図3.18:還流時間と平均直径の相関図
0 100 200 300 400 500 600 700 10
20 30 40 50
Ave ra ge dia me ter (n m)
銅内包 CNT を還流する時間を変化させた場合の各上澄み溶液の光学写真(図
3.19)から、還流時間が10 minの場合青色であり、1時間以降の条件では淡黄色
から緑色に変化することがわかった。各上澄み溶液の吸光スペクトル(図 3.20) から、銅由来の800 nm付近のブロードなピーク、二酸化窒素由来の400 nm付 近に見られる裾が確認でき、還流時間を増加させても 800 nm 付近のピークに は変化がないことがわかった。これは仕込み量の変化がなく反応する銅の量が ほぼ同じであるためであると考えられる。一方、二酸化窒素由来の 400 nm 付 近に見られる裾は、還流時間が10 minの場合観察できず、1 hの場合が最も大 きかった。これは、還流初期では反応が十分に進行していないためであり、長 時間の還流では、二酸化窒素が二量体を形成して無色の四酸化二窒素と平衡状 態になり溶液に溶け込む二酸化窒素量が減少したため、あるいは二酸化窒素が 大気中に放出してしまったためであると考えられる。各上澄み溶液を蒸留水で 10倍に希釈した溶液の吸光スペクトル(図3.21)から、硝酸イオン由来の200 nm
付近、300 nm付近のピークが確認でき、還流時間の変化によってピーク強度に
変化がないことがわかった。
12 hの還流によって得られた試料のXRDパターン(図3.22(b))から、グラフ ァイト由来の(002)面が 2θ=26.4°に確認できた。また、銅由来の(111)面がわ ずかに確認できた。半値幅はそれぞれC(002)=0.3°、Cu(111)面=0.6°であっ た。還流時間1 hの場合(図3.22(a))に比べ、グラファイト(002)面がシャープに なり、結晶性が向上していることがわかった。これは還流によってCNT層が増 加したことに起因していると考えられる。また、26°付近のグラファイトピー クの低角度側の裾は、アモルファス炭素に起因していると考えられる。
銅内包CNTを還流する時間を変化させた場合のラマンスペクトル(図3.23)か ら、1358 cm-1付近の D-band、1585 cm-1付近の G-band、2722 cm-1付近の
2D-band がそれぞれ確認できた。各スペクトルの半値幅を以下に示す(表 3.2)。
還流前の銅内包CNTは、グラファイトの結晶性を示すG-bandがブロードであ ったが、還流時間 1 h までの条件において還流によって結晶性を示す G-band がシャープになっていることから結晶性が向上していることがわかった。しか し、還流時間が 6 h、12 h と長時間になるにしたがって、D-band、D´-band 強度が増加し、欠陥が増加していることがわかった。また、2D-band は還流時 間を変化させた場合でもシフトしていないことがわかった。
D-band G-band 2D-band
12 h 72 70 93
6 h 69 64 97
1 h 90 57 97
10 min 80 56 92
表3.2:還流時間を変化させた場合の各試料のラマンスペクトルの半値幅 (cm-1)
図3.19:還流後の上澄み溶液の光学写真
図3.20:還流後の上澄み溶液の吸光スペクトル
200 400 600 800 1000
Ab sor bance (a . u.)
Wavelength (nm)
12h 6h 1h 10min 12 h
6 h 10 min 1 h
12 h 6 h 1 h 10 min
図3.21:還流後の上澄み溶液を10倍に希釈した場合の吸光スペクトル
200 400 600 800 1000
Ab sor bance (a . u.)
Wavelength (nm)
12h 6h 1h 10min
20 30 40 50 60 70 80
In tensity (a. u. )
2theta (degree)
(b)
(a) C (002)
Cu (111)
C (002)
12 h 6 h 1 h 10 min
図3.23:ラマンスペクトルの時間依存性
1200 1400 1600 2600 2800 3000
Int ensity (a. u.)
Raman Shift
as-grown 12 h
6 h
1 h
10 min
(cm
-1)
D-band G-band
2D-band
3.3.3 温度依存性
銅内包 CNT を還流する際の温度を変化させた場合の各試料の TEM 像を図 3.24(a, c, e)、直径分布を図3.24(b, d, f)、還流温度と平均直径の相関図を図3.25、
上澄み溶液の光学写真を図 3.26、上澄み溶液の吸光スペクトルを図 3.27, 28、
ラマンスペクトルを図3.29に示す。
銅内包 CNT を還流する際の温度を変化させた場合の各試料の TEM 像(図 3.24(a, c, e))から、還流温度140 ℃の場合と同様に内包されていた銅の溶出が みられた。還流後の直径変化は、還流温度140 ℃の場合と比べ還流温度25 ℃、
80 ℃、110 ℃の場合小さいことがわかった。還流温度が25 ℃、80 ℃、110 ℃ の時の直径を測定したところ、直径分布はそれぞれ9‐22 nm、9‐22 nm、10‐
44 nmであり、平均直径はそれぞれ15 nm、15 nm、18 nmであった(図3.24(b,
d, f))。この結果から、還流温度と平均直径の関係をグラフにまとめると、110 ℃
と140 ℃の間で平均直径が大きく変化したことがわかり、濃度60 %の濃硝酸の 沸点121 ℃付近の温度で還流した場合に大きな変化が起こることが示唆された (図3.25)。
図3.24:銅内包CNTを還流する際の温度を変化させた場合のTEM像と直径分 布 (a, b) 25 ℃ (c, d) 80 ℃ (e, f) 110 ℃
0 20 40 60 80 100
0 10 20 30 40 50 60 70
Fraction (%)
Diameter (nm)
0 20 40 60 80 100
0 10 20 30 40 50 60 70
Fraction (%)
Diameter (nm)
0 20 40 60 80 100
0 10 20 30 40 50 60 70
Fraction (%)
Diameter (nm)
直径分布:9‐22 nm 平均直径:15 nm
直径分布:9‐22 nm 平均直径:15 nm
直径分布:10‐44 nm 平均直径:18 nm
(a)
(c)
(e)
(b)
(d)
(f)
図3.25:還流温度と平均直径の相関図