第 4 章 SISLA 評価モデルの提案
4.2. SISLA 評価モデルの具体的な構成
4.2.3. 提供されるサービスの評価(Use/Compensation Value)に関するモデル.….79
4.2.2項で示したImpression Value 𝑉𝑋 は、提供者が社会から受ける評価として重要で あるが、これだけでは、そのままサービス提供者 𝑋 の価値と考えることができない。なぜ ならば、社会インフラサービスは、基本的に全ての市民 U = {1, 2, … , 𝑚}(=潜在的利用 者)に対してサービス提供機会を与えているが、実際にはその潜在的利用者全てが提供者
𝑋 の社会インフラサービスを利用するとは限らないからである。すなわち、上記のm人
の利用者の中に、社会インフラサービス 𝑋 を利用する者といない者が存在するわけであ る。また、一般的なサービスであれば、ユーザーの満足度によっては「衝動的に購入する」
「試しに買う」「(競合する商品を)両方買う」といった選択肢がありうるが、社会インフ ラサービスは「本来の目的を達するために利用するサービス」という派生需要の性格を強 く持つため、前述したような利用方法は物理的に不可能(例:交通サービスでは、同時に 1つの提供者しか選ぶことができない)か、現実的ではない(例:電力サービスでは一家庭 は通常1つの契約しか締結しない)。よって、提供者 𝑋 の価値は、ユーザー全体による評 価 𝑉𝑋だけでなく、提供者 𝑋 を利用したユーザーによる評価も重要であり、これは提供者 𝑋 の収益にも直接つながることになる。
社会インフラサービス提供者 𝑋 も利益を追求する企業として存在すると考えれば、社 会インフラサービス提供者 𝑋 の価値を、 𝑋 が利用されたことによる対価およびサービス 提供のために発生するコストによって測るのが、経営学的視点から見ても、適正なサービ スを維持できる能力を持つことが社会インフラサービスとしての使命、存在意義である という観点から見ても妥当であると考える。
そこで、社会インフラサービス提供者 𝑋 の、もう一つのサービス価値を「利益=収入‐
80 支出」の観点から考えると、実際の利用者集団を
𝑈𝑋= {1, … , 𝑖, … , ℎ} (ただし、𝑖 ∈ 𝑈, 𝑈𝑋⊆ 𝑈、|𝑈𝑋| は交通サービス 𝑋 を利用した人数) 𝑐𝑋:𝑋がサービス提供する際にかかるコスト
𝑓:利用者がサービス提供する際に支払う対価 として、(6)式のように表す。
𝑆𝑉𝑋= 𝑓 × |𝑈𝑋| − 𝑐𝑋 ・・・(6)
なお、コストは、提供者 𝑋 が設定するSISLAに応じて変化し、また対価はコストや顧客 獲得戦略などにより変化する。特に、対価については利用者それぞれに対し異なる価格が 設定される場合が想定できるため、
𝑝𝑋𝑘:利用者 𝑘 に対する社会インフラサービス 𝑋 の価格 として、Use/Compensation Valueを(7)式で定義する。
𝑆𝑉𝑋= ∑ 𝑝𝑋𝑘
𝑘∈𝑈𝑋
𝑘
− 𝑐𝑋 ・・・(7)
そして、利用者 𝑘 が交通サービス 𝑋 を利用するかどうか (すなわち 𝑘 ∈ 𝑈𝑋となるかど うか)は、交通サービス 𝑋 のSISLA( 𝑆𝐿𝐴⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ )と利用者に拠ることになる。 𝑋
𝑘 ∈ 𝑈𝑋 if max(𝑉𝑋𝑘, 𝑉𝑌𝑘, … , 𝑉𝑍𝑘) = 𝑉𝑋𝑘 (ただし、𝑉𝑋𝑘= 𝑆𝐿𝐴⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ ∙ W ∙ 𝑢𝑋 ⃗⃗⃗⃗ ) ・・・𝑘 (8)
(8)式は、「様々な交通サービスの中で、利用者 𝑘 が交通サービス 𝑋 の価値( 𝑆𝐿𝐴⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ )を最𝑋 も高く評価している場合、利用者 𝑘 は交通サービス 𝑋 を利用する」ということを意味し ている。
Use/Compensation Valueは、事例における 𝑆𝐿𝐴⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ 、𝑋 𝑢⃗⃗⃗⃗ 、𝑘 W 、𝑝𝑋𝑘、および 𝑐𝑋をパラメー 図4-5 Use/Compensation Value に関するSISLA評価モデル
社会 サービス (m人)
提供者X
サービス・アクション
Based on SISLA
Impression
Use/Compensation
:利用者 に対するサービス の価格 (ただし 、 はサービス を利用した人数)
: がサービス提供する際にかかるコスト
SISLA 評価モデル
事例
モデル
81 ターとして評価するモデル(図4-5) である。
