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ドキュメント内 ニュートリノ振動と質量問題 (ページ 50-54)

(4.90)

 なお、実験的に世代の数はクォークとレプトンとで共通であることが知られている。こ のように、クォークとレプトンが対応して存在していることをクォーク・レプトン対応と 呼ぶ。しかし、実験的にそうであるというだけではなく、理論の構成上からも、クォーク

とレプトンとが同数の世代だけなければならないことが知られている。

5 ニュートリノの質量問題

5.1 ニュートリノ質量の理論的諸問題

5.L1 質量の上限値

 ニュートリノの質量問題は、古くて新しい問題である。そもそも1930年パウリが

ニュートリノの存在を予言したとき、すでに質量は(当時の基準で)ゼロに近いであろう

と予想していた。今日に至るまでβ崩壊のスペクトルから推察されるニュートリ.ノの質量 は実験精度の限界で常にゼロに等しい。この事実とパリティ非保存発見により、ニュート

リノを2成分ワイル解とみる可能性が生じた。実験的には常に砺と峨のみが観察され るという事実は、ワイル解ψしとψRのうち、自然がψしのみを選択していることを示す。

さらに、ニュートリノは電荷を持たないことから、粒子と反粒子の区別のつかないマヨラ ナ粒子である可能性も否定できない。この場合シR=(Zノ五)cニμRである。

 一方、質量が有限であれば〃Rが存在しなければならない。なぜなら、質量が有限なら ば光速以下でしか走れず、ニュートリノに先行する座標系で見ればヘリシティが逆転する からである。標準理論ではμRは存在しないと要請している。この結果、ニュートリノの 質量はゼロとなっている。しかし、この根拠は強固なものではない。標準理論では、レR があったとしても1重項に属するので、ゲージ粒子による5σ(2)相互作用はない。さら

に、Q=13+yによってyもまた0であるので、σ(1)相互作用もない。つまり、検

出の方法がない不毛粒子であるから、簡単のためないとしているだけである。また標準 理論の枠内で耽がまったく相互作用しないわけでもない。たとえば、湯川型相互作用

(乏タ〜9∫フLZノ」Rφ)は8σ(2)×σ(1)ゲージ理論の範囲内で許される。これは賜クォークに

質量を与えるためにヒッグス場とuクォークが結合する相互作用があるのと同じ理由で ある。この場合φが真空期待値を持てば質量項を与える。すなわち、〃Rが存在すること と質量が有限であることは標準理論的では同じことを意味する。このとき、物質との相互 作用の強さは、ヒッグス場を介するという理由で質量に比例し、質量が小さいときは存在 検証のテストが困難なのである。

 現在、ニュートリノの質量は実験誤差内でいずれも0もしくは非常に0に近いことが示 されている。

m(〃,)< 〜3eV m(Zノμ)< 190KeV m(レτ)〈18.2MeV

一方、宇宙論を使えば、すべてのフレーバーのニュートリノについて

(5.1)

または

Σゴmμゴ≦100eV

mμゴ≧8GeV(ディラックニュートリノ)

mμゴ≧14.4GeV(マヨラナニュートリノ)

(5.2)

(5.3)

(5.4)

の範囲になければならないことがいえる。すなわち、宇宙論によれば、ニュートリノに 質量があってはいけない禁止領域があり、この条件を考慮すると、砺、レ丁の質量もまた 100eVを超えないことが結論できる。なお、 LEPにおけるZボソンの見えないモードへ の崩壊幅の測定から、質量が45GeV以下のニュートリノの存在は既知の3種以外は否定

される。

 現在ではニュートリノ振動の存在が確立し、ニュートリノが質量を持つことは実験的に 証明されたといえる。それが素粒子論の中でどのような位置づけを与えられるかはこれか

らの話であるが、標準理論を越えて発展すべき方向の指針となることは間違いない。

 標準理論では、仮にニュートリノに有限質量を与えることができたとしても、なぜ ニュートリノだけが他のレプトンやクォークに比べて極端に質量が小さいのか(例えば 隅レ。/m.≦1r5)を、同時に説明しなければならないという問題がある。質量の起源が ビッグス場の真空期待値にあるならば、ビッグス場との相互作用がニュートリノだけ違う 理由は何もないからである。トップクォークの質量(物〜175GeV)は一番軽い電子の 質量(0.5MeV)に比べて105も大きく、質量のスケール問題はニュートリノに限った特 殊な問題ではないと思うかもしれない。しかし、ニュートリノの質量は同じ世代の中で特 別に軽い(m殉《m。,mレ、《mμ,mμ.《mののである。

