製品または作業時間 の換算量
製造の統合
参照製品、参照作業 の価値付与
資源
コストの 活動指標
原価対象
作業間の換算量
製品間の換算量
製造の統合
参照製品の価値付与
比率ベ ー ス の AB C ( AB C ) /分析セン タ ー 手法
( TDABC)
UVA 法
資源
資源グループ
原価対象
(説明)
時間
経営者国家評議会 ( CN PF ) の換算手法
この点、フィラルモア=ルバ(de La Villarmois, O. et Y. Levant)は、全部原価計算の 位置付けでABCからTDABC、UVA法に単純化が進められる傾向と、TDABCとUVA法 の違いを説明している(図表5-14)。図表が明らかにしていることは、UVA法は換算量を 算出する作業が必要な分、TDABCより複雑な計算プロセスになっていることに違いがみら れる。しかしながら、UVA 法やTDABCは、ABC の活動分析手法をベースにしつつも単 純化を志向している点に共通点がみられる。その共通点に着目して、フィラルモア=ルバ
はUVA法、TDABCをより単純化させた経営者国家評議会の換算手法も含めて、原価計算
における計算合理性の追求の過程を示そうとしたと考えられる。
つまり、同質セクション法やABCは、「同質性」を可能な限り見出すことで正確な製品 原価を計算しようとすることに焦点が置かれ、UVA法は「同質性」を製品グループで見出 し、また、TDABCは「同質性」を実測する際に負担になる作業を予め推定しておくことで、
計算を単純化することに焦点が置かれているのである23)。同質セクション法やABCがいく ら理論的に優れたモデルであっても、その実行可能性が低い場合、それを補完(もしくは 批判)する、より現実的なモデル、例えば時間をベースとした簡便的な方法が提案される ことがあるのである24)。
ただし、UVA法は基準単位を時間で予め捉えておくため、誰が行っても同じ結果をもた らすよう、経営プロセスの安定性が要求される25)。また、TDABCにおいても、ABCの場 合と同様、仮に未活用のキャパシティの存在を浮き彫りにできたとしても、原価情報から はその低減に直接つながる有効な指針を引き出すことはできない 26)。そのため、TDABC はABCの「発展」若しくは「進化」であるかについては慎重な判断が必要である27)。
以上の議論を踏まえ、次節では病院原価計算と時間軸の関係について、RVU法とTDABC
23) de La Villarmois, O. et Y. Levant [2007].
24) 大下[2011]、11頁。
25) Bouquin, H. [2008], p. 155.
26) 伊藤[2011]、147頁。
27) 大下[2011]、11頁;高橋[2010]、135頁。
について考察することにしたい。
第4節 病院原価計算と時間軸の関係
原価計算の適応可能性を考慮するにあたっては、TDABCおよびUVA法の説明から、時 間枠で原価の同質性を捉えた場合に有用性が高いことが明らかにされた。本節では、時間 軸との関係から取り上げる病院原価計算として、相対価値尺度法(RVU法)とTDABCに ついて考察を加えることにしよう。
1. 時間軸から捉えた場合のRVU法
RVU法においてRVUを用いることは、各診療行為の単位時間・単位原価を含む資源消 費量が、医療従事者の誰が行っても同じという仮定がなされることを意味する。そのため、
RVU法は、TDABCやUVA法と同様、原価計算の実行可能性を重視する計算合理性の側
面が前面に押し出されたものとなる。
しかしながら、RVU 法はどの診療部門でも適合するのではなく、RVU 法は一般的に検 査室や放射線科のような中央診療部門に適合していると指摘されることが多い 28)(図表 5-15)。これはデュー・デリジェンス・プロセスに用いることまで想定されているTDABC と異なり29)、元々RVUが配賦基準ではなく診療報酬算定の基準単位であるため、作業プロ セスが比較的安定した診療部門の方が適していることが原因と考えられる。
対象部門が限定されることの対応策の一つとして、RVUをABC の一つのドライバーと して組み込むことをあげることができる。ベルリンら(Berlin, M. F. and T. H. Smith
[2004])の事例が該当し、彼らはABCのコスト・ドライバーにRVUを割当てることで、
計算を簡略化することと、信頼性のあるRVUを配賦基準に用いることの有用性について言 及している 30)。このハイブリッド・モデルは、診療サービスに直接割当てられる医療資源
28) Finkler, S. A. et al. [2007], pp. 75-76.
29) Kaplan, R. S. and S. R. Anderson [2007], pp. 107-121(邦訳129-146頁).
30) Berlin, M. F. and T. H. Smith [2004], p. 219.
はABCを用いて配賦計算を行い、残りの医療資源はRVUを基準に配賦計算を行うことに なる。直課できる資源は活動基準で配賦するため、全ての医療資源を同質的に消費すると いうRVUに対する批判をある程度まで回避することができる。
図表5-15 マクロ配賦基準及びミクロ配賦基準
(出所)Herkimer, A. G. [1986], p. 93.
