GTPATP
0.2 μM BSA(I 0 ) e
d c b a
Fig. 5-7. 塩添加によるBSA-WSCPのBSAトリプトファンの蛍光変化(BSA 0.2 μM、WSCP 2μMにそれぞれ a:NaCl 0 mM、b:NaCl 25 mM, c:NaCl 50 mM, d:
NaCl 100 mM, e:NaCl 200 mM,)10 mM pH 6.8トリスHClバッファー
1 1.05 1.1 1.15 1.2 1.25 1.3 1.35
0 100 200 300 400 500
I0 /I
NaCl 濃度 (mM)
Fig. 5-8. 塩の濃度変化におけるBSA-WSCPのBSAトリプトファンの蛍光の復帰
(I0:0.2 μM BSAのみの342 nmの蛍光強度、I:BSA 0.2 μM、WSAP 2 μMの
5-3-2. WSCP-Bez によるBSAセンシング 5-3-2-1 WSCP-BezとBSAの相互作用
アルブミンは生体内では疎水性物質の運搬に大きくかかわっていることから WSCPに疎水性物質を付加させることによってBSAとの相互作用に変化が生じ るかを調査するためにWSCPにベンゼンを導入したWSCP-BezとBSAの相互作 用について測定を行った。
WSCPと同様にBSA 0.2 μMの溶液にそれぞれ0 μMから4 μMのモノマーユニ ット濃度のWSCP-Bezを添加したときのトリプトファンの蛍光変化を測定した。
BSA のトリプトファンは 342 nm に蛍光極大を持っているが、その蛍光が
WSCP-Bezの濃度が濃くなるにつれて減少した(Fig. 5-9)。また、蛍光のシフト
は見られないことからWSCP-Bezを添加することによってBSA自体は変性等を 起こしていないと考えられる。これらのことからBSAとWSCP-Bezは相互作用 を示し、WSCPはBSAに対して消光剤として作用している。
これらの関係性を数値化するために、スターンボルマープロットを行った。
BSAのみの342 nmの蛍光強度をI0、それぞれの濃度でWSCP-Bezを添加したと きの蛍光強度をIとしたときのスターンボルマープロットでは、WSCP濃度が増 加するに連れて直線的に右かた上がりになった(Fig. 5-10)。スターンボルマー 定数Ksvは1.30×105 L・mol-1となった。τ0として1.0×10-8 sを代入すると動的 消光速度定数kqは1.30×1013 L・mol-1・s-1となった。WSCPのkqは1.52×1013 L・
mol-1・s-1だったのに対して、WSCP-Bez の kqは 1.30×1013 L・mol-1・s-1となり 若干減少した。これはベンゼンが付加されることによって WSCP に比べて等モ ルのときに電荷が減少したことによりBSAとの相互作用が減少したためと考え られるが、その他のベンゼン誘導体を付加したものと比較し考察していく。
Kqに多少の変化はあるものの BSA と WSCP-Bez との関係では WSCPと同様 に消光は動的消光ではなく、静的消光によって消光が行なわれたことが考えら れる。静的消光の場合吸光度にも影響が現れる可能性があるため次に BSA に
WSCP-Bezを添加したときの吸光変化の測定を行った。
0 100 200 300
300 350 400 450
In t.
Wavelength (nm)
BSA 濃度 (μM) 0
4
Fig. 5-9. WSCP-Bez添加時のBSA 0.2 μMのトリプトファン蛍光変化(WSCP-Bez 濃度=0,0.5,1.5,3.0,4.0 μM)pH 6.8トリスHClバッファー
y = 0.1303x + 1 R² = 0.9953
0 0.4 0.8 1.2 1.6 2
0 2 4 6
I
0/I
WSCP-Bez 濃度( μM )
5-3-2-2. WSCP-BezとBSAの相互作用による吸収スペクトルへの影響
BSAとWSCP-Bezの基底状態での相互作用を確認するため、WSCP-BezにBSA を添加したの吸収スペクトルを測定した。
Fig. 5-11のa はWSCP-Bez 100 μMに対してBSA 10 μM添加したときの吸収ス ペクトルで、cはWSCP -Bez 100 μMの吸収スペクトル、dはBSA 10 μMの吸収 スペクトルを示している。bのスペクトルはcのWSCP-Bez 100 μMの吸収スペ
クトルとdはBSA 10 μMの吸収スペクトルを数学的に加算したスペクトルであ
る。今回 a のスペクトルは b のスペクトルに比べ若干ではあるが吸収が増大し ていることから、BSAと WSCP-Bezは基底状態から相互作用していることが示 唆された。
Fig. 5-11. BSA添加時のWSCP-Bezの吸収スペクトルとBSAとカチオン型ポリメ チンのスペクトル同士を加算したスペクトルとの比較(a:0.1 mM WSCP-Bez+
0 0.5 1
250 300 350 400
A b s.
