値からずれている場合には,見積もった 共動距離もずれたものになってしまう. そのずれがx1, x2方向と,x3方向で違うために,非等方性が
生じるわけである. どのような非等方性が生じるかを見るために,次のようなParameter α, α⊥を定 義する.
1 +α ≡ H(true)d(true)A
H(ass)d(ass)A (6.53)
1 +α⊥ ≡ d(true)A
d(ass)A (6.54)
ここで,添字ass, trueはそれぞれ,仮定した値,本当の値を用いたことを表している. α, α⊥は,仮定 した値で評価したときと,本当の値で評価したときのずれを表すParameterである. 仮定した値と本 当の値の差は小さいと考え,αとα⊥はともに小さい値だと考えて,以下では議論する.
共動座標は, (6.52)のように求まるので,仮定したCosmologyで見積もった共動座標は, x(ass)=
³
x1(ass), x2(ass), x3(ass)
´
= µ
d(ass)A θP1, d(ass)A θ2P, c(z−z∗) H(ass)(z∗)
¶
(6.55) のように書ける. 同様に,本当のCosmologyで見積もった共動座標は,
x(true)=
³
x1(true), x2(true), x3(true)
´
= µ
d(true)A θ1P, d(true)A θP2, c(z−z∗) H(true)(z∗)
¶
(6.56) のように書ける. (6.55)と(6.56)より,x(true)とx(ass)には,
x1(true) = d(true)A (z∗) d(ass)A (z∗)
x1(ass)= (1 +α⊥)x1(ass) (6.57) x2(true) = d(true)A (z∗)
d(ass)A (z∗)
x2(ass)= (1 +α⊥)x2(ass) (6.58) x3(true) = H(ass)(z∗)
H(true)(z∗)x3(ass) = 1 +α⊥
1 +α x3(ass) (6.59)
という関係があることが分かる. この関係をまとめて x(true)=f
³ x(ass)
´
, x(ass)=f−1
³ x(true)
´
(6.60) と書くことにする. 以下では,いちいち添字ass, trueを書くと煩雑になるので,添字の無い方がass を,添字tと書かれた方がtrueを意味することにする.
「仮定された値を用いて,見積もった共動座標」で表した密度揺らぎをδ(x)と表すと,本当の密度揺 らぎδt¡
xt¢ は,
δt¡ xt¢
=δ(x) =δ¡ f−1¡
xt¢¢
(6.61) で表される量である. これが,実空間における,仮定された密度揺らぎδ(x)と本当の密度揺らぎδ¡
xt¢ の関係である.
次に密度揺らぎのフーリエ変換を考え,フーリエ空間での密度揺らぎの関係を調べる. δ(x)をフー リエ変換すると,
δ˜(k)≡ Z
d3xδ(x) e−ik·x (6.62)
となる. ここで, (6.60)という“変数変換”を行うと, d3x= 1+α
(1+α⊥)3d3xtとなることや, (6.61)の関係 に注意すると,
δ˜(k) =
Z 1 +α
(1 +α⊥)3d3xtδ¡ f−1¡
xt¢¢
e−ik·f−1(xt)
= 1 +α
(1 +α⊥)3 Z
d3xtδ¡ xt¢
e−ikt·xt
= 1 +α
(1 +α⊥)3
˜δt¡ kt¢
(6.63) のように変形できることが分かる. ただし, eの指数部分は, (6.57), (6.58), (6.59)から,
k·f−1¡ xt¢
= k1 µ 1
1 +α⊥x1t
¶ +k2
µ 1 1 +α⊥x2t
¶ +k3
µ 1 +α 1 +α⊥x3t
¶
=
µ 1 1 +α⊥k1
¶ x1t+
µ 1 1 +α⊥k2
¶ x2t+
µ 1 +α 1 +α⊥k3
¶
x3t (6.64) と変形できるので,
kt=¡
k1t, k2t, k3t¢
≡ µ 1
1 +α⊥k1, 1
1 +α⊥k2, 1 +α 1 +α⊥k3
¶
(6.65) のように“本当の”波数ベクトルktを定義して,
k·f−1¡ xt¢
=kt·xt (6.66)
のように書き直した. (6.63)がフーリエ空間における,仮定された密度揺らぎ˜δ(k)と本当の密度揺 らぎ˜δt¡
kt¢
の関係であり,ktとkの関係は, (6.65)で与えられる. 波数ベクトルの関係は,座標の関 係(6.57), (6.58), (6.59)とちょうど逆数の関係になっていることが分かる. これは一般に実空間がb 倍されると,フーリエ空間は 1b 倍されることを表している.
