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S子 の関節 リウマチ とい う病気

ドキュメント内 静■魃恙 (ページ 61-83)

第 3章   リウマチ と生 きる S子 の病いの語 り

第 3節    S子 の関節 リウマチ とい う病気

1.S子

の プ ロ フ ィー ル

S子

は、看護相談 に訪れ たのは

49歳

の時で、現在

(2010年

)、

53歳

女性 で独身で ある。

24歳

で関節 リウマチ を発症 、病名 は関節 リウマチ と診断 され てい る。 リウマチ 歴

29年

であ り、入院 の経験 も多 く、手術 の経験 も多い。身体障害者手帳

1級

を持 つ

てい る。介護保険要介護

2の

認定 を受 けてい る。Stage Ⅳ 、Class Ⅲである。

配偶者 はな く、弟夫婦 とは同 じ敷地 内で暮 らしてい る。弟夫婦 とは うま くいってい ない。父親 と母親 と

3人

で生活 していたが、

2009年

父親 の死亡、

2010年

は母親 が死 亡 してい る。

2009年

まで、認知症 の母親 の介護 も していた。

現在 、近 くの郵便 局で午後(13:00〜19:00)パ ー トとして、月曜 日か ら金曜 日まで働 い てい る。

パ ソコンが得意で事務 関係 の仕事ができる。以前、自分のホームペー ジを開いていた。

周 囲の人 々の病気 に対す る理解 については、「弟夫婦や甥 つ子、姪 つ子 も リウマチの ことわかって くれ ないのです」、「職場で も理解 して もらうのはむずか しいです。手の 変形があるのは 目に見 えるのでわか って も らえます」、「健康福祉課 で杖 をつかず に歩 いた ら『 なんで身体障害者手帳 1級 ?』 といわれ民生委員 か ら注意 を受 けたことが あ る」、等があ り、「できるだけ説明す るよ うに してい るけ ど 。・ 。わかって もら うこと はむず か しいです 」。

22歳

で大学卒業後就職 、

24歳

の時、「歩 くのが しん どい」、「歩 くのが遅 くなって し まつた」とい う症状がでて、「おか しぃ」、「何 か変だ」と思 うよ うにな り、近 くの整形 外科 を受診す る。内服薬 で治療す るも効果 な く、リウマチ専門医の診察 を受 け、「関節

リウマチ」 と診断 され た。

2.S子

の病気 について

関節 リウマチは、関節 の疼痛 と変形 を主徴 とす る全身性 の炎症性疾患で、多 くが寛 解 と再燃 を繰 り返 しなが ら、徐 々に進行す る。 関節 リウマチの原因 は未 だ明 らかでは

53

ない。 リウマ チ の語源 を見 てみ る と、古代 ギ リシア医学 で は、身体 の さま ざまな個所 が痛 む疾 患 は、痛 み を もた らす毒 が流 れ て発 生 す る と考 え られ た。「 ρ εじμa(レウ マ)」 とい う言葉 は 「流 れ 」 を意 味 し、 リウマ チ とい う疾 患 の語源 に な ってい る。広 い 意 味 で の リウマ チ は 、身体 の さま ざまな個所 に痛 み が起 こ る病 気 一般 、す なわ ち 100 を超 え る リウマ チ性 疾 患 の総称 と して用 い られ てい る。 一方 、狭 い意 味 で は、膠 原 病 の一 つ で もあ る関節 リウマ チ(RA;rheumatoid arthritis)と い う疾 患 を指 して用 い ら れ る。 リウマ チ患者 は

70万

人 い る とい われ て い る。(リ ウマ チ 白書 、2005)

この語源 の よ うに「痛 み を もた らす 毒 が全 身 の関節 に流れ る」とい うこ とは、

S子

の 病 態 をみ た時 に、「な るほ ど・・・ 」 と納得 がい く と考 え る。

S子

は、

24歳

で リウマ チ を発 症 し、 関節 の炎 症や破 壊 が急 激 に進 み 、

29歳

の若 さ で、左 右 の股 関節 人 工 関節 置換術3と左 右 の膝 人 工 関節 置換術 を受 けて い る。人 工 関節 置換 術 を受 け た部位 と年 齢 を図 1に示 す。