4.2.4. SISLA 評価モデルの提案
4.2.2.項および 4.2.3.項において記述したモデルをまとめる。このモデルは、潜在的利
用者全体に対して予め決められたサービスレベル(SISLA)を示した提供者に対し、潜在的 利用者がそれぞれの志向に基づき提供者を評価したうえで利用可否を決定し、提供者は SISLA の 結 果 を 、 利 用 者 の 評 価 の 総 体 と し て 、Impression Value 𝑉𝑋 お よ び Use/Compensation Value 𝑆𝑉𝑋 によって認識することができるモデルである。これを SISLA評価モデルと呼ぶ(図4-6)。なお、Impression Value および Use/Compensation Valueを併せて SISLA価値と呼ぶ。
このモデルを使えば、同質のサービスを提供する社会インフラサービス提供者が複数 (𝑋, 𝑌, 𝑍)存在する場合に 𝑉𝑋, 𝑉𝑌, 𝑉𝑍 や 𝑆𝑉𝑋, 𝑆𝑉𝑌, 𝑆𝑉𝑍 を比較することでサービス提供者の優劣 を測ることができる可能性がある。
また、個々の社会インフラサービス提供者 𝑋 においては、
1) SISLAに基づくサービス内容 𝑆𝐿𝐴⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ が適正かどうかを 𝑉𝑋 𝑋 および 𝑆𝑉𝑋 により判断する 2) 𝑡 期の 𝑉𝑋𝑡 および 𝑆𝑉𝑋𝑡 の結果を踏まえ、 𝑡 期の SISLA 𝑆𝐿𝐴⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ に対し、𝑡 + 1 期の𝑋𝑡
SISLA 𝑆𝐿𝐴⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ を検討・実施する。 𝑋𝑡+1
3) 個々の社会インフラサービス提供者のサービス内容の時間的変化 𝑆𝐿𝐴⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ 、𝑋(𝑡1) 𝑆𝐿𝐴⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ 、 𝑆𝐿𝐴𝑋(𝑡2) ⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗⃗ によるサービス価値の変化 𝑆𝑉𝑋(𝑡3) 𝑋(𝑡1) ⇒ 𝑆𝑉𝑋(𝑡2) ⇒ 𝑆𝑉𝑋(𝑡3)を測る といった、社会インフラサービス内容の客観的評価を、SISLA をベースに実施するこ とができる可能性がある。
整理すると、図 4-6 に示すような流れで、実事例における提供者 𝑋 が提供する社会イ ンフラサービスのSISLAを、評価モデルによって評価することができるのである。
一般的なサービスモデルにおける、1対1の評価のみではなく、マスサービスである社 会インフラサービス特有の評価である「サービスの印象評価(提示されたサービスに対す る利用者の印象的価値:Impression Value)」「サービスに対する利用評価(提供されたサ ービスを実際に利用したことにより発生する実利用価値:Use/Compensation Value)」
がこのモデルには組み込まれている。なお、評価に必要な各サービス属性 𝑠∗𝑖の決定は重 要であるが、具体的な属性はSERVQUALの22項目にあるような「利用者と従業員の行 動やインタラクション」に関するものというよりは、提供しているサービスそのもの、鉄 道を例にすればダイヤに関するものに焦点を当てて設定していく方が望ましいと考えら れる。
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なお、現実には社会インフラサービス提供者は複数いることがあり、利用者は複数の提 供者に対してそれぞれが提供するサービスに対するImpression Value を持ち(図 4-7)、
実際にいずれかの提供するサービスを利用する。利用された場合、その提供者に対する Use/Compensation Valueが生まれることとなる(図4-8)。
図4-6 SISLA評価モデル
社会 サービス (m人)
提供者
サービス・アクション
Based on SISLA Impression
Use/Compensation
:利用者 に対する交通サービス の価格
: がサービス提供する際にかかるコスト
SISLA 評価モデル
Impression Value
Use/Compensation Value
事例 モデル
(ただし 、 はサービス を利用した人数)
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