次はPower Spectrumの関係を調べる. Power Spectrum P(k)は,密度揺らぎδ˜(k)を用いて, Dδ˜(k) ˜δ∗¡
k′¢E
= (2π)3δD¡
k−k′¢
P(k) (6.67)
のように定義される量である. ここでδD(·)はDiracのδ関数(3次元)であり,∗は複素共役を表し ている. また,〈·〉はアンサンブル平均を意味する. (6.67)の左辺に, フーリエ空間での密度揺らぎの 関係(6.63)を代入すると,
(2π)3δD¡
k−k′¢
P(k) =
¿ 1 +α (1 +α⊥)3
δ˜t¡
kt¢ 1 +α (1 +α⊥)3
δ˜t¡ kt′¢À
= (1 +α)2 (1 +α⊥)6
Dδ˜t¡ kt¢δ˜t¡
kt′¢E
= (1 +α)2
(1 +α⊥)6 (2π)3δD¡
kt−kt′¢ Pt¡
kt¢
(6.68) のようになることが分かる. ここでδ(ax) = |1a|δ(x)というδ関数の性質を用いると, (6.65)より,
δD¡
kt−kt′¢
= (1 +α⊥)3 1 +α δD¡
k−k′¢
(6.69)
となるので, (6.68)は, (2π)3δD¡
k−k′¢
P(k) = (1 +α)2
(1 +α⊥)6 (2π)3(1 +α⊥)3 1 +α δD¡
k−k′¢ Pt¡
kt¢
→P(k) = 1 +α (1 +α⊥)3Pt¡
kt¢
(6.70) となることが分かる. (6.70)が仮定されたPower Spectrumと本当のPower Spectrumの関係である. さらに今度はPとPtの関係を調べる. すなわち同じ引数でP(·)とPt(·)を比べる. 以下では, 21 cm Power Spectrumの場合を想定して, Power Spectrumが波数ベクトルの大きさk=|k|と,x3軸と波 数ベクトルの余弦(cos)であるµ= kk3 だけに依存する場合を考える. (実際, 21 cm Power Spectrum はP21t ¡
kt, µt¢
の形である.) その前に, まず
³
kt=¯¯kt¯¯, µt= kk3tt
´
と, (k, µ)の関係を見ておく. 波数ベクトルの関係は(6.65)で あったので,
kt = q
(k1t)2+ (k2t)2+ (k3t)3
=
sµ 1 1 +α⊥k1
¶2
+ µ 1
1 +α⊥k2
¶2
+
µ 1 +α 1 +α⊥k3
¶2
= k
1 +α⊥
p1 + (2α+α2)µ2
≈ k(1−α⊥)¡
1 +αµ2¢
≈ k¡
1 +αµ2−α⊥¢
(6.71) µt =
1+α 1+α⊥k3
k 1+α⊥
p1 + (2α+α2)µ2
= µ(1 +α) 1
p1 + (2α+α2)µ2
≈ µ(1 +α)¡
1−αµ2¢
≈ µ© 1 +α¡
1−µ2¢ª
(6.72) のように,¡
kt, µt¢
と(k, µ)の関係がつくことが分かる. ただし≈の後は,α, α⊥が小さいとして,α, α⊥ のそれぞれ1次までで近似した. この関係から,ktを表すのにkだけでなくµも必要なことが分かる. これが非等方性を生じる理由と言える. (6.70)に(6.71)と(6.72)を代入して,
