第3章 熱損傷大腸菌に対する誘電特性解析の基礎検証
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図3.7 セルデバイス概略
図3.8 マイクロフィルタ概略 [a]
[b]
[c] [d] [e]
[f]
第3章 熱損傷大腸菌に対する誘電特性解析の基礎検証
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3.2.5コロニーカウント計測法による生育活性計測
加温処理によるATCC 11775生育活性変化量を調査するため,混釈平板培養法によっ て生育するコロニー数を計測した.DM溶液で106 - 107倍希釈した各処理サンプル1 mL を,滅菌済みプレート2枚ずつに分注した.培地及び培養条件は3.2.2節と同様とした.
なお,DEPIMは行っていないが,追加で333 K(60 ℃)の温度でも加温処理を実施し,
コロニー生育数を計測した(コロニーカウント計測法の詳細は付録B参照).
3.2.6 数値解析による熱損傷大腸菌の誘電特性評価
2.1節で示した式(2.16)について,MW をMaxwell-Wagnerの誘電緩和時間として
, (3.1)
とおくと,Clausius-Mossotti関数は,
(3.2)
と表すことができ,このことから,
(3.3)
という関係が得られる[18].
これらのことから,DEPによる力の方向と大きさの関係は,低周波数では
σ
1およびσ
2の大小に依存し,高周波数では
ε
1およびε
2の大小に依存することが分かる.つまりこ れらの関係から,処理温度変化によるσ
/ε
の変動を見極められると解釈できる.これらを検証するために,2.1 節の式(2.15)における Clausius-Mossottii 関数の実部
(Re[K*()])に対する数値解析を実施した.本解析ではATCC 11775を,外殻から細胞 外膜(outer membrane: om),ペリプラズム空間(periplasmic space: ppls),細胞内膜(inner
membrane: im)及び細胞質(cytoplasm: cp)からなる4層構造球体としてモデル化した(図
1 2
1 2
2 2
MW
1 2
1 2
0
1 1 ) 2
( 0
1 2
1 2
*
j MW
K j
1 2
1 2
*
1 2
1
* 2 0
)] 2 ( [ lim
)] 2 ( [ lim
K K
第3章 熱損傷大腸菌に対する誘電特性解析の基礎検証
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3.9).ここで,E. coliの代表的な構造例を図3.10に示す.また,本解析に用いた各パラ
メータを表3.1に示す.このパラメータに基づき,cp及びpplsの導電率及び誘電率を変 化させることによってRe[K*()]の周波数特性を検証した.今回の解析において媒質は純 水とし,
σ
= 2.0×10-4 S/m,ε
r = 80と設定した[19](計算プログラムの詳細は付録C参照).図3.9 E. coliの4層構造球体モデル
図3.10 E. coli(グラム陰性菌)の構造(右:全体概要,左細胞壁構造)
細胞外膜(outer membrane: om)
ペリプラズム空間
(periplasmic space: ppls)
細胞内膜
(inner membrane: im)
細胞質
(cytoplasm: cp)
第3章 熱損傷大腸菌に対する誘電特性解析の基礎検証
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表3.1 本解析に用いる各パラメータ
3.3 実験結果及び考察
3.3.1 細菌捕捉による電極間のコンダクタンス変化
計測時間と電圧印加開始時からのΔGとの関係例(周波数:100 kHz,加温処理温度:
309 K)を図3.11に示す.また,DEPIM中における電極間での細菌捕捉状況を図3.12に
示す.図3.11[A]の電圧印加開始から90 sec後の図3.10[B]の時点でATCC 11775試料を注 入した.約100 secの図3.11[C]の時点から,電極間にATCC 11775が捕捉され始めるのと 同時にΔGの増加が見られた.ATCC 11775は電極全体で捕捉され,図3.12 (b)に示すと おり電極間の各でpearl chainが形成したが,pearl chainの一部は水流の力によって流れ方 向に滑走し,最終的には多量のpearl chainが,電極下流部の折り返し部(図中赤枠部)
に集結した.ただし,電極上流部の折り返し部において,同様に細菌捕捉は保持された.
電圧印加を停止した図3.11[D]の時点では,捕捉されていたATCC 11775が瞬時に放出さ れた.また,界面親和剤の効果によって,電極間に残存するATCC 11775は極めて少な
く,図3.12 (c)のとおり電極への付着も殆ど確認されなかった.