29歳

― 右 股 関節 人 工 関節 置換術

29歳

一左股 関節人工関節置換術

29歳

―右膝人 工関節置換術

29歳

一左膝人 工関節 置換術

40歳

―右肘 人工関節置換術→脱 臼

4回

した。肘 の人 工関節 再置換術

43歳

―左肘人 工関節 置換術

49歳

一左股 関節人 工関節置換術

1.S子

の病気 を身体的側面か ら見てみ る と、

「痛みをもた らす毒が全身の関節 に流れ る」とい う語源のよ うに、全身の関節が次か ら次へ と破壊 され 、病気 が進行 してい ることが よ くわか る。

29歳

の時、①右股 関節人

工関節置換術 を受 け、 ま もな く②左股関節人工関節置換術、③右膝人工関節置換術、

④左膝人工関節置換術 を受 けてい る。

1年

間に4ヶ所 の人工関節置換術 を受 ける とい うことは、進行 がいか に早 く、重度 であったかが推測 できる。身体侵襲 の多い手術 を 容赦 な く受 け ざるを得 なかった

S子

の苦痛 は計 り知れ ない。また、人工関節 の耐久年 度 は、現在 では、15〜

20年

と長 くなってきたが、当時の耐久年数 は

10年

〜15年 とい われ ていた。

S子

の若 さで人工関節 を入れ る とい うことは、

10年

15年

後 には、 リ スクの多い、人工関節 の再置換術 を受 けるとい うことである。

3人工関節置換術 とは、関節 のいたん でいる部分を取 りのぞ き、人工の関節 に置 き換 える手術であ る。 現在使用 され てい る人 工関節 の耐久性 は、15〜20年といわれ てい る。長 い人 生では、再度 手 術 を して、人工関節 を入れ か える必 要が生 じて くる。患者 の価値や QOL(Quality ofLife‐ 生活の質) が、尊重 され るよ うにな り、よ り快適 な生活 を送 るための手段 として、50歳代 で も選 ばれ る人 がい る。

S子

の 人 工 関節 置 換 術 を受 け た 部 位 と年 齢

ム チ ラ ン 変形32歳 ムチ ラ ンス

変 形

32歳

l S子

が人 工 関節 置換術 を受 けた年齢 と部位

S子

に とつて 、炎症 と関節破 壊 に よる痛 み との闘い 、 関節 の 「変形 」 に よる痛 みや 能 力低 下 、 日常生活 の 自立 の喪失 、 そ して経 済 的 な面 に思 い をめ ぐ らす 時 、測 り知れ ない 苦痛 の 中で 日々 を過 ご して きた こ とかが推 察 で き る。

29歳

S子

に とっ て は 、人 間 と して、女性 と して多 くの発 達課題 を持 ち成長 す べ き 時期 だ けに、発 達課題 を遂行 で きない状況 の 中での ジ レンマ と、身 体 的 に、精神 的 そ して、社 会 的 に もつ らい時期 で あ つた こ とも推測 で き る。 また 、 日常生活 に多大 な影 響 力 を持 つ 手 の 関節 は 「尺側 偏位

 

ム チ ランス変形 」(図 3)で

32歳

か ら

33歳

の時 に 変形 が現れ始 めた。

29歳

の時 に、

4個

所 の大 きな手術 を受 けた とい うこ とは、

S子

の病 気 の進行 が どれ ほ ど早 か つた か が推 測 で き る。 この よ うな状況 に ど うして耐 え られ た の か、そ の 当時

55

の状況 をイ ンタ ビュー した。

S子

は、「

4つ

もの大 きな人工関節 の入れ替 えの手術 に耐 え られ たのは、『 若 かつた』

こと、そ して、『 体力 があつた』か らだ と思います。今考 えて も ドッとします。今 だっ た ら一か所 の手術 で も立 ち直れ ない程 たいへ んだ と思います。」 と語 つた。

S子

の受 けた人 工関節置換術 と同 じ手術方法 を図

2に

示 した。 この レン トゲン写真 は

S子

の もので はない。

S子

の病態 を理解 して頂 くために引用 した4(近藤 正一、2009)。

人工関節 置換術 は、今 まで寝 たき りであつた患者 に再び歩行可能 にな るな ど、破壊 され た関節 に対す る除痛効果 と機能再建 において優れ ていて、治療効果 もよ く、特 に 股 関節 、膝 関節 、肘 関節 の人工関節 の長期成績 が安定 してい る。人 工関節置換術 の課 題 としては、長期 間経つ とゆるみや摩耗 の問題 が出 ることや 、体位 や肢位 に よ り、脱 臼の危険性や感染 の危 険性 がある。

