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VII 生 物 検 定

ただし,一般的に

DMI

剤感受性は連続的に徐々に低下 するため,

10

%という境界値付近では判定に迷う場合が ある。このため,本法による結果は目安として捉えて,

最終的には後述する生物検定の結果も踏まえて判断する ことが望ましい。

また,

DMI

剤間の交さ耐性を検討したところ,トリ フルミゾール耐性菌は,フェナリモルに交さ耐性を示し たが,ジフェノコナゾールやトリホリンには交さ耐性は 認められず,薬剤によって違いが見られた(渡辺・堀之 内,2013)。

(13)ト マ ト 葉 か び 病 菌 107 葉全体の

25

%未満 

2 :同  25

%以上

50

%未満 

3 :同 

50

%以上

75

%未満 

4 :同  75

%以上,発病度=Σ(発病 程度別指数×複葉数)

/

4

×調査複葉数)×

100

VIII

 薬剤耐性菌の分布状況

2012

年に岐阜県内の

57

施設からトマト葉かび病菌

478

菌株を採取し,

6

薬剤(アゾキシストロビン,チオ ファネートメチル,ジエトフェンカルブ,トリフルミゾ ール,ボスカリド,ペンチオピラド)に対する感受性を 調べた結果を図―10に示す。チオファネートメチルやト リフルミゾールについては,耐性菌比率がそれぞれ

82

%(高度・中等度)

50

%と高い状況にある。アゾキ シストロビン耐性菌の比率は

29

%であったが,調査を

開始した

2007

08

年に

45%であったことと比較する

と減少傾向にあり,本剤の使用頻度が大幅に見直された ことも要因の一つと考えている(渡辺,2011)。SDHI 剤のボスカリドやペンチオピラドについては,

2011

年 に県内の

3

施設で耐性菌を初めて確認したが,

2013

年 には耐性菌が

7

施設で確認されたことから,今後の動向 を注視する必要がある。

お わ り に

トマト葉かび病菌の耐性発達リスクは,「中程度」に 位置づけられている(殺菌剤耐性菌研究会,2012)。本

病は,決して新しい病害ではないが,国内では薬剤感受 性に関する知見がほとんど見当たらない。海外でもベン ゾイミダゾール剤耐性について報告がある程度である

(YAN

et al., 2008)。

殺菌剤感受性の検定は多くの労力を要するため,毎年 継続して実施することはなかなか難しい。産地における 薬剤感受性の動向を把握するためには,数年に

1

回程度 実施することが望ましいと考える。特に,新系統の殺菌 剤が上市されて現地に普及し始めたころ,あるいは品種 構成に変化が生じた場合等は特に注意すべきである。岐 阜県では,葉かび病抵抗性のトマト品種の導入によって 産地の葉かび病菌のレース構成が大きく変化し,このこ とがアゾキシストロビンをはじめとした複数の殺菌剤へ の感受性分布にも大きく影響する事象を確認しているが

(渡辺,2011)

,興味深いことに青森県でも同様の現象が

確認されている(近藤,2014)。品種を切り替えた後に,

不幸にも一部の圃場で新レースが出現した場合には,伝 染環を断ち切ることはもちろんであるが,その菌群が 後々に産地内で拡散する可能性があるため,耐性発達リ スクが中程度以上の殺菌剤を対象に薬剤感受性を網羅的 に把握しておくことは産地全体の防除体系を再構築する うえで重要と考えている。

国内のトマト産地では,葉かび病抵抗性品種の導入が 進み,葉かび病による被害は以前よりいったん減少した

トリフルミゾール ボスカリド ペンチオピラド

アゾキシストロビン チオファネートメチル ジエトフェンカルブ

不明 耐性 耐性

感受性3%

感受性 71%

感受性

49% 感受性

93%

感受性 93%

7% 7%

耐性 50%

耐性 29%

感受性

18% 高度耐性

23%

中等度耐性

59% 低感受性・耐性

97%

図−10 葉かび病菌の薬剤耐性菌の分布状況

注)2012年,岐阜県内の57施設から採取した478菌株の検定結果.

