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社会インフラの評価に関する文献

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第 2 章 先行文献のレビュー

2.4. 社会インフラの評価に関する文献

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具体的には、電磁力 Fが 電荷 q と電場E、磁場Bおよび速度vから F = q(E + v × B)

と表され、電荷がいかに大きくても電磁場の作用がなければ力は発生しないということ を示している。サービスについてもサービスそのもののポテンシャルのみではサービス の価値は生まれず、そのサービスが利用される「場」の要素が重要であるというのが「サ ービス場」の概念である。すなわち、

(Service value) = (Provided Service)・(Service field)

という形でサービス価値が定義されている。

具体的には、サービス提供者の属性ベクトルを𝑠 = (𝑠1, 𝑠2, 𝑠3, ⋯ , 𝑠𝑛)

、利用者のニーズ のベクトルを

𝑎 = (𝑎1, 𝑎2, 𝑎3, ⋯ , 𝑎𝑛)とし、サービス価値を内積 𝑠 ∙ 𝑎 で表す。

𝑠 ∙ 𝑎 = |𝑠⃑||𝑎⃑|cos𝜃

サービス価値を高めるということは内積を大きくするということに他ならず、|𝑠⃑|、|𝑎⃑|そ れぞれを大きくすることに加え、cos𝜃 を大きくする、すなわち 𝜃 を小さくすることが戦 略として 求められることとなる。

4章において社会インフラサービスの評価モデルを構築するうえで、この内積によるサ ービス価値の算出の考え方を参考にする。

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スを中心に評価している点を参考にし、4章で社会インフラサービスの評価モデルを構築 する。

2.4.1. インフラ会計

社会インフラは、主として公共財として扱われ、市場メカニズムによって供給されない ため、国や地方自治体等が建設、維持管理を担っている。そのため、社会インフラの金銭 的価値の推移は公会計によって把握されるべきであるが、公会計制度においては会計の 目的が「予算執行の手続きに関するアカウンタビリティ」となっており、企業会計制度と は固定資産の取り扱いが異なっている。企業会計においては、固定資産は貸借対照表に記 載され、減価償却費を費用として計上することで資産の状況が把握できるが、公会計では 資産価値についての記載義務がないため、利用者 (≒納税者)に社会インフラの状態を示 せていないのである。高度経済成長期のインフラ整備が進んだ時期を過ぎ、今後インフラ の維持管理や取捨選択を進めていかなければならない昨今、インフラを社会資本として 高度にマネジメントするべく、「インフラ会計」という概念が登場している(江尻他, 2004, 国土技術政策総合研究所, 2008)。インフラ会計は、図2-5に示すように、インフラを会 計上の資産として扱い、評価額や整備コストを明確にすることで国民にもたらされる便 益や、インフラの性能確保状況を貨幣価値として把握できるようにすることが目的であ る。具体的な方法の 1例として、表2-8にインフラ会計適用時の残高試算表を示す。イ ンフラ会計では、社会インフラに対する補修等の投資と、インフラ自体の価値を示すこと が必要であるが、前者は「繰延維持補修引当金繰入額A」および「繰延維持補修引当金Δ D」、後者は「固定資産S」で示されている。長期的な維持管理費用Aを各年度に割り振 ったΔDとSによって、各年度の社会インフラの状態を示し、ΔDがSを上回るまでは その社会インフラのサービス水準が保たれていると客観的に捉えることができる。

図2-5 インフラ会計(国土技術政策総合研究所(2006) p.494 図1-2-3より)

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表2-8 インフラ会計適用時の残高試算表(繰延維持補修会計)(江尻他(2004)を元に筆者作成) 資産の部

固定資産 S 繰延更新引当金 ΔD

負債の部 資本の部 収益の部 費用の部

繰延維持補修引当金繰入額 A

2.4.2. ヤードスティック規制

ヤードスティック規制は、社会インフラ等を運営している公益企業に対し、公共の利益 確保を継続維持しつつ、企業の内部効率性をいかに向上させるかを考慮したインセンテ ィブ規制の手法の一つである(水谷, 2007)。ヤードスティック規制の具体的な手法につい て、鉄道事業を例にして水谷(2014)を参考に説明する。鉄道の運賃および料金(以下、運 賃等)は、上限価格が国土交通大臣の認可制となっており、上限価格の範囲内で運賃を定 める場合には国土交通大臣への届出で良いとされている。この上限価格を決定するため の総括原価の構成要素の一部(適正コスト)(表 2-9)を算定するためにヤードスティック方 式が取り入れられている。つまり、適正コストが上がれば鉄道事業者にとっては増収の機 会が得られることとなる。この適正コストの算定には以下の2つの評価軸を使う。

