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Abstract

The Javanese language is known as one of the languages which have complex norms of honorific. This honorific system, namely Krama,is used as a tool to express politeness (formality) or to pay tribute at many different levels in daily life. However, these days, it is pointed out that the ability of using honorific in Javanese become worn among numbers of Javanese young speakers, and it build a tendency to avoid the use of the honorific among them.

Nevertheless, no research has been done to substantiate the practical use of the honorifics among Javanese young speakers. Therefore, this research aimed in revealing the actual proof of the current situation, as well as, what kind of changes are in the honorific use among young Javanese speakers and how those changes stimulate a new style and a new concept of honorific system from sociolinguistic point of view.

1.はじめに

現在、ジャワ語の敬語を使用できない若者や敬語の使用を避ける若者が増えているなど、現 代ジャワの若者の敬語離れが指摘されている。若者がジャワ語の敬語、つまりクロモを使用す る能力が低下しているとよく耳にするが、それはジャワ社会では誰でも感じることであろう。

しかし、若者自身の敬語認識や敬語の運用実態に関しては未だに明らかにされていない。

そこで、上記の敬語の認識と運用実態を明らかにすべく、ジョグジャカルタ市のガジャマダ 大学において、2011 年 8~9 月と 2013 年 2~3 月に、現地調査を二回行った。一回目は、若者 の敬語認識に関する調査を行い、複雑な敬語の規範を持つ言語として知られるジャワ敬語が現 代の若者によってどのように使用され、また変化していくのかを社会言語学的視点から明らか にした。この調査の成果はシマルマタ(2014a, 2014b)で報告した。この論文では、ジャワの 若者の間では、①敬語の必要性の認識はあるが規範的に使う自信がないこと、②誤使用のリス クが敬語使用の回避の要因となっていること、③簡素化した敬語が出現したこと、即ち、クロ モ・ルマ1の使用やインドネシア語へのコードスイッチングが見られたことを指摘した。また、

ジャワ敬語からインドネシア語へのコードスイッチングする理由に関して学生たちは、①無難 で使いやすい、②相手に対する誤解を招きにくい、③中立的で誰にでも平等に使えるため好ま しいなどと、インドネシア語の利点をいくつか述べていた。

1 クロモ・ルマ(Krama Rumah)は、直訳すると「家の敬語」を意味する。たとえば家の中や家の周辺、近所 の人たちに挨拶をしたり短い会話をしたりするときに使われる、決まったパターンのような簡素化したクロモ などが挙げられる(シマルマタ 2014a:14)。「クロモ・ルマ」という用語自体がどの程度普及しているのかま

そして二回目は、本稿の主な目的である、ジャワの若者の敬語使用の運用実態について調査 を行った。本稿では、現代ジャワの若者が規範的なクロモを使用できなくなるという実態を実 証するために、クロモの運用実態をはかれるような質問アンケートを用いてクロモの正誤用法 に対する認識の調査を行い、若者の敬語使用の傾向を明らかにする。

2.ジャワ語の研究背景

ジャワ敬語に関する先行研究では、これまで次のように指摘されてきた。まず、1928 年 3 月、

ジョグジャカルタで行われたジャワ語の講師学会では、ジャワ語の発話の階層を使用するのが 難しいため 、詳しく説明できる発話の階層のテキストブックが必要だという結論に至った

(Dwijawiyata 1930)。そして、Poedjosoedarmo ら(1979)は、ジャワ語の難しさのほかに、

当時(1979 年頃)の家庭における敬語使用の状況について、現在はエリート家庭においても、

家庭内でクロモを使用することに対してこだわりがなくなっている。親子の会話でクロモを使 用 し な い 理 由 と し て は 、 親 と 子 供 の 間 に 親 し い 関 係 を 求 め る か ら だ と 述 べ る ( Soepomo Poedjosoedarmo,et al. 1979:15)。さらに、1991 年、1996 年、2001 年のジャワ語学会の結果 は、現代ジャワの若者は既に発話の階層の使い方を把握していないということに加え、特に一 般人(エリートの枠には入らない人々のことを指す)からは、発話の階層を簡素化しようとす る願望が高まっているということが見られるという(Sasangka 2004:1-5)。

先行研究のなかでは、上記のようにジャワ語の発話の階層の複雑さと、若者らが使用を回避 する傾向があることは指摘されてきた。しかしながら、ジャワ敬語の使用に対する認識とその 運用実態がどこまで低下しているのか、その実態をデータで示したものはないため、本稿では この点を明らかにする。

3.ジャワ語の仕組み

現代ジャワの若者が規範的なクロモを使用できなくなるという実態を明らかにするために、

図1はジャワ語の仕組みについて示したものである。本章では、ジャワ語の語彙レベルと発話 レベルに分けて、ジャワ語の仕組みを概観する2

●語彙レベルによる区別

① Ngoko (N)ンゴコ語 (丁寧ではない語彙)

------------------------

② Madya (M)マディオ語(準丁寧な語彙)

③ Krama(K)クロモ語(丁寧な語彙)

④ Krama Inggil(Ki)

クロモインギル語(最も丁寧な語彙)

敬意を 表わす

発話の階層 ②Madya(やや丁寧体)

Tingkat Tutur

Basa→ Formal(丁寧)

