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ドキュメント内 ニュートリノ振動と質量問題 (ページ 69-75)

(5.72)

(5.73)

 スーパーカミオカンデ(SK)は、地下1,000mの場所に位置する。全容積50,0000トン の水タンク内には、11,146本の直径50cm光電子増倍管が取り付けられ、水中でのニュー

トリノ反応が作り出す荷電粒子のチェレンコフ光を捕らえる。SKではニュートリノと電 子との散乱を用いて8B太陽ニュートリノを捕らえる。ニュートリノと電子との散乱で は、〃。のみならず、〃μ、〃τも捕らえることができる。中性カレントのみが作用するレμあ るいは砺と電子との散乱断面積は、荷電カレントと中性カレントが共に寄与するレ.と 電子との散乱断面積の約1/(6〜7)(以下、Rσと書く)である。太陽内部での核融合反応 は、低エネルギーの原子核反応であるため、μ.しか生成されない。もし、太陽の中心で生 まれた〃。のうち、jFもSCの割合がμμあるいは〃.になったとすると、地球で電子散乱によ

り観測されるニュートリノの強度は、

(1一」%sc)+」Fbsc×Eσ倍 (5.74)

となる。ここで、1一凡scは残った〃.が電子散乱する確率、」Fbsc×Eσは振動によって 作られたμμまたは佐が中性カレントによて電子散乱する確率である。ニュートリノに

より散乱された電子は、その速度が水中の光の速度よりも大きい場合には、チェレンコフ 光を放出する。チェレンコフ光は水の屈折率をη(=1.33)、粒子の速度をβcとすると粒 子の進行方向に対してcos−1(1/@β))の角度で円錐状に放出される。β〜1の場合には、

この角度が42度である。このチェレンコフ光の強さから電子のエネルギーも測定するこ とができる。

 SKは1996年4,月よりデータを取り始め、2001年7,月までに1,496日分のデータを取 得した。この間に観測された太陽ニュートリノの数は約22,400にものぼり、一日あたり

に換算すると14.7現象/日である。この数は、カミオカンデが捕らえた全太陽ニュートリ ノ数の30倍に相当する。この得られた太陽ニュートリノ現象の数をニュートリノ強度に 焼きなおしてみると、

φsK(電子散乱)=(2.35士0.02(5ταの」=O.08(卿8.))×106/cm2/8 (5.75)

となる。ここでニュートリノ強度とは、スペクトルの形を8B太陽ニュートリノから予想 されるエネルギー分布であると仮定して、全エネルギー範囲で積分した値である。

v)SNO実験

 SNO(Sudbury Neutrino Obseratory)実験装置は、カナダのサドパリー鉱の地下約 2,000mにある。装置の最も主要な部分は、装置の中央部にある重水(D20)1,000トンで

ある。SNOでは、以下の反応を用いて太陽ニュートリノを捕らえる。

 ①荷電カレント(CC)反応   μe十D→e一十P→一P  ②中性カレント(NC)反応

  レ十D→μ十π十P

 ③電子散乱

  Zノ十e一→ルートe−

 NC反応を捕らえるためには、反応で生成された中性子を捕らえることになる。それに は以下の3つの方法がある。

方法1:重水素と中性子との反応で生まれる約6MeVのガンマ線を使う。

方法2:重水中に塩素を入れ、塩素と中性子との反応で生まれる約8MeVのガンマ線

    (Cl@,のCl反応)を使う。

方法3:8He中性子カウンター(3He+η→T+p比例計数管で捕らえる装置)を重水中に     入れて観測する。

 これらの反応により生じた電子は、SKと同様にチェレンコフ光を観測することにより 捕らえられる。1,000トンの重水はアクリル容器の中に貯められているが、その外側には 5,000トンの軽水があり、その軽水中に9,438本の光電子増倍管が取り付けられている。

チェレンコフ光の光パターンから粒子の方向性を観測することができる。CC反応は、太 陽ニュートリノの方向と(1一(1/3)cosθ)のような角度相関を持ち、後方に多い角分布を 示す。これに対して、電子散乱は、超前方にピークを持つため、方向性を用いて分離する

ことができる。方法1によるNC反応は、約6MeVの単色エネルギーを持った現象であ

ることと方向が一様分布をするということから、CC反応や電子散乱と区別がつく。

 SNO実験は、1999年11月から2001年5.月までに重水のみを用いたデータを306.4

日分取得した。この観測された太陽ニュートリノ現象をエネルギー分布、太陽との方向分 布、粒子の発生点分布を用いて、上記の3っのプロセスに分離した。その結果、観測され た現象の数は、それぞれ、CC反応が約1,970個、電子散乱が約260個、 NC反応が約580

個と得られた。これらの値を太陽ニュートリノの強度に直すとそれぞれ、

  φsNo(CC)=(1.76十〇.06/一〇.05(8オα孟.)±0.09(5ツ5.))

        ×106/cm2/・.

  φsNo(NC)=(5.09十〇.44/一〇.43(3舌α舌.)一ト0.46/一〇.43(5鯛.))

        ×106/cm2/・,

φsNo(電子散乱)=(2.39十・0.24/一〇.23(8鰯.)±0.12(卿8.))

        ×106/・m2/5.