ここで,計測時間tにおける電極間ΔG及びΔCの変化を図3.13示す.また,本結果 に基づいた両者の関係を図 3.14 に示す.ΔG 及び ΔC は電圧印加開始から同様の増加傾
Property SI unit Condition
cp diameter rcp m 1.0×10-6
im diameter rim 7.0×10-9
ppls diameter rppls 1.0×10-8
om diameter rom 7.0×10-9
cp conductivity σcp S/m 0.22
im conductivity σim 0
ppls conductivity σppls 3
om conductivity σom 0
Medium conductivity σa 2.0×10-4
IPA conductivity σIPA 3.5×10-4
cp relative permitivity εcp 100
im relative permitivity εim 6
ppls relative permitivity εppls 60
om relative permitivity εom 10
Medium relative permitivity εa 80
第3章 熱損傷大腸菌に対する誘電特性解析の基礎検証
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向を示した.また,図 3.14 に示す通り,両者は直線関係にあり,この結果は,2.2 節の 式(2.22)の関係を証明するものである.また,同式の通り,細菌はRCの並列回路として 成立し,ΔG及びΔCは,細菌のキャパシタンスCB及び抵抗RBの乗算値CBRBを係数と する比例関係を示す(図 3.14参照).この比例係数は菌固有の値とされる[4].図 3.14 の 結果をもとに,近似曲線解析から導出したCBRBは約1.5×10-6 FΩであった.参考として,
K12という別菌株のE. coliを用いた末廣らの実験結果[7]を図3.15に示す.ここでは,当 該菌種における本係数値を約0.82×10-6 FΩと推量している.
これらの顕微鏡観察及びDEPIM結果から,捕捉菌量とΔGの関係は,細菌をRCの並 列回路として扱うことが可能であり,末廣らが提唱した等価回路モデルが適用できるこ とを示唆している.よって,本マイクロフィルタを用いたDEPIM法は妥当であると結論 される.
なお,Fdepによる電極間での微生物捕捉の詳細な状況については,4.3.1節及び5.3.1節 での実験結果を併せて参照されたい.
第3章 熱損傷大腸菌に対する誘電特性解析の基礎検証
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図3.11 測定時間とΔGの関係
図3.12 DEPIM中におけるCr電極間での菌捕捉状況
(観察位置:電極下流部の折り返し部)
(a) 0 sec,(b) 150 sec,(c) 900 sec 0
4 8 12 16 20
0 200 400 600 800 1000
Δ G [μ S]
t [s]
[D]
[B]
[A] [C]
Pearl chains (b)
(c) Flow
(a)
第3章 熱損傷大腸菌に対する誘電特性解析の基礎検証
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図3.13 計測時間tにおけるΔG及びΔCの変化
図3.14 ΔG及びΔCの関係
0 2 4 6 8 10 12 14 16
0 2 4 6 8 10 12 14 16
0 100 200 300 400 500 600 700 800 900
Δ G [μ S]
Δ C [pF]
t [s]
ΔC
ΔG
0 2 4 6 8 10 12 14 16 18
0 2 4 6 8 10 12
Δ C [pF]
ΔG [μS]
ΔC = C
BR
BΔG
TC
BR
B≒ 1.5 ×10
-6第3章 熱損傷大腸菌に対する誘電特性解析の基礎検証
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図3.15 E. coli K12菌株におけるGT及びCT(ΔG及びΔC)の関係(末廣ら[7])
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3.3.2 加温負荷処理とコンダクタンス変化量との相関
周波数100 kHz時における加温処理温度とΔGとの関係を図3.16に,1 MHz時におけ
る加温処理温度とΔGとの関係を図3.17に示す.ここでは,電圧印加開始300,600及び
900 sec時点のΔGを表示した.100 kHzでは,処理温度の上昇に伴ってΔGは増加し,
300 K(27 ℃)付近で最も高い値を示した.それ以降では,加温処理温度の上昇と共に
ΔGは減少した.完全に失活したと推測される353 K(80 ℃)では,300 sec時のΔGは 低温処理(277 K)時と比較して高いものの,900 sec時のΔG増加は抑制された.処理温 度におけるΔGの変動は,測定時間内におけるATCC 11775捕捉量及びpearl chainの形成 状況が,加温処理によって変化したことに起因している.特に高温処理(353 K)におい て電極間への捕捉量が明らかに減少したことは,DEPIM時の顕微鏡観察によって観察さ れている.また,電極間の他でも,電極エッジ部にATCC 11775が局所的に捕捉される 現象が観察された.これはエッジ部に高い∇E が形成され,強力な Fdepが作用したため と考えられる.1 MHz時の場合,277 K - 320 Kの範囲において緩やかなΔGの減少が計 測された.また,3.3.1節で観察されたpearl chainの顕著な滑走現象が発生した.一方で,
100 kHz時とは異なり,353 Kで処理されたATCC 11775は電極間で殆ど保持されず,pearl
chain も形成されなかった.結果的に,当該温度における ΔG の増加は見られなかった.
本結果は,周波数条件1 MHzにおいて,高温処理されたATCC 11775に対するFdepの作 用は極めて小さい事を示唆している.
通常,生細胞と死細胞では誘電特性が大きく異なる.この性質を利用して,生・死菌 を分離する研究報告がなされているが[2],[3],[20],[21],本実験において,加温処理による細菌 の活性(または生死)状態の相違による誘電特性の変化を確認することができた.
第3章 熱損傷大腸菌に対する誘電特性解析の基礎検証
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図3.16 加温処理温度とΔGの関係(1)
(周波数:100 kHz,印加電圧:10 Vpp)
図3.17 加温処理温度とΔGの関係(2)
(周波数:1 MHz,印加電圧:10 Vpp)
0 5 10 15 20
260 280 300 320 340 360 380 400