表2-9 ヤードスティック方式における適正コスト(水谷(2014)を元に筆者作成)

支出 収入

事業報酬 配当金等(=利潤) 改定上限運賃による増収額 支払利息

現行運賃での収入額 営業費 諸税・減価償却費等

(適正コスト) 人件費・経費

料金収入 運輸雑収

(1) 同一年度における他の時事業者との比較による評価

各事業者の過去の実績コストを元に、事業者全体に対する基準コストが決定され、各 事業者は

A.実績コスト>基準コスト(事業が非効率的であった)

⇒ 適正コスト=基準コスト

B.実績コスト<基準コスト(事業が効率的であった)

⇒ 適正コスト=(基準コスト+実績コスト)/2

という基準により適正コストが算定される。基準コストは、各事業者の実績コストから

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算出されているため、この評価は実質的に他の事業者との効率性比較となっている。営業 コストが基準より低いということは、事業が効率的であったといえるため、その効果の半 分が事業者の還元される形となっている。

なお、このような評価を実現するためには、対象となる事業者が複数あり、かつ事業内 容の同質性が求められる。

(2) 各事業者の経年努力に対する評価

各事業者の、過去の実績コストと当該年度の実績コストを比較し改善されていれば 適正コストを増加させる。具体的には、実績コスト÷基準コスト=乖離度とし、

適正コスト=基準コスト×{1+(前回の乖離度―今回の乖離度)/2}

を算出する。

ヤードスティック規制は、公共性の高い事業に対し内部効率性を高めるインセンティ ブを与えるものであるため、総括原価方式のように営業コストを高止まりさせることに よって利用者の便益を損なう可能性は減ると考えられるが、判定の基準となる実績コス トは営業費に含まれているため、利用者のニーズをおろそかにしても経費の削減を行う といった、社会インフラをサービスとして捉えるうえで本末転倒とならないような運用 の仕方が必要になると考える。

2.4.3. ライフサイクルコスト

ライフサイクルコスト(橋本他, 2015)は、文字通り「生涯を通じての費用」であるが、

ここでは社会インフラサービスを提供するための主な役割を担う構造物、施設(トンネ ル、橋梁、道路、線路等)に関するコストのことを示す。社会インフラは、他に比べ非常 に長い期間共用される。数十年~百年を超えるものもある。このような社会インフラに対 するライフサイクルコスト(Life Cycle Cost: LCC)は、

LCC = 𝐶𝐼+𝐶𝑀+𝐶𝑅

(ただし、𝐶𝐼:初期費用、𝐶𝑀:維持管理費用、𝐶𝑅:撤去費用)で与えられる。LCCと各項の関係 は、概ね図2-6のような関係にある。

すなわち、建設時に材料の品質を安価なものにしたり、強度や構造を簡素化するなど し、初期費用を抑制できたとしても、その後構造物の変状が早期に表れたり劣化による修 繕などの頻度が増えることなどにより、維持管理に費用を要してしまうことが考えられ る。施工を請け負う主体と維持管理を請け負う主体が別であると、LCCを意識した管理 が難しいため、施工と維持管理をセットにした発注方式を行うなどの工夫がなされ始め ている。

社会インフラをサービスとして捉える場合、定められたサービス水準を維持するため

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には、より効率的なLCCとなる計画を立てることが必要である。

図2-6 ライフサイクルコストの構成イメージ(橋本他(2015) p.144図2.3.1より)

2.4.4. 等時線図

等時線図(塚田他, 2000)は、駅や空港アクセスに関して、「同時間で到達できる距離」を 地図上に示したものである(図2-7)。

図2-7 等時線図 (塚田他(2000) p.84 第1図より)

塚田(2000)は、日本のいくつかの空港へのアクセス時間を分析し、軌道系交通アクセ ス・道路系交通アクセスによる所要時間の比較、運賃と各アクセス分担率の関係につい