ものの,新レースの発生により再び増加してきている状 況にある。さらに,すすかび病による被害が急増してい るが,本病原菌についても

QoI

耐性菌が確認されてい る(渡辺ら,2015)。このような状況下では,葉かび病,

すすかび病の両方に予防効果が高い

TPN

剤等を中心と した保護殺菌剤による防除体系が有効である。

また,防除体系を構築するうえで,多くの薬剤で複数 の病害を考慮する必要がある。トマトにおいては,葉か び病,すすかび病のほか,最重要病害である灰色かび病 やうどんこ病も薬剤耐性菌が発達しやすく,これらの病 原菌の薬剤感受性状況,耐性リスク,防除対象の優先度 等を総合的に勘案しながら持続可能な防除体系を構築す る必要がある。本県で

SDHI

耐性の葉かび病菌を初めて 確認した施設では,灰色かび病防除のために

SDHI

剤を

1

作当たり複数回使用していた。他の病害防除の傍らで 気付かぬうちに目的外の病害で耐性菌を発達させていた 可能性がある。このような場合,例えば灰色かび病で

SDHI

耐性菌が発達していなければ本剤の使用を中止す るよう農家を説得することは難しい。このような個々の ケースへの対応には課題も残されているが,農業現場で は病害防除の際に気付かぬまま目的外の病害で耐性菌を 発達させてしまうリスクを常に意識すべきである。基本 的には伝染源除去,環境改善等の耕種的対策をしっかり 行ったうえで,耐性菌発達リスクが低い保護殺菌剤を中 心に防除体系を組み立て,QoI剤や

SDHI

剤など耐性リ スクが高い殺菌剤はガイドライン(殺菌剤耐性菌研究会,

2012

)を遵守して必要に応じて適期使用に努めることに 尽きるのではないだろうか。

なお,本研究を行うにあたり石井英夫博士には随所に わたりご助言をいただいた。また,現地サンプリングな

どに協力いただいた関係機関の方々にも末筆ながらお礼 申し上げる。

引 用 文 献

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2) ENYA, J. et al.(2009): J. Gen. Plant Pathol. 75 : 7679.

3) IIDA, Y. et al.(2010): ibid. 76 : 8486.

4)石井英夫・柳瀬春夫(1983): 日植病報 49 : 134(講要) 5) (1995): 第5回殺菌剤耐性菌研究会シンポジウム講要

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7) ら(1999): 日本農薬学会第24回大会講要集 : 61(講 要)

8) ISHII, H. et al.(2001): Phytopathology 91 : 11661171.

9) et al.(2009): Pest Manag. Sci. 65 : 916922.

10) (2010): Recent developments in management of plant diseases, plant pathology in the 21st century : 3745.

11) et al.(2011): Pest Manag. Sci. 67 : 474482.

12)石井英夫(2012): 植物防疫 66 : 481487.

13) KIM, Y. S. et al.(2003):Phytopathology 93 : 891900.

14)近藤 亨(2014): 北日本病虫研報 65 : 5053.

15) KÖLLER, W.(1995): Proc. 8th Intr. Cong. Pestic. Chem. : 340 16) KUBOTA349., M. et al.(2015): J. Gen. Plant Pathol. 81 : 320323.

17)日本植物病理学会 殺菌剤耐性菌研究会(2012)

URL : http://www.taiseikin.jp(201611月アクセス)

18)岡田知之・下元祥史(2016) : 日植病報 82 : 8792.

19) PASCHE, J. S. et al.(2005): Plant Dis. 89 : 269278.

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21) TOMITA, Y. and H. ISHII(1998): Pestic. Sci. 54 : 150156.

22)渡辺秀樹(2009): 第19回殺菌剤耐性菌研究会シンポジウム講 要集 : 4249.

23) ら(2010): 日植病報 76 : 155(講要)

24) (2011): 第21回殺菌剤耐性菌研究会シンポジウム講 要集 : 212.

25) ら(2011): 日植病報 77 : 199200(講要) 26) ら(2012): 同上 78 : 200201(講要) 27) ら(2013): 同上 79 : 199(講要)

28) ・堀之内勇人(2013): 関西病虫研報 55 : 139.

29) ら(2015): 日植病報 81 : 87(講要)

30) YAMADA, K. and R. SONODA(2012): J. Gen. Plant Pathol. 78 : 398

403.

31) YAN, L. et al.(2008): FEMS Microbiol. Lett. 278 : 242248.

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43

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このような企画に掲載する機会を与えていただいたこと より,これまでの軌跡を振り返り,本剤の開発経緯や一 つの化合物が植物の病害虫防除以外に植物化学調節剤

(以下,

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)として非常に広範囲な分野に適用された エピソードを中心に,さらには,本剤の適用拡大を通じ て蓄積した当社ノウハウを地球温暖化に伴う農業環境変 化に活かす新しい試みについても紹介する。

I 困難な課題克服による上市