(5.76)

(5.77)

(5.78)

となる。

 c)SK,SNOのデータ比較とニュートリノ振動の証拠

 太陽ニュートリノ振動の確実な証拠は、2001年6月にスーバ旧辞ミオカンデの1,258 日分のデータとSNOからの最初のCC反応の結果とを比較することにより示された。

 SKが電子散乱で測定した太陽ニュートリノ強度(φSK(電子散乱))は、 SNOがCC反 応によって測定した強度(φSNO(CC))に比べて約34%大きい。この違いは、 CCの反応 はレ。のみしか捕まえないが、電子散乱ではレμ、μτの寄与もあるため、μ。がレμ、〃γに 変わってしまったことが原因であると考えられる。この結果は、2002年のSNOによる NC反応の結果によってさらに確実なものとなった。 NC反応によって測定された強度 は、上記のようにCC反応や電子散乱による測定結果に比べて有意に大きい。 NC反応が 全ニュートリノ強度(〃・+レμ+μ丁)を測っていることから考えて、この有意な違いは太陽 ニュートリノが〃μ、μτに変わってしまっていることを示唆する。

 これらの測定結果が定量的につじつまが合うかどうか見てみる。SKの電子散乱の結果

(5.75)とSNOのCC反応の結果(5.76)から〃μ、レ.の強度を求めてみると、(5.74)を 用いて(3.9±=0.9)×106/cm2/8となる。 SNOのCC反応によるμ,の強度(5.76)と合 計すると、全ニュートリノ強度φ(レ,+〃μ+μτ)は(5.7±0.9)×106/cm2/5と求められ、

これはSNOのNC反応による強度φSNO(NC)と統計の範囲内でよく一致する。

 d)ニュートリノ振動パラメータの値

 太陽ニュートリノ問題の解がニュートリノ振動であることはわかったが、真の解決のた めには、一組の振動パラメータによってすべての太陽ニュートリノ実1験の結果が説明で きなければならない。まず、ホームステイクの実験、ガリウム実験、SK実験、 SNO実 験(CC反応)が観測した太陽ニュートリノ強度を標準太陽モデルからの予想値と比べる ことにより、振動パラメータの許される領域は、混合角の大小、振動長さの特長により、

SMA(Small Mixing Angle、小混合角)解、 LMA(Large Mixing Angle、大混合角)解、

LOW(10w△皿2、小質量差)解、 just−so(真空振動)解がある。これらの解のうちどれが 真の解であるかを見極めるには、ニュートリノ振動のエネルギー依存性、物質のニュー

トリノ振動に与える効果が重要な意味を持つ。SKでは、精密なエネルギースペクトルの 測定を行ってきたが、大きなスペクトルのゆがみは見えていない。また、地球の物質が

ニュートリノ振動に与える効果を見るために昼と夜との強度の違いを測定したが、

(Night−Day)/((Night十Day)/2)=0.021±0.020(5孟αオ.)十〇.013/一〇.012(5〃8.)(5.79)

となり、特に有意な違いはない。これらの観測によって排除できるパラメータ領域は SMA解、 just−so解、 LOW解、 LMA解の質量2三差の小さい部分を95%信頼度で排除

している。残る領域はLMA解の質量2乗差の大きい部分となる。

 以上の解析は、SK以外の実験結果とSKの詳細象解析結果との比較を行ったものであ るが、すべての太陽ニュートリノ実験の結果を盛り込んで許されるパラメータ領域を求め ることをグローバル解析という。この解析では、すべての太陽ニュートリノ実験で観測さ れた強度、SKでのエネルギースペクトル、昼夜変化、 SNO実験でのNC,CC強度が盛り 込まれている。このグローバル解析ではLMA解が最も有力な候補として残り、他の解は 1%レベルの可能性でしかありえない。

 残されたLMA解が正しいという確認は2002年12月にKamLAND(長基線原子炉

ニュートリノ実験)によってなされた。

5、3.3 大気ニュートリノ問題

 大気ニュートリノ問題とは、大気ニュートリノの悔成分が〃.成分に比べて理論値の 予想より少ないことである。大気ニュートリノは1次宇宙線(高エネルギーの陽子)が 大気と反応して、πやκを大量生成し、それらが崩壊して〃μやレ.になるものである。

地上のミューオン降下量がわかっているので、それから1次宇宙線量を逆算し、ニュー トリノ生成量も一応は計算できる。しかし、現時点での計算は必ずしも精度がよいとは いえず、各理論計算高の差は最大30%に達する。したがって、個々のニュートリノ降 下量を絶対的に測定して理論と比較するのは困難であり、実験的にも難しい。しかし、

(〃μ一十〃μ)/(μ.+シ。)の比については、大きな誤差は相殺されるのでかなり信頼できると思 われる。

 この場合、各理論計算間の違いは10%以下におさまる。エネルギーが≦3GeVくらい までならば、主な生産崩壊モードは

P+且→π±(κ±)+X

    π±(一κ士)→μ±+・μ, μ±→・士+・μ+〃,

であるので、N(Zノμ)/1V(μ。)竺2である。神岡グループは電子ニュートリノについてはほ ぼ理論の予想とおりの値を得たが、ミューニュートリノの観測数は理論予想値より相当低 い値を得て、2重比すなわち

  (μμ十レμ)/(レ。+シ。)DATA

R=

      =0.61十〇.03(stat)±:0.05(sys)

   (μμ十μμ)/(μ。+シ。)MC (5.80)

ドキュメント内 ニュートリノ振動と質量問題 (ページ 69-75)

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