P(k, µ) = 1 +α (1 +α⊥)3Pt¡
kt, µt¢
≈ (1 +α) (1−3α⊥)Pt¡ k¡
1 +αµ2−α⊥¢ , µ©
1 +α¡
1−µ2¢ª¢
≈ (1 +α−3α⊥)
·
Pt(k, µ) +k¡
αµ2−α⊥¢∂Pt(k, µ)
∂k +µ© 1 +α¡
1−µ2¢ª∂Pt(k, µ)
∂µ
¸
≈ (1 +α−3α⊥)Pt(k, µ) +¡
αµ2−α⊥¢∂Pt(k, µ)
∂lnk +α¡
1−µ2¢∂Pt(k, µ)
∂lnµ (6.73) となる. ただし≈の後は, α, α⊥の1次の項まで残し, 高次の項は無視した. (6.73)を見ると分かる ように, Ptが等方的なPower Spectrumであったとしても, すなわちk = |k|にしか依存しない形 だったとしても, P(k, µ)は, 第二項のようにµに依存する項を含み得る. すなわち非等方なPower Spectrumになり得る. 実際に21 cm Power Spectrumの場合を考える. 21 cm Power Spectrumは,
δxHI ≪1のときには, (6.35)や, (6.45)のように,
P21t (k, µ) =Pµt0(k) +µ2Pµt2(k) +µ4Pµt4(k) (6.74) という形で,µの4乗のべきまでしか存在しなかった. しかしながら, AP Effectを考慮すると, (6.73) のように,新たにµのべきが増えるので,最高でµの6乗のべきの項が出てくることが分かる. それ を考慮すると,仮定したCosmologyの下での21 cm Power Spectrumは,
P21(k, µ) =Pµ0(k) +µ2Pµ2(k) +µ4Pµ4(k) +µ6Pµ6(k) (6.75) のように書くことができる. Pµ0, Pµ2, Pµ4, Pµ6 は, (6.73)の関係から, Pµt0, Pµt2, Pµt4 を用いて表すこ とができる. 詳細な計算はAppendixに記すとして,ここでは結果を書くと,
Pµ0(k) = Pµt0(k) +αPµt0(k)−α⊥ Ã
3Pµt0(k) +∂Pµt0(k)
∂lnk
!
(6.76) Pµ2(k) = Pµt2(k) +α
Ã
3Pµt2(k) + ∂Pµt0(k)
∂lnk
!
−α⊥ Ã
3Pµt2(k) +∂Pµt2(k)
∂lnk
!
(6.77) Pµ4(k) = Pµt4(k) +α
Ã
5Pµt4(k)−2Pµt2(k) +∂Pµt2(k)
∂lnk
!
−α⊥ Ã
3Pµt4(k) +∂Pµt4(k)
∂lnk
! (6.78) Pµ6(k) = −α
Ã
4Pµt4(k)−∂Pµt4(k)
∂lnk
!
(6.79) のようになる. 当然のことではあるが, α = α⊥ = 0のとき, すなわち仮定したCosmologyが真の Cosmologyだった場合には,
Pµ0(k) = Pµt0(k) (6.80)
Pµ2(k) = Pµt2(k) (6.81)
Pµ4(k) = Pµt4(k) (6.82)
Pµ6(k) = 0 (6.83)
となり, Power SpectrumはTrue Power Spectrumになる.