Wavelength (nm)
a
d
5-3-2-3. 塩添加によるWSCP-BezとBSAの相互作用への影響
WSCP-Bezと BSAの相互作用が静電的相互作用によるものかを調査するため
にWSCPとBSAの混合液にNaClを添加していったときのトリプトファンの蛍 光変化を測定した。
Fig. 5-12はBSA 0.2 μMに対してWSCP-Bez 10 μM添加したときの342 nmの
BSA 0.2 μMのみの蛍光強度(I0)としたときの種々の濃度のNaCl を添加したと
きの342 nmの蛍光強度(I)としたときのI0/Iの比とNaCl濃度の関係を表した グラフで、NaClの濃度が濃くなるにつれてBSAのトリプトファンの蛍光は復帰 していき、WSCPと同じように200 mM以上で蛍光はほぼ復帰した。このことか
らBSAとWSCP-BezもWSCPのときと同様に静電的相互作用が大きく関与して
いる事が示唆された。
0 1 2 3 4 5
0 100 200 300 400
I
0/I
NaCl 濃度 (mM)
Fig. 5-12. 塩の濃度変化におけるBSA-WSCP-BezのBSAトリプトファンの蛍光 の復帰(I0:0.2 μM BSAのみの342 nmの蛍光強度、I:BSA 0.2 μM、WSCP 10
5-3-3. WSCP-BuとBSAの相互作用
BSA トリプトファンの蛍光の減少に側鎖の疎水性がどのくらい影響があるか をさらに調べるために、つぎにベンゼンに鎖の長さの違うアルキル鎖が結合さ れたWSCP誘導体について、スターンボルマープロットを用いて比較した。
まずベンゼンにブトキシ基のついた WSCP-Bu について測定を行った。
WSCP-Bu 濃度があがるにつれて BSA のトリプトファンの蛍光が下がっている
ことが確認できたのでスターンボルマープロットを行った。
BSAのみの342 nmの蛍光強度をI0、それぞれの濃度でWSCP-Buを添加した ときの蛍光強度をIとしたときのスターンボルマープロットを行った(Fig. 5-13)。
スターンボルマー定数Ksvは1.09×105 L・mol-1となった。τ0に1.0×10-8 sを当 てはめると動的消光速度定数kqは1.09×1013 L・mol-1・s-1となった。WSCPの場 合の Kqは1.52×1013 L・mol-1・s-1だったのに対して、WSCP-Bezの場合のkqは 1.30×1013 L・mol-1・s-1、WSCP-Buの場合kqは1.09×1013 L・mol-1・s-1とさらに 減少した。カチオンの濃度比率的にいうとほぼ同等の WSCP-Bez に対して
WSCP-Bu は kqが減少していることから側鎖の疎水性が BSA との結合に悪影響
を及ぼしていると考えられるため、さらに長いアルキル鎖もので測定を試みた。
y = 0.1094x + 1 R² = 0.9734
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6
0 2 4 6
I
0/I
WSCP-Bu濃度(μM)
5-3-4. WSCP-HexとBSAの相互作用
さらに側鎖の疎水性の影響を調査するためにベンゼンにヘキシロキシ基のつ
いたWSCP-Hexについて測定を行った。WSCP-Hex濃度があがるにつれてBSA
のトリプトファンの蛍光が下がったのでスターンボルマープロットを行った。
BSAのみの342nmの蛍光強度をI0、それぞれの濃度でWSCP-Hexを添加した ときの蛍光強度をIとしたときのスターンボルマープロットしたとき、スターン ボルマー定数 Ksvは WSCP-Bu に比べさらに減少し 9.98×104 L・mol-1となった
(Fig. 5-14)。τ0に 1.0×10-8 s を当てはめることにより動的消光速度定数 kqは 9.98×1012 L・mol-1・s-1となった。WSCP-Bezの場合とkqは1.30×1013 L・mol-1・ s-1、WSCP-Buの場合kqは1.09×1013 L・mol-1・s-1、WSCP-Hexの場合のkqは9.98
×1012 L・mol-1・s-1となりさらに減少した。
y = 0.0998x + 1 R
2= 0.967
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1 1.2 1.4 1.6
0 1 2 3 4 5
WSCP-Hex濃度(μM)
Io /I
Fig. 5-14. WSCP-Hex濃度変化によるBSAトリプトファンのスターンボルマープ
ロット(λ=342 nm)
5-3-5. kq値と吸光度変化の比較
WSCP誘導体のBSAに対するkq値を比較したところ、側鎖に疎水性の因子が 付加されることによって kqが減少し、付加された因子が大きくなるにつれて減 少の度合いが大きくなった(Tabel 5-1)。アルブミンは生体内で疎水性物質の運 搬を行う役割を持っているため、疎水性因子を増やすことで相互作用が増すと 考えて側鎖にベンゼン誘導体を導入したがその予想とは反対の結果となった。
これは、疎水性相互作用よりも静電的相互作用の影響がBSAとの作用に大き く影響していて側鎖の疎水性部分が大きくなるにつれてピリジニウム塩との接 触が阻害されたためと考える。
さらに、BSAを未添加時の WSCP誘導体の 400nmの吸光度を A0として、未 添加とBSA添加時のWSCP誘導体の吸光度Aとの差⊿Abs.(=A-A0)を測定 したところ、WSCP のみの場合に比べて、疎水性部位を導入することによって 吸光変化が著しく減少した(Fig. 5-15)。このことからもBSAとWSCPの相互作 用は静電的相互作用によるものが大きいと考えられる。
Table 5-1. WSCP誘導体のBSAに対する動的消光速度定数kqの値 kq (×1013 L・mol-1・s-1)
WSCP 1.52
WSCP-Bez 1.30
WSCP-Bu 1.09
WSCP-Hex 0.998
Fig. 5-15. BSAを添加した時のWSCP誘導体の400 nmの吸光度変化