●発話レベル(文体)による区別

①Ngoko→ Informal(丁寧ではない体)

敬意を表わす

③Krama(非常に丁寧体)

図 1

ジャワ語

の仕組み

(Soepomo Poedjosoedarmoら(1979)に基づき筆者作成)

3-1.ジャワ語の語彙レベル

インドネシアのジャワ語研究者 Soepomo Poedjosoedarmo ら(1979)は、ジャワ語の語彙レベ ルを四つに分けている。そのうちの三つは話し手と聞き手との間の「丁寧さ」formality と関 係するものを指す。

① Ngoko ンゴコの語彙である。ンゴコは丁寧ではない、インフォーマルな語彙を指す。

② Madya マディオの語彙である。マディオは準丁寧、準インフォーマルな語彙を指す。

③ Krama クロモの語彙である。クロモは丁寧、フォーマルな語彙を指す。

④ Krama Inggil クロモインギルといい、特別な語彙として見なされる。クロモインギルと クロモの語彙を組み合わせて使用すると、より敬意を表わす機能を持つ。

また、全てのことばが Ngoko ンゴコ、Madya マディオ、Krama クロモ、 Krama Inggil クロモ インギルの 4 つの語彙を持っているとは限らない。lunga、omah、arep という語彙を例にみて みると、次のように説明できる。

表 1 語彙の階層の例

つまり表 1 で示したように、違うレベルで等しい意味を持つ語彙が存在しない場合もある。

Ngoko Madya Krama Krama Inggil 意味 動詞 lunga kesah - tindak 行く

名詞 omah - griya dalem 家

助動詞 arep ajeng badhe - ~する

3-2.ジャワ語の発話レベル

ジャワ語の発話のレベル(階層)はジャワ語では unggah-ungguh ing basa、インドネシア語 では tingkat tutur と呼ばれる。政治的、経済的な力関係など、社会的地位に応じて話し手と 聞き手の間で使われ、ジャワ語話者の社会的様式として捉えられる。Soepomo Poedjoesoedarmo ら(1979)は「ことばの多様なバリエーションであり、バリエーション間の相違は、話し手が聞 き手に対してどのような待遇意識を持つかによって決定される」(1979:3)と定義している。

注意すべきなのは、発話のレベルにおけるンゴコ体、マディオ体、クロモ体は、語彙レベル におけるンゴコ、マディオ、クロモとは異なるので区別しなければいけないということである。

発話の階層は、敬意を表わすためのコードシステムcode systemである。そのコードシステム が特定の語彙、特定の構文、特定の形態、特定の音韻の要素を持っている。一方、語彙レベル とは各レベルの中で、同じ意味や同じ丁寧さを持つ語彙を指す。例えば、文章の中でクロモの 語彙を多く用いることによって、文章全体がより丁寧になり、発話の階層からみれば、クロモ 体の形をとっていると見なされる。

次に、丁寧さの度合(順)によって分類される発話の階層について述べる。まず、ンゴコ体 は、話し手と聞き手の間に距離がないことを示す。つまり、相手に対して話者は遠慮せず、敬 意を表わす必要がない。例えば、教師が学生に対する時など、或いはは怒っている時や痛みを 感じる時など、感情的に極めて厳しい状況になる際に、ンゴコを使う。つぎにマディオ体は、

ンゴコ体とクロモ体の間にあり、クロモほど敬意を表わさず、中間的な敬意を表わすときに使 われる。マディオ体を用いる相手はクロモ体ほど高く敬意を表わす必要はないが、礼儀正しく 接しなければならない人であるとされる。社会的に地位の低い人だが年齢的には非常に年輩の 人に対する場合にマディオ体がよく使われている。最後にクロモ体は、非常に敬意を表わす体 である。この発話の階層は、相手があまり知らない人、或いは、自分より社会的に高い地位を 持つ人など、非常に遠慮を持って敬意を表わしたい相手のときに使われる。例えば、学生が教 師に対する時、部下が上司に対する時などに使う。

また、発話の階層はスピーチレベルとして見なされている(Soepomo Poedjosoedarmo,et al.

1979:8)。つまり、「丁寧さ」の度合と話し手が聞き手に対して感じている敬意の度合を表わす と述べている。なお、このスピーチレベルは社会的変種social dialectとは区別すべきである と Poedjosoedarmo ら (1979)は指摘している。なぜなら、社会的身分や階層や方言の所属に関 わらず、ジャワ語母語話者全員がこれを用いているからである。

4.調査の概要 4-1.調査地

ジョグジャカルタ特別州 Daerah Istimewa Yogyakarta の人口は約 350 万人で、面積は 3,185 km²である。この地域に住んでいるインドネシア人はほとんどがジャワ民族であるため、使用さ れる言語としてインドネシア語の他にジャワ語があげられる。

ガジャマダ国立大学 Universitas Gadjah Mada は、ジョグジャカルタ市に本部が置かれる有 名な国立大学で、1949 年に設置され、18 の学部を持つ総合大学である。インドネシアでは最も 高い水準を持つ大学として知られている。そのため、全国からガジャマダ大学へ入学希望者が 集まる。2007 年から 2010 年までの各年の学生平均数は 1 万 5 千人である。全体の学生数から