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Fig. 5-15. BSAを添加した時のWSCP誘導体の400 nmの吸光度変化

5-4. まとめ

BSAとWSCP誘導体の相互作用について測定を行った。すべてのWSCP誘導 体をBSA溶液に添加すると、BSAのトリプトファンの蛍光が減少し、WSCP誘 導体がBSAに対して消光剤として作用することがわかった。また、スターンボ ルマープロットから導き出された動的消光速度定数 kqが、動的消光を起こすと される上限値より大きく、消光は静的消光で起こることが示唆された。そこで WSCPをBSAに添加したときの吸収スペクトルを見たところ、スペクトルに変 化が見られ、WSCPとBSAは基底状態で相互作用していることが確認された。

また、吸光度の変化はBSA 5 μMあたりまで定量性が見られた。この吸収スペク トル変化は塩基性タンパクである卵白リゾチームを WCSP に添加した場合では ほぼ見られないことから、静電的相互作用に起因するものだと考える。

さらに、WSCPとBSAの相互作用が静電的によるものか確認するため、BSA 溶液にWSCPを添加したものに塩を添加して蛍光を測定したところ、BSAのト リプトファンの蛍光が復帰した。このことによってWSCP誘導体とBSAは静電 的相互作用にとって結合していることが示唆された。

アルブミンの特性を活かして WSCP の側鎖に疎水性因子を増やすことによっ て相互作用が増加するかを確認したところ、疎水性因子が大きくなるにつれて kqは減少した。さらに、吸光度変化も WSCP のみの場合に比べて疎水性部位を 増やすことで減少したが、吸光度変化はある程度は保持することができた。

これらのことから正に電荷を帯びた WSCP 誘導体は負に電荷を帯びているタ ンパクなどに対して静電的相互作用によって結合し、また相互作用が減少する が側鎖に蛍光マーカーやある特定の物質をセンシングしてくれるものを付加さ せることによって、水溶液中で負電荷を帯びた物質のセンシングやマーキング への応用の可能性が示唆された。

5-5. 参考文献

1) G. Walsh 著 平山令明、中村和靖、西谷芳昭、山下光雄共訳、タンパク質 ハンドブック、丸善、(2003)p222.

2) M.M Bradford, Anal. Biochem., 72, (1976) 248.

3) O.H, Lowry, N.J. Rosebrough, A.L. Farr, R.J. Ranball, J. Biol. Chem., 193, (1951) 265.

4) F. Joseph, Biochem. J., 29, (1935) 799.

5) C.A. Royer, Chem. Rev., 106, (2006) 1769.

6) F.P. Nicoletti, B.D. Howes, M. Fittipaldi, G. Fanali, M. Fasamo, P. Ascenzi, G.

Smulevich, J.am. Chem. Soc., 130, (2008) 11677.

7) T. Lin, C. Hub, T. Choub, Biosen. Bioelectron., 20, (2004) 75.

8) L. Lua, H. Hea, H. Zhongb, L. Liub, D. S. Chana, C. Leungb, D. Maa, Sensors Actuator. B. Chem., 201, (2014) 177.

9) R.E. Wang, L. Tian1, Y. Chang, J. Pharmaceut. Biomed. Anal., 63, (2012) 165.

10) 光応用技術・材料事典、光応用技術・材料事典編集委員会編(2006)p48.

11) J.R. Lakowicz, “Principales of Fluorescenc Spectroscopy”, Plenum Press, New York, (1983) p257.

12) 甲斐義幸、中央大学理工学研究所論文集, 第6号、(2000) p55.

13) J.R. Lavigne, G. Weber, Biochemistry, 12, (1973) 4161.

14) K.S Witold, H.M. Henry, C. Dennis, Biochemistry, 32, (1993) 389.

