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Heat treatment temp. [K]

ドキュメント内 第 1 章 (ページ 65-70)

第3章 熱損傷大腸菌に対する誘電特性解析の基礎検証

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図3.16 加温処理温度とΔGの関係(1)

(周波数:100 kHz,印加電圧:10 Vpp)

図3.17 加温処理温度とΔGの関係(2)

(周波数:1 MHz,印加電圧:10 Vpp)

0 5 10 15 20

260 280 300 320 340 360 380 400

Δ G S]

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3.3.3 コロニーカウント計測法による加温処理温度と生育活性の相関検証

加温処理温度とATCC 11775コロニー生育数との関係を図3.18に示す.ここでは,277 K処理時のコロニー数(M277)を基準とし,各処理温度によるコロニー数を相対値(M / M277) で示した.加温処理温度が277 K - 309 Kの範囲では,コロニー生育数に大きな差異は見 られない.320 K(47 ℃)での発育数は277 K時と比較してほぼ半減し,それ以上の温 度になると, ATCC 11775は寒天培地に生育しなかった.また,277 K - 309 Kの範囲に

おけるΔG変動とATCC 11775コロニー生育数を比較した場合,特に明確な相関は得られ

なかった.

標準寒天培地によるATCC 11775 コロニーの生育例を図3.19に示す.一般に,細菌 は加熱によって強いストレス負荷を受けると細胞の一部が毀損し,いわゆる損傷菌と呼 ばれる状態となる.損傷菌は,加熱だけでなく冷蔵,冷凍,コールドショックなどのス トレス要因によっても発生する[22].また,単純に処理温度だけではなく,今回の実験の ように,低温(277 K)保管試料に対するウォーターバスを用いた急加温によっても細菌 状態に多大な影響を及ぼす[23].以上のことから,比較的低温領域においても,条件によ って一定量の損傷菌が形成されるものと推測される.ただし損傷細菌は,損傷の程度に よって,今回用いた標準寒天培地などの非選択培地上で代謝機能を回復させ生育するこ とができる[21].すなわち,今回333 K(60 ℃)以上の温度で処理されたATCC 11775が 充分に発育出来なかったのは,細胞質膜等のタンパク質の熱変性,或いは細胞表面全体 の著しい損傷によって代謝活性機能を完全に失活したためと推測される.

結局,コロニーカウント計測法は,培地に存在する細菌の生育活性の有無を評価する ための指標であり,一定時間培養して形成されたコロニーは,大きさに差異が生じる可 能性はあるものの,コロニー形成の元となる細菌の代謝状態の差異を詳細に検証するこ とは困難であると言える.

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図3.18 加温処理温度とATCC 11775生育数の関係

図3.19 標準寒天培地によるATCC 11775 コロニーの生育例

0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0 1.2 1.4

260 280 300 320 340 360 380 400

A TC C 1 1775 [ M / M

277

]

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3.3.4 数値解析による熱損傷大腸菌の誘電特性評価

細胞質(cp)及びペリプラズム空間(ppls)の導電率及び誘電率が変化することによっ て,Clausius-Mossotti 関数の実部Re[K*()]がどのように変動するかを数値解析によって 検証した.pplsの導電率σpplsに対するRe[K*()]の周波数特性を図3.20に示す.また,cp の導電率σcpに対するRe[K*()]の周波数特性を図3.21に示す.σpplsの変動範囲を0.03 - 3.0 S/mとして数値解析を実施した結果,特に10 kHz - 1 MHzの範囲では,導電率設定値の 低下に伴って Re[K*()]も減少した.一方の σcpは,低周波から 100 kHz 付近において

)]

(

Re[K*  の変化は見られず,500 kHz以上の周波数領域において,導電率設定値の低下 に伴いRe[K*()]の減少が確認された.ただし,導電率の差異によってRe[K*()]が大き く変動するのは,4 MHz以上の高周波であることが本解析結果から得られた.

次に,誘電率を変動パラメータとして扱った場合のRe[K*()]の挙動を解析した.ppls の誘電率

ε

pplsに対するRe[K*()]の周波数特性を図3.22に示す.また,cpの誘電率

ε

cpに 対するRe[K*()]の周波数特性を図 3.23に示す.解析の結果,

ε

ppls及び

ε

cpのいずれにお いても,低周波から 2 MHz 付近までの周波数領域でRe[K*()]の変動は確認されなかっ た.特に

ε

pplsの場合,10 GHz という高周波領域に達するまで,誘電率の差異による

)]

(

Re[K*  変動は発生しなかった.これらの数値解析の結果から,本研究のDEPIM条件

である100 kHz - 1 MHzの範囲において,ΔGを増減させる主因は導電率であり,特に

σ

ppls

の変動に強く依存していることが判明した.これは,3.2.6節における式(3.3)から導出さ れた導電率と誘電率との関係の妥当性を示すものである.

一般に菌体内では,各種糖,アミノ酸,脂質などが互いに密接な関連性を持ち,それ ぞれ独自の代謝経路を経て一定の速度を保ちながら代謝される.この代謝活動は,各代 謝系に関与する酵素活性によるものであり,代謝調節は,生体内酵素活性変化及び酵素 量の増減に依存する[24].酵素は特異的な立体構造を持つタンパク質であるが,タンパク 質は温度によって構造が変化し,酵素反応速度は pH 及び温度との相関が高い.ここで

上記3.3.3節に記述した通り,加温処理によるストレス負荷は,細菌の各階層を構成する

タンパク質の変性或いは破損を誘引する.それと同時に,このような状態では菌体内の 各種導電性物質または核酸関連物質の漏洩,糖及びアミノ酸の基質輸送能の低下,菌体 内でのタンパク質凝集,各種酵素の失活などの諸現象が生じる[25].さらに,細菌の致死 効果は熱による一次的作用だけではなく,熱による細胞膜損傷から,そこに局在する呼

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吸系酵素から活性酸素が多く発生し,それによって酸化的損傷が発生して死に至る場合 がある[26].以上のことから,熱処理によって呼吸活性が低下し,呼吸系代謝経路に何ら かの影響を与えている可能性があるといえる.これら要因の複合的な作用により,ATCC

11775 の代謝状態は変化し,それと同時に各層の導電率及び誘電率も複雑に変動する.

上記の通り,ΔGの挙動は菌体内の導電率(特に

σ

ppls)の変動と高い相関を示すため,結 局,ΔGの挙動は,細菌の細胞膜活性及び膜損傷の程度を間接的に反映しているといえる.

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図3.20 ペリプラズム空間の導電率σpplsに対するRe[K*()]の周波数特性

図3.21 細胞質の導電率σcpに対するRe[K*()]の周波数特性 -0.6

-0.4 -0.2 0.0 0.2 0.4 0.6 0.8 1.0

0.001 0.010 0.100 1.000 10.000 100.000

R e [ K* )]

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