人工股 関節

        

人工膝 関節

人工関節 手術 の レン トゲン写真

 

イメー ジ

人 工肘 関節

2.精

神的側 面か ら見てみ る と、

29歳

の時

1年

間に

4個

所 の手術 を受 けたが、当時の ことを振 り返 つて、「生 きる気力 はあ りませ んで した。 リハ ビリも思 うよ うに進 まず、

2本

の松葉杖 をついて も うま く 歩 けませ んで した。退院後 も

5年

間 くらい家 に引きこも りま した。 ただ生 きていた と 思います」

5年

間の引きこも りの間、私 を支 え続 けて くれたのは、父母 の存在 です。父母 は 何 も言 わず生 きる気力 も失 つた私 をほつ といて くれ ま した。何 も言 わず に 。。・。 た だ黙 つて世話 を して くれ ま した」。

そ して、「生 き る気力 を くれ たのは、高校 時代 の友達 です。 一か月 に一度 くらい、

お茶 を一緒 に して くれ 、 シ ョッピングにも連れ て行 つて くれ ま した。松葉づ えで上手 4社団法 人 日本 リウマ チ友 の会:SSKリ

引用 。 リウマ チ の基 礎 療 法 近藤 正 一

ウマチの基礎療法、流 、

269号

p9、 2009よ り 人工関節 手術 の レン トゲ ン写真。

に歩 けない私 を、健 康 の時 と同 じよ うに対等 につ きあつて くれ ま した。 同情 もせ ず 、 物 が落 ちた ら何 も言 わず 拾 つて くれ て 、普 通 につ き あ つて くれ ま した」

5年

間 の 引 き こ も りの あ と、

35歳

の時 に、友 達 に買い物 に連 れ て行 って も らつた 時 、世界 が変 わ って い る こ とに驚 きま した。 世 間 の人 が生 き生 き と して い る こ とに気 がつ きま した。 周 りの人 が生 き生 き してい る様 子 をみ て、私 も生 き てみ よ うと思 い ま

した」。

「生 きてみ よ うと思 いた ったのは、いつ も私 を支 えて くれ た高校 の友達 を車 に乗せ て あげ よ うと考 えま した。 友達 は、私 の運 転す る車 に乗 るの は怖 い 。・ 。と言 つた け ど、

20歳

の時 に取 つた免 許 証 が あつた ので、

3回

教 習 所 に通 つて安 全 に運 転 が で き る よ うに挑 戦 しま した」。

3.社

会 的側 面 か ら見 て み る と、

「車 に乗れ る よ うにな った ら気分 が変 わつて きま した。自分 に も何 か できるのではな い か と考 え られ る よ うにな りま した。西脇 の旅 行社 にアル バ イ トを頼 み に行 きま した。

『 生 きる気力 がほ しいか ら仕事 させ て下 さい』 と強引にお願 い して採用 して もらいま した」。

窓 口でお客様 と対応す る仕事 につ くことがで きてい る。その ころは図3に示す よ う なムチ ランス型5の手の変形 が出てきた。写真 は

S子

の ものではない。

「変形 してい る手 を見 て、接 客 を拒否 され るお客 さん、 自然 に対応 して下 さるお客 さん 、 そ して 、歩 く様 子 を見て 「身 体 障害者 な の に よ く採 用 して も らえたね」 とい う お 客 さん等 、色 々で した。 で も、 このアル バ イ トに よつて給 料 が入 つて きた のでル ン ル ン と した気 分 で した」

5ム

チ ラ ンス変形 とい うの は、 図

3の

よ うに各 関節部 の骨 吸収 が強 い こ とに対す る命 名 で あ る。 手 指 が骨 吸 収 の た め短縮 し変形 が 生 じる。 手 指 は骨 吸 収 の た め短 縮 して他 動 的 に伸 縮 可 能 とな り、 い わ ゆ るオ ペ ラ グ ラス様 の変 形 を呈 して い る。

S子

の場 合 、 ムチ ランス変 形 の結 果 、手 の尺側偏位 が生 じた と考 え られ る。

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