2. 病院TDABC
近年では病院においても、活動基準原価計算(ABC)ではなく、TDABC の適応事例が 報告されるようになってきた。本項ではデュメールら(Demeere, N. et al. [2009])とキャ プラン=ポーター(Kaplan, R. S. and M. E. Porter [2011])の事例を紹介することにした い。
(1)デュメールら(Demeere, N. et al. [2009])
まず、デュメールらの事例は、ベルギーの病院の外来部門を対象としたものであり、全 19部門のうち5部門にTDABCを導入し、各診療科について時間当りコストが算定されて
いる(図表5-16)。TDABC の導入理由としては、各診療科で部門全体の収益性を知る必 要性が生じたことや、病院全体の情報へのアクセスが必要となったことがあげられてい
る 31)。また、TDABC の導入メリットとして、①時間方程式を用いることにより業務改善
につなげられること、②診療報酬支払額と比較することで部門毎の収益性分析が可能とな ること、③将来的な投資意志決定が可能となることの3点があげられている。
図表5-16 時間当りコスト(年間;€/分)
(出所)Demeere, N. et al. [2009], p. 301.
(2)キャプラン=ポーター(Kaplan, R. S. and M. E. Porter [2011])
次に、競争戦略の分野で著名なポーター(Porter, M. E.)が、キャプランと共同で医療 におけるコスト危機を解決する方法に取り組んでいる研究事例を紹介したい。彼らは、医 療保険や医療政策に解決すべき課題が存在しているのではなく、間違った方法で間違った ものを測定しているとして、①価値定義と②TDABCの2つのツールを組み合わせることを 解決策としている(詳細は第7章を参照)32)。
ポーターは、病院「価値」を測定することに対して継続して論文を発表しているが 33)、
31) Demeere, N. et al. [2009], p. 298.
32) Kaplan, R. S. and M. E. Porter [2011], p. 47.
33) Porter, M. E. and E. O.Teisberg [2004], Porter, M. E. [2009], Porter, M. E. [2010], Kaplan, R. S. and
彼の病院「価値」は、「費消されたドルに対する患者健康(状態)の結果」と定義してお り、これは2004年にテイスバーク(Teisberg, E. O.)と共同で発表したものである34)。現 在もその定義は変化していない。その上でポーターは、原価測定において患者別に原価を 配賦する際には、平均されたものではなく、資源消費に基づく配賦を行うべきとして、活 動基準原価計算の重要性に触れ、TDABCを紹介するようになっている。ポーターが、病院
「価値」に加えて、TDABCの有用性に触れることになったのは、医療サービス提供にかか るコストの多くは、共通原価(shared cost)であることが多く、TDABCを用いて、医師・
スタッフ・施設に関する真のキャパシティ・コストを明確化することの有用性を認めてい たからである35)。
論文内では、キャプラン=ポーターのフレームワークの実践例として、テキサス州立大 学 MD アンダーソンがんセンターで TDABC を導入したアルブライト=フィーリー
(Albright, H. W. and T. W. Feeley[2011])の事例が紹介されている。当該医学部では、
麻酔センターに訪れる患者のプロセス・マップの分析がパイロット・スタディとして選択 されている。TDABCを導入した結果、工程作業時間の短縮の他、技術スタッフや医療専門 職に関連するコストも削減することができ、患者一人当りコストが250ドルから160ドル に削減することができたと報告されている 36)。このように、プロセス改善の優先順位を発 見しやすくなったことや、その改善に基づく原価の影響を測定できるようになったという
「見える化」に役立てられたことが、TDABC導入のメリットとして評価されている。
3. 時間ベースの原価計算の比較
次に時間ベースの原価計算について、その特徴を比較することにしよう。本節で紹介し た原価計算について重視する項目と導入・運用面での負担についてまとめると、以下のよ M. E. Porter [2011]など。
34) 病院「価値」定義に関する経営戦略については、第6章で詳細に分析整理している。
35) Porter, M. E. [2010], p. 11.
36) Albright, H. W. and T. W. Feeley[2011], p. 62.
うに示すことができる(図表5-17)。
図表5-17 時間ベースの原価計算の比較分析
(出所)筆者作成。
まず、UVA法とRVU法を比較した場合、UVA法のUVA指標を用いて各作業区分に重 み付けをする計算過程は、RVU法とほとんど変わらない。両者の共通点としては、プロセ スの各活動コストが安定的な状況に置かれていることがあげられる。すなわち、安定的な 状況は、相対的な価値体系構築の前提となるのである37)。相対的な価値体系は、UVA法で はUVA指標であり、RVU法ではRVUとなる。しかし、UVA法は、「時間当たりの同質 性」を示すUVAポストを用いる点でRVU法と異なる。また、UVA法では、企業固有の 事情が反映されたUVAポストおよび基礎項目を設定する。そのため、UVA法は企業間比 較の視点を持ち合わせておらず、あくまで「取引の収益性」に焦点を当てている。
次にUVA法とTDABCを比較した場合、UVA法は高度な情報技術をもちえない中小企
業を対象にしているのに対し、TDABCモデルが従来のABCモデルに比べて有用と指摘し たケースは大企業(取引数が大量であるケース)である 38)。但し、近年では UVA 協会が
37) Bouquin, H. [2008], p. 155.
38) Kaplan, R. S. and S. R. Anderson [2007], p.82(邦訳103頁)参照。