6

章 水溶性ポリ(ヘテロアリレンメチン)を用いた卵白リゾチ ームセンシングの性能評価

6-1 緒言

リゾチームはグラム陰性菌の細胞壁を構成するペプチドグルカンを加水分解 する酵素であり、構造が解析された最初の酵素である1)。細菌は短いペプチド鎖 と絡み合った多糖類の鎖で強固な表皮を作り細胞膜を高い浸透圧から保護して いるが、リゾチームは多糖類を分解することによって細胞壁の構造的強度を低 下させて細菌を自らの内圧によって破裂させ細菌の増殖を抑制する。卵白リゾ チームは抽出しやすく、容易に結晶化できるため食品添加物や医薬品などに広 く用いられている。前章でも述べたとおりタンパク質は染色法や蛍光によって 定量法が様々なされているが 2-5)、リゾチームも特異的にセンシングするための 多くの研究がなされている6-8)

卵白リゾチームは129のアミノ酸残基からなり、酸性アミノ酸(Asp7、Glu2)、

塩基性アミノ酸(Arg11、Lys6)などを含む塩基性タンパク質で、等電点が11.1

~11.35であることから、中性付近の水溶液中では正に電荷を帯びている。また、

卵白リゾチームは、6-127、30-115、64-80、76-94残基間の4箇所にジスル フィド結合があり、小さい分子にもかかわらずジスルフィド結合が多いという 特徴を持っている。また、28、62、63、108、111、123残基にトリプトファンを 持つことからBSA同様にトリプトファンの蛍光を見ることができる。

前章で正電荷を帯びた WSCP 誘導体と負電荷を帯びた BSAが静電的相互作用 によってトリプトファンの蛍光変化があることが確認できたので、今章では逆 に負電荷を帯びた WSAP と正電荷を帯びた卵白リゾチームの相互作用によって 蛍光がどのような変化を起こすかの調査を行った。アニオン性である WSAP と 卵白リゾチーム、カチオン性であるWSCPとBSAこの2組の相互作用の有無の 確認によって、卵白リゾチームとBSAそのもののセンサーとしての有用性だけ ではなく、その他電荷を帯びたタンパク質やムコ多糖などとの相互作用の可能

ーンボルマー定数を求めてその数値によって結合のしやすさの比較を行った。

さらに卵白リゾチームのセンシングの可能性を確認した。

6-2. 実験 6-2-1. 試薬

 卵白リゾチーム、卵白由来(Lysozyme,from Egg White)分子量:14307、和 光純薬工業

 トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris(hydroxymethyl)aminomethane)、

分子量:121.14、ナカライテクス

6-2-2. 測定

蛍光測定は JASCO 蛍光分光光度計 FP6500 を使用した。励起波長はトリプト ファンの吸収極大波長である280 nmを用いた。測定溶媒は10 mM pH 6.8トリス HClバッファー用いた。高分子の濃度はピロールとメチン鎖を1ユニットとした モノマーユニット濃度として計算した。溶液を混合後15分置いた後に測定を行 なった。

6-3. 結果と考察

6-3-1 WSAPとリゾチームの相互作用

卵白リゾチームと WSAP の相互作用を見るために、卵白リゾチーム溶液中に 異なった濃度の WSAPを添加し、卵白リゾチームのトリプトファンの蛍光変化 を測定した。

卵白リゾチーム 0.2 μMの溶液にWSAPのモノマーユニット濃度で0 μMから3 μMのWSAPを添加したときのトリプトファンの蛍光変化を測定した。Fig. 6-1 はその蛍光変化を表したもので、卵白リゾチームのトリプトファンは340 nmに 蛍光極大を持っているが、その蛍光が WSAP の濃度が濃くなるにつれて減少し た。また、蛍光のシフトは見られないことから WSAPを添加することによって 卵白リゾチーム自体は変性等を起こしていない。これらのことから卵白リゾチ ームと WSAPは相互作用を示し、WSAPはリゾチームに対して消光剤として作 用していると考える1)。これらの関係性を数値化するために、スターンボルマー プロットを行った。卵白リゾチームのみの 340nmの蛍光強度をI0、WSAP を添 加したときの蛍光強度をIとしたとき、WSCP濃度が増加するに連れて直線的に 右かた上がりになった(Fig. 6-2)。スターンボルマー定数Ksvは5.3×105 L・mol-1 となった。この値はBSAとWSCPとの数値よりも大きいことから、静的に消光 が起こっていると考える。