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て分析しており、軌道系交通アクセスは道路系交通アクセスに比べ遅延が少なく、平均 速度も速いことからアクセス圏を広げる効果はあるものの、本数や乗換時間などに工 夫が必要であり、全ての空港について一律に軌道系交通アクセスが望ましいとはいえ ないとしている。このように、特定の位置から同時間で到達できる距離を表した等時線 図は、アクセス鉄道や高速道路の整備による所要時間短縮効果を可視化し分析できる 特徴がある。他には、ヤフー株式会社(2015) による、ビッグデータ分析を駆使したリ ニア新幹線開業前後の東京駅からの到達所要時間ビジュアライゼーションマップなど も、社会インフラサービスである交通サービスの主たるサービス要素である所要時間 に関し、価値のある結果をもたらしている。

2.4.5. 時間価値

「時間価値」は、時間の変化に対する支払意思額であり、対象となる活動を行うための 時間が1分増える、または1分減ることに対していくらまでなら払えるかという意思を 示す金額で、例えば 30円/分というように表す(加藤他, 2012)。サービスに時間という 要素がある場合に、貨幣価値による評価を行うことができる。一般的に、交通サービス は派生需要のため、所要時間が短い方が望ましいと考えられており、また、同じ短縮時 間数であっても目的が異なる場合は貨幣価値が異なる。加藤他(2012)によれば、日本の 1人あたりの業務交通の推定時間価値は34~42円/分、通勤交通では25~39円/分、私 事交通では20~24円/分となっている。

利用者の交通手段選択の判断基準として考える場合には、利用者の効用に関する無 差別曲線を、所要時間と費用を元にして示すのが自然である。例えば図2-8のように、

所要時間 (横軸: t )と費用 (縦軸: c )に関して、「所要時間が短く費用が高い」と「所要 時間が長いが費用は安い」が同一となるような無差別曲線が考えられる。なお、A は

「低速で安価な交通手段」、Bは「高速で高価な交通手段」、Cは「中速で中程度の価格 の交通手段」を表している。

図2-8 時間価値に対する無差別効用曲線の例 (加藤他(2012) p.7図1-2より)

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新たな交通手段によって、1分短縮するのに必要な費用が、利用者が考える費用よりも 安くなるのであれば新たな交通手段に乗り換えるという選択である。

交通サービス以外の社会インフラサービスについても、派生需要であることにより時 間価値を評価の基準とすることは意味があると考えられる。例えば通信インフラでは高 速で安定した通信が求められているが、これは「同じデータ量の通信を行うための所要時 間がより短い」ことに価値が見出されているとみなすことができ、より帯域の広い通信サ ービス(例えば3Mbpsよりも10Mbps)、より安定した通信サービス(無線通信よりも有線、

メタル回線よりも光回線)に対して高い価格が設定されていることからも、時間価値と費 用のトレードオフがサービス選択の判断基準となっていることが推測できる。

一方、昨今の交通サービスでは「TRAIN SUITE四季島」「ジョイフルトレイン」(東日 本旅客鉄道株式会社(2019-1, 2019-2)など、「乗ること自体を楽しむ」サービスも増えてき ている。このようなサービスでは単なる時間と費用のトレードオフではなく、時間を費や すことに価値が見出されており、時間価値とは異なる評価基準が必要と考えられる。

2.4.6. 不効用値

国土交通省鉄道局(2012)、村越他(2008)は、鉄道の利用者が列車を利用する際の評価と して、時間価値に不効用値の概念を追加して議論している。具体的には、時間価値(円/分) に乗ずる時間を、単なる所要時間ではなく以下の「不効用値」により算出する。

不効用値=乗車時間+2 ×乗換待ち時間+10 ×乗換回数+∑ (乗車時間× f(混雑率)) なお、𝑓(混雑率)は、混雑不効用関数と呼び、表2-10の値を取る。

表2-10 混雑不効用関数(国土交通省鉄道局(2012)を元に筆者作成)

混雑率(R) (%) 混雑不効用関数

0以上100未満 𝑓 = 0.0270R

100以上150未満 𝑓 = 0.0828R − 0.0558

150以上200未満 𝑓 = 0.179R − 0.200

200以上250未満 𝑓 = 0.690R − 1.22

250以上 𝑓 = 1.15R − 2.37

乗換待ち時間、乗換回数および混雑度が増すことが利用者の満足度を損なうという概 念を数値化したものである。

2.4.7. 一般化時間

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