第 III 部 Fisher Information Analysis と
21 cm 線を用いた宇宙論的パラメータの推定
7 Fisher Information Analysis[22], [23]
ここでは, Fisher Analysisについて説明する. Fisher analysisは,不偏推定量(後述)を用いて,理 論のパラメータを推定する場合に,パラメータの最小分散限界を見積もるための統計解析の手法であ る. 例えば, 観測の設計がある場合に,理論のパラメータがどの程度の誤差範囲で推定できるかとい うことを調べるために用いられる. (実際, この修士論文では, 21 cm線(+CMB)の観測で理論のパ ラメータがどの程度の誤差で推定できるかを調べている.) [22]
7.1 統計的な量の定義
ここでは,後で登場するさまざまな統計量の定義について述べる. 観測で得られたデータを表すベクトルを
x= (x1, x2,· · · , xn) (7.1) のように表す. このデータを表すベクトルを確率変数としてとらえ,確率密度分布関数f(x|θ)に従 うとする. ここで,
θ= (θ1, θ2,· · · , θm) (7.2) は理論(モデル)のパラメータ(m個あるとした)である. f(x|θ)は,確率密度を表しているので,
Z
dnxf(x|θ) = 1 (7.3)
のように規格化されている. (起こりうる全ての状況について確率を足し合わせると1) 表記を簡単にするために以下では,確率分布関数による平均操作を,
〈·〉= Z
dnx(·)f(x|θ) (7.4)
とする表記も用いる.
7.1.1 相互共分散行列と分散共分散行列
一般にp次元の確率変数X(x) =t(X1(x),· · ·, Xp(x))とq次元の確率変数Y (x) =t(Y1(x),
· · · , Yq(x))に対して32,相互共分散行列Cov(X,Y)は, Cov(X,Y) ≡
[X − 〈X〉]t[Y − 〈Y〉]® ,
Cov(X,Y)ij ≡ 〈[Xi− 〈Xi〉] [Yj− 〈Yj〉]〉 (7.5) のように定義される行列である. 〈·〉は, (7.4)のように, データの従う確率分布関数による平均を表 す. 定義からCov(X,Y)は,p行q列の行列になる.
次に,p次元の確率変数X(x)に対して,分散共分散行列V (X)は, V (X) ≡ Cov(X,X) =
[X− 〈X〉]t[X− 〈X〉]®
V (X)ij ≡ 〈[Xi− 〈Xi〉] [Xj − 〈Xj〉]〉 (7.6)
32t(·)は, (·)を転置したものを表す. ここでは,X,Y は縦ベクトルを基本にしている
のように定義されるp行p列の行列である. p= 1の場合には,変数Xの分散を表すことからも分か るように,分散を多次元に拡張したものである.
分散共分散行列の性質としては次のものが挙げられる. 分散共分散行列は基本的には,変数の分散を 表しているので, (半)正定値行列になる. すなわち,任意のu=t(u1,· · ·, up)∈Rpに対して,
tuV (X)u= Xp i,j=1
uiV (X)ijuj ≥0 (7.7)
が成り立つ. 33 不等式(7.7)は,分散共分散行列の固有値が全て0以上(半正定値の場合)[正(正定値 の場合)]であることを意味している. また, 定義から明らかであるが,分散共分散行列は対称行列で ある. すなわち,
V (X) =tV (X) (7.8)
が成り立っている.
7.1.2 一致推定量と不偏推定量
一般に,母集団が大きすぎて全数調査が出来ない場合などには,母集団から標本(例えば,大きさn) を抽出し,その標本について調べることで,母集団についてのパラメータを推定することになる.
「一致推定量」とは,標本の大きさnが十分大きい極限で,母集団のパラメータを偏りなく推定でき る推定量のことである. 数学的に厳密に言うと次のようになる. 標本サイズnの標本から推定した推 定量をtnと表すことにすると,任意のϵ >0,δ >0に対して,ある正の整数N が存在して,
n > N ⇒P rob{|tn−θ|< ϵ}>1−δ (7.9) となるとき,tnを母集団のパラメータθに対応する一致推定量であるという. 34
次に,「不偏推定量」は次のように定義される量である. 標本(サイズn)から推定したθˆk(x)が母集 団のパラメータθkの不偏推定量であるとは, ˆθk(x)の期待値が,θkになることである. すなわち,
Dθˆk E≡
Z
dnxθˆk(x)f(x|θ) =θk (7.10) ということである. 不偏推定量の重要な点は,その期待値が母集団のパラメータになることである. Fisher Analysisでは,この不偏推定量を用いて推定される,母集団のパラメータ(理論のパラメータ) の最小分散限界を見積もることになる.