さらに、WSAPにBSAと卵白リゾチームをそれぞれ添加した時の吸光度変化 を確認した。BSA、卵白リゾチームともに未添加時のWSAPの400nmの吸光度 を A0として、未添加とそれぞれを添加した時の吸光度 Aとの差⊿Abs.(=A-

A0))を測定したところ、WSCPの場合とは反対に卵白リゾチームを添加した時 に吸光度が増大し、BSAを添加した時には変化がほとんど見られなかった(Fig.

6-3)。このことから、WSAPと卵白リゾチームはWSCPとBSAの時と同様に静

電的相互作用により複合体を形成して吸光度に影響を及ぼしていると考える。

0 100 200 300 400 500

300 350 400 450

In t.

Wavelength (nm)

WSAP濃度(μM)

0

3

Fig. 6-1. WSAP添加による卵白リゾリームトリプトファンの蛍光変化(WSAP濃

度=0,0.3,0.5,0.7,1.0,1.3,1.5,2.0,3.0 μM)

励起波長:280 nm 卵白リゾチーム:0.2 μM 、pH 6.8トリスHClバッファー

y = 0.5301x + 1 R

2

= 0.9526

0 0.5 1 1.5 2 2.5

0 0.5 1 1.5

I

0

/I

WSAP濃度(μM)

Fig. 6-3. BSA(5 μM)と卵白リゾチーム(5 μM)を添加した時のWSAP(100 μM)

の400 nmの吸光度変化

BSA

リゾチーム

0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14

⊿ A bs .

6-3-2. 塩添加による卵白リゾチーム-WSAPの相互作用への影響

負電荷を帯びた WSAPと正電荷を帯びている卵白リゾチームの静電的相互作 用によるものかを調査するために WSAP と卵白リゾチームの混合液に静電的相 互作用を阻害する目的でNaClを添加していったときのトリプトファンの蛍光変 化を測定した。

Fig. 6-4は卵白リゾチーム0.2 μMに対してWSAP 2 μM添加したときの溶液に

対して0 mMから400 mMの種々の濃度のNaClを添加したときの蛍光スペクト

ルで、NaCl の濃度が高くなるにつれて卵白リゾチームのトリプトファンの蛍光 は復帰していき、200 mM以上でほぼBSA 0.2 μMのみのときの蛍光スペクトル の蛍光強度まで復帰した。次の Fig. 6-5 は蛍光強度の復帰を詳しく見るために

342 nmの卵白リゾチーム0.2 μMのみの蛍光強度(I0)としたときの種々の濃度

のNaCl を添加したときの340 nmの蛍光強度(I)としたときのI0/Iの比とNaCl 濃度の関係を表したグラフであるが、これからもNaClの濃度が高くなるに連れ て急激にトリプトファンの蛍光が復帰して200 mM以降ほぼ卵白リゾチーム0.2 μM のみの蛍光強度の値まで復帰した。このことから卵白リゾチームと WSAP の相互作用が静電的なものあることが示唆された。

0 100 200 300 400 500

300 320 340 360 380 400

In t.

Wavelength (nm)

f e d c b a

Fig.6-4. 塩添加による卵白リゾチーム-WSAP の卵白リゾチームトリプトファン

の蛍光変化(WSAP 2 μMにそれぞれ a:NaCl 0 mM、b:NaCl 25 mM, c:NaCl 50 mM, d:NaCl 100 mM, e:NaCl 200 mM, f:卵白リゾチーム0.2 μMのみ)pH 6.8 トリスHClバッファー

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