5.1.2 質量行列

 ここでは、マヨラナ粒子の可能性を含めて、質量項の一般的な取扱いから述べる。

 a.マヨラナ質量

 任意の2つのスピノール場、ψ1,ψ2に対して、

1 _     _

喜(ψ1Lψ2R+ψ1Rψ2L+ん・C・) (5.5)

は、ローレンツ不変である。ψ1=ψ2のとき、ラグランジアンの中のこの項をディラッ ク質量項という。しかし、ψ1=砺もしくはψ2=ψ呈であっても自己エネルギーとして の解釈は成立するから、質量項としての候補になる。この場合はマヨラナ質量項と呼ばれ る。またこのような質量項を持つ粒子をマヨラナ粒子という。通常この形を質量項に加え ないのは、

均一[(≒り司†漏斗ψ罫唖

ψ灸ψL=ψ署。ψ五

(5.6)

(5.7)

であるので、位相変換に対して不変ではなく、電荷またはレプトン数保存則を破るからで ある。このことから直ちに荷電粒子は上記のような質量項をもたないこと、つまりマヨラ ナ粒子ではありえないことがわかる。ニュートリノは、荷電レプトンとともに2重項をつ

くるので、荷電粒子と共通のレプトン数をもち、かっレプトン数保存が成立すると考える と、弱相互作用の実験事実は矛盾なく説明できる。この場合ニュートリノはマヨラナでは ない。しかし、よく考えてみるとニュートリノは中性であり、粒子と反粒子を区別する指 標がない。実際、これまでレプトン数保存の証拠と考えられてきたある種の反応の有無、

例えば

・μ+η一〉μ一+P,レ。+P一・μ++η

ラμ→一P一→μ++η, シμ+η一チ・μ}+P

などは、弱相互作用のV−A型という性質によって、レプトンと左巻き、反レプトンと右 巻きは1対1に対応するので、ヘリシティ保存則のテストでしかないことに気がっく。真 のレプトン数非保存のテストは二重ベータ崩壊を見ないといけない。すなわち、これまで の実験事実のみではニュートリノがディラックニュートリノであるとは断定できないので ある。したがって、レプトン数保存が破れてもかまわないという条件を入れれば、ニュー

トリノの最も一般的なラグランジアンは、

        一∬=ψ砂μ∂μψ十γπD(ψ、LψR十ん・c・)       (5.8)

      +警(ψ箆ψ五→一ん・c.)+『野(轍+ん・の  (5・9)

と書ける。第1項が運動エネルギーを表し、第2項がディラック質量項、第3,4項がマ ヨラナ質量項である。第3、4項がなければ、これは通常のディラック粒子のラグランジ アンである。このラグランジアンは次式で定義される2個のマヨラナ場

      凡一振響,地一ψR警

を導入して書き直すと理解しやすい。任意のフェルミオン場x,φに対し、

(5.10)

又L(R)7μφR(五)=0,又L(R)φR(L)=0 (5.11)

が成立することを使えば

吻μ∂μψ=1V・ツμ∂μ2V1+N27μ∂μ2V2 NIN1=(1/2)[ψ灸ψL十ん・c・]

N2碗=(1/2)[ψ£ψR十ん・c.]

2VIN2+N2!V1=ψ五ψE+ん.c.

(5.12)

(5,13)

(5.14)

(5.15)

が示せるので、ラグランジアンは

    一∬=N・乞ツμ∂μN・+N2御μ∂μ1V2

       +物(ノV・N2+N21V1)+mLN1.N・+mEN2N2

       一直嚇N・+酬幟+(N1,N2)[鴛ち烈銑]

と書き直せる。ここに、

(5.16)

[M]一

m篇潔]

(5ユ7)

はニュートリノ質量行列と呼ばれる。

 b.シーソーメカニズム

 (5.16),(5.17)のニュートリノ質量行列を対角化して得られる2つの場を、〆,1>,その固

有質量をそれぞれmレ,mNとする。この質量固有解はL成分とR成分の混合であり、決 まったカイラリティ固有状態にない。いまレRを導入する以外は、標準理論の枠内で考え るようにしよう。そうすると、アイソスピン1のヒッグスがないから、μLは質量をもて ず(mL=0)、ディラック質量皿Dは通常のクォークもしくは荷電レプトンの質量を表す

ことになる。したがって、

γηL≒0, mR》γηD,mL (5.18)

という条件が設定されるので、質量固有解はmLを無視する